第二話 レル
よーし来たぞー、裏ボスさーん。さっさと首輪嵌めましょうねー。
「…なぜ生きている?」
なんででしょうねー?ラミアとかいう女に聞いてください。まあでも、とりあえずここをどうにかしないと!
「なんだっけ?《虚加》、LUKに発動!」
なんも感じない!それどころかどっと疲れた!なにこれ!?これ成功してるの?ステータスとか見たらわかるのかも?開いてみよう。
「えーと、『ステータス』ってどうやって開くんだ?」
『ステータスを表示します』
え?
頭の中で声が響くと、目の前に光る板が表示される。
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Lv.1 イチノセシュウト 人族
HP 16/16
SP 5/15
MP 0/10
PeW 12
ViT 10
AgI 15
InT 13
MiN 10
LuK 10 +1000《虚加》
《武技》:《蹴術》Lv.1
《スキル》:《キック》Lv.1《鑑定》Lv.1
《虚加》Lv.1
《称号》:
《装備》:《転生袋》《普通の服》《普通のズボン》《普通のブーツ》《漆黒のマント》《悪魔のグローブ》
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『ステータス』って言うと開くのか。この辺は俺が知ってるラノベっぽいな。この感じで行くと、SPとMPが下がっているのは《虚加》を使ったからか。疲労感の正体はこれだな。っていうかLuK1000?上がりすぎじゃない?普通にチートじゃん。スキルLv.1でこれだよ?強いじゃん。
「待てと言っておろう!質問に答えよ!なぜ生きている!?」
転生したらいつの間にか持っていたから、恐らく転生特典であろう《転生袋》から、《リセットの首輪》を取り出しながら言う。
「えーと、なんていうか、こう、転生?した。…あ、あった、これが首輪か。」
「テンセイ?なんだそれは、」
「んー、簡単に言えば生まれ変わるってこと。」
「貴様のスキルか?」
会話をしながら首輪を裏ボスさんに向ける。どうやらステータス板は他人には見えないみたいだな?
「ああ違う違う。そんなんじゃないよ。」
…バカ女神のラミアさんのミスです。
「…貴様は先程我が殺したと思っていたが事実、まだここに立っている。それなりのチカラはあるようだな。そろそろ戦うか?」
「いや、コッチはLv.1だよ?戦えるわけなくない?」
「Lv.1??嘘をつくなよ?なぜLv.1が我の攻撃を受けてピンピンしておる?なにか隠しておるな?そういうのはあまり好かん…」
「首輪『発動』」
「!?」
瞬間、首輪が発光する。光が裏ボスさんの首元に集まり、そこから裏ボスさんの体が光に包まれていく。
「ギィァァァァァァァァァァァ!!!!」
すごい断末魔だな!首強く締めすぎたのかな!?例え裏ボスさんでもこんなことしたくないんだけどなー!上司さん!
ん?裏ボスさんの体から何かモヤのようなものが出てきてる。すごい沢山出てくるぞ!?俺に害は無いみたいだし、放置してていいか。
待つこと数十秒。モヤが出なくなったので、とりあえず大人しくなった本体の方に話しかけてみる。
「えーと…大丈夫?」
「!」
こちらに驚いている?さっきからずっと話していたのに一体どうしたんだ?どうあれ、一応事情は説明しないとな。
「えっと、君に《リセットの首輪》を使って君の状態をリセットしたんだけど、大丈夫?」
いや、自分で聞いておいて、大丈夫な訳ないだろうよ。力を使えなくなったんだぞ?
「…あ…あ…」
え!?泣いてる!?これ、俺が悪いことしたからだよね!?どうしよう!?
「あの、ごめんね!?勝手にリセットしちゃって!」
「…あ…がとう…ありがとう……ありがとう…!」
え?ありがとう?どういうこと?
「まあとりあえず落ち着いて………それで、どういうこと?ありがとうって」
少女が泣き止むのを待ってから、その少女に問う。
「私は、長い間城に幽閉されていました。」
俺は、その少女の発言の違和感に気付く。
「あれ?私?さっきと一人称違くない?」
「ええ、ただ幽閉されていたという訳ではなく、さっきのモヤに身体の自由を奪われながら、100年以上ここで過ごしてきました。まあヤツでもずっとは無理だったらしく、人が来てない時は、モヤの休憩時間として喋る位は出来ていましたが…」
「100年以上!?とんでもない時間だな…なんでモヤはそんなことを?」
「私には分かりません。ただ、ヤツは私から出ていっただけで、まだ生きています。どこかに潜んでいるのでしょう。」
マジか、あいつはどういうモノなんだろう?
「あれ?でも首輪を嵌めたら出ていったのは?」
「さっきのモヤは、『支配Lv.Max』という状態異常でしたので、首輪の状態異常解除で外れたのでしょう。」
Lv.Maxなのに、首輪一本で外れるもんなんだなぁー…そこは女神様クオリティだからなのだろうか?
「そうなのか、大体分かった。じゃあ、俺はこの城から出て行くけど、お前はどうする?」
「…その、もし良ければ、貴方の所有物として…一緒に連れて行って頂けないでしょうか…!」
「何故に所有物!?いや、普通に付いてくるって言うなら別にそれでもいいし、なんならそっちの方が心強いんだが!?所有物ってなんか嫌だなあ!?」
そういう趣味なの!?100年間の間に何があった!?
「も、申し訳ございません!ですが、私を100年の苦しみから救って頂いたのに、対等になって付いていくなど出来ないと思ったものですから!」
「いや、恩とかは気にしなくていいよ!…ただ一緒に、仲間としてついてきてくれないかな?」
「そんなこと、私が納得できません!ダメなのです!」
納得出来ませんのか。ダメなのですか。これ、何言っても無駄なパターンだな…
そう思った俺は、渋々了承する。
「君がそれでいいならいいよ…」
すると、少女は、パァッと明るい表情を浮かべ、
「ありがとうございます!私、レルって言います!これから、よろしくお願いします!!」
すごい嬉しそうだな。なんか、こっちまで嬉しくなってきそうだ。俺は笑顔でレルと言う名の少女に言う。
「俺、一之瀬柊斗。レルちゃんのこと、所有物として扱うつもり、無いからね。俺たち対等に行こうぜ?」
「レ、レル…ちゃん……!?ちゃん付けなんて、されたことないです!」
俺の言葉に、レルちゃんは頬を赤らめる。なんだこれ!?可愛いな!?
ちなみにレルちゃんは本当に美少女だ。頬を膨らませた顔が似合うやつなんてほんとにいるんだな…赤い長髪に大きい瞳、顔もちっちゃいし脚もモデルか!?ってくらい長い。身長は、160cm位だろうか?この美少女っぷりは、文字だけではどうやっても伝えることは出来ないだろう。
「それにしても、イチノセ・シュート様…変わったお名前ですね?その黒髪黒目といい、異国の方でしょうか?」
俺は、隠す意味も無いので素直に話す。
「あ…んー、ニッポンってとこ。多分知らないよね?」
「はい、分かりません。ここからどの方角にあるのですか?」
やっぱ知らないよねー。なんか、悲しいなー。
「ここがどこか分からないけど、ずーっとずーっと東の方だよ。極東、とも言われてるんだ。」
「そうですか…!いつかシュート様と行ってみたいです!」
ごめんなレルちゃん。ニッポン、多分行けないよ。この世界にはないんだよ〜泣。
「そうだな。行けるといいな。」
俺は暖かい笑みで、レルに言う。
「はい!」
あ、そうだ、一応しておこう。
「《鑑定》」
そう、俺が呟くと、
『ステータスを表示します。』
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《STATES》
Lv.1 レル 魔族
HP 56/56
SP 35/35
MP 96/96
PeW 36
ViT 47
AgI 63
InT 101
MiN 61
LuK 35
《武技》:《魔法》Lv.1
《魔法》:《火魔法》Lv.1《風魔法》Lv.1
《スキル》:《ワープゲート》Lv.1《魔法纏》Lv.1
《魔力手》Lv.1
《魔眼》:《鑑定》Lv.1《未来視》Lv.1
《過去視》Lv.1《透視》Lv.1
《千里眼》Lv.1《魔化》Lv.1(Max)
《称号》:
《アイテム》:
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………………へ?
Lv.1?Lv.1ってなんだっけ?強すぎない?俺のやつと違いすぎる!Lv.1でInTが100越え!?強すぎるだろ……それと、気になるのが、スキル《ワープゲート》や、《魔眼》だ。魔法も持ってるし。
「《鑑定》」
『《魔法》。MPを消費して発動できる。InTが高いほど高い威力、効果を発揮する。MiNが高ければ高いほど魔法に対する防御力が上がる。』
『《ワープゲート》。対となる2つのワープゲートを生成する。必要MP:6』
『《魔眼》。視界に入れる。または、視覚に作用する特別なスキル。効果は様々。』
あと、《魔化》って言うのはなんだろう?
『《魔化》。視界に入れたものに、呪いの能力を付与する。』
へ、へぇ〜…の、呪いねぇ……なんか怖いな!?まあ、凄そうな能力がたくさんあって羨ましい限りです。ハイ。
「シュート様?どうかされましたか?」
レルちゃんが、俺の顔を上目遣いで見ながら尋ねる。
「いや、レルちゃんのステータスにある、《ワープゲート》、《魔眼》、《魔化》、ってどんなものなんだ?」
本人に直接聞こう。多分教えてくれるだろう。
「え、なんで私のステータスが見えるんですか…?もしかして、《鑑定》…?それに、《魔眼》!?」
いきなり驚いた表情を浮かべるレルちゃん。何をそんなに驚いているのだろう。
「そうだけど、何か不都合があったか?」
「いえ、凄く珍しいスキルをお持ちなんですね、羨ましいです!」
「?、レルちゃんも持ってるだろ?《鑑定》。」
羨むものでもないだろ?
「ハイ!?持ってませんよ!?私!それに、《魔眼》も、適性が無いって……」
「は!?でも確かにステータスには《魔眼》って!」
情報が混乱してきたぞ!?どういう事だ…?
「ちょっと待ってください!本当に私に《魔眼》が備わっているなら、少し試させてください!」
「お、おう。《魔眼》って、自覚が無いものなのか?一応、お前のステータスには、《鑑定》《未来視》《過去視》《透視》《千里眼》《魔化》って6つスキルがあったぞ?」
「6つも!?そんなハズは無いのに……」
「まあ、あるんだから仕方ないだろ。とりあえず、俺に《鑑定》を使ってくれ。」
「…《鑑定》」
「…どうだ?」
「見えます!使えますよ!鑑定!…っていうか、なんですか!?このステータスにあるスキル!《共有》!」
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Lv.2 イチノセシュウト 人族
HP 19/19
SP 7/17
MP 2/12
PeW 13
ViT 12
AgI 19
InT 15
MiN 12
LuK 10 +1000
《武技》:《蹴術》Lv.1
《スキル》:《キック》Lv.1《鑑定》Lv.1
《虚加》Lv.1
《称号》:
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あ、Lv.が上がっている。曲がりなりにも裏ボスを倒したからだろうか?って言うか《共有》?
「《共有》って何?そんなスキルなかったよね!?」
レルちゃんは、当たり前のように言った。どういうスキルなんだ?
「鑑定結果を共有するんですよ?シュート様も鑑定ができるなら出来るでしょう?」
「あ、そうなんだ…知らなかった」
上司さんが教えてくれなかったんだもん!しょうがないじゃん!
「それに、LuKが+1000ってどういうことですか!?」
「ああ、それは《虚加》ってスキルでな、他にも……
俺は、一通り《蹴術》、《虚加》の説明と、転生についてレルちゃんに説明した。そしたら、レルちゃんも「主であるシュート様にそこまで教えていただいて、私も教えない訳には行きません!」と言って教えてくれた。曰く、《魔化》は、他人や、そのスキルの潜在能力を開花させるものなのだが、これも使い方が分からないと。この人、俺よりチートしてるな?魔族だからステータスも段違いに高いし。しかし、《魔法纏》、《魔力手》は、この世界ではありきたりなスキルらしい。あと、《ワープゲート》も、使い方分からないらしい。レルちゃん?裏ボスさん?
「うーん、《ワープゲート》が使えないとなると、異世界ライフの為には自力で城から出るしかないのか……」
クソっ、なんでこんなに苦労してスタートラインに立とうとしているんだ…ラミアめ……マジであいつおかしいだろ!
「はい、ですがシュート様の《蹴術》なら大丈夫だと思います!」
キラキラした目で見ないでくれ〜!Lv.2だし、俺のスキルそんなにいい物じゃないよ〜!っていうか…
「レルちゃん戦ってよ!魔法使えるでしょ!?」
「使えますが、Lv.1の魔法ですよ?正真正銘普通の魔法です。シュート様がリセットしたんですからね?」
「ん〜…そうだよなぁ……」
今この状況で、力になりそうなものは、唯一効果が未知数な《蹴術》だけだ。
「よし!しゃーない!やるぞ!異世界チート無双の初陣だー!」
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ようやく次の第五話から第一章『獄王城』編の開幕です。前置き長すぎィ!?