百合帝国・リアル小女子ごっこ
百合帝国・アーコロジーの片隅。
アリス・リデルは、『リアル小女子ごっこ』と呼ばれる遊びをしていた。
今の彼女の身長は千分の一程にまで縮小しているのである。
小さい。
あまりにも小さい。
普通サイズの人間が今の彼女にそっと触れただけでも、骨片混じりの肉塊に容易く成り果てるであろう圧倒的なまでの脆弱さである。
脆弱なだけではない。
あまりにも無力だ。
普通サイズの人間の髪の毛一本動かすことすら今のアリスにはできない。
それだけではない。
遅いのだ。
千分の一の彼女は歩行速度も千分の一でありジャンプできる長さや高さも千分の一となっている。
同サイズの虫に比べてもさらに無力で脆弱で動きも遅い虫ケラの中の虫ケラ、それが今のアリスであった。
仮想現実を用いれば簡単に、人間の想像しうるあらゆるシチュエーションで『小女子ごっこ』を遊ぶことはできる。
仮想現実空間で、逆に『巨大美少女ごっこ』を遊ぶ百合帝国人もいる。
街中を巨大美少女になって歩きまわり、時には生きている人間と全く区別のつかない挙動をする人工知能制御のノン・プレイヤーズ・キャラクターを踏み潰したり食べたり、建物を破壊して嗜虐心や破壊衝動といった本能を満たすのである。
小さいノン・プレイヤーズ・キャラクターと戯れるという遊び方もあるが。
ちなみに仮想現実で再現する都市は殆どの場合、始祖種族の時代の都市の記録をもとにしている。
今の都市は整然としすぎ、超高層建築物とアーコロジーが林立しすぎてカオスが不足しているのである。
巨大美少女になる際の大きさは好みによって差があるが、例外も多いがおおむねは十倍〜十万倍ほどに収まる。
仮想現実では人間の想像できることはなんでもできる。
巨大美少女ごっこと小女子ごっこを組み合わせ、二人以上で一人は巨大美少女として都市を襲い、一人はありんこ美少女として、巨大美少女から逃げ惑うノン・プレイヤーズ・キャラクターのさらに足元を踏み潰されないよう逃げ惑うというシチュエーションだって簡単だ。
二人以上で巨大美少女ごっこや小女子ごっこを楽しむ時には、それぞれサイズ差倍率を変えることは一般的なのである。
巨大美少女ごっこや小女子ごっこのようなゲームは人間の嗜虐心等の原始的欲求を他人を傷つけることなく満足させ精神的社会的平穏をもたらす、道徳的によい行いであると百合帝国ではみなされていた。
しかし、アリスがいるのは仮想現実空間ではなく、現実世界であった。
彼女はあまりにも広大な床にポツンと立っている。
端から端まで歩いて横断すると半日くらいになるかもしれない、あまりにも広大な部屋だ。
彼女のいる頭上は巨大な、丸テーブルの足が優美な曲線を描く壮麗なアーチとなり十字形に交わっていた。
十字の中心からは、天に向かってどこまでも高く支柱が聳え立っている。
そしてその聳え立つ支柱は、下から見上げても莫大な質量を持つことがひしひしと感じられる、巨大な天蓋を支えているのであった。
彼女が普段、友達とのお茶会や食事の際に使用する、せいぜい4、5人座ればいっぱいの丸テーブル。
それは、虫のように小さい今のアリスにとっては、実に壮麗な巨大建造物に見えた。
大きさというものはこれほどに人の原始的感性に訴えかけるのだ。
前世の感性を残すアリスは、なぜ古代日本人が巨石巨木や大山を崇拝対象としたのか実感していた。
そして彼女を取り囲む巨大な物はそれだけではなかった。
靴である。
黒い靴、赤い靴、白のハイヒール。
それは三人の女の子の靴であった。
なんという大きさであろうか。
大きめの靴もあれば小さめの靴もあるが、一番小さい靴でも、踵からつま先まで太平洋戦争時の空母の全長に匹敵する長さがある。
重量ともなれば空母も比較にならないだろう。
なにしろ靴は足を包んでいるのだ。
その血肉の膨大な重量はとてつもないものになる。
靴の主が床に置かれた空母にそっと足を乗せる…、それだけで空母はアルミホイルでできているかのように潰れ平たい鋼板に変えられるだろうと予感させる。
そして足だけではない。
足は壮大にしてあまりにも優美な美脚につながっていて、それは天に向かって聳えているのだ。
椅子に腰掛けた三人の少女達の脚である。
天を摩す女神の御柱が六本ともいえようか。
少女の脚にフェティシズムを感じる者であれば、その場で平伏して拝むのではないだろうかと思わせる神々しく素晴らしい風景だった。
サヤカが脳内コンピューターとネットを経由して、声を出さずに他の二人にメッセージを送る。
サヤカのハイヒールは白だった。
『アリスちゃんが時間なのにこないし、連絡も無いのはきっとリアル小女子ごっこを遊ぶ気なのね』
それに応えたのは赤い靴のリーリスだ。。
『じゃあ、アリスちゃんは今あたしたちの体を登っている最中なのかしらね? ちゃんとリアル小女子ごっこの作法で、この場にいないことにしてあげなきゃダメよ。みんな気をつけて?』
『もちろんヨ! リーリスちゃん! アリスちゃんはここにいないワ! そうよネ!』
それに黒い靴のキャロールが応えて言った。
サヤカがさらにそれに応える。
『キャロールちゃんも忘れちゃダメだよ?』
キャロールはさらに応える。
『どうしよウ? アリスちゃん見つけてあげようかナ? 気が付かないふりして『ぷちっ』ってしちゃう?。ワタシたち『アリスちゃんが小さくなってるなんて知らない』んだし』
『キャロールちゃんいじわるねー、ちゃんと私たちの視界に入ってこられたら生かしておいてあげましょ』
と笑いを交えつつサヤカが返した。
あまりにも巨大な三人の、もはやアリスから見ると女神とすら思える女の子たちが談笑を始めた。
小さいアリスにとっては、雷鳴が轟くよりも凄まじい美声だ。
彼女の聴覚には一応は、過度な刺激に対する防護は施されているので、なんとか耐えられてはいるが、そうでなければ聴覚が失われたかもしれない。
もちろん『アリスはここにいない』という設定であるのでアリスに語りかける言葉は無い。
しかしアリスに聞かせる前提での発言でもある。
アリスの所有する美少女アンドロイドメイドが彼女らにお茶を淹れ茶菓子を配っていく。
なんという力強さの歩行であろうか。
アンドロイドメイドが一歩足を踏み出すごとに、アリスの耳には轟音が響き大地は鳴動する。
メイドの一歩ごとにアリスは宙に浮いていた。
(私ってなんてちっちゃいのかしら? 私このままどうなっちゃうのー?!)
小さいからと言って無力な身に甘んじてはいられない。
アリスは三人の巨大女神の視野に入るべく、最善を尽くしていた。
まずは彼女たちの誰かの脚を登るのだ。
アリスは赤い靴の少女…リーリスに目星をつけていた。
一番背が低いリーリスの脚は少しは登りやすいだろう。
逆にサヤカの脚はあまりにも長大に過ぎる。
(見る分には素晴らしいの一言なんだけどね)
リーリスの靴を踏破するのは苦労が多かった。
リーリスがわずかに足を動かす…、それだけでもアリスにとって震度七の大地震にも匹敵するような大変動なのである。
それでも必死で足の甲に到達する。
リーリスが足を動かすたびに赤い靴にしがみつかないと、アリスはリーリスの足の動きだけで遠くに放り出されて床に叩きつけられて肉塊となって死んでいたかもしれない。
踏み潰されなかっただけでも一生分の運を使い果たしたいのではないかとすら思える。
彼女の足の甲は白く汚れのないソックスに覆われていた。
舟状骨の上のソックスの大地を踏破し、距骨に到達した時には傾斜はきつく、手足をかけてよじ登らねばならなくなっていた。
とはいえ千分の一サイズのアリスにとって、リーリスのソックスの繊維の目は荒い。
充分に手足をかけることができるのである。
「それでねー、アリスちゃんってちっちゃくてすんごい可愛いよね。あんな可愛い生き物って宇宙に他にないよね?」
巨大な少女たちは、アリスがこの場にいないという設定を守りつつ楽しく語り合う。
話題はアリスの褒め言葉だらけである。
百合帝国ではその場にいない友達を褒めちぎることは盛り上がる話題なのであった。
友達を褒めれば、その友達の自分の格だってそれだけで上がる、百合帝国において人の口噂というのはそういうものだ。
しかし褒められまくるアリスにとってはそうではない。
彼女は赤面のあまり顔から火を吹きそはうなほど恥ずかしかった。
早く巨大な女神少女達の視野に入って話題を変えないと赤面で死ぬ。
(私はいるよー! ここにいるのよー!)
リーリスの脛あたりのソックスを登る手足を早める。
「あら? あたしアリスちゃんを見つけちゃったかも」
リーリスが話す。
「え? もウ? 早いわネ」
とキャロールはテーブルの、リーリスの前のあたりに目を凝らした。
「ううん、そこじゃないわ…」
アリスにとっては天変地異とも言える大変動だった。
リーリスが椅子を引き、脚を動かしたのだ。
アリスの主観では、これだけでも映画のワンシーンのような大スペクタルである。
リーリスは身を屈めて、アリスが必死でしがみついている、膝の辺りに顔を近づけた。
じっと目を凝らす
アリスがいる。
なんとアリスは小さいのか。
青のエプロンドレスに身を包んだアリスは、青と白の、あまりにも小さ過ぎる虫のようだった。
アリスはリーリスから見た自分がありんこより小さいことを、ひしひしと感じていた。
指で摘もうなら、アリスは潰れてしまうだろう。
そんなことは無理だ。
リーリスは自分の膝の下の方、アリスのちょっと下の方にそっと指を触れた。
呼吸はなるべくゆっくりとする。
小さ過ぎるアリスは、リーリスが強く息を吐いただけでどこかに吹き飛ばされるかもしれないのだ。
ずしり。
リーリスの肌という大岸壁が揺れる。
リーリスの膝、アリスのわずかに下の方に、リーリスの人差し指が触れたのだ。
とてつもない大きさの、美しい肉の大山である、リーリスの顔がこちらを見つめていた。
(リーリスちゃん私を見つけてくれたのね!)
アリスはしがみついていたリーリスの肌から手を離し、思い切ってリーリスの指に飛び降りた。
ありがたいことに、リーリスは指の腹を上にしていた。
もしリーリスが爪の方を上にしていたら、固い爪に飛び降りたアリスは怪我をしたかもしれない。
リーリスにとって『わずかに下』というのは、アリスにとって身長の倍くらいにはなる高さである。
リーリスは、アリスが吹き飛ばされないようゆっくりと指をテーブルの上に持っていく。
ゆっくりというのはリーリスの感覚で、アリスにとってはものすごい速さと高さでの空中大冒険である。
落ちたら死ぬ。
リーリスはそっと、そーっと指の腹を上にしたまま、テーブルの上に指をつけた。
アリスにとっては、体がわずかながら宙に浮く衝撃である
アリスはリーリスの指の側面に手足をかけ、ゆっくりとテーブルの上におりた。
『リアル小女子ごっこはこれでおしまいね? いつもながら圧倒的に巨大なみんなを見上げてその強大さを味わうのはなんともいえないわね』
アリスの小ささではどんなに大声をあげても、三人の天上の巨大美少女にとどきはしないのである。
アリスは脳内コンピューターとネットを介してメッセージを伝える。
あまりにも広大なテーブルの中央あたりで巨大な彼女らに見下ろされると自分の小ささがあらためて感じられる。
アリスにとって皇居が五つか六つくらい乗ると思える広大な天空の大地は、巨大美少女達にとっては腕を伸ばせば端に届く広さであり、その果ての絶壁の向こうから、アリスを囲んで三人の巨大美少女のお腹、胸、顔が聳え立つのだ。
「あら? アリスちゃん、せっかく小さいんだからこのままでもう少しお茶を楽しみましょうよ」
とサヤカが提案する。
「そうね、アリスちゃん、お菓子食べヨ?」
キャロールにとってはそれは指で摘める大きさの四角い塊である。
潰すことも簡単だろう。
澱粉を豊富に含むテフという植物の種子を粉にしブドウ糖を加え甘みをつけ四角く焼き上げたテフリアというものに、油脂を多く含む植物であるキュルを手の温度で溶けず口の中の温度で溶ける絶妙なバランスで練り上げたキュルールアというものをかけた菓子である。
地球の記憶のあるアリスに言わせるとこれはチョコレートをかけたクッキーに近い。
最も、焼き菓子の部分は食感はクッキーに近くとも異なる芳香がするし、チョコレートのような物も、食感こそチョコレートに似ているが全く異なる芳香がする。
香りは味覚にとって重要である。
最初食べた時は未知の味覚体験だったが今ではすっかりこの百合帝国版チョコレートクッキー(のようなお菓子)、キュルールア・テフリアに慣れたアリスであった。
彼女が逆に今、地球のチョコレートクッキーを食べたら驚くのではないだろうか。
アリスから見ると一軒の家ほどもあるキュルールア・テフリアを二本の指でそっと、軽々と摘みあげたキャロールはそっとアリスの傍にそれを置いた。
キャロールからも今のアリスがどれだけ小さくて無力かは、まあ知っている。
お菓子をつまむ指に僅かに力を加え、テフリアとキュルルーアにヒビを入れて砕いてあげよう。
(これでちっちゃなアリスちゃんにも食べられるわネ?)
それはアリスにとって、僅かに指に力を入れるだけで簡単に一軒家を粉砕する圧倒的な力であった。
アリスは友達の好意を素直に受け入れ、テーブルの上にこぼれ落ちた、キュルールアとテフリアの破片を食べているようだ。
アリスはテーブルにペタンと座っている。
キャロールは思わず声を上げた。
「ちっちゃくて可愛いアリスちゃんがもぐもぐしているノ、すっごく可愛いわヨ!」
『そうかしら? でもちょっと声を小さくしてね。私、キャロールちゃんの声だけで吹きとびそうなの。ちょっとひと吹きされたらどこかに飛んでいっちゃうわ』
あまりにも小さいアリスと巨大な三人の少女の和やかな時間であった。
『ちょっとお菓子ばかりだと喉が渇くわね。お茶をもらえないかしら』
声を出しても聞こえないので、アリスはネット経由で三人の巨大少女に話しかけた。
「そうね、メイドさん、ちょっとお茶を一杯お願いするわ」
サヤカが声をかける。
程なくして、アリスのアンドロイドメイドが部屋に現れ、香り高く熱いお茶をティーポットからカップに注ぎ立ち去っていった。
そっとメイドが持ち手をちょいとつまんで持ち上げ、テーブルに置いたティーカップは、アリスから見ると高さは十階建て程の雑居ビルくらいあり、直径は二十階建ての高層ビルを横にしたくらいよりも大きいのである。
「じゃあアリスちゃん、乗ってね」
ずしり。
サヤカが人差し指を、爪の方を上にして、アリスのそばにそっと、そーっと下ろした。
(サヤカちゃんの指、なんて大きくて綺麗なのかしら)
アリスは内心で感嘆のため息をつきつつリーリスの指に手足をかけよじ登り、爪の上に立った。
サヤカの指はアリスの身長を7倍くらいした程はあるのではないだろうか。
ほっそりと美しい太い指である。
『サヤカちゃん、じゃあお願いね!』
空の向こうのサヤカの顔に向かって手を振る。
サヤカはティーカップの縁に、アリスののった爪の先を触れ、そして爪の方にティーカップを傾けた。
アリスが水面から直接お茶を飲めるようにである。
アリスは長さが、小学校のプールの半分ほどもある爪の先端まで移動し、お茶の水面に顔を近づけた
その時、お茶と談笑を楽しむ四人の少女の脳内コンピューターでニュース番がニュースを知らせた。
彼女達は、一様にこの惑星の調査と外交に興味を持っていたため、この分野に対するセッティングは同じようなものだ。
『評議会はこの惑星の原住文明と思われる巨大都市へと使節と調査のため人員を派遣することを決定しました。つきましては人員を募集しますので興味のある方は立候補をどうぞお願いします』
「きゃあ!」
ニュース番に気を取られたサヤカの手が僅かに揺れた。
サヤカにとって僅かというのは、小さいアリスにとって大地震に匹敵するのである。
アリスはティーカップの中に転げ落ちた。
「がぼっ」
熱く香り高いお茶が口の中に入る。
あまりにも小さいアリスは、熱が通るのも早い。
アリスはあっさりと、熱いお茶により茹でられ死んだ。
彼女の死体がティーカップの中に浮かぶ。
「あら? アリスちゃん? おーい大丈夫なの?」
気づいたサヤカが声をかけるがもちろん応えはない。
「どうしたノ?」
とキャロール。
「アリスちゃん動かない…死んじゃったみたいね…飲んじゃお」
サヤカはアリスの死体をお茶と一緒に飲み込んだ。
アリスは小さすぎて喉に引っかかるなんてこともない。
「アリスちゃん入りだとお茶もいっそう美味しい気がするわ」
「とりあえず、どうして評議会が、こちらから使節を派遣することにしたのか理由を見てみましょ?」
そして彼女達の意識上にその理由が浮かび上がる
派遣を決定した理由は、この惑星の原住文明のものと思われる巨大都市で、百合帝国とは異なる未知のテクノロジーの使用が確認されたからであった。
衛星からの映像では空港とも思える施設に巨大な物体が着地している。
飛行船のようにも思えるその物体だが、積み込まれる積み荷の量と乗り組む人員の数が明らかにおかしい。
この大きさの水上船舶ならあり得る量だ。
その飛行船は、積み荷と人員を乗せた後、浮遊し移動していった。
この飛行船は明らかに未知のテクノロジーで浮上している。
評議会はそう判断し、未知のテクノロジーを持つ文明との接触は有意義であるという考えの元、調査と接触のために人員を派遣することを決定したのである。
そうしているうちに部屋の扉が開き、アリスが入ってきた。
普通の大きさである。
「茹でられ溺れてドザエモンなんてなかなか酷い死に方をしたわ。ダメになった私の生体遠隔操作義体は捨てちゃいましょ」
「飲んじゃった」
「あら…、私なんか飲んで美味しいのかしら」
「アリスちゃんが入っていると思えばなんでも美味しいわよ」
彼女は隣の部屋の寝台に身を横たえ、ネット経由でオリジナルの千分の一の大きさに作成された生体遠隔操作義体を、五感をリンクさせて本来の自分の体の如くに操っていたのであった。
無力な小女子の気分を満喫するため、生体遠隔操作義体は非常に無力で脆弱に作られている。
「リアル小女子ごっこは突然とか偶然の要素がすごいのよねぇ…茹で溺れ死にするなんて思わなかったわ」
「後でネットにアリスちゃんの感覚体験記録をアップしておいてね。後で千分の一のアリスちゃんの感覚で見た私たちを楽しみたいの」
「私は日本に大使館ができたら、しばらくそっちに行くつもり…。最初に使節として赴いたからこの立候補も通ると思うわ」
アリスは言った。
「私もアリスちゃんに付き合うわ。一緒にいくわよ」
とサヤカ。
「じゃあ、ワタシ、今回の派遣人員応募に立候補しようかナ? アリスちゃんとサヤカちゃんだけ未知の文明への使節役をしたんだカラ、次はワタシたちよネ」
とキャロールは、リーリスの方を向いて言う。
「そうね、じゃああたしも政府に立候補の連絡を入れておくわ」
とリーリスも乗り気である。
そして続けて、
「でもそうしたら、しばらくリアルでは会えないね。仮想空間でもお茶会はできるけど」
と言う。
「じゃあ、今日はリアルお別れパーティーネ。ミンアで仮想空間で巨大美少女ごっこと小女子ごっこをしましょウ?」
と、キャロールがつなげた。
そしてさらに続ける。
「アリスちゃんはさっき小女子役だったカラ、次は一番大きい巨大美少女役ネ! 十万倍くらいはどう? 私は一番小さい小女子になろうかしら? 大きさはやっぱり千分の一がいいかナ」
仮想空間はなんでもありであるので、巨大美少女ごっこや小女子ごっこの際にはあらかじめ設定を細かく打ち合わせなければならないのである。
時に、遊びの相談とは遊びそのものより楽しいものである。
彼女らは楽しく相談に華を咲かせた。
百合帝国は今日も平和である。




