第二話~現状把握~
「どうした、カイトよ?」
俺は魔王の問いかけに混乱する。カイトだと!?
俺は混乱しながらも頭を高速回転させ、状況を整理し、最適解を考える。
他の三者の報告が終わり、俺の方を向いて話しかけた。話しかけられたのは間違いなく俺だ。
っていうかなんで俺の名前を知っている!?
現実世界と異世界とでたまたま名前が同じなのか?
それとも誰かの陰謀か?
いや、どちらにせよここは四天王の一人として無難に演じなくては。
今の話の流れだと、俺達は何者かによって侵攻を受けている。
そして魔王は俺に奪還部隊の様子を尋ねた。
だとすると、俺の役割は侵攻されてしまった国々の奪還といった感じか。
「い、いえ、すみません。全て順調でございます。近いうちに侵攻された隣国を奪還できるかと。」
「そうか、あのドワーフ国が奪還できれば活路が開けるな。期待しているぞ。それでは各員、引き続き己の任務に励むがよい。」
「はっ!」
どうすんだよ、適当な事言っちゃったけど、これで奪還出来なかったら殺されちゃうぞ。
まあいろいろとあったが、魔王への報告が終わり、四天王はゴドランから後方にある魔法陣に入って行った。
魔法陣に入ると途端に姿は消えていった。
恐らくどこかへテレポートしたのであろう。続いてグリーテンが入っていった。するとウーズが恐る恐る俺に話しかける。
「カ、カイト、早く行って。」
「う、うむ。すまない。先に行かせてもらう。」
俺は訳も分からぬまま見様見真似で魔法陣に進んだ。すると魔王城の一室へテレポートされた。
魔法陣を進むと部屋へ着いた。
恐らくこれが自分の部屋なのだろう。
周りを見渡すといくつもの扉がある。
寝室や書斎など他にも必要な部屋などがありそうだ。
部屋が薄暗くて気付かなかったが、ふと下に目をやると目の前には俺に向かって跪く二人の姿があった。
「カイト様、お疲れ様でございましたっス!」
向かって左の者が喋った。
オークであろうか、オークと言ってもぽっちゃりした体型とは程遠く、とてもたくましい肉体をしている。
肌は緑色で上半身は裸だ。
両方の手首から前腕にかけては包帯がぐるぐると巻かれており、下半身はラフな服装に腰巻きを纏っている。
武器であろう大剣は自身の隣に置かれている。
語尾の「っス」と馴れ馴れしい態度が気になるがこれが通常なのだろう。
気にしないようにする。
「お疲れ様でございました。ゼクス様への報告はいかがだったでしょうか?」
今度は向かって右の者が声をかけてきた。耳が尖っており長い。エルフのようだ。
さらさらの金髪に純白の肌。美しい顔立ちに透き通るような青い瞳。トドメに黒縁眼鏡。
男の夢が詰まったまさに天使である。
それはそうと、またまた新キャラが登場してきた。さっきは何とかなったが、このまま知ったかぶりをするには無理があるし、バレて魔王に殺される未来しか見えない。
どうすべきか。見たところこの二人は俺の下部だ。いっそありのまま事情を説明してみるか。
いや、ここが魔王城なら人間を嫌っている可能性もある。
人間だったなんて言ったら下部であろうと何をされるかわからない。自分の強さも正確に分からない以上、下手な事は言えないな。
とりあえず、記憶が曖昧という設定でこの世界の事を聞き出すしかないか。
「うむ、出迎えご苦労。実はな、、、四天王達のあまりの不甲斐なさにゼクス様がお怒りになってしまってな。ゼクス様が大暴れして、魔法をブッ放したんだ。全員でなんとか止めに入ったんだが、私は魔法をくらってしまい、その影響で記憶が曖昧になってしまったのだ。すまないが、どちらか今までの状況を説明してくれないだろうか?」
「そうでしたか!まぁゼクス様の暴走はいつもの事っスよね!ご説明はこのボアードにお任せくださいっス!」
と言った瞬間、すかさず、
「カイト様、お怪我はございませんでしたか?ボアードは頭が固く不器用なので、このカーミラがご説明させていただきます。」
と右の者が口を挟む。
「う、うむ、私の怪我は問題ない。それでは説明を頼む。」
なんとか誤魔化せたようだ。このカーミラという下部からこの世界の事についていろいろと聞き出すことができた。
この世界は二つの大陸に分かれており、世界の中央にある海を隔てて東に聖大陸、西の魔大陸が存在する。
聖大陸と魔大陸は親交がなかったのだが、最近になって聖大陸から聖大陸軍が魔大陸に上陸し、侵攻を始めたのだった。
侵攻の理由は不明だが、侵攻は魔大陸の南方から始まった。
魔大陸の国は魔王ゼクスが支配していたが、ゼクスは他国に興味関心がなく、侵攻が始まっても加勢することなく静観していた。
しかし、それが聖大陸軍の侵攻を加速させる事となり、瞬く間に魔大陸北部に向かって侵攻が拡大していく事になる。
流石のゼクスもこれには危機を感じ、魔王軍も加勢する。
しかし、時すでに遅く、侵攻は魔王国国境付近にまで迫っていた。
この状況を打破すべく魔王直属の四天王による部隊を編成し、今に至る。
俺に課された任務はやはり侵攻された各地の奪還だった。
俺は魔王国の隣国であるドワーフ国の奪還任務の最中であったらしい。
といってもまだ一度だけドワーフ国の国境付近まで行っただけらしい。
「うむ、説明ご苦労。感謝する。」
そうか、勢いでゼクスに順調って言っちゃったけど、全然これからだったなんて。どうすんの、俺。
「はい!感謝などもったいなきお言葉!(恥)」
冷静沈着に淡々と説明していたカーミラだったが、急に頬を赤らめた。
「カーミラよ、どうした頬が赤いぞ。具合でも悪いのか?」
「い、いえ、大丈夫です。(恥)」
「カイト様も鈍感ですねぇ~」
「黙れ、ブタ野郎。」
「はい。すみません。黙りますっス。」
「う、うむ。二人とも落ち着け。大丈夫ならよいのだ。」
カーミラが頬を赤らめた理由は俺にはわからなかったが、カーミラとボアードの性格、力関係は分かった。
あとは、ドワーフ国の奪還は急務だが、その前にこの世界の自分の力量を確認しておきたいところだ。
「これから至急、ドワーフ国の奪還に向かいたいと思うのだが、その前にお前達から見て私の強さはどれ程に見える?」
「カイト様は最強で間違いないっス!」
「十分お強いかと存じますが、四天王の序列が三位であられる事を踏まえると、魔王国では十本の指に
は入るかと。」
「そうか、参考になった。感謝する。」
「はっ、はい!(恥)」
「カーミラはこんなにわかりやすいのに何でカイト様はわかんないっスかねぇ~。」
「うるさいブタ、丸焼きにされたいのか。」
「はい、すみませんッス。」
またカーミラが頬を赤らめたが、いちいち反応するのも面倒なのでスルーする。
「四天王の序列が三位」で「魔王の国で十本の指に入る」か。
弱くはないのだろうが、今一ピンとこない。序列の順番って単純に強さの順番なのか。
それに、自分の下部の評価だ。
本当は弱いんだけど言い辛いとか、理想も相まって過大評価している、なんて事も考えられる。
役には立たないけど、権力を握っている上司をおだてるなんて事は人間社会では当たり前の悪しき風習だ。
この世界でも同じかもしれない。ここは一つ同じ立場の四天王の一人に聞いてみるか。
ゴドランはちょっと関りにくいし、ウーズも偵察に行っている・・・となると、あの魔法少女しかいないか。
あまり気が進まないけど仕方ないか。それに魔法の事も聞けるかもしれないし。
「それでは早速ドワーフ国に向かいたいところだが、一つ用事を思い出した。お前達は支度を整え待機せよ。私は用事を済ませたらここへ戻る。」
「はい、了解っス!」
「かしこまりました。」
そうして俺はグリーテンのところに向かう事となった。
「面白かった!」
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