第20話 集まる声
それは公式訪問ではなかった。
だが、非公式でもなかった。
統合圏小国三国の代表が、
同時にこの城を訪れた。
エルミア・ドラン。
北部都市代表ヴァルケン。
沿岸商業都市代表ミリア。
いずれも若い。
いずれも、統合賛成派だった者たちだ。
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「統合を否定するためではありません」
エルミアが最初に言った。
「ですが、修正の回路が足りません」
ヴァルケンが続く。
「地方議会は中央に届かない」
ミリアが言う。
「商人も中央価格に縛られている」
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主人公は静かに聞いている。
彼らは敵ではない。
敗北したはずの思想に、
今、彼らの方から近づいてきている。
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「統合は成功しています」
エルミアが繰り返す。
「ですが成功が、修正を遠ざけています」
その言葉が、部屋に落ちる。
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「中央は安定を最優先にします」
ヴァルケンが言う。
「だから揺れを認めない」
「揺れは統計上、存在しないとされる」
ミリアの声は冷静だ。
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「あなたの提案した相互信用網」
エルミアが言う。
「それを、統合圏内でも導入できないでしょうか」
空気が変わる。
これは反乱ではない。
制度の再設計提案だ。
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「中央は反発します」
主人公は言う。
「ええ」
「統合条約違反にはなりませんか」
「条約は“禁止していない”」
エルミアの目が光る。
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アルトは黙って聞いている。
軍は中央司令部の一員。
立場は難しい。
だが目の前にいるのは、
守るべき“人”だ。
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「あなたは何を求めていますか」
主人公が問う。
三人は視線を交わす。
「中央の外に、修正の回路を」
エルミアが言う。
「中央を壊すのではなく」
「支えるための別系統を」
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城壁の上。
「これは危険だ」
アルトが言う。
「中央は反発する」
「ええ」
「分裂と見なされる」
「ええ」
風が強い。
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「それでもやるのか」
彼は問う。
彼女は静かに言う。
「統合を守るために」
アルトが目を細める。
「敵対ではない」
「ええ」
「修正です」
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翌日。
主人公は草案を書き始める。
名称:
――多国間修正協議機構。
中央決定を覆す権限はない。
だが影響力は持つ。
共同審査。
相互監査。
緊急勧告条項。
中央を否定しない。
だが中央を唯一にしない。
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遠く、統合圏中央都市で、
マティアスが報告を受ける。
「小国代表が接触?」
「はい」
彼の目が細くなる。
「分裂の芽か」
だが彼は笑わない。
「速やかに対応する」
中央もまた、速い。
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速さはまだ正しい。
統合もまだ崩れていない。
だが今、
中央の外に、もう一つの回路が生まれようとしている。
文明は、一つの柱では立たない。
それを証明する戦いが、
静かに始まった。




