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日本国・魔法の復活ーその2

 2023年某月某日、日本国、東京都内のとある大学構内。

心理学部の教授である石田智也は思索に沈んでいた。

ことの起こりは数日前である。

突如として『何か』としか言いようのない何かを感じるようになったのだ。

この何かで何かが出来そうな気がする…そんな奇妙な感覚を覚えた。

妄想を疑った。

自分は唐突に、前触れもなく何らかの妄想に取りつかれたのだろうか。

時間を作って近いうちに精神分析医に相談すべきかもしれない。

最初はそう思ったのだ。


 しかし、どうにもこれは自分だけではなかったことを彼は知った。

「先生、俺に超能力…というか何というかがあるかもしれないんです。先生は昔、オカルトバスターとして自称超能力者とかを相手にされていたことがあるそうですね。俺に何か…というか、があるかないか確かめていただけませんか」

と、学生が相談を持ちかけてきたのである。

智也の過去には、確かに学生の言うようにオカルトバスターとしてインチキ超能力者のインチキを暴いたこともあった。

それに彼の研究室では今でもいわゆる超心理学に分類されるジャンルの研究をしているのである。

むしろ彼はオカルトを否定するためではなく、どちらかといえば超能力や死後存続といった事柄を証明するために研究している学者だった。

それがオカルトバスターと呼ばれるようになったのは、懐疑的視点から科学的な手法で分析すれば、超能力者がインチキだったり、霊能力者の言葉が出鱈目ばかりであることが判明する事例しかなかったためである。

その関係での著書もあり、彼の名前を知るものは『インチキ能力者を退治する大学の先生』という認識が多い。


 彼は学生とともに自分の研究室に向かい、超能力があるかどうかのテストを行ったのである。

結果として、学生には明らかに、今までの物理学では説明できない『何か』があった。

手品やイカサマの余地のないよう厳重に監視下に置かれた試料に学生が念をこめると、加熱されたり冷却されたり、という超常現象が起きることが確認されたのである。

加熱は数百度ほどにまで温度が上がり、ついには熱で試料が融解した。

冷却もマイナス数十度にまで温度が下がった。

計器の誤差や測定ミスといったことの入る余地はなかった。

間違いなく超常現象であった。

智也は、学生から方向性と構造を持つ何かが試料に向かっているのを感じた。

どうやら『何か』は自分の妄想ではないようだ。

それにしてもなぜ突然『何か』を感じるようになったのだろうか。

学生はどうやら本物の超能力者のようだが、なぜ今までも科学者たちが真摯に研究を行い、そして見つからなかったものが突然現れたのだろうか?


 いずれにしろ、自分の人生は報われた。

人間には確実に超常の何かがあるのだ。

智也は感慨に浸った。

「ところで君が自分に『何か』があると思うようになったのはいつなんだ?」

「俺、数日ほど前から突然『何か』を感じるようになりまして…」

どうやら学生は自分と同じのようだった。

と言うことは、もしかしたら他の人間にも同じことが起きているのではないだろうか…。

そう思った智也は講義の時間に、学生たちに向かって「君たちの中に、急に何か…何というか力の感覚を感じるようになったという人はいないかな? いたら手を挙げてくれ」

講義室にいく本か手が挙がった。

最初は数本だったが、他人が手を挙げているのを見た学生が我も我もと手を挙げて、やがて全ての学生が手を挙げた。

どうやらこれは特別な個人だけのことではなく、当たり前のように誰にでも起きていることらしい。

最初に挙がった手が数本だったのは、『何か』が自分だけの妄想か錯覚ではないのかと考えている者が多かったのだろう。


 これは特別な現象ではなく、普遍的なものである可能性が高い。

今ではネットが地球を覆い尽くしている。

世界を相手に情報を得ることも発信することも容易い。

智也はネットで『何か』に関する情報を探した。

検索エンジンに思いつく限りワードを放り込む。

いくつもの事項が引っかかった。

今の所、多数の人間は、『何か』を妄想か錯覚の類かと思って無視しているようだが、この現象…、人々が突然『何か』を感じるようになるという出来事は日本、いや世界中で起きているのだ。

そうした『何か』に関する検索事項の中でも一際気になるのが、誰かが『何か』を用いて人を殺したという目撃譚であった。

松井智子の起こした事件である。

智也はブラウザに表示された文章を読み込み、どうやらガセではなく真実である可能性が高いと結論づけた。 

(『何か』を使えば人も殺すことができるようだな。目撃者がいるとはいえ、今の日本の司法で、なんだかわからない『何か』で人を殺したなんて事件を立証するのは難しいんじゃないか? いや、事態はもっとマズイ。『何か』を使えば凶器とか物証とかもなく、もしかしたら検死でも死因不明で人を殺すことができるということが知られたら、『何か』で白昼堂々と殺人を行う奴もきっと現れるぞ。)

海外の超心理学の研究者にメールを送り、日本で起きている事件や本物の超能力を確認したことを連絡する。

メールボックスに送られてきてる研究者仲間のメールを読むと、海外でもやはり、本物の超能力を確認したり、人々が突然『何か』を感じるようになったことがわかった。

智也はメールに返信したり、研究室のホームページに超能力の確認と何かについて掲載した後、どうしたものかと思索に浸るのであった。

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