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第六十七話~第三階層~

カーミラが第二階層でコーボとの激しい戦闘を繰り広げていた頃、カイトはドロイドの待つ第三階層へと向かっていた。


「おっ、見えてきた、あれが第三階層だな。」


しばらく上昇を続けると、第三階層の扉が見えてきた。

カイトは閉ざされた第三階層への扉の前に着くと、また扉を破壊しようとして魔法を唱え始める。


「ウィーン。」


だが、今回はまるで客人でも迎え入れるかのようにエレベーターの扉が自動で開く。

カイトは思わず魔法の発動を中断した。


「おっと、今回は丁重におもてなししてくれるみたいだな。では私も手荒な真似は控えさせてもらおう。」


カイトは開いた扉の中へと進み、中に入るとフライ(飛行)を解除してフロアに降り立った。


「これは、、、なんという。第一階層と第二階層とは打って変わってここはちゃんとした研究室のようだな。いや、むしろこれは研究室と言うより、一つの研究所に匹敵する程の規模だ。」


カイトが降り立った第三階層はこれまでの階層と違い、そこはSFファンタジーに出て来そうな研究所を具現化した空間だった。

フロアの内装は全体が金属で張り巡らされており、床は勿論、壁や、天井は高くて見えないが、辺り一面が鉄のような金属で覆われている。


フロアの至る所には巨大なコンピューターや人造人間が出て来そうな巨大なカプセルがいくつもある。カプセル内は液体で満たされており時折気泡がボコボコと沸いている。

カプセルの中には試作中であろうロボットが何本かのケーブルで繋がれており、何かの実験や研究をしているようだった。


それに加えて、無数の金属のパイプやケーブルがフロア中にひしめき合い、交差している。

あまりの数にどれがどこに繋がっているのかなど到底分からない。ドロイド本人も把握しているのか疑問である。


カイトは珍しい物を見るような目でフロア内を眺めながら中央に向かって進んで行く。

すると、そこにはコロネフの話に出てきた金色のヒューマンタイプロボットの姿があった。

そのロボットはカイトの気配に気付いているようだが、カイトには目もくれず中央の作業台でせっせと手を動かして何かを作っていた。


カイトはとりあえずそのロボットに話しかけてみる。


「やぁ、お前がドロイドか?私は魔王軍のカイトだ。」


カイトがロボットに挨拶をするも、ロボットは特に手を止めたりする素振りは見せず作業を続けているが、一応返答する。


「あぁ、あなたがカイトですね。はい、私がドロイドです。コロネフからの報告であなた方のお話は大体を聞いています。それにここに来るまでの戦闘の様子も観察させていただきました。」


「そうか、それなら話が早いな。お前も分かっているだろうが、私はこの都市をロボットの支配から脱するためにそれらを統べるお前を討ちに来た。」


ドロイドはカイトがこのフロアに来てからずっと作業の手を止めていなかったが、ここでようやくキリが付いたのか、手を止めてカイトの方を向いた。


「これでよしっと。おっと、すみませんね、急にアイディアが閃いてしまって、ちょっと手を止められませんでした。それであなたは私を倒しに来たのですね?」


「やっとこちらを向いてくれたか。そうだ、覚悟が出来たならさっさと始めたいのだがどうかな?」


「分かりました。でもその前に一つお聞きしても良いですか?」


「あぁ、問題ない。何だ?」


「あなた方はどうしてこの都市の事に首を突っ込んでくるのですか?我々はこの都市内に限って言えば、独裁的な体制を敷いているかもしれません。しかし、それ以外の諸外国に対して敵対したり、侵攻したりもしていない。これはマーベル内だけの問題であり、あなた方には関係ないかと思うのですが?」


「ドロイドよ、確かにお前の言う通りこの問題はこの都市内に限った問題なのかもしれない。そう、マーベルで生きているお前達にとってはな。だが、この問題を客観的に捉えるとそうではない。お前が我々には関係ないと言ったこの都市の独裁的な体制は魔大陸全体に悪影響をもたらす、いや、むしろ既にもたらしていると言っても良いだろう。」


「私達が大陸に悪影響を?それはどういう意味でしょうか?」


「魔大陸が聖大陸軍の侵攻を受けている事は既に知っているだろう?この都市には幸いまだ侵攻の手が届いていないようだが、私はこのような大陸全土の危機が生じた際には大陸中の国々が連携を図り、対策を講じなくてはならないと考えている。しかし、この都市の体制は諸外国との親交を一切断絶している。それどころか、蓋を開けてみれば都市内でこのような独裁的な統治がなされていた。これでは今回のように大陸が危機に瀕している際に、大陸を挙げて他国と連携を図る必要が生じても、マーベルの現在の体制ではそれは不可能である。これこそがこの都市、マーベルが他国に及ぼしている悪影響と言えるだろう。私はこの体制を変えなければならないと考えているのだ。」


最初は物腰の柔らかい態度で応対していたドロイドだったが、カイトにドロイドが築いてきたマーベルの体裁を否定され頭に来たのか、途端に態度を変える。


「そうか、カイト、お前の言いたい事は分かった。しかし、この都市をどのように統治するかなどよそ者の知った事ではないだろう?都市内にロボットと人間による二極化の問題があるとしても、他国はあくまで仲裁的な役割を担うべきであり、このような強硬的な手段はいただけないと思うが?」


カイトの言い分にドロイドが少し怒った口調で返すが、カイトは怯む事なく更に追い打ちをかける。


「それだけではない。この都市が他国に与えているもう一つの悪影響はレーダー塔の天候操作だ。これによりマーベルの周辺は乾燥し、砂漠化が進行している。恐らくお前はこれについても他国にまで影響が出ていないから問題ないとでも思っているのだろう。だが、私はここに来る途中に縦断したカンナ砂漠の状況を見てこのまま砂漠化が進行すればいずれ他国にも影響が出ると確信した。そしてそれと同時に魔大陸を統べる魔王国の一員としてこの問題をこのまま野放しにしてはならないとも思った。なので、お前を倒した暁にはレーダー塔による天候操作は廃止させてもらう。ついでに言うと、マーベルが現在の体制になった経緯は当然コロネフから聞いている。人間がロボットにやってきた仕打ちは間違っていたかもしれない。それに関しては少し同情する部分もある。だが、ドロイド、お前はやり過ぎた。

どうだ?これが今回お前の言う我々が強硬的な手段に出た理由だ。分かってもらえるだろうか?」


「そうか、私はお前の話を聞いてもこれは都市内の問題であり、部外者が口を挟む問題ではないという考えは変わらない。だが、お前も最初から自分の考えを曲げるつもりなどないからここまで乗り込んで来たのだろう?そうなれば解決方法は唯一つだな。」


コーボは覚悟を来たかのように作業台を離れてカイトと向き合う。


「そういう事だ。私もここに来る途中までは手荒な真似をしてしまったが、本当は平和的な解決を望んでいる。戦わずして済むのであればそれに越した事はない。だが、マーベル以外でも行く先々で様々な問題に直面する度にどうしても力でねじ伏せなければならない事が多くてね。力を持つ者の立場としては本当に心苦しい限りだよ。今回もドロイド、お前がまたその犠牲者になるのかと思うと残念だ。」


ドロイドはカイトの聞いていて反吐が出るような戯言にもはや聞く耳を持っておらず、戦闘の準備に入っている。


「よくもまぁそんな綺麗事をベラベラと。何が平和的な解決だ、この戦闘狂が!もういい、お前の話は聞き飽きた。さっさと始めるぞ。」


「綺麗事とはあんまりじゃないか。まぁいいさ、その気になったところで始めよう。と、その前に私からも一つ聞いても良いかな?」


「何だ、まだ話したい事でもあるのか?まぁここまで話した仲だ、聞くだけ聞いてやる。」


「それはどうも。第一階層でサライというロボットと対峙したのだが、あれは日本の侍をモチーフにしたのだろう?お前はなぜこの世界に存在しない知識を知っている?」


「ほう、これは驚いた。侍を知っている者がいるとは。逆にこっちがお前に聞きたいくらいだ。なぜそれを知っているのかを。だが、そんな重要な事を私がお前に教えるとでも思っているのか?聞きたかったらお前の得意な力ずくで聞いてみる事だな。」


「ふん、ドロイドよ、お前は本当に面白い奴だな。その小憎らしい性格は生き物そっくりだ。ではお言葉通り力ずくで聞き出すとするか。」


両者が臨戦態勢に入ると、ドロイドの合図でフロアに置かれていたありとあらゆる機械や装置が次々とひとりでに動き出し、配置を変えていく。

フロアの中心にあった作業台もいつの間にか壁際に移動し、中央のスペースがみるみるうちに空いていく。


フロアの床が動いているのか、機械や装置自体が動いているのか分からないが、カイトとドロイドはその場から一歩も動かされる事はなかった。


そして気が付くとすべての設備の移動が完了し、フロアの中央は綺麗な円形状の何もない広々としたスペースが出来上がっていた。

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