114/166
白の日傘
前を歩く君の背中が
どんどん離れていく
小さくなっていく
必死に足を速めても
君にはもう追いつけない
君の細い背中が
離れていく
その後ろ姿を
ずっと観ていても
君は振り返らない
けして振り返らない
やがて歩きながら
君は
片手に持っていた
白の日傘を差した
まいったな
太陽すら君の横顔を
観れないというのに
もう僕が君の
表情を読むことなんて
出来はしないのさ
先を歩く君の背中が
どんどん離れていく
小さくなっていく
涙とも汗とも言えない雫が
君を霞めていく
白の日傘が
ぼんやりと滲んでいく




