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日本国・対処

 日本国・総理官邸。

トップである総理大臣、小林悠介の前に、閣僚たちが並び着席していた。

「今わかっていることを整理しよう。巨大な魔法の発動を、今確認できる限りの全ての人間が感じた。一連の異変はこれが原因と見て間違いないだろう」

「外務省では、海外に勤務していた人員が突然巨大な魔法の発動を感じ、気がついたらいつの間にか日本に戻っていたということを確認済みです。警察からの報告も考慮すると外務省職員だけではなく海外の日本人全てが日本に帰還している可能性が大きい。また、在日外国人が消えたという報告もありますよね。実際、在日大使館・領事館等と連絡が取れません。電話等だけでなく職員が実際に確認に向かっていますが、おそらく消えているのでしょう」

「防衛省ではただいま、在日米軍と連絡が途絶しています。基地に確認のための人員を派遣していますが、在日外国人が消えているという報告と合わせるとおそらくは彼らも…。他には、北方領土と竹島が消滅した模様です。また、海外に赴いていた自衛官も日本に突然帰還しています」

「海外の日本人が(おそらくは)魔法で帰還したんだ。同じように、日本からは消えたように見える在日外国人たちは母国に戻ったのだろう」

「海外との通信が無線、海底ケーブル経由、衛星経由全てで途絶していることが確認されています。これが数日回復せず続いた場合、海外と連絡しなければならないような企業の経済活動は大きく滞り、株式市場が大暴落する可能性が示唆されています」

「文部科学省では天文観測所から、夜空の星の配置が全く異なるものになっていると報告を受けています。素人目にもわかることでは、今まで知られた星座がなくなっていると言うことと、空のあるべき場所に惑星が無くなっているということです。水星も金星も火星も土星も木星も、他の惑星もありません。また、全ての人工衛星からも通信が途絶しています。夜空の星の配置から、天文台職員は、魔法が原因で地球が別の恒星系にいきなり移動したのではないかという見解を非公式的に述べていますが…、諸外国ならびに人工衛星からの通信途絶の報告と併せまして私見を述べるなら、日本の国土が他の惑星に突然移動したという可能性だってあるでしょう。地球ごと他の恒星系に転移したというのと、日本が他の惑星に転移したというのと、非現実性では同じようなものかもしれませんが」

閣僚たちの述べる報告と意見に耳を傾けていた総理大臣が口を開く

「海外との通信は回復しなければならないし、もし通信のみならず輸入まで途絶したなら日本は壊滅的な事態になる。通信がダメなら防衛省の方で、自衛隊機を朝鮮半島方面に飛ばし、直接韓国と連絡を取ることはできるか? 他に、日本が他の惑星に転移したという可能性も考慮したら、世界の他の国も同じ事態に巻き込まれている可能性がある。飛べるところまで全方位に自衛隊機を偵察に飛ばせば、他国の国土に辿り着き直接連絡できるかもしれない」

「防衛省職員ならびに自衛隊に早速そのように指示します。自衛隊機の航続範囲内で他国と連絡が取れる可能性が高いと思われる、ロシア領、中国領、韓国領、台湾領方面を優先しましょう」

「文部科学省の方ではJAXAに頼んで、急ぎ地球を観測できる新しい衛星を打ち上げてもらいたい。大至急、最優先でだ。今までに打ち上げたはずの衛星との通信回復の努力も一応は続けてもらうとしても、最悪の事態を想定し衛星は失われたという前提で行動するのだ。そうすれば、もしここが地球と異なる惑星だという途方もない説が正しいとしても、未知の惑星の地図が作れる」

「了解しました」

「国民には判明している事実を全て伝えよう。朝にはマスコミを呼び政府から発表を行うが、それだけでは心ともない。Jアラートも使えるだろうか?」

危機と言える異常事態を乗り越えるには、秩序だった行動が不可欠である。

暴動を起こし秩序を乱すのは愚の骨頂だ。

小林悠介は、正しく情報を伝えられた日本国民のほとんどは社会と秩序を守るために賢明な行動するだろうと、国民を信頼していたのである。

他にも、おそらくは無人となっているだろう在日米軍基地に誰も侵入しないよう警察を警備に派遣する等、さまざまなことが会議で決まり、未知の異常事態への対応が大まかに決められ、会議は終わり政治家の仕事はとりあえずひと段落ついた。

次は官僚たちがそれらの方針を実行に移すだろう。

「それではこれで会議を終え解散とするが、皆は最悪の事態を想定して考えていてくれ。各国とのアクセスが完全に失われたままで日本が孤立した場合、どうやって日本を守り社会を維持するか、それに必要な案を、次の会議までにそれぞれの立場から何か出せるようにするのだ」

小林悠介はそう結んだ。


 翌日朝には、水平線の見え方がおかしいことに気がついた者たちが現れ、それを元に惑星の直径そのものが変化していることが確認された。

日の出が時間が本来そうであるべき時間と異なることも判明する。

夕方には日没時間が異常であることが確認される。

また、重力も、体感ではわからないが今までに測定されていた数値と異なることが判明する。

これらの事実と、夜空の星の配置から、日本の国土は未知の異星に転移したと言う説が俄然有力となり、日本国民は異星への国ごと転移をほぼ事実として受け止めた。

韓国や中国やロシアや台湾を、自衛隊機の行動半径内で発見することはできなかった。

しかし、北海道の基地から飛び立ちさらに東に進んだ自衛隊機が陸地を発見することに成功した。

しかも非常に大規模な都市があるようだ。

パイロットは、山のように巨大な建造物が多数寄り集まって都市となっている様を見た。

それは百合帝国のアーコロジー群であった。

日本の後世の歴史書では、これが日本国が異星で地球外生命体の文明を目撃した最初の事例であり、パイロットがその最初の日本人であると記されている。

転移編はこれでおしまいなのです。

次回からは接触編なのです。

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