ここは何処?-14-
露店に並ぶ果物をぶちまけて、流石のヤンキー君達もおばちゃんには勝てないみたい。完全に行く手を阻まれた鬼の様子を確認し、和歌は大通りから裏道へと姿を消した。
狭い路地裏を右へ左へと曲がり、目の前に現れた長い長い階段を上り終えた先で出会った景色に、足を止めた和歌は息を呑んだ。
「うわぁ…」
視界一杯に映る空の青と、陽の光を弾いて輝く白の建物が織り成す幻想風景に和歌は感嘆の声を上げた。
切れ切れの呼吸は、毎日の空手で培われた基礎体力のお陰かすぐに整う。石畳はやはり白く、ローファーの踵が踏む度に乾いた音を奏でた。
それがまるで音楽のように感じられて、和歌は思うままにステップを踏む。何処までも澄み渡った青空に舞い上がる、四分や八分音符。
ふと、紡がれていた音楽が掻き消える。残された余韻を吸い込むこの世界の青空が、自分を包み込んでいた空と同じ色だったから。
「…空を眺めて…ふと思いました」
自然と口をついた旋律は、小さい頃に聞いた歌。
「季節によって色が違うのです。
場所によって色が違うのです。
それなのに、この空は、何処までも繋がっているといいます。
ならば、この空を飛んでいったら、あなたに逢えるでしょうか。
青い青いこの空は、あなたと私の世界を繋いでくれる。
だから、逢いに行きましょう。
あなたの世界に続いている、この空を越えて」
多分、同じ色の空だったから。
理由は、それだけ。
「つッ―――…」
零れ落ちそうになった涙を堪えようと天を仰ぎ、その先で出会った歪な蒼が、更に和歌の心を揺さぶった。