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百合帝国と純粋神聖クエーサー帝国・接触ーその7

 クエーサー帝国外務省の製作した映画は海の向こうの大陸を支配していると思われる知的種族に自分達を紹介するためのものである。

まず初めはクエーサー帝国の人類の紹介から始まった。

帝国は複数の民族から構成されているが、多少の外見的差異こそあれ全て種としては同一である。

帝国の存在する大陸は住民たちによって『シャイタンパー』と呼称されている。

そのため知的生物としての種族名は『シャイタンパー人』もしくは『シャイタンパー人類』を称している。

映画の最初のシーンはシャイタンパー人そのものの説明であった。

全裸の男女の姿、筋肉、骨格、内臓の解剖図。

かつてシャイタンパー人は有限寿命者であったが、この大陸では産業革命により不老と若返りの魔法の恩恵が全ての人間が受けられるまでに普及しており、ほぼ不老種族と言って良く、事故が起きない限り彼らは半永久的に健康的に生き続けるだろう。


 シャインパー人の説明が終わり、次はシャイタンパー大陸と純粋神聖クエーサー帝国の歴史となった。

その中でも重要な事件は、現在もなお君臨する現人神女帝クエーサーの即位と、産業革命の二つである。

不老長寿と若返りの魔法は、魔法の医療分野への応用に関して天分を持つ現人神女帝クエーサーが編み出したものであると記録されている。

当時は発動させるのがほぼ不可能に近かったこの魔法を、彼女は特殊な手段で発動させた。

女帝に即位するために投獄した政敵を有効利用したのである。

彼女の政敵と一族は族誅に処され、生贄として余さず全てを搾り取られ魔法の発動に使われることとなり、現人神女帝クエーサーは永遠の若さを手に入れたのであった。

それ以降、不老長寿の賢帝の元にクエーサー帝国は繁栄することとなる。

彼女の賢明な統治が寿命を超えて行える学習の賜物か、元から資質があったのか、当時を知るものはもはやいないのであった。

そしてクエーサー帝国はシャイタンパー大陸で一番の大国となることになったのである。

かつては一国で必要な資源を全て一国のみで賄うという国是の元に侵略戦争を行い、幾つもの国を征服したこともあるクエーサー帝国だが、今は穏健な平和主義国家だそうである。

『『『…暴君かな?』』』

百合帝国の者たちは、自分たちの価値観に照らしあわせちょっと疑問に思わなくもなかったが、何分純粋神聖クエーサー帝国人は異種族で異文化の人類たちなので気にするのをやめた。

そして産業革命である。

社会を変革しうる重要な発明がいくつもなされ、帝国は急速に変化した。

最も重要なものは魔力石を作成する魔法である。

魔力石に魔力を貯めることにより、本来なら発動できないような魔法を発動させることも、長時間魔法を持続させることもできるようになる。

かつては発動に多くの人間を生贄としなければならなかった不老長寿と若返りの魔法はこの発明によって万人の物となったのである。

この場にいる百合帝国の者たちは皆、魔法に強い好奇心を持っており、魔法文明の産業革命には興味津々なのであった。

骸骨模型を操るための魔法も社会に大きな変革をもたらした。

人間の動作をほぼ再現できる骸骨模型を操るこの魔法は人間による多くの労働を代わって行えるのであり、社会のあらゆる場面で使用されることとなったのである。

研究者が元素の周期表と原子論を発表したことも、間接的に社会を大きく変えることとなった。

魔法の冶金や化学、材料への応用がこれにより急速に進んだのである。

『『『やっぱりあったんだ』』』

純粋神聖クエーサー帝国の鋼鉄を建材として作られた街に効率的な製鉄法の存在を推察していた百合帝国側は、魔法の冶金への応用に納得していた。

洗練された加熱の魔法で駆動する蒸気機関が発明され社会のあらゆるものを動かす原動力となっていった。


 映画は続き、歴史の次は現在の帝国の姿だ。

映されるのは鋼鉄の装甲帝都クエイスシャイタンの街角だったり、歴史的建築物であったり、風光明媚な地であったりする。

最も百合帝国側の興味を惹いたのは、魔法を用いた各種産業だった。

そして映画は終わった。

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