第15話 届かない声
エルミア・ドランは、想像よりも若かった。
淡い灰色の外套をまとい、無駄のない所作で一礼する。
「お時間をいただき、感謝します」
声は静かだが、どこか張り詰めている。
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応接室には、彼女と主人公だけ。
護衛も下げた。
「統合は、成功しています」
エルミアは率直に言った。
「港は拡張され、中央資本が流入し、失業率も改善しました」
「ええ」
「ですが」
その一言に、重みがある。
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「地方の声が、中央に届きません」
淡々とした報告。
「価格は中央基準で固定され、地方の原価は考慮されない」
「補助金は?」
「申請は可能です。ただし中央審査を通らなければならない」
「通らない?」
「優先順位が低いと判断されました」
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主人公は静かに聞いている。
「抗議は?」
「議会は統合条約に基づき、中央決定に従います」
エルミアの指が、わずかに震える。
「修正の手段が、実質的にありません」
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その言葉に、胸の奥がざわつく。
速さはある。
だが方向は、一つ。
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「あなたは反対だったと聞きました」
エルミアが言う。
「ええ」
「今も?」
問いはまっすぐだ。
主人公は一瞬、答えに迷う。
「……統合を否定してはいません」
「ですが?」
「修正の仕組みが弱いと感じています」
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エルミアは目を伏せる。
「中央は誤りません」
皮肉ではない。
事実として。
「少なくとも、誤りを認めません」
その言葉が、静かに落ちる。
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その頃、城の会議室。
中央監査官マティアス・レンが、書類を整えていた。
「地方の価格乖離は想定内です」
冷静な声。
「全体成長率は目標を上回っています」
「地方の赤字は?」
「一時的です」
数字は正しい。
統計上、問題はない。
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城壁の上。
「地方の声が届かないらしい」
主人公が言う。
アルトは眉をひそめる。
「統合した以上、中央判断だ」
「ええ」
「それが条件だった」
「ええ」
短い沈黙。
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「守れている」
アルトは言う。
「市場は回復した」
「ええ」
「軍も安定している」
「ええ」
言葉は同じ。
だが重さが違う。
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「だが地方は守れていない」
主人公が静かに言う。
アルトは答えない。
守るとは何か。
国家か。
市場か。
人か。
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夜。
統合圏小国の地方都市で、小さな抗議が起きる。
大きな騒動ではない。
だが、確かに起きている。
価格統制。
補助金不認可。
中央決定。
声は小さい。
だが、消えてはいない。
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速さの光は、まだ眩しい。
成功は続いている。
だが、影は少しずつ、形を持ち始めていた。
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