第21話 中央の警告
正式な書簡は、黒い封蝋で閉じられていた。
ヴァルドレア王国、国璽。
差出人――カシウス・ヴァルドレア。
王自らの名。
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議場は静まり返る。
主人公が封を切り、読み上げる。
「統合は信頼によって成立する」
落ち着いた筆致。
「統合の精神を揺るがす並行機構の設立は、慎重であるべきだ」
柔らかい。
だが明確だ。
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「修正機構構想について、正式説明を求める」
事実上の召喚。
多国間会議が、中央都市で開かれる。
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マティアスが淡々と補足する。
「中央は分裂を望みません」
「速さが失われれば、統合は崩れます」
その言葉に嘘はない。
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「分裂ではありません」
主人公は静かに言う。
「支えるための別回路です」
「回路が複数あれば、命令は遅れる」
「命令は期限を持てばよい」
議場がざわめく。
まだ構想段階。
だが核心に触れている。
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その夜。
軍に正式命令が届く。
――統合司令部の決定に全面従属せよ。
――並行機構への関与を禁ず。
アルトは命令書を閉じる。
中央は速い。
揺れを感じた瞬間に、封じにくる。
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「どうする」
若手士官セドリックが問う。
「軍は命令に従うべきです」
彼は中央支持派だ。
「秩序が最優先です」
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アルトは即答しない。
秩序は必要だ。
だが秩序の名で、
声が消されるなら。
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城壁の上。
「王が出てきました」
主人公が言う。
「本気だな」
「ええ」
風が強い。
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「軍にも忠誠確認が来た」
アルトが告げる。
「修正機構への関与禁止」
沈黙。
立場が明確になる。
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「あなたはどうしますか」
彼女が問う。
彼はしばらく答えない。
「命令には従う」
胸がわずかに痛む。
「だが条文の解釈は、軍の権限だ」
視線が交わる。
「関与とは、何を指すか」
静かな含み。
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中央都市。
王カシウスは報告を受けていた。
「小国代表が連携?」
「はい」
「興味深い」
王は笑わない。
だが怒りもしない。
「速さは守るべきだ」
静かな声。
「だが速さが恐れられるなら、それは失敗だ」
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多国間会議は七日後。
統合を壊すためではない。
だが揺るがす可能性はある。
中央も本気。
小国も本気。
そして軍も、選択を迫られる。
速さと修正は、
ついに王の前で向き合うことになる。
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