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ヲタッキーズ177 音波銃の下

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第177話「音波銃の下」。さて、今回は保釈保証業者が殺され、現場に謎の古文書"歯科医文書"が残されます。


やがて巻き起こる"歯科医文書"の争奪戦には、業者の妻、女賞金稼ぎ、前立腺肥大の老人、欲に塗れた神父、機動戦士?が入り乱れて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 お面ライダーの憂鬱


東秋葉原の古い雑居ビル。魔窟のような迷路の奥で光るネオンサインには"保釈金建て替え"とアル。


「おや?」


浅黒い肌のアジアンは音波銃を抜く。室内を覗くと棚は倒され、書類は散乱。怪しい人影が…強盗か?


扉に体当たりして突入!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


扉が勢いよく開く!


「"breakfast in bed"よっ!」


元カノのスピアが満面の笑みを浮かべ、朝食を持って来る。桃のジュースとパンケーキにコーヒーだ。

"breakfast in bed"は、感謝の気持ちを伝えるプレゼント文化。まぁ下心は、見え見えではアルが。


「わーい。こんなコトまでしてもらえるなんて。僕は何て幸せ者ナンだ!」

「そうょ!テリィたんは幸せ者なの」

「で、オネダリは何?」


スピアは、慌ててキスの唇を離す。


「そんなんじゃないわ、プンプン」

「一昨年"ロケッティナ"のヘルメットが欲しくて、フレンチトーストを焼いたょな?昨年"スター坊主"のライトセイバーの時はオムレツだった」

「実は…"細工論(サイクロン)"が欲しいの」


え。資本論の原書か何か?


「違う。"お面ライダー"が乗ってる改造オートバイょ。ライダー図鑑によれば、プルトニウム原子炉搭載で200馬力、時速400km。便利だし、安全よ」

「安全だとは思うが…便利か?」

防護服(タイペック)は着るし、夜は乗らないから」


そーゆー問題なの?


「しかし、昭和通りの東秋葉原側は"松戸(マッド)マックス"のロケ地になったくらいの危険地帯だぞ」

「テリィたん、私は本気なの。"宇宙女刑事ギャバ子"がベストセラーになって億万長者になったテリィたんなら買えるわ。レプリカだけど…考えるだけ考えて。お願い」

「あのな…僕のベストセラーは"ギャバ子"だけじゃナイから」


吸い込まれそうに大きな瞳をしっかり見開き、下ではスイカ級の巨乳を押し付けて来る。hallelujah!


「わかった!考えてみよう…じゃ良いかな?朝食を食べたい。トレイの上の向日葵の花が萎れる前に」

「ROG」

「いただきます…」


その瞬間、スマホ鳴動。げ、ラギィだw


「イチゴだけでも!」

「ダメ。前も急いで食べてお腹こわしたでしょ?」

「あ?」


真っ赤なイチゴがスピアの口の中に消えるw


「もしもし、テリィたん?」

「ラギィか?」

「何処にいるの?直ぐに来て!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


殺人現場は魔窟のオフィス。鑑識がフラッシュを焚いて撮影。フロアに血塗れのアジアンが倒れてる。


「ソレで今回の被害者は誰かな?」

「保釈保証業者のデオン・パーカ。ココは彼のオフィス。侵入者と鉢合わせをしたみたいね。登録済みの音波銃で身を守る前に、コレで殴られた」

「射撃優秀賞のトロフィで?皮肉だな」


ラギィは万世橋警察署の敏腕警部。僕とは彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの付き合い。


靴跡を調べる。


「犯人は血溜まりを踏んだ。靴跡の1部が残ってるわ。靴のサイズまでは不明だけど、靴の種類とかは特定出来そうね」

「警部!犯人は救急車を呼び、受話器をそのママにして逃走してます」

「119番通報を済ませる犯人?」


おかしな犯人だ。ココで僕のタブレットをハッキングして超天才ルイナの"リモート鑑識"が始まる。


「どうかしら。通報は23時。死んだのは、死斑から見て多分22時ね」

「え。つまり約1時間、犯人は現場を漁ってた?何を漁ってたのかな」

「ソレを調べるのが警部の仕事でしょ?」


ルイナの指摘にチョロリと舌を出すラギィ。萌え。


「お金かしら。保借金は現金払いだから、お金目当ての強盗カモ。今、ヲタッキーズが館内の防犯カメラを確認中」

「ラギィ?監視カメラは全部壊れて…ガガッピッ」


突然、無線に激しい雑音が交じる。


「何もないオフィスで何でハウリングが起きる?」

「ソレは…コレが仕掛けられてるから」

「盗聴器?」


ラギィはボタン電池みたいなモノをつまむ。


「ワイヤレスのRFトランスミッターか。最近は進化した赤外線の奴とかもアルしな」

「もうリサーチ済みなの?」

「ってか、ウチに仕掛けられてた…犯人は、盗聴器を仕掛けるために侵入したんじゃないか?」


しまった、バカなコトを逝ったなw


「なワケ無いでしょ。だって、そもそも彼が死んだら、盗聴スル必要はナイんだから」

「そーでした。あはは」

「うーん保釈保障業者を盗聴するメリットがアル人って、誰かしら?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


保釈金は、保釈と引換に裁判所に納める金で150〜300万円が相場。判決を迎えれば全額返金される。

因みに150万円は窃盗級、300万円だと強制性交。殺されたパーカは保釈金を専門に貸し付ける業者。


「OK。ありがとう…あの盗聴器は、タイ製の市販のモノで警察(ウチ)や政府機関では使ってなさそうょ。今、製造番号から出荷先の店を調べてる。そこから買った人を割り出すわ」

「そうか。もうそーゆー電子機器もアジアン製の時代ナンだな」

「あと、犯人が履いてた靴だけど、このローファと一致したわ」


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がり、ラギィの下に続々情報が集まる。本部のモニターに靴の画像が出る。


「房飾り付きのローファ?1910年代かょ。犯人はレトロファッション?」

「殺されたパーカの顧客ファイルから、過去に暴力沙汰を起こしたコトがある顧客を見つけて。昨日来てなかったかを調べて」

「ROG」


ヲタッキーズのエアリ&マリレが読み込みを開始。因みに彼女達はメイド服。ココはアキバだからね。


「ラギィも昔は…女子だったんだょな?」

「え。今も女子だけど?」

「こーゆーの欲しかったかな?」


"お面ライダー"が"細工論(サイクロン)"に乗り疾走スル動画w


「カッコ良い!今だって欲しいわ」

「え。"お面ライダー"だぜ?」

「女子がポニーの次に欲しがるのはコレね」


マジかょw


「ま、まさかラギィも改造バイクを…」

「私はケッテンクラート。そのためにバイト代をはたいたわ」

「親は何と?」


身を乗り出す。


「パパは、修道院に入れるって。ママは、貴女が事故っても"だから言ったでしょ"と言われないようにしてねって」

「ソンなモノかな」

「スピアは反抗期に入るトコロなのょ」


愉快そうに僕を見るw


「でも、僕の元カノが?あり得ないなぁ」

「元カノ全員が通る道ょ。スピアみたいな良い子がその時期に入ると特にヒドいだけ。私の時なんて、かなりひどくて…あ。何かわかった?」

「ラギィ。ちょっとOK?」


エアリが飛び込んで来て、ラギィも笑顔を一転w


「被害者の奥さんに連絡がついた。ブルク・パーカ。娘さんの家にいた。今から来るわ。あとルイナが何か発見したとか言ってたわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「何か変なモノを見つけたの」


万世橋(アキバポリス)の検視局は地階にアル。親指に荷札が付いた遺体が引き出され、傍らにビニール袋入りの図面。


「デオン・パーカの奥歯の中にマイクロチップが埋め込まれてた。画像解析したらコレ」

「奥歯の中にチップ?ルイナって、医師免許はともかく歯科医だったっけ?もしかして、自殺用の青酸カリ?」

「知らないわ。調べてょ。警察でしょ?」


天(井)を仰ぐラギィ。


「犯人がオフィスで探してたのはコレかな」

「にしても、何なのコレ?」

「きっと何かの複雑な暗号カモな」


打ち出された画像は、ところどころに線形の模様?が点々とスル1枚モノ。深々と溜め息つくラギィ。


「ソレか世界1無駄な落書きカモ?まーさか、コレのために人は殺さないでしょ?」

「じゃナゼ奥歯に隠したのかな?隠し方が余りにもレトロだょ」

「ソレもそーね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


デオンの妻、ブルク・パーカも浅黒い肌のアジアンだ。異国の地アキバで芽生えた同郷の愛って奴か?


「ああっ!危険なお仕事だから、いつかはこうなると思ってたわ!」

「パーカさん、お気の毒です。ご主人が顧客と揉めるコトはありましたか?」

「主人は、私に仕事の話はしませんでした。でも、昨日は誰かと話してる内に口論になったと言っていました」


身を乗り出すラギィ。あ、場所は本部のラウンジ。


「で、モメた相手は?」

「ごめんなさい。ソレはワカラナイわ」

「オフィスには、常に現金は置いてましたか?」


猛烈に首を振るブルク。


「まさか!顧客は、あわよくば借金を踏み倒して判決前に姿を消そうとスル輩ばかり。保釈保証業者は、逃げた客を見つけ出して出廷させ、保釈金を取り返すまでが仕事です。オフィスには、郵便為替や小切手だけ。夫もバカではありません。しっかりしていました」


ココでラギィは例の画像を示す。ルイナは歯科医?とのやりとりに因み"歯科医文書"と呼ばれてるw


「コレがご主人の奥歯の中にありました」

「コレ、何だかわかりますか?」

「初めて見ました」


目を丸くするブルク・パーカ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"歯科医文書"の画像を捜査本部のホワイトボードに貼るラギィ。全員の目で見て…結局ワカラナイw


「デオン・パーカが妻に話してなかっただけだ。きっとコレは重要なハズだょ」

「テリィたん。マジでそう思う?」

「僕の"ヲタクセンス"が働いてルンだ」


コメカミに指を当てたら…全員が呆れるw


「"ヲタクセンス"をもとに捜査は出来ないわ」

「ナゼだょ?犯人は何かを探し、被害者は何かを隠してた。"レスイプサロキタ"。つまり…」

「"事実は物語る"でしょ?私は、タダ犯人は現金がアルと思って侵入したのカモしれナイと言ってるの。つまり…」


マリレが飛び込んで来る。彼女はロケットガール。


「情報ゲット!昨夜、デオン・パーカが顧客とダイナーで食事してたら口論になって、大声でドナリ合ってたらしい。ケンカ相手の名前はラダム・ピスア」

「え。ラダムって…もしかして"機動戦士ランダム"?和泉パーク浅草口にタムロしてる?」

「あら。有名人なの?彼は、2年間の服役を終えたのに1週間して直ぐに不法侵入で逮捕されてるわ。うーん彼が犯人カモね。怪しいわ!」


めちゃくちゃウレしそうなラギィw


「ランダムは返さないなら奪ってヤルと言っていたみたいょ」

「何を奪う気だったんだろう」

「ランダムの審問は…今日?出廷してる?」


PCをチェックするマリレ。


「出廷しなかったから、逮捕状が出てる」


小躍りするラギィ。


「ちょうど良かったわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昼下がりの雑居ビル街。覆面パトカーで派手にサイレンを鳴らしながら乗り付け完全武装で降り立つ!


「ランダムのオフィスは303号室」

「ホームレスなのにオフィスがアルの?ヲタッキーズは裏に回って」

「ROG」


メイド2人はビルの裏に回る。


「で、ラギィのライダー姿の写真は?」

「モチロンあるけど…でも、見せるつもりはナイわ。だって、バイクにまたがって、ピチピチのレザースーツ姿の私を見たら、テリィたんは卒倒しちゃう」

「絶対スピアに改造バイクはダメだな」


その時…頭上からガチャガチャ音がして、振り向くと303?から排水パイプを伝って降りて来る人影w


「連邦の白い奴?彼がランダムかも」

万世橋警察署(アキバP.D.)ょ!止まって!」

「ヤベェ」


男は、途中から飛び降り駐車中の車のボンネット上に尻餅で着地、素早く路地に駆け込み走って逃走。


「待て!止まれ」


路地を抜け自動車通りに飛び出す。クラクションの嵐の中、ボンネット上を転がるようにして逃げるw


「アレ、1度やってみたいな…」


次の瞬間、物陰から改造バイクが飛び出しランダムを跳ね飛ばす!交通事故?路面に転がるランダムw


機動戦士を撃墜!ジーク・ジオン…


「何してるの?彼は犯罪の容疑者ょ!」


降り立つライダーに音波銃を向けるラギィ。


「落ち着いて、ラギィ。私は味方ょ」

「ローズ?」

「ラギィ、久しぶりね」


ライダーは仮面を取る。ラギィは音波銃を仕舞う。


「ホントにお久しぶりね、ローズ」

「ラギィ、上出来だわ…貴方はラギィの推し?私は、ローズ・デリオ。スーパーヒロイン専門の保釈金保証業者。"blood type BLUE"」

「"覚醒"したスーパーヒロインなの?」


僕に向かって光線技を繰り出すポーズ。


「僕はテリィだ。SF小説家」


彼女に向かってタイプライターを叩く仕草。


「ローズは元ミニスカポリスなの」

「タダのミニスカポリスじゃないわ。彼女がアカデミーの時の教官だった」

「おいおいおい。素敵な再会の邪魔になるなら、俺は帰らせてもらうゼ」


後手に縛られたママ、路面に転がされてるランダムをライダーブーツで踏みつけるローズ。スゲェなw


「お黙り!アンタが行く先は蔵前橋(けいむしょ)ょ!」


第2章 彼女は賞金稼ぎ


アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子が"覚醒"、スーパーヒロイン化する例が相次ぐ。

秋葉原デジマ法には、超能力を有する彼女達による犯罪の取締りや保釈金制度などが規定されている。


「車の凹みならキチンと修理スルから、見逃してくれょお」

「黙って歩いて。ホラ」

「痛ぇよメイドさん」


メイドに連行される機動戦士。アキバ的な絵だw


「ラギィ。こんなヒールだから、アンタは逃げられたのょ。何センチ?」

「うるさい。靴は問題ないし、別に逃してもいないでしょ?」

「そーかな?」


捜査本部のギャレーで笑い転げる2人。


「で、賞金は何処からもらうの?」

「ソレが奴は審問には出なかったって情報しかなくて。誰か殺したの?」

「保釈保証業者のデオン・パーカ」


美人顔をクシャっと歪めるローズ。


「パーカなら知ってるわ。去年一緒に仕事したのに。行方不明者探しを手伝った」

「奥歯の中に超古代の暗号で描かれた地図が入ってたンだ」

「超古代の地図?雑誌"ラー"のお正月号の付録的な?どーせ奪い合うなら、歴史上の偉人が印刷されてる紙の方が良くない?ラギィ、後でランダムを借りるわ。賞金を受け取りたいの」


ラギィは快諾だ。


「まぁアリバイが証明されたらね。テリィたん、ランダムの取り調べに入る?」


僕を振り向く。


「ラギィ。実は、少しローズに昔話を聞こうと思ってさ。古き良き時代の話」

「そぉ?どうぞご自由に。でも、カラオケで張り込んだ時の話をしたら許さないから」

「絶対にしゃべらないわ」


口にチャックするローズ。


「…大丈夫。他にいくらでも話はアルから」


僕にウインクするローズ。hallelujah!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の取調室。


「おまわりさん、逃げてなんかいない。アレはジョギングさ」

「ジョギングだったの?いつも貴方は、ビルの外壁でジョギングするのね?」

「クロストレーニングだ。心肺機能の強化さ」


何をわかりきったコトを聞くのだって顔だw


「貴方は蔵前橋(けいむしょ)を出所してから、直ぐアパートに不法侵入したわね?」

「全くの誤解だ。友達の家と間違えただけさ」

「裏口から窓を割って入ったのに?デオン・パーカを殺したのも間違いだと言うの?」


表情を豹変w


「パーカが死んだのか?」

「トボケないで、ワザとらしい。貴方なら不法侵入の常習犯だから、お手のモノね。パーカのオフィスはメッチャ荒らされてた。しかも、殺害の3時間前に貴方はパーカと口論してる」

「待て待て待て。夕飯に誘われて行ったら、明日の審問に出ないと裁判所に100万円没収になる、だから、必ず出廷しろと説得されてただけだ」


慎重に応えるランダム。


「じゃあどうして出廷しなかったの?」

「目覚まし時計が壊れて…」

「ソレか前日に人殺しをしたから疲れてたのね?」


首を振る機動戦士。


「ねぇな。彼と会った3時間後、俺は書店で万引きをしてた。多分防犯カメラに写ってるから確認してみろ」

「人を殺した後に万引きをしてたの?」

「いいや。ムショの図書館と勘違いして、金を払うのを忘れてただけだ。なのに、警備員は忍者みたく俺の首を絞めた。でもラッキーだった。警察が来る前にトンズラ出来たからな。ザマみろ、あの野郎。あの警備員なら俺を覚えてるゼ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。本部のギャレーには人だかりが出来てる。


「…でね?片方の手に子猫を持ったママ、彼女が音波銃を撃とうとするから、私は水中銃を持った男の邪魔をしないように慌てて避けたワケ」


大爆笑。僕もヲタッキーズも大笑い。ラギィ参戦。


「ソレは、貴女の顔が満月みたいに大きいからでしょ?引き金を引く度にいつも間違えて撃ち抜きそうになるの!」

「ソレでどうしたと思う? 彼女、水中銃を捨てたら胸を見せるって言ったのょ!」

「ええっ?!そしたら?」


みんなの視線がラギィの胸に集中。特に僕は真剣な眼差しだ。まぁ元カレとしての責任感からだけど。


「で、見せた?」

「まさか。でも、犯人も今の貴方達みたいにポカンって顔をしてた。だから、無事に逮捕出来たワケ。とにかく!ラギィといるといつも冒険だらけょ。何をしでかすかわからないから」


ラギィと肩を組むローズ。ヒヤかす僕とエアリ。


「ラギィの新たな一面が見えたわ」

「コレからももっと見せてね」

「もぉ!あんまり餌を与えないで」


マリレが駆け込んで来る。


「ねぇランダムが万引きして捕まった本屋の警備員だけど、ランダムのコトを覚えてたわ。盗もうとしてた本は"ダヴィンチコード"だって」

「ダヴィンチコード?暗号解読のハウツー本だ。ちょうど"歯科医文書"が超古代の宗教的な暗号だと考え、ゾンビの終末論が予言する暗号が隠されてるのでは、と思っていたトコロだ」

「ねぇいつもこうなの?」


僕を見て愉快そうに笑うローズ。


「いいえ。いつもは"裏NERV"の陰謀説ょ」

「唱え続ければ、いつかは当たルンだ」

「ラギィ、ランダムの身柄はどうスルの?留置所に置いとく?」


少し考え微笑むラギィ。


「ローズに預けましょ。賞金を欲しがってるから」

「ROG」

「thank you」


ローズは、ラギィを振り向く。


「ラギィ、悪いわね。借りが出来たわ」

「お礼なんかいらないわ」

「ねぇ写真を撮ろうょ」


ホワイトボードの前で肩を組むラギィとローズ。


「はい、笑って。よし、バッチリだ」

「会えて良かったわ、ローズ」

「元気でいてょラギィ」


2人はハグ。ローズは僕を指差す。


「テリィたん。タマにはラギィに言い返さなきゃ。さぁアンタは私と裁判所までデートょ」


ランダムを引っ立てて逝くローズ。


「ホント、話が面白かったな」

「ホレちゃったとか?確かにローズは魅力的だものね。男は誰でも惚れちゃうわ」

「そーだろーな」


ナゼかドヤ顔のラギィ。微笑みながら去る。


「ねぇエアリ」

「何?テリィたん」

「ナゼあの2人はコンビを組むのをやめたのかな?」


傍らのエアリに尋ねる。慎重に答えるエアリ。


「ラギィは昇進して、ローズは辞職。多分ローズは最高の警官を育てながら、自分の限界も感じてたんじゃナイかな。良くある話ょ」

「そっか」

「テリィたん。コレだけど、きっとラギィの言う通りょ。人を殺すほどの価値は無さそうね」


ホワイトボードから"歯科医文書"の写真を取る。


「おいおい。イルミナティの秘密の暗号かもしれないぜ。それかモールス信号とか」

「短点がないから違うわ」

「ツーだけでトンがナイ…」


ラギィが戻って来る。


「妙なコトがわかったわ。現場から指紋が出たの。前科者のクリフ・スタキょ」

「スタキ?聞き覚えがアルな…」

「確か蔵前橋(ムショ)から出たランダムが、直後に侵入したのがスタキの部屋だわ」


何となくキナくさい。


「そりゃ…偶然なわけナイな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場は神田リバー沿いの西陽の当たる安アパート。木製の薄い扉を容赦なくバンバン叩くラギィ警部。


「クリフ・スタキ!万世橋(アキバP.D.)ょ!扉を開けて!」


すると、中からトイレの水を流す音。証拠隠滅か?音波銃を抜くラギィ。ドアを蹴破って突入したら…


「誰じゃ?」


4つ脚の歩行器でガチャガチャ歩く白髪の老人w


「万世橋警察署です。私はラギィ警部。貴方はクリフ・スタキ…さん、ですか?」

「受信料だな?払わんぞ」

「侵入事件のコトでお話しがアリます」


音波銃のラッパ型の銃口に耳を近づける老人。


「大きな声で頼む。今、補聴器をトイレに落としてしまった」

「…こりゃラギィが泣いて喜ぶわw」

「何?もっと大きな声で!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何とか覆面パトカー(FPC)に押し込んで、署まで"任意"で来てもらう。途中でコンビニに寄らされたが…


「スタキさん!私は警部のラギィ」

「おおっ逮捕されるならアンタみたいな美人警部の時が良いな」

「あの、デオン・パーカのオフィスで、貴方は何をしてましたか?」


聞こえてるのか、微妙な間が開く。やがて…


「誰かな?」

「保釈保証業者のデオン・パーカ」

「誰?」


スタキ老人は、ラギィのデスク横の椅子に座ってるが、いつの間にかゾロゾロみんなが集まって来るw


「デオン・パーカは昨夜殺され、彼のオフィスに貴方の指紋がありました」

「おぉアイツか。で、質問は?」

「ランダムの保釈金を肩代わりした人ナンだけど、貴方はナゼ彼のオフィスにいたの?」


辛抱強く質問を続けるラギィ。禅問答が始まるw


「老いた犬には芸を仕込めない」

「はい?」

「私は、こんなに老けた老人で、悪事ばかりの人生を送って来た。仲間は、みんな死んだか、刑務所の中だ」


泣ける話だ。


「スタキさん、ソレで?」

「警察に、若造がウチに侵入したと聞いて、突然40年前の自分を思い出した。あの時、誰かが助けてくれたら人生が変わってた、と思った。だから…デオン・パーカだっけ?ワシは彼に言った。お前が人生を立て直すつもりなら、被害届は出さないと」

「昨晩はどちらに?」


アリバイ確認だ。


「ウチで寝てた。30分毎にションベンで起きるがね。私の前立腺は、赤ん坊の拳ぐらいあるンだぞ」

「うわぁ大きい!」←

「…OK。わかったわ。ご協力どうも」


4つ脚の歩行器をガチャガチャと彼の前に出す。立ち上がる老人。僕に拳を突き出すが、僕は無視だw


「おい!この若造だ。お前、何処にいる?ワシは告訴はせんぞ!」


スタキは、ボードのランダムの写真を指差す。


「呼んでくれ。話しがしたい」

「残念だけど、手遅れょ。もう蔵前橋の重刑務所行きが決まってるの」

「何だとぉ?!」


怒ってナイ。4つ脚の歩行器でガチャガチャとホワイトボードの前をニギやかに横切り、去って逝く。


「…テリィたん。スタキ老人が観てたのは、ランダムの写真じゃなくて、例の"歯科医文書"だったように思うの」

「おいおいおい。ソレはつまり、ラギィが逝うトコロの"世界1無駄な落書き"だぜ?」

「はい。ラギィ」


皮肉を聞き流し、彼女はスマホに出る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナに検視局へ呼び出される。彼女はラボから"リモート鑑識"。モニターの彼女は赤いスクラブ。


「遺体の額に"こんなもの"を見つけた」

「どんなモノ?」

「絶妙な角度で光を当てないと見えないのょ」


"絶妙な角度"で額にライトが当たる。


「ラセヌの十字架?」

「YES。で、何で描かれてると思う?」

「まさか!」


既にドヤ顔のルイナw


「聖なる油、聖油ょ」

「聖油だって?"洪水教"で洪水を表す聖油?」

「YES。犯人は遺体に"終油の秘蹟"を施してる」


洪水教!"終油の秘蹟"は最高位の奥義だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


洪水教はアキバの若いヲタクを中心に流行っている新興宗教。世界終焉の日に全ては洪水に呑まれる…


「テリィたん!ベッドで待ってて!」


御屋敷(メイドバー)のギャレーでスピアが料理中…やや?あの美味しい桃のジュースは、賞味期限切れだったのかw


「手を止めてちょっち聞いてくれ。話がある」

「考えてくれたの?」

金持ち病(アフルエンザ)って知ってるか?」


瞬時に全周警戒に入るスピア。


「知らないわ。インフルエンザのお友達?」

「惜しい。億万長者の家に生まれた子供がかかる病気なんだ」

「テリィたんが発明したギャグ?」


元カレとして根気よく対応スル。


「いいや、違う…詳しくはネットで」

「ネットを信じるなって、いつも言ってるのに」

「わかってる。つまり、スピアは良い元カノだょ。でも、怖いんだ。オネダリされたモノ全てを与えてたら、スピアの金銭感覚が麻痺するんじゃないかと思って」


スピアは泣きそうな顔。小声になる。


「じゃ改造バイク(サイクロン)は買ってくれないの?」

「い、いや。別にダメとは…サイクロンがホントに必要なら…」

「うんうん。なぁに?良い子にスルの?」


僕を見つめるスピア。早くも巨乳を突き出してるw


「自分で稼ぐんだ!当然、御屋敷(メイドバー)のツケ払いは禁止。cash on deliveryで」

「ありがとう!」

「え。何で?」


突然スピアにハグされる。スイカ級の巨乳が…


「許してくれたから」

「許す?」

「テリィ様。ヤラカシましたね」


スピアはお出掛け。カウンターの中では、ヤタラ楽しそうに微笑んでるミユリさん。朝からメイド服。


彼女は御屋敷(メイドバー)のメイド長だからね。


「だって…諦めると思ったンだ」

「あの子はスピア。テリィ様の元カノ会の会長ですょ?どんな困難にもアッテラ大王のように立ち向かう不撓不屈のアキバガールです」

「…にしても時間はかかるだろ?」


クスクス笑うミユリさん。


「来週にはお金をゲットして改造バイクを乗り回してますね。そして、次はタトゥや鼻ピアスです。もう大変ですょ。もぉどうしましょ」


僕は…天を仰ぐ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部でデスクワーク中のラギィ。僕は、デスクサイドの椅子に座り、咳払いしてから話しかける。


「ちょっち良いかな。JK(女子高生)の時、どれだけワイルドだった?」

「ノーコメント。秘蹟を施した人の手がかりがあったわ。被害者がアロロ・ウーン神父の協会に寄付してたの。ライアンが直ぐに神父を連れて来るわ」

「神父?」


げ。リアル神父が顔を出す…まさかコスプレ?


「警部。神父様がお見えです」

「ラギィ…房飾り付きの靴だぞ」

「まぁ」


背伸びして見るラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"任意"なのでラウンジで話を"伺う"。


「神父様。保釈保証業者のデオン・パーカ氏とは、どのような関係が?」

「基本的には、全て洪水の思し召しですが、彼は私の教会に通っており、従って良き友でした」

「一昨日の夜の9〜11時はどちらに?」


ソレも思し召しかなw


「教会におりました。ミサがあったのです。その後は帰って寝ました…あの約束がありますので、もう良いですか?」


忙しなく腰を浮かす神父。僕が突っ込む←


「神父!その靴は"キラーシューズ"ですが!」

「いや。ソンな流行りモノではありません」

「いいえ、神父様。実は、その靴は犯人が履いていたのと同じ靴なのです。ウチの鑑識が調べればカバーから血痕が出たりして」


神父は絶句。アッサリ完落ちw


「…私が着いた時、デオン・カーバは既に死んでいたのです。洪水に誓う。ホントに倒れていました。ソレで急いで秘蹟を施し、御社に通報したのです」

「匿名でね。そして、逃げた」

「待ってください。他に何をしろと?」


神父は口から泡を飛ばす。こりゃクロだなw


「そもそも、なぜオフィスに逝ったのです?」

「カーバ夫妻の結婚生活の悩みを聞きにです」

「夫婦間の問題?セックスの相性?ホントは、コレを探してたんじゃないの?」


机に"歯科医文書"の写真を投げる。即答。


「知らない」

「さすがは神父。ウソをつくのが苦手だ」

「リアルです」


神父は必死に弁明。ラギィが突っ込む。


「友人が殺害されたのに、神父は現場から逃げた。隠すコトがなければ、逃げる必要もなかったのでは?」

「あまりの血の多さにショックを受けたのです。つい逃げてしまった」

「彼を殺したから?」


神父は目を剥く。


「違います。殺してません。疑われると思ったからです。囚人達から良く聞きます。"ヲレは、警察にハメられた"と…とにかく!リアルな死体を見て、私はパニックになった。恥ずかしいとは思っています。でも、信じてください。私は殺していない!」


内容がナイ割にヤタラ説得力がアルw


「神父。申し訳ありませんが、コレは殺人の捜査です。信仰は関係ない。証拠もなく信じるコトは出来ません」


ラギィは、切って捨てる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


制服警官に肩を叩かれながら、ラウンジから出て逝くアロロ・ウーン神父。その後ろから僕とラギィ。


「え。ラギィ、神父が犯人なの?」

「カモね」

「で。テリィたんのゾンビ終末論は当たった?」


ラウンジの外で口の悪いローズが待ち受けてるw


「あのさ。バカにスルけど、神父もあの"歯科医文書"を気にしてルンだぜ?」

「そ。ねぇクローゼットからこんな写真が出て来たンだけど」

「わ!お宝w」


ラギィの制服警官姿だ。若いw


「おおお。こんなピカピカの時代がラギィに?」

「だ・か・ら!もう私のネタはヤメてょ」

「うふふ。この前はランダムの賞金を無事にもらえたわ。だから、御礼に寄ったの。ランチをご馳走したい」


おぉ良い話だw


「モチロンOKょ」

「ラギィ!あ、テリィたんも…例の盗聴器だけど、タイから輸入されて5番街のスパイショップで売られてたわ。で、誰が買ったと思う?」

「アロロ神父」


僕とラギィが異口同音。ところが…


「ブブー。ブルク・パーカ。被害者の奥さんょ」

「旦那のオフィスを盗聴?夫婦問題は、かなり深刻だったみたいね」

「盗聴は夫婦の不仲の証だ。パーカは、結婚生活にホンキで悩んでたンだな」


頭をヒネるラギィ。


「でも…何で殺したの?」

「ソレを聞いてみないと」

「ラギィ!」


ローズの方を振り向く。


「忙しそうじゃん。今度にしよっか」

「ちょっと待ってて。最初のビール、おごるから」

「約束ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


訪れたブルク・パーカ未亡人と会議室へ。


「実は…いつも喧嘩ばかりでした。オフィスに泊まると言って帰らない日もあった。でも、信じられなくて盗聴するコトにしたのです」

「つまり、浮気を疑ってたンですね?」

「だから、殺したの?」


ランチを待たせてるので畳み掛ける僕達←


「盗聴の内容を聞くのが怖かった。だから、妹にも一緒に聞いてもらいました。でも、そうしたら予想とは違っていたのです。彼は、私を心から愛していた。私と離婚したくないと話していたの。私は、一晩中泣いて次の日トランスミッターを捨てました」

「ソレはいつですか?」

「何週間も前の話です。仲が良い夫婦に戻れる、何もかも昔の2人みたいになれると思った。でも、彼は死んでしまったの。もう灰しか残っていない」


泣ける話だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホワイトボードの前に全員集合。


「ブルク未亡人の妹さんに確認した。盗聴器を翌日捨てたのはホントみたい」

「アロロ神父のアリバイも確認が取れたわ」

「…また振り出しに戻っちゃったな」


出るのは溜め息ばかり。だが、ラギィは挫けないw


「いいえ。絶対このボードの中に答えがアル。そう感じるの。何かのつながりを見逃してるだけょ」

「ラギィ。とりあえず、神父は容疑者から外すね」

「ダメょ待って。確かにアリバイはあるけど…何か胡散臭いのょね、洪水教って。アロロ神父がボランティアをしてた刑務所って蔵前橋だとか何とか話してたけど…」


マリレはタブレットをデータベースに接続。


「ビンゴ!ランダムも蔵前橋の重刑務所の出だわ」

「知り合いなの?」

「刑務所が接点かも。スタキ老人も服役してる?」


期待するラギィ。


「いいえ。いないわ」

「くそっ」

「でも、別のルートで捕まって繋がってるのカモ。ムショ仲間のネットワークは侮り難いわ」


全くその通りだ。


「蔵前橋重刑務所でのランダムの同房者は?」

「マコム・ロイド。宝石強盗で20年服役」

「話を聞こう」


タブレットを操作しながら首を横に振るマリレ。


「無理ポ。3週間前に心臓発作でお亡くなり。洪水教徒だったって」

「その時もアロロ神父が秘蹟を施したのかな?」

「うーんマリレ、マコム・ロイドのお仲間はどんなラインナップかしら」


何かヒラメきかけるラギィ。


「神父系はいないわね…あら、待って。スタキ老人の名前がアルわ。共犯クリフ・スタキですって。マコムとスタキは、一緒に宝石強盗を働いてるわ」


思わズ全員が立ち上がるw


「2人は相棒?」

「YES。しかも、スタキの方は証拠不十分で釈放、訴追されズ。マコムだけが20年の服役ょ」

「ソレにしても…コレにランダムがどんな風に関わって来るのかしら」


さらに、マリレが驚きの情報をヒット。


「コレを見て!2人が盗んだ宝石だけど、合計1億円のルビーとサファイアを盗んで…何と宝石は未だ見つかってナイんだって!」

「…ねぇ?もしかしたら、この"歯科医文書"に描かれてるコトって?」

「YES。コレはきっとヲ宝の地図だ」


第3章 歯科医文書の秘密


直ちにアロロ神父が呼ばれる。取調室に直行w


「神父。蔵前橋重刑務所に確認したわ。貴方、今際の際のマコムに秘蹟を授けた時に、ヲ宝の地図について、ヤタラ詳しく聞いていたそうね」

「ま、ま、待て。確かに彼の死に際に付き添った。ただ、死ぬのが怖い、最後に良い行いをして死にたいと、マコムの方から勝手にヲ宝の話を歌い出したンだ。決して、私が聞き出したワケじゃナイ。そもそも教会に寄付したい、と言う話だった。ところが、ヲ宝の地図は監房にはなかった」

「ランダムが先に手に入れたのかしら?」


僕が引き取る。妄想がハレーションして逝く。


「ところが、手に入れたは良いが、ランダムは出所しても"歯科医文書"を解読出来ない。ソレで相棒のスタキに話を聞くために侵入した?」

「でも、スタキは不在で、誰かに通報された?」

「…実は、私が通報しました。私は、ランダムを尾行していたから…ほら、ランダムが何処かで逮捕されれば、何かと交渉がしやすいじゃナイか!」


何と"妄想ハレーション"に神父まで加わるw


「ソレで、準備周到に保釈保障業者ともツルんだってワケ?」

「YES。保釈金の代わりにヲ宝の3分の1をもらうコトになってた。パーカはヲ宝の地図…アンタらが言う"歯科医文書"も預かってた」

「呆れた。神父は、なぜ事件当日オフィスにいたの?ホントに殺してナイのょね?」


ムキになって怒る神父。


「神父の私を疑うのか?デオンから地図を解読出来たと言われたんだ。だが、行ったら…殺されてた。あの爺さんにやられたンだ」


大きく舌打ちスル神父。実に人間味溢れる男だw


「え。デオンを殺したのはスタキ老人か?」

「でも…何でスタキに知れたの?」

「奴は、デオンがヲ宝の話をスルのを聞いて、前の晩に脅迫に出た。"歯科医文書"を渡さないなら、死人が出るぞとね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


昭和通りを歩行器でガチャガチャ歩くスタキ。


「クリフ・スタキさん。お話があります」

「万世橋警察署まで御同行を」

「何?もっと大きな声で」


とか何とか逝いながら、メイド2人に呼び止められた老人は何と歩行器を蹴飛ばし猛ダッシュで逃走w


「え?走ってる?」

「何してるの?追え!」

「サイキック抑制蒸気だわ」


蹴倒された歩行器から蒸気が噴き出す。超能力を失うヲタッキーズ。走って追いかける。メイド服でw


「ソコの路地ょ」

「逃すな」

「…あ、あら?」


路地裏の金網を身軽に飛び越え、足台に使ったゴミ箱を蹴り倒す。飛べないヲタッキーズは地団駄だ。


スタキは鮮やかに走り去り、角を曲がって消えるw


「マジ?ヤバいわ」

「私達、絶対バカだと思われるw」

「ミユリ姉様には内緒ね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のデスクに"ヲタッキーズ様"と描かれた大人用オムツが積まれる。コレは"イジメ"だろw


「やれやれ。爺さんを取り逃したせいで散々だな。で、当のヲタッキーズは?」

「直ぐに戻るわ。ランダムを迎えに行ったから…宝石について調べたわ。2000年に盗んだ時に1億円だった宝石の価値は、今じゃ3億円だってw」

「ねぇラギィ。行ける?」


ローズがブラリと現れる。


「OK」

「ランチか?未だ捜査の途中だょ?」

「大丈夫。スタキは指名手配中。神父様もおっしゃってる。"休む者は救われる"」


ケラケラ笑う不良警察関係者w


「ラギィを借りるわ。なるべく早く返すから」


何だか心配w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


摩天楼のルーフトップバー。遥か電気街を見下す。


「じゃ"歯科医文書"はリアルでヲ宝の地図?」

「YES。今、テリィたんが解読しようと躍起になってるわ。しかし、まさかスーパーヒロインがスタキ老人を取り逃すとは」

一般人(パンピー)もヒロインも完璧じゃない。仕方ナイわ」


肩をスボめるローズ。


「いいえ。ローズ、貴女はいつも完璧だった」

「あら。ラギィにしちゃ甘々ね。私に騙されてる」

「深い海で溺れてた私にとって、ローズは貴重な陸地だった。私を育ててくれたのはアカデミーじゃナイ。貴女と秋葉原ょ」


ラギィはローズを見上げる。


「ソレはラギィが熱心だったからょ。ただトラブル好きなのには参ったけど」

「私がトラブル好き?」

「私達が叩き潰したシーサイドのオートバイ女を覚えてる?」


女子トークモードで思い出話。


「あら。私は彼女から良い情報もらったわ」

「私をエサにしてでしょ?」

「彼女も言ってた。いつもローズは完璧だって」


顔をしかめるローズ。


「ヒドい話ね」

「…捕まえたの。母を殺した犯人」

「え。動機はわかった?」


瞬時にマジ顔になる2人。


「犯人は傭兵だった。雇い主を聞き出す前に私が…射殺した」

「馬鹿なコトを…」

「え。」


目を剥くラギィに親友のアドバイス。


「胸を見せれば良かったのょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。"潜り酒場(スピークイージー)"。青い帽子をかぶったスピアがシャナリシャナリと登場。


「あれ?セレブな有閑マダムの御帰宅だ」

「テリィたん。お金を稼いだの」

「え。もう?」


驚く僕。得意満面のスピア。


「どうやって稼いだの?」

「ロケッティナのヘルメットがネットで200万円で売れた!」

「え。アレで良くコミケ荒らしに出かけたょね?僕達のレトロフューチャーの原点だったのに」


何だか寂しい気分になる僕。僕以外の全員が修学旅行に出かけたら、きっとこんな気分になりそうだw


「わかってる。でも、もう私も子供じゃない。成長したの」

「そ、そうか。成長した…のか」

「怒った?」


心配げに僕の顔を覗き込む。


「え。いや、まさか。違うさ。実は、捜査が行き詰まってルンだ」

「ソレ、宝の地図?」

「あぁ宝探しの天才にもワカラナイなんて。きっと何かを見逃してルンだな」


僕は溜め息。お手上げのポーズ。


「見てもOK?」

「どうぞ」


僕とカウンターの中のミユリさんが異口同音。


「テリィたん。この読み込み画像だけど、原画はヤタラ小さく折りたたまれてるね」

「え。コレ、読み込み画像なのか?確かに折り目みたいな陰影が無数に走ってる。きっと綺麗にシワを伸ばしてからスキャナーにかけたンだな」

「"折り込みパズル"とか"折り紙占い"みたいですょね。お花畑の絵が一瞬で地獄絵図に変わったりスル奴です」


ミユリさん。君は一体何を読んでルンだw


「僕が読んだのは雑誌"小学2年生"の昭和な付録だ。トリックアートの付録がついてて、東京の景色を正しく折り込むと、全く違う未来の東京の絵に早変わりすルンだ」

「ねぇテリィたん、見て!コイツはアルファベットの文字になったわ」

「ホントだ!u、n、d…」


"歯科医文書"を試行錯誤しながら折り込むw


「"under sonic gun"?…音波銃の下?」

「やったー!解読出来たわ。でも、何のコト?」

「うーん全くワカラナイ」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、ルーフトップバーでは…


「ローズ。もう行かなきゃ。ランダムが到着スル」

「ラギィ、おトイレに行きたい」

「え?どうぞ」


ローズはトイレに立ち、ラギィはスマホが鳴る。


「はい。ラギィ」

「ラギィ、タイヘンょ!ランダムを迎えに裁判所まで来たけどいないの!」

「いないって…どーゆーコト?」


思わず聞き返すラギィ。


「知らないわ。裁判所はランダムを受け取ってナイって。ローズも来てないって」

「ソンな!」

「もしもし!ラギィ、聞いてる?」


店内を見回すと、ちょうど賑やかなインバウンドの団体が入って来て…その人混みにローズは消える。


最後の瞬間、その瞳に宿る…虚無。


第4章 音波銃の下に


ラギィは苦々しげな表情でホワイトボードの容疑者コーナーにロイスの顔写真をデカデカと張り出す。


「私にウソをついた」

「お金は人を変える。お金のためにゴキブリを食べる地上波番組もアルだろう?ソレに、そもそもローズが犯人なのかも未確認だ」

「でも、今のトコロは彼女が犯人だと思わざるを得ない。きっと"歯科医文書"を見るために、ココへ来たのね」


僕も頭を抱える。


「まさか、そうか!」

「何?」

「ホワイトボードの前で写真を撮らされた!」


ラギィも頭を抱える。


「そっか。私とじゃなくて"歯科医文書"との記念写真だったのね…と言うコトは、彼女も未だ"歯科医文書"を解読出来てナイってコト?だから、また来た。私達が解読出来たかを探りに来たンだわ」

「ラギィ、例の宝石強盗の捜査に、現役時代のローズも関わってたみたい」

「ヤラレた。最初から宝石狙いだった!」


本部のモニターにローズが携った事件歴が流れる。


「ソレで奴の自宅に監視をつけて車も手配して…しかし"音波銃の下"の意味は?」

「ソレは…多分彼女もワカってない」

「現場近くに射撃場があったけど、潰れて今はタワマンになってるわ」


ラギィのスマホが鳴る。


「ラギィ」

「私ょ」

「ローズ?!」


瞬時に本部がシーンとなるw


「自首して。今すぐ」

「ソレは出来ない。あと少しでお金が手に入るの。わかって。私だって、こんな展開にはしたくなかった」

「"歯科医文書"のためにパーカを殺したの?」


単刀直入に聞くラギィ。


「私がソンな女だと?」

「今のローズは、もう私にはワカラナイ。私の知ってるローズは"百合友"を決して裏切らない」

「ラギィ。そのコトは…」


キッパリと(コク)るラギィ。


「ローズ。私は、貴女を愛してた」


きゃー!全員が口を塞ぐ。視線を泳がすw


「ヤメて!ヤメてょラギィ!」

「世界中で、貴女だけがママの事件への執念を理解してくれた。ありきたりな慰めは通用しないとわかってた」

「ソレは…貴女の気を引こうとしただけょ」


すっかり狼狽えるローズ。


「私、貴女の夢を見た。ママを殺した犯人を撃った夜のコトょ。実は、自分が撃たれて死ぬ夢を見た。ソコに貴女が現れて、私にこう言ったの。"立って、ラギィ。貴女には未だ仕事が残ってる"って。朝、目覚めてから今日、この瞬間まで、ズッと貴女にスマホしたくてたまらなかった」

「スマホしてょ!でも、貴女はしなかった」

「犯人は必ず探し出すわ。盗まれた宝石も必ず取り返す。その時、犯人は、お金より大事なモノ全てを失ったコトを知るのょ」


スマホをブチ切るラギィ。


「逆探知は?」

「成功。住所が割れた。東秋葉原」

「さ。行きましょ」


東秋葉原のアドレスが転送される。引き出しから音波銃のホルスターを出す。デスクから立ち上がる。


「テリィたんも来る?」

「ラギィ…今のは全部、逆探知のための演技だったのか?」

「モチロンょ」


颯爽と歩き出し、瞬間泣きそうな顔になるラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」


東秋葉原の安アパートだ。音波銃を抜き、ドアを叩き開け突入。ラッパ型の銃口を四方八方に向ける。


「クリア!」

「キッチンもクリア!」

「良かった!おまわりさん、俺は誘拐されたんだ」


ベッドの脚に手錠で繋がれてる機動戦士ランダム。


「"歯科医文書"の謎は、もう全部バレてるのょ」

「そうかょ!ソンなコトより…」

「ローズは何処なの?」


激しく頭を振るランダム。


「ヲ宝を探してる。俺達は、全員裏切られたンだ」

「ランダム!真実を話さないと、ヲタッキーズが空から落とすわょ」

「待ってくれ。俺は立派な被害者だ。蔵前橋(けいむしょ)で同房だったマルコにヲ宝の地図の話を聞いた。ソレでパーカと神父と組んでヲ宝の地図?おまわりさん達が"歯科医文書"とか呼ぶ奴を解読しようとしたが…ソレがパーカの妻を仲間に入れるかどうかで揉めて…」


呆れるラギィ。フト、気づくw


「それ、パーカのオフィスで話したの?」

「そうだょ」

「あのオフィスを妻のブルクは盗聴してルンだ」


心底ビックリする機動戦士ランダム。


「マジで?実は、あの女とヤリたいとか散々…」

「ヲタッキーズ。妻のブルクを探して」

「ROG」


僕は、合点が逝く。


「つまり…夫は大金を手にスルのに、自分には1円も入らない。妻のブルクが聞いたのは愛の告白じゃない。分け前ゼロの宣告だ」

「ヌケヌケと私達にウソをついた」

「夫の裏切りに大金…とても強い殺人の動機ね」


溜め息つくラギィ。


「テリィたん。そー言えば彼女にも"歯科医文書"を見せたわょね?」

「今にして思えば、あの時、確か手が震えてたな」

「ラギィ。妻のブルクは、パーカのオフィスで遺品お片付け中だって!」


マリレの言葉に全員が立ち上がる。


「OK。行きましょう」

「ブルクめ。とっちめてヤル」

「おいおいおい。俺はどーなる?」


手錠をガチャガチャさせるランダム。


「待って。今、おまわりさんを呼んであげるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び東秋葉原の古い雑居ビル。魔窟のような迷路の奥で妖しく光るネオン…(以下略)


「誰もいないわ。逃したわね」

「デスクのメモに"歯科医文書"の解読を試みた形跡が残ってる。やや?会話を盗聴しながら何か描き取ったメモもアルぞ」

「"音波銃の下"までメモしてるw」


しかし、僕は頭をヒネる。


「でも、地図ナシでは意味ナシ芳一だ」

「何処の"音波銃の下"だかワカラナイ」

「でも、マルコは容易に掘り返されたり、逆に高層タワーが建つような場所には埋めないだろう」


全員でアイデア出し。


「じゃ公園とか?公開空地?」

「墓地だな」

「ねぇパーカは火葬されるのに、なぜデスクで墓地の案内パンフを広げてるの?」


"アキバ浄苑"のパンフ。銃口がラッパ型に開いた音波銃はスーパーヒロインの墓碑に良く使われる。


「おいおい。もしかして"音波銃の下"って…」

「音波銃型の墓石の下ってコト?」

「ヲ宝は"アキバ浄苑"にアル音波銃型の墓碑の下に埋まってる?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真夜中の"アキバ浄苑"。2人のメイドが墓石を1つ1つライトで照らし、確認しながら歩いて来るw


「ホラー映画だと、私達、真っ先にゾンビに襲われて、最初に殺されちゃう役ょね」

「うーん最初は巨乳の女子大生がお約束でしょ?私達は"覚醒"したスーパーヒロイン。一応ゾンビには楽勝って感じ?」

「そーゆー生意気な妖精(エアリ)が、いつも最初にヤラレるのょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


もう1組は僕とラギィだ。暗闇の中を、それぞれペンライトで1つ1つ墓碑を照らしては確認して逝く。


「コレがホラー映画なら…」

「テリィたん、集中ょ集中して!」

「あった。音波銃の墓碑だ」


何と、墓碑の下にスコップで掘られた穴w


「先客がいたか」

「おまわりさん、音波銃を捨てて!」

「ブルク?」


異常に血走った目で、その場に飛び出して来るブルク。当然のように音波銃を構え、僕達を狙ってる。


「ブルク、ソレは出来ないわ。聞いて。貴女こそ、地図を探してたら夫に見つかったンでしょ?最初から殺すつもりはなかった。そうょね?」

「ナニ言ってんの?最初から殺すつもりだったわ。10年間、あの脚フェチ男に散々イジられ、やっと寝てくれたと思ったら、朝までのイビキに耐え抜いて…挙句に裏切られた。ヲ宝は私がいただくわ」

「いや、ヲ宝はワシがもらう」


ブルクの頭にショットガンを当てるスタキ老人。


「銃も1番デカいぞ」

「あら、ソレはどーかしら?」

「お前は?」


ローズ?サイレンサー付きの短機関銃。ソコへ!


万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「銃を置いて!今すぐ!」

「アキバP.D.って…秋葉原じゃ警官もメイド服を着てるの?」


マリレは自動小銃。エアリは音波銃だ。全員が銃を捨てろと叫び、銃口を向け合い威嚇スルが、モチロン、誰も各種の銃を捨てないし、手も挙げないw


「ローズ!どうするの?私を撃つ?」

「ヤメてラギィ!見てワカラナイ?私の銃口は貴女に向いてない」

「そうさ。おまわりさんを撃つのはワシだ。警部とSF作家を1発でトマトスープにしてやる」

「お爺ちゃん。撃てば、貴方も命は無いわ」

「メイドさん、ワシはヲ宝を手に入れるためにだけ生きて来た。ダメなら生きててもしょうがなひ」


全員の言い分が出揃ったトコロでラギィが提案。


「ねぇみんな。全員で殺し合う前にヲ宝がアルかどうかヲ確認しない?じゃテリィたん、お願い」

「え。僕が?」

「テリィたんだけ、銃を持ってナイの。OK?」


なるほど、そっか。早速コートを脱ぎ捨て誰かが掘った穴に飛び込む。スコップでさらに掘り続ける。


「ラギィ。作戦はアルの?」

「あっても貴女には絶対教えナイわ、ローズ」

「"何か"を見せるとか?」


穴の外から物騒?な会話が聞こえて来る。叫ぶ僕。


「おーい。何かを掘り当てたぞ!」


全員が穴を覗き込んだ瞬間を狙い、スコップで泥をハネ上げる。一斉に各種の銃声。穴の底に伏せる。


10まで数えてからソッと穴の外へ。


「銃を捨てろ、スタキ!」

「ブルク、立って」

「ちっくしょう!ナメたマネを…」


マリレがブルクにマウント。スタキを組み伏せるローズ。ローズに銃を向けるエアリ。スタキが叫ぶ。


「頼む!ヲ宝を…ヲ宝を一目、見せてくれ!」

「え。アレは気をそらすために言っただけだ。僕なりに"胸を見せた"だけだょ」

「お前のSF、死ぬまで読まん!」


読者を減らす僕w


「ラギィ。ローズをお願い」

「ROG。任せて」

「ホラ、行くわょ」


ヲタッキーズがスタキとブルクを引っ立てて逝く。残されたローズは自分の手錠をラギィに差し出す。


「ラギィ。ヤルべきコトをヤルのょ」


後ろを向く。


「ローズ・デルリ。逮捕スルわ」


ラギィが、ローズを引っ立てて逝く。

僕は、穴の外に1人に取り残されるw


「…あの、僕とヲ宝探しをしたい人は?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「結局、宝石は出なかったんだょミユリさん」

「そうですか…で、ラギィは?」

「そりゃヤッパリ親友に裏切られたからな…」


僕とミユリさんは、カウンターを挟んで溜め息w


「しかし、悔しいょな。宝探しをして、宝がナイなんてさ。あーあ」

「確かにヲ宝探しじゃなくて、最初からそうだったナンて。ソレに、今回は私、変身シーンもありませんし」

「そっか。認めたね?少しはワクワクしたって」


笑うミユリさん。


「少しは、です」

「でも、ヲ宝がないなら、なぜ"歯科医文書"を描いたのだろう?」

「"アキバ浄苑"は、広い墓地だから、墓地の別の場所にあるか"音波銃の下"自体が囮だったのか」


ミユリさんの笑顔は続く。


「でも、ミユリさん。僕なら"歯科医文書"に全ての答えは描かないな」

「そうですょね?では"裏・歯科医文書"がアルとお考えですか?」

「うーん自分の身から離れズ、自分だけがワカルような場所に隠すけどな…カラダの1部とか」


ビンゴ。ミユリさんがカウンターに写真を出す。


「コレは、捜査本部のホワイトボードに張ってあった写真です。お借りして来たのですが、獄死したマコム・ロイドのカラダに彫られていたタトゥです」

「え?…コ、コレが"裏・歯科医文書"だと?」

「他に何をタトゥに?ローマ数字で6の上に2コ。つまり、テリィ様が掘られた場所から2列上の6つ横という意味では?」


すげぇ!さすがは僕の推し。TO(トップヲタク)は鼻高々w


「ちょっち掘ってみられては如何でしょう?」

「わかった!ミユリさん、逝こう。変身してくれ」

「テリィ様。ヲ宝探しは、ハートブレイクな警部さんとヲ願いします」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


明け方近く。僕は"泥だらけの御帰宅"。


「ヲ宝は見つかりましたか?テリィ様」

「…見つかったさ」

「hallelujah!」


大喜びするミユリさん…とスピアもいるw


「ところが、残念ながら警察とヲ宝探しをスルと、ヲ宝は持ち主に返還されルンだって。でも、収穫もあったょ。汗だくのラギィがハグをしてくれた(ツルペタだったけどw)で、女子達はサイクロンの色でも選んでたのかな?」


ミユリさんがスピアの腕をポンポン叩く。


「スピア。テリィ様にお話しして」

「え。何を?」

「サイクロンは買わないコトにした。ソレと…スチームヒロインの"ロケッティナ"のヘルメットを売るなんて、間違ってた。でも、サイクロンが欲しかったから仕方ナイって、自分を無理に納得させてたの」


僕の胸に飛び込んで来る。巨乳が…


「でも、テリィたんとコスプレして遊んだ思い出の方が、サイクロンよりも大事だモノ」


キツクきつくハグするスピア。巨乳が…


「さすが巨…じゃなかった、スピアだ。偉いぞ!」「じゃサイクロンを買って上げたくなった?」

「ダメダメ。約束は約束さ。でも、僕が自分では乗りもしないサイクロンを買うのは問題がナイ。そしたら、まぁタマには貸しても良いょ?」


狂喜乱舞スル巨…じゃなかった、スピア。


「マジで?」

「YES。ついでに変身コスプレで"マチガイダ・サンドウィッチズ"までお使いも頼むょ」

「ありがとう、テリィたん。あのね、実は飛行船のツェッペリンも売りに出てルンだけど?」


僕とミユリさんは、力なく笑い出す。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"保釈保証業"をテーマに、保釈保証業者、その妻、女賞金稼ぎ、全てを知る前立腺肥大の老人、欲に塗れた新興宗教の神父、全ての始まりの宝石強盗、殺人犯とヲ宝を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、主人公の元カノのオネダリなどもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり普通の家族の海外旅行先となった秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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