ここは何処?-17-
十字路だけでは飽き足らず、六つや八つに分かれている細い道を目の前の少年に手を引かれる形で走っていた和歌の息も、流石に切れてきた。どんなに空手で鍛えた持久力があるからといって、これだけ長い時間走り続けていたら疲れてくる。もともと長距離ランナーじゃないし、だいだい、全力疾走の持久走なんて聞いたことない。こんなペースで何十キロも走ったら、それこそ自殺行為だわ。
何の拷問よ、これ。
もう限界、と思ったら、なんていいタイミング。前を走っていた少年が立ち止まった。和歌を導いていた手がほどかれ、膝に両手をついて乱れた呼吸を整える。爆走する心臓の音が耳にうるさかった。
「あ…りがとう、少年。助かった」
休憩を挟みながらも疾走を強いられた両足の筋肉の上げる悲鳴には素直に応じて、石畳の地面に座りこんだ和歌は未だ乱れた呼吸の合間を縫って感謝の言葉を投げ掛ける。
「ううん。寧ろ、お礼を言わなければならないのは俺の方。助けてくれて有難う、親切なお姉さん」
笑顔が眩しい。
そう思った。これは、完全に美形の部類に入る。もしこんな綺麗で素直な男子がクラスにいたら、確実に醜い争奪戦が繰り広げられるはずだ。
「ちなみに、俺の名前はタロじゃないよ。ガーネだ」
しかも純真。
完璧だ。この子、天使。