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第七話~ダバン炭鉱~

一方その頃、バドラスとドバンはドワーフ城に戻り、ドワンへ報告をしていた。


「ドワン様、只今このバドラス、ドバンと共に戻りました。」


「ふむ、ご苦労であった。どうだ、上手くいったか?」

「はい、予定通りあの三人を炭鉱内に閉じ込め、マナ制限の魔法を発動させました。今頃慌てふためいているでしょう。」


「そうか、よくやった。それではあの方に報告するとしよう。」


ドワンは胸元から透明な水晶を取り出した。それは片手で掴めるような大きさで特に変わったところはない。しかし、ドワンが水晶を掲げると白く眩い光を放った。そしてドワンは水晶に向かって話しかける。


「カージェス様、仰せの通り魔王国の者らを炭鉱に閉じ込めました。」


すると水晶から声が返ってくる。


「ドワンよ、良くやった。あとは奴らが中の魔物に殺されるのを待つだけだな。」


「はい、これで我が国と民の安全を保障していただけるのですね?」


ドワンの問いかけに反応する事はなく水晶の光は消えた。


そして炭鉱に閉じ込められたフリをしていた俺達は遠足気分で炭鉱を散策していた。

ドワーフ国以外にも炭鉱はいくつか存在するが、ここのタバン炭鉱は大陸一の規模を誇る。小規模な炭鉱とは違い通路は十分の幅があり、平坦な道が続いている。


天井や壁の各所に岩崩れ防止の補強がされており、ランプで道は明るく照らされている。炭鉱内がこれだけ整備されていれば、大量の鉱物を載せて運搬する事はそう難しくはないだろう。


魔大陸に流通している七割以上の武器や防具、金属等はこの炭鉱で採掘された鉱石を利用して生成している。

言わばドワーフ国は魔大陸の武器庫と言っても過言ではない。しかし、この戦時中にその炭鉱が聖大陸軍に占領されているともなれば死活問題である。

この問題は一刻も早く解決する必要がある。


とまぁ、こういったこの世界の情勢、常識、知識云々はグリーテンの魔法によって与えてもらったので、この世界の大抵の事情は頭に入っているのである。


大陸一の規模だけあって炭鉱内は迷路のようにいくつもの分かれ道が存在し、非常に複雑な造りになっている。初見の者が入り、迷い込んでしまったらまず脱出は困難だろう。鉱物がある場所を掘り進め、採り尽くすまで道を作っていく。

採れなくなったらまた別の道を掘り進め探す。見つかったらそこを採り尽くすまでまた掘り進める。その繰り返しをしているうちにこんな巨大迷路が出来上がったのだ。


普通に進んでいてもらちが明かない。そこで探索魔法の出番である。

バドラスのマナリストリクション(マナ制限)により、高出力の魔法は発動出来ないが、これくらいは問題ないだろう。


「ドローウィング(空間掌握)。」


この魔法により、対象範囲である炭鉱内の地理をマップのように頭の中に刷り込むことが出来る。

そのマップを見てみても頭が痛くなるような構造をしている。

しかし、ここは二人がいる手前格好よく先導したところだ。なんとなく中の様子は掴めたので行くとするか。


「よし、この中の状況は大体把握した。二人とも私に付いてくるがよい。」


「はいっス!道案内はお任せしますッス!」


「さすがはカイト様、このカーミラ地獄の果てまでも付いて参ります。」


そこまで付いて来てもらわなくても良いのだが、と思いつつ俺は二人を連れて最短ルートを進む。


奥に進むにつれて不穏な気配がしてきた。ミスリルリザードに近づいているという事であろうが、一匹だけの気配ではない。慎重に歩を進めるとその気配が段々強くなってくる。

よく見ると、見渡す限りの穴が壁や天井に開いている。人が一人通れるくらいの大きさだろうか。

ボアードが気になって壁の穴を覗き込んでみると、白い糸のような物体が飛び出しボアードをぐるぐる巻きにした。


「うわ、なんスかこれ、ベトベトしますッス。」


どうやら蜘蛛の糸のようだ。蜘蛛の糸なんてたいした事はないように思えるが、強度は鋼鉄の五倍とも言われている。


地球にいる蜘蛛と同じレベルで考えると、ボアードをぐるぐる巻きにする程の大量の糸は脅威である。

それにこの穴の大きさだ。それはそれは大きな蜘蛛さんがいらっしゃるのであろう。

そんなのがこの穴の数だけいると考えると人間時代の自分だったら絶叫ものである。


しかし、不思議と今はそんな感情は沸かない。それどころか、この世界の魔物がどんな姿をしていてどれだけ強いのか見てみたくてワクワクしている。

まるでどこかの戦闘民族のように。


「まったく足手纏いなブタね。あんたごと糸を焼き払ってあげようか?」


「いや、このくらい問題ないッス!フンッ!」


ボアードは体に力を入れると、ぐるぐるに巻かれた糸をいとも簡単にぶちぶちと引きちぎって見せた。驚異の怪力である。俺やカーミラではそのような芸当はできないだろう。まぁその代わり二人とも魔法でどうにでもなるのだが。


「くっそ~、頭に来たッスよ~、カイト様ヤっちゃっていいッスか?」


ボアードが臨戦態勢を取ると、無数の穴の中からおびただしい数の蜘蛛が姿を現した。蜘蛛の全身は赤黒く体毛が生えている。

どことなくタランチュラっぽいが、サイズはやはり穴の大きさから想定した通りであった。どうしたらこんなに大きくなれるのだろうか。この炭鉱での生存競争に生き残ってここまで進化したのだろうか。流石にこの数は厄介になりそうだ、ボアードの肉弾戦では骨が折れるだろう。ここは魔法が得意なカーミラに任せて実力を見させてもらうか。


「いや、待て、カーミラにお前の仇を討ってもらおうではないか?」


「し、しかしカイト様、このブタのために戦うなど。。。」


「カーミラよ。私はお前の力を見たいのだよ。」


「は、はい!是非このカーミラにお任せください!虫けら共を瞬殺して参ります!」


うんうん、聞き分けが良い子で助かる。単純な強さで比べれば大した敵ではないだろう。しかし、今回はこの限られた空間で大量の数を相手にしなくてはならない。

果たしてどう戦況を乗り切るか、単純な強さだけではない部分も見せてくれるとありがたい。


ボアードは後退し、カーミラが前線に出る。魔法が得意ならば距離を取って戦うのが定石だが、大胆にも敵との距離を詰めていく。そして敵の中央に位置を取る。


すると、一匹の蜘蛛が号令のような声を発すると蜘蛛達は一斉にカーミラに向かって糸を発射した。みるみるうちにカーミラは糸に絡まれボアードの時とは比べ物にならないくらいぐるぐる巻きにされていく。


やがて全身が糸に包まれ見えなくなった。こんな必要以上に巻かれたのはさっきボアードが簡単に引きちぎったのを見たからだろうか。まるで繭のような様相である。

余裕をかましていたとは言え、こんなにぐるぐる巻きにされたらさすがのカーミラも分が悪いだろう。残念だが加勢するか。


「アシッドアロー(酸矢)!」


加勢しようとした矢先、蜘蛛の糸の中からカーミラが魔法を発動させた。

無数の黄色い矢が出現し、カーミラの方を向いて浮いている。

すると、矢はカーミラを目掛けて飛んで行き糸の塊に突き刺さる。刺さった瞬間、矢は糸を溶解しながらドロドロに溶けていく。

やがてカーミラを包んでいた糸は全て溶け落ち、カーミラは姿を現した。


「ふん、所詮は虫けら風情。この程度か。もう少し見せ場を作ってカイト様にアピールしたかったのだが、この程度の敵では相手にならない。仕方ない、終わりにするか。」


こっちは内心ヒヤヒヤで助けに行こうとしていたが、本人にとっては何とも無かったようで良かった。

俺は当然カーミラならこんなの余裕だと思ったぜ、と言わんばかりのドヤ顔でカーミラを見つめる。


「こ、これで終わりよ、フレイムバレット(炎弾)!」

なぜかカーミラは顔を赤めた。流石のカーミラも糸に巻かれて少し暑苦しかったからだろうか。魔法により無数の炎弾がカーミラの頭上から蜘蛛達に目掛けて飛んで行く。

炎弾は直撃し、敵は即死する。蜘蛛の群れは火の海となった。糸を有効である酸で溶かし、炎弾を同時にいくつも発動させ、一発も外す事無く仕留めた。冷静に戦況を見極める力もさる事ながら、見事な魔法技術である。


最初から炎弾で倒していたらそれで終わりだったが、ボアードへの攻撃を一回見ただけですぐに自分なりの対処法を編み出して実践し、己の能力を示す計算高いところを見せた。


「お待たせしましたカイト様。虫けらの掃除が完了いたしました。」


「うむ、戦況を的確に見極め魔物を仕留めて見せたな。見事な腕前であった。」


「は、はい!ありがとうございます。これからもカイト様の期待に恥じぬよう頑張ります!」


「うむ、期待しているぞ。」


「カーミラ、仇を討ってくれてありがとうっス!」


「うるさい!お前のためではない!」


そんなこんなで炭鉱内の魔物に遭遇したが難なく討伐出来た。

ボアードの怪力も凄かったが、カーミラもマナ制限の魔法を受けているとは思えないほどの実力を見せてくれた。二人とも頼もしい限りである。今後強敵と戦う事になるだろうが、こいつらがいれば何とかなるだろう。そんな気持ちにさせてくれる一戦であった。


魔物の群れを倒した俺達はミスリルリザードの棲む最深部へと進んでいくのであった。

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