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超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に  作者: 菊池 快晴@書籍化決定


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第40話 メルヘンテディーベア

 ”ブラック最大のピンチ”

 ”対極すぎる”

 ”これは相性が悪いな”

 ”メルヘンすぎるww”


 視聴者のコメント通り、俺ことブラックはとんでもないボスと対峙していた。

 いや、正しくは部屋も含めてだが。


「このクマ、攻撃がきかない!」

「ぬいぐるみだからかも。――すごい、攻撃」

「我の力を持ってしても、なかなかに大変だのぅ」


 基本的にダンジョンボスの部屋は、そのボスを具現化したといっても過言ではない。


 水のボスなら湖があったり、炎のボスなら至るところで火柱が上がっていたりする。


 そして、今は――。


『ボクの部屋で暴れるなんて、許さないぞ!』


 巨大なファンシーでカワイイクマさんが、俺に向かってその柔らかそうな腕をぶんぶんと振り回していた。


「か、可愛すぎるブラック」


 死の宣告を付与したものの、あまりにも可愛すぎる。

 生きとし生けるもの、クマさんは可愛く思ってしまうのだ。


 更に深淵を好む俺としては、この部屋は目に優しすぎる。

 ピンク、イエロー、グリーン、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような部屋だ。


『侵入者をころせー』

『退治しろー』

『いけー!』


 部下たちもそれに準じており、おもちゃの兵隊だったり、小さなぬいぐるみがいっぱいだ。

 驚くべきは、その耐久力だろう。


 おもちゃというものは子供に投げられる想定をしている。

 ぬいぐるみもそうだが、衝撃を緩和する効果がある。


 美琴のダメージを吸収、風華さんの攻撃も利かず、ローザは俺と同じく瘴気にあてられているようだ。

 普通は闇の部分が瘴気だが、俺たちにとっては陽が利く。


「これは、明るすぎるブラック」


 闇に紛れるコートが目立つ。

 信号が強制的に発せられている。


 ここから――逃げろと。


 ”ブラック様が明らかに困惑しているw”

 ”この場所では力が半減、いや、四分の一だ”

 ”ブラアアアアアアアク”


 とはいえ泣き言はいってられない。

 死の宣告は白い文字になっている。


 今回の目的は、美琴の調伏。


 止めを刺すのも彼女にしてもらわなきゃならない。


 まずはイザナギとアマテラスで、攻撃を仕掛ける。


『よくもー!』


 申し訳ないとおもいつつ振りかぶられた右拳を回避、そのまま切りかかると、クッションが破けて綿が飛び出る。


 ”なんか可哀想には思えるな”

 ”命がけだからなww”

 ”ブラックが余裕ありすぎてそうはみえない”


 カウントは99999から89999に変化する。

 だが驚いた事に――自身で縫合しはじめた。


「ほう、面白いな」


 ぬいぐるみの特性を持っているらしい。

 秒数が、完全に回復した。


 その後も攻撃を与えるが、瞬時に縫合、綿も戻っていく。


 つまり――回復させずに0にする必要がある。


 ”何気にめちゃ強くねえか?”

 ”相当だなこれは”

 ”人数が必要かも”


 俺が本気を出せば連撃で倒すことはできるだろう。

 だが今回は美琴が倒さないといけない。俺はあくまでも二番手だ。


 こういった縛りは初めてだが、難易度が格段に上がっている。


「美琴、俺が攻撃を仕掛けた後に、間髪入れず攻撃してくれ」

「わかりました!」


 ふたたび腹を切り裂く。

 その穴目掛けて、美琴が怪力パンチをお見舞いした。


 カウントが大きく減るも、やはり戻っていく。

 

 ――なるほど。


 だが、勝機は見えたな。


「風華、ローザ――」


 そのまま声を掛けると、俺の作戦通りに動く。


 ”全員で攻撃か”

 ”今回はどうする”

 ”がんばれええええ”


「――スサノオノミコト」


 俺はまず大剣を取り出した。

 そのまま真っ二つに斬る、


 カウントが半分、だが戻っていく。


 あえて7割ほど戻らせた後、風華とローザが攻撃を仕掛けた。

 それは、足だ。


 大きなボス相手の定石だが、まずは体勢を崩す。

 その後、綿が戻っていくところに、美琴が――思い切り綿を引きずり出す。


「――ワタワタワタワタワタワタワタワタ!」


 ”ちょっwww これはww”

 ”いや確かにこれしかないけどもww”

 ”クソワロタ”

 ”言い方よwww”

 ”わらうwww”

 ”うおおおおおおおおおお”

 ”何かを思い出させるwww”


 だがこれだけではまだ足りない。

 ローザが切断面を魔法で固定、更に風華が聖剣で穴をあけまくる。

 徐々にカウントが減っていく。


 最後に俺はクマさんの首をはねた。


 こ、心苦しいブラック。


「ワタワタワタワタワタワタワタワタ!!!」


 そして美琴は、何かを連想させるような連打でボスを――破壊した。


 白い文字が0になる。

 ぽんっと、小さなぬいぐるみとなり、美琴の手元に落ちて来る。


『よろしクマ!』


 名前:メルヘンクマ

 衝撃を吸収する独自のクッションにより、攻撃、魔法を跳ね返すことができる。

 防御力に依存せず、痛覚が存在しない。

 常にポジティブ、座右の銘は何とかなる。

 特性:自己回復、再生能力、不死身


 次の瞬間、文字が浮かび上がる。


 ダンジョンモンスターを調伏したときに出てくるようになったみたいだ。

 俺自身の能力も上がっているのだろう。


 ”何気にめちゃ強くない?”

 ”これ、ヤバイんじゃない?”

 ”だいぶ使い勝手良さそう”

 ”普通は出来ない調伏も、ブラックを介せば可能なのか”

 ”凄すぎブラック”

 ”美琴、大幅強化だね”


「ふ、不死身だ……えへ、えへへ、えへへへ、えへへへへ」


 しかし最後、美琴の不敵な笑みは、なぜか背中に悪寒を感じたのだった。


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