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思い寝
可惜夜の街を彷徨って
取り留めもなく歩く
澄み渡る夜空
青藍に星が瞬いている
橋の上に佇む少女が
物憂げな表情で
川面を見つめている
君は誰を
いま想っているのか
どれだけ時間が経っても
あなたへの思慕が
薄れることはなかった
最後にあなたが浮かべた
微笑みで
私の心は愛染されてしまった
あなたの透き通る声は
いつも私を
深く惑溺させた
あなたに会えない時間が
増えれば増えるほど
恋衣が染められていった
愛の詩を
奏でよう
いま、あなたに
こんな孤独な夜は
どうしようもなく
あなたを追慕してしまうから
あなたと過ごした日々が
忘れられずに
愛惜の念が私を包み込むから
三日月の美しい
瑠璃色の光のように
愛の詩を
奏でよう
また、あなたに
叶わないと知りながら
ずっと
ただ盲愛に溺れていた
あの日のように
いつまでも
何度も
二藍に染まる夜明け
街はもう目覚めようとしている
やがて空が
秘色に染まりゆく頃
教えてもらった歌を聴きながら
私は思い寝に落ちるのだろう




