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『屏風の虎の朗読』

作者: 成城速記部

 一休さんは、まだ小坊主ですが、とんちがきくということで、村人から評判でした。

 しばしば、大人をやり込めるので、評判が高まり、お殿様のお耳にも入るほどでした。

 お殿様はお殿様で、小さいころから神童の誉れ高い方でしたから、一休さんに嫉妬心もあったのでしょう。意地悪をしたくなりました。

 呼びつけます。

 これ一休。この屏風の虎が、夜な夜な抜け出して、問題文を朗読するという。それを速記しないと、食べられてしまうのじゃ。退治してはくれぬか。

 だって…、絵ですし…。絶対、朗読なんかしないタイプの口ですし…。

 もちろん、一休さんは、これがお殿様の意地悪であることはお見通しで、どうやって、気のきいたことを言うのかが勝負であることは、よくわかっていました。

 さて、どうしたものでしょう。

 一休さんは、ねじり鉢巻にたすきをして、速記シャープを持って、屏風の前に立ちますと、虎と対峙します。

 お殿様としては、退治しろって言ったのに、対峙するとは、やるじゃんと思いつつ、もうひとひねりを期待していました。

 お殿様の読みは、一休さんが、速記するから虎を追い出せ、というものでした。こういえば、お殿様が困るだろうと思うだろうという読みです。お殿様は、わくわくしていました。一休さんが、虎を追い出せと要求してきたら、速記で勝負せい!と一喝するつもりでした。

 でも、言わないんです。じりじりと屏風に寄るような、離れるような感じで、時間をかせいでいるかのようです。

 お殿様が、いいかげんにせい!と、どなろうと思ったそのとき、一休さんが動きました。小憎らしいやつです。小憎らしい小僧って、既視感出ますよね。

 一休さんは、屏風に速記を書き始めました。

 習字をやったことはありますか。一枚の紙に、何度も何度も字を書いて、真っ黒になるまで書きなさい的なあれです。

 一休さんは、屏風に何百回も速記を書きました。真っ黒になるまで。で、お殿様に言いました。

 これで虎は消えました。これで虎に悩まされることはないでしょう、と。

 なるほど、想定外の落ちでした。もともとつくり話ですし、お殿様は、一休さんに、黒と黄色のプレスマンを遣わし、いつかぎゃふんと言わせてやろうと、決意を新たにするのでした。



教訓:一休さんが屏風に書いていたのは、『山月記』とか、「我奇襲ニ成功セリ」だったとか。

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