第22話 忠誠と並立
軍会議室は重苦しかった。
統合司令部からの命令書が、
机の中央に置かれている。
――並行機構への関与を禁ず。
――中央決定への全面従属を確認せよ。
文面は簡潔。
解釈の余地は、ほとんどない。
---
「団長」
セドリックが立つ。
「我々は軍です。政治ではありません」
若いが、目は真っ直ぐだ。
「秩序を守るために統合した」
「命令に従うのが軍の役目です」
異論は出ない。
軍は命令で動く。
---
アルトはゆっくりと命令書を閉じる。
「命令には従う」
室内がわずかに安堵する。
だが彼は続ける。
「だが“関与”の定義は、明確ではない」
視線が集まる。
---
「軍が政策を決定することは禁止だ」
「だが意見を述べることは?」
沈黙。
条文はそこまで踏み込んでいない。
---
「軍は政治に介入しない」
アルトは言う。
「だが国家の安全に関わる制度について、
見解を述べる権利はある」
セドリックが反論する。
「それは実質的関与です」
「関与とは決定権を持つことだ」
静かな応酬。
---
城壁の上。
夜風が強い。
「命令に従いますか」
主人公が問う。
彼は迷わない。
「従う」
一瞬、胸が締めつけられる。
だが続く。
「だが並行機構の会議に軍事顧問として出席する」
彼女が目を上げる。
「顧問?」
「決定権は持たない」
「意見は述べる」
中央命令違反ではない。
だが盲従でもない。
---
「危険です」
彼女は言う。
「中央は敵視します」
「敵に回るつもりはない」
短く答える。
「だが、声を封じられる軍でありたくはない」
風が吹き抜ける。
---
「私はあなたを止めません」
彼女は言う。
第一部から変わらない言葉。
だが重みは違う。
「止めない」
彼は苦笑する。
「本当に困る」
「ええ」
わずかに笑う。
---
「俺は王に忠誠を誓っている」
アルトは言う。
「だが従属は誓っていない」
その言葉が、夜に溶ける。
---
翌朝。
軍は中央へ正式回答を送る。
――命令を確認。
――統合司令部決定に従う。
――ただし制度に関する軍事的意見表明は継続する。
曖昧ではない。
明確な立場。
---
中央都市。
マティアスが報告を読む。
「条文解釈で回避しました」
「巧妙だな」
王カシウスは淡々と言う。
「彼は軍人か」
「はい」
「ならば従属はしないだろう」
王は静かに立ち上がる。
「会議で会おう」
---
忠誠は裏切らない。
だが盲従もしない。
並立という形は、
従属より難しい。
そして多国間会議は、
いよいよ王を交えて開かれる。
速さか。
修正か。
それとも、その先か。




