表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢ですが、国の仕組みを直したら評価が逆転しました 続編『選ばれなかった国』 ―強国に査定された日―  作者: 花守いとは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/30

第17話 条文という刃

 北部の抗議は、小規模なまま収まった。


 だが不満は消えていない。


 中央は通達を変えない。


 条約に基づく即時実行。


 速さは守られている。


---


 議会でマティアスが言う。


「例外を認めれば、全体最適が崩れます」


 冷静な声。


「統合は感情ではなく、制度で動きます」


 正しい。


 誰も論理では崩せない。


---


 そのとき。


 彼女が一冊の条約文書を開いた。


「制度で動くのであれば」


 静かな声。


「制度に従いましょう」


 視線が集まる。


---


「統合経済条約 第四十二条」


 読み上げる。


「加盟地域の三分の一以上の連名申請があった場合、

 中央監査機関は七日以内に再審査義務を負う」


 ざわめき。


 マティアスの眉が、初めて動く。


---


「形式的条項です」


 即座に返す。


「実行例はありません」


「では、初めてになります」


 彼女は言う。


「北部四地域は既に署名済みです」


 書簡が机に置かれる。


 エルミアの名もある。


---


 議場が揺れる。


「三分の一に足りない」


 若手議員が叫ぶ。


「足ります」


 彼女は別の書類を示す。


「統合圏小国二地域も署名しました」


 マティアスの顔が固まる。


---


「条約上、統合圏加盟地域は一体と数えます」


 彼は言う。


「条文にその記載はありません」


 即答。


「“加盟地域”とあります」


 沈黙。


---


 アルトが初めて息をのむ。


 読んでいたのか。


 そこまで。


---


「中央は七日以内に再審査義務を負う」


 彼女は繰り返す。


「条約です」


 マティアスは黙る。


 否定できない。


 制度で動くと言ったのは、中央だ。


---


 議場の空気が変わる。


 速さを守るための制度が、

 修正を強制する刃になる。


---


「再審査を行います」


 マティアスが低く言う。


 声にわずかな硬さ。


「ただし、結論が変わる保証はありません」


「保証は求めていません」


 彼女は穏やかに答える。


「修正の機会を求めています」


---


 夜。


 城壁の上。


「読んでいたのか」


 アルトが言う。


「ええ」


「最初から?」


「統合が可決された日から」


 風が強い。


「負ける可能性も考えていました」


 静かな告白。


---


「俺は、賛成に回った」


「ええ」


「それでもか」


「制度は、使い方次第です」


 その横顔を見て、アルトは苦笑する。


「……敵に回さなくて良かった」


「敵に回っていません」


「今はな」


 短い笑い。


---


 七日後。


 中央は再審査結果を出す。


 北部作付変更は一部凍結。


 地方裁量の余地を認める。


 小さな修正。


 だが大きな意味。


---


 統合は崩れていない。


 速さも残っている。


 だが修正可能性が、証明された。


 制度は一枚岩ではない。


 条文という刃は、


 中央すら切ることができる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ