ここは何処?-16-
そうと分かっていながら、それでも和歌は動けなかった。何かをしなければならない事は確かだけれど、その肝心の何をしたらいいのかが分からない。
完全に、お手上げ状態だ。白旗でも振りたい気分。
ふと脳裏をよぎった思いに苦笑を浮かべた和歌は、背後から階段を登ってくる荒々しい足音に気付いた。立ち上がり、振り返ればその視界にまいたと思っていた先程の男達の姿が映り込む。
「しつこい男は嫌われるのよ…!」
嫌悪感丸出しの捨て台詞を残して、和歌はそれなりの勾配がある坂を上手くバランスを取りながら駆け抜けた。背後から、「待ちやがれ~!」なんていうお決まりの文句が聞こえたけれど、馬鹿者共。誰が待つか。
「わッ!?」
太陽の光を弾く白い坂を駆け下り、路地よりも少しは幅広の道を行き交う地元人達の好奇の視線を浴びならが走っていた和歌は、急に横から手首を掴まれて細い路地の一本に引きずり込まれた。
「ちょ…!何す…」
何するの!と出かかった文句は、口に当てられた人差し指に遮られてしまう。
「こっち」
自分よりも背の低い少年に手を引かれて、和歌は入り組んだ路地を走った。視界の端を流れていく家々はやはり白一色で、無駄なく配置された家々の隙間から差し込む太陽の光をありがた迷惑な程に反射してくれていた。
アスファルトの地面に慣れた現代っ子の身には、正直言って少し目がチカチカする。下手したら、視力落ちるよ、これ。