第七十七話~騎士団長ゾアン~
カイト達は万引きした子供達を店主から救い、子供達が海竜によって両親を亡くした孤児である事を知る。
そこで海竜の討伐に乗り出すカイト達だったが、海竜に関する情報収集に苦慮していた。
そんな中、路地から一人の男が現れたのであった。
「やあやあ、皆さんごきげんよう。あなた達の様子は陰から見させていただきましたよ。何やらあの恐ろしい海竜を討伐されるとかなんとか。」
かなり上から目線でキザな態度の男は立派な青い鎧に身を包んだ金髪の騎士であった。
男は腰に一本のロングソードを携えていた。
その剣の鞘は白を基調とし、金の装飾が施されており、とても精巧に造られている。
鞘に納められている刃を伺うことが出来ないが、鞘の造りからして相当価値のある逸品である事が想像できる。
「っで、この後どうしましょうかカイト様?」
「うむ、そうだな、ますは女王に会いに行くのはどうだろうか?女王であれば間違いなく海竜の事は知っている筈だし、本来の目的も果たせて一石二鳥になろう。」
「流石はカイト様、カイト様はいつも私達を正しい方へと導いて下さり、とても頼りになる御方ですわ。」
「コロンもそれが良いと思う。」
三人と一体は男の声を聞いて一瞬声のする方を振り向いたが、まるで何事も無かったかのように作戦会議を続ける。
「お、おい!私の声が聞こえなかったのか!?」
「ん、誰だ貴様は?我々は今大事な話をしているのだ。悪いが用があるならもう少し待っていてくれないだろうか?」
男はまったくカイト達に相手にされず怒りを堪えていると、ギルがその男の正体に気が付く。
「あ、へっぽこ団長のゾアンだ!こんな所で何してるんだ?」
「あ、本当ね、あのキザで女ったらしのゾアンだわ!」
「おい、お前等、ゾアン「様」だろうが!それかせめて「さん」をつけなさい!」
「ゾアン、こんな所でサボっていないで仕事しろよ!」
「そうだよ~、ちゃんと働いた方がいいよ~。」
「ふっ、さてはまた女に振られたショックでふらふらこんな所までやってきてしまったのか。情けない。」
子供達に言われたい放題のゾアンという男を見てカイトは自分達の対応は間違っていなかったと確信した。
「まったくあいつらといい、お前達といい、一体何なんだ!?このアクアの騎士団長ゾアン様が来てやったというのに!」
カイトは騎士団長というワードにピクッと反応する。
「おい、そこの、、、ゾアリンとか言ったか?お前はこの国の騎士団長なのか?」
「ゾアンだ、ゾアン!何で女の子っぽい名前になってるんだよ!」
「あぁ、すまん、すまん、っでゾアンよ、どうなのだ?お前は本当にこの国の騎士団長なのか?」
「だからそう言っているだろうが!私は正真正銘アクアの騎士団長ゾアンである!」
「そうか、それは分かった。それでそんなお前が何故こんな所に来たのだ?」
「ふっ、よくぞ聞いてくれたな。それは、私はお前達のような強者を探していたからだ。」
「何で強い奴を探しているッスか?お前達の騎士団にも強い奴はいるんじゃないッスか?」
「あぁ、勿論、私の率いる騎士団は自慢の部下ばかりだ。しかし、その我々でさえも最近手に負えないような事案が発生してしまっていてな。それで私は我々に匹敵する、もしくはそれ以上の強者を探していたのだ。」
「へぇ、っでそれが私達って事かしら?」
ここまでキザながらも平然と話していたゾアンであったが、カーミラの姿を見た途端、態度が一変する。
ゾアンは一瞬でカーミラの美貌に惹かれてしまっていた。
ゾアンは突然カーミラの前に現れたかと思えば、次の瞬間には跪いてカーミラの片手を握り、愛の告白をする。
「はい、そうでございます、我が姫よ。あぁ、今日は何という素晴らしい日だ。私はあなたのようなお強くお美しい方をずっと探しておりました。そしてよくぞ私の前に現れてくれました。もうこれは運命と言う他ありません。カーミラ姫、こんな男くさい連中とは縁を切って我々の騎士団に是非入団していただけないでしょうか?そして入団した暁には私と結婚してください!」
聞いているだけで背中が痒くなるような言葉を連発したゾアンだったが、当然カーミラの心に響く筈はなく、カーミラは握られていないもう片方の手で拳を作り、ゾアンの顔を殴り飛ばす。
「お前如きが私に気安く触るなー!」
「ブホォー!」
ゾアンはカーミラの怒りの鉄拳を食らい、颯爽と登場して来た狭い路地の方へと吹き飛ばされる。
「自業自得だね。でもカイト様、あいつは使えるとコロンは思う。」
「そ、そうだな、確かに騎士団長であるという話が本当であれば女王との架け橋になってくれるかもしれない。まだ生きていればの話だがな。」
カイトはゾアンの身を案じて吹き飛んだ路地の方に向かって声を掛けるが反応しない。
「おーい、ゾアン、大丈夫か?、、、あれ、本当に死んじゃったかな?カーミラ、すまないがゾアンを呼んでみてくれるか?生きていればお前の声には反応する筈だ。」
「はい、非常に気は進みませんが、カイト様がおっしゃるのなら。おい、ゾアン、生きているなら返事をしろ!」
カイトの声にはまるで反応しなかったゾアンだが、カーミラが呼びかけると、顔面が残念な状態になりながらも疾風の如く再びカーミラの前に姿を現した。
そしていつの間にかまた跪いている。
「お呼びでしょうか?我が姫よ。」
「おい、次に私を変な呼び方で呼んだら殺すからな?分かったか?」
「は、はい、分かりました、カーミラ様!」
「ん?ゾアンよ、何故カーミラの名前を知っている?」
カイトはゾアンがカーミラの名前を知っている事に疑問を持ち話しかける。
すると、ゾアンは分かりやすく態度を変え、先程まで跪いていたのが嘘かのようにカイトの前に仁王立ちして、両腕を胸の前で組み、堂々とした態度をしている。
「あぁ、それはさっき言った通り、、、って言っても聞いていなかったか。私は陰でお前達のやり取りを一部始終見ていたからだ。なので、お前達の名前は勿論、お前達が女王マリン様に会い、海竜を討伐しようとしている事も知っている。」
「そういう事か。なら話は早い。お前の言う通り、我々の目的は女王に会う事と海竜を討伐する事だ。
そしてゾアン、お前の騎士団が手に負えないという事案も恐らく海竜の件だろう?であれば互いに目的は同じだ、お前達に協力するのもやぶさかでない。だがその条件として、まず一度女王に会わせて欲しい。そこで海竜に関する情報も聞かせてくれると助かるのだが。」
「分かった。我々も最初からお前達に奉仕で協力してもらおうとは思っていない。こちらも出来る限りの事は協力させてもらう。女王様への謁見であれば、私の力の及ぶ範囲で叶えられる。」
「そうか、それは助かるよ。では早速女王の居る場所へ案内してくれないか?」
「分かった、では付いて来い。」
「あぁ、それとこの子供達も一緒に付いて行っても問題ないか?」
「何?こいつらもか?お前達ならまだしも、こいつらはちょっと、、、」
「ゾアン、いいからこの子達も一緒に連れて行きなさい!私の命令よ!」
「はい!カーミラ様!では皆さま全員私に付いて来て下さい!」
「え、俺達もいいのか!?」
「えぇ、当然よ、カイト様がそうおっしゃったのだから問題ないわ。」
「そうッス!カイト様にはきっと深いお考えがあるッス!」
「ありがとうね、カーミラ!私お城へ行くなんて初めてでワクワクするわ!」
「いいのよ、それに感謝は私じゃなくてカイト様にする事ね。」
こうしてカイト達はカーミラのお陰もあって子供達と一緒に女王マリンの居る城へ向かうのであった。
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