ヲタッキーズ78 ゲートウェイの死角
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第78話"ゲートウェイの死角"。さて、今回は軍事機密を載せた飛行艇が神田川に謎の墜落!
背後には、首都圏の防空システム無力化を図る謎のスパイ組織が暗躍、スーパーヒロインの影もチラついて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 秋葉原ゲートウェイ空港
"秋葉原ゲートウェイ空港"の滑走路は、神田リバーだ。
「御主人様、現在地は?」
「超短波全方向式標識まで、あと10分かな」
「食事に戻る?」
空港警察のパトロール車が真夜中のリバーサイドを下る。
「キッチンの妖精さん次第だね」
「それじゃ後で。お絵描き付きょ」
「推しゴト、頑張るょ」
ラブラブなアキバトークをかき消すような金属音!
急停車したSUVのパワーウィンドウがスルスル開く。
「うわぉ!」
頭上をかすめるように焔を噴く黒い十字架がフライパス!
そのママ、神田リバーの川面へ突っ込み大爆発を起こすw
「御主人様、どうしたの?今のは何?」
「飛行艇が墜落した!」
「え!何処に?」
「神田リバー…後でかけ直す!」
リバー沿い1直線になって漂う残骸が火を噴いてるw
「メイデイ!メイデイ!緊急事故班は現場へ…」
空港からの無線は、絶叫に絶叫が答え混乱の極みw
「最悪だ。ひどい…おーい。誰か生きてるか?」
ライトで川面を照らすと…腕が浮いてるwその時、物音←
「誰だ?」
銃声。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほぼ同時刻の"潜り酒場"。
「テリィ様!アフターの最中に!」
「いや面目ない。久しぶりの地球でjet lagならぬspace lagで…あれ?ミユリさん、鍵をかけ忘れた?」
「え。」
灯りを点けたら…思いっ切り荒らされているw
酒瓶やらグラスやら粉々の破片が散乱してる←
「ミユリさん、未だ犯人がいるカモ!変身だ!」
「え。私のコスプレを見たいだけ?」
「うっ…良いから!早く!」
渋々白のヘソ出しセパレートのムーンライトセレナーダーに変身するミユリさん。僕の推しはスーパーヒロインなのだw
「御満足ですか?テリィ様」
「うん!色々とヤル気が出て来た!」
「あ・と・で。あぁDVDプレーヤー、PCも持って逝かれました。長年、この街で御屋敷をやってて初めてだわ…あら?ビール1ケースとミキサーも?何であんなモノを…」
ミユリさんはスマホを抜く。
「あ、ラギィ?御屋敷に泥棒が入ったの。いいえ、無事ょ…え?泥棒の方?笑…ただ、色々と盗られて。何?警察に通報して?あ、そう。わかったわ」
ラギィは、万世橋警察署の敏腕警部で御屋敷の常連だ。
「ラギィ、来てくれないの?」
「はい。飛行艇が墜落したとかで…」
「場所は?」
"潜り酒場"は、高層タワーの最上階ナンだけど、ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーが指差す夜明けのアキバの街影に焔の1直線が見える。使徒襲来みたいw
「神田リバーか…あれ?何処か逝くの?」
「南秋葉原条約機構からヲタッキーズに出動要請です。あ、ルイナ?今、逝くわ…複素力学?何ソレ?美味しいの?」
「みんな、忙しいンだね」
「あ、テリィ様。泥棒、通報しといてください」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
墜落現場に朝日が差して惨状が明らかにナル。
飛行艇は既に水没したが川辺には破片が散乱。
「あ、警部。この遺体は空港警察のフィル・ウィンです」
現場に駆けつけたラギィに警官が報告スル。
白い布をめくると、額に1発。見事に穴が…
「不意打ちでしょう。彼は銃を抜いてない」
「誰が撃ったの?」
「飛行艇に乗ってた者では、なさそうです。乗員乗客、共に全員死亡」
黄色いヘルメットの消防士が傍らの焼け焦げたナセルに泡消火器を吹きつけ、消火している。
その泡を避けつつ、背の高い青いウィンドブレーカーを着た女子が歩いて来てラギィと握手。
「国家運輸安全委員会のトンブ・レロンです。どうも」
「所轄のラギィ警部。よろしくね。事故の概要は?」
「企業のプライベート飛行艇で、乗員乗客併せて5名。全員死亡しました。シートベルトも意味を成さなかった…全員、ハイテク兵器のスタートアップ、アキバノミクス社の役員です」
「墜落原因は?」
「ソレは調査を進めないと何とも」
「爆発物で吹き飛ばされた可能性は?」
レロンは、両肩をスボめてみせる。その時…
「ソレはナイと思うわ」
スピーカーにしたラギィのスマホから声がスル。
「会議アプリで割り込んでゴメンナサイ。コチラで"シドレ"の衛星画像を確認したけど、残骸の散乱エリアが狭すぎるわ。空中分解はしていない」
「"シドレ"?」
「"南秋葉原条約機構"の量子コンピューター衛星ょ。ねぇ。古典力学に積分を組み合わせるだけで、墜落した飛行艇の墜落コースを復元出来るけど」
ルイナは、国宝級IQを誇る車椅子の超天才。"女子ホーキング"と呼ばれ、国宝級ゆえ常に特殊部隊の護衛がつくw
SATOは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直轄の防衛組織で、ルイナのラボの居候先←
「あら、ルイナも合同捜査?異次元人絡みってコトね?」
「エシャ捜査官!」
「コレ、先に見つけといたわ。貴女がNTSB?」
さらに加わるのは、警視庁のエシャ追跡捜査官だ。
「墜落した飛行艇のブラックボックスだ!神田リバーの川底かと思ってた。よく見つけたなw」
「簡単だったけど」
「早速、分析スルわ。私、コレで失礼します」
回れ右して駆け出すレロン捜査官の背中に一声かかる。
「ルイナです。レロン捜査官、パーツ通りのSATO司令部へどうぞ!最新式の設備が自由に使えるし、何よりソチラの近くです」
「ありがたいわ。ゼヒ」
一方、ラギィがエシャを振り向くと…微妙な空気が流れる。
「…貴女も来たのね」
「ラギィ、久しぶり。河川は厳密には国有財産。正確には、所轄はウチになるわ」
「秋葉原で起きた事件にウチが絡まないワケにはいかないわ。だから、貴女は貴女。私は私で、どう?」
「OK…四方に野営の跡がないか、念のために見て回ったわ」
「リバーサイドに住んでいた人間が殺した可能性が?」
小さくうなずくエシャ追跡捜査官。
「…で、元気だったの?クリスタル事件以来?」
「私は元気ょ」
そう言い残し歩き去るラギィ。
ヤレヤレと溜め息つくエシャ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほどなくブラックボックスがSATO司令部に持ち込まれる。
「データは88項目。飛行速度。機体質量。傾斜角度。燃焼状況…ボイスレコーダーもこの中に入ってる」
レロンは、歌うような口調で語り、焼け焦げたブラックボックスの裏面にコードを接続しデータを端末に呼び出したら…
"error"の文字が明滅w
「こりゃ重症だわ」
「でも、ココなら設備もノーハウもアルし」
「Ms.ルイナ。至急、結果が欲しいの」
車椅子の超天才は微笑む。
「任せて。腕利きのハッカーを呼ぶわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び現場。遺体を載せたストレッチャーを救急車が収容。
「彼が墜落現場に1番乗りだったのに」
「ソレはどうかしら、ラギィ」
「犯人の方が先に着いてたとか?」
追跡のプロ、エシャ捜査官が口を挟む。
「でも、リバーサイドには足跡1つなかったわ」
「墜落現場で殺人。コレは偶然の一致とは思えない」
「なら…墜落前からココにいた、とか?」
ハッとするラギィ警部。
「犯人は、飛行艇の墜落を待ってたの?」
第2章 ブラックボックスは語る
その頃、ラボでブラックボックスを引き出すルイナ。
タマタマ通りかかったマデラ司令官代理が顔を出す。
「あら。色はブラックじゃないのね!」
「あ、司令官代理。コレほどの破損は珍しいそうです」
「飛行速度が速過ぎたのね」
「ソレだけ衝撃もひどかったようです」
「ソレで中のメモリーボードも壊れちゃったの?」
ココでマデラは話題を変える。
「ルイナ。この前貸してくれたDVD、何てタイトルだっけ?」
「"自転車泥棒"です。面白かったですか?」
「とっても。で、しばらく返せないの」
「無限リピート?それほど面白くは…」
「実は"潜り酒場"で、みんなで見たのよ。そしたら…」
「え。もしかして、テリィたんも見たの?」
「あ、いえ。彼は宇宙で…実は"潜り酒場"に泥棒が入って
プレーヤーごと盗まれて…花瓶とかミキサーとかビールとかと一緒に」
「ええっ?ボンクラなテリィたんはともかく、シッカリ者のミユリ姉様の御屋敷に泥棒とは!"雷キネシス"で黒焦げにしちゃえば良いのに!」
「ソレが、テリィたんとアフターに行ってて…」
マデラは遠回しに話したが、アッサリとココでブチ切れるw
「アフター?!あの2人、全くヒマさえあればイチャイチャ深夜まで!店外交友ナンて不潔よっプンプン!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日"不潔な"ミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーが事故現場を歩いていると翠髪のメイドが現れ微笑む。
「ムーンライトセレナーダー。私、何かお役に立てないかしら。薄幸カフェ"ドツボ"メイド長のオシナと申します」
「オシナちゃん。幸せ薄そう…飛行艇墜落事故と何か関係アルの?」
「私は、殺されたフィル・ウィンの推しです」
実は、ミユリさんはアキバが長いから、オシナのコトも良く知っている。
だが、ムーンライトセレナーダーがミユリさんであるコトは秘密なのだw
「ゴメンナサイね。知らなくて」
「犯人逮捕のためなら何でも協力します。何かをして気を紛らわせたいの」
「そう…リバーサイドでソロキャンプをしてる人や住み着いている人は?」
「夏にはいるけど…この時期にはいないわ。リバーは、私とTO2人のモノだった…ごめんなさい!」
ワッと泣き出すオシナ。と、ソコへ!
「ココは犯罪現場です!立ち入り禁止ですょオッサン!」
静止を振り切って、ドシドシと現場に入る面倒系の2人組。
「失礼。ココへの立ち入り許可はお持ち?」
「え。ムーンライトセレナーダー?ソッチこそ何でココに?コレは、私の飛行艇ナンだが」
「お名前を」
「アキバノミクス社CEOのヘルムだ。未だ社員が機内にいるンだ。通してくれ。家族に状況を伝えたい」
「既に御遺体は検視局に移送されてます。御遺族にも連絡が行くでしょう」
ココで、もう1人が騒ぎ出す。デブ中年男。
「あぁ!何もかも俺のせいだ!」
「貴方は?」
「整備士のウルナ」
ココからガンコCEOとデブ整備士のデュエットw暑苦しい←
「ウチは小さな会社だ。少しでも情報があれば、CEOとして助かる」
「あぁ!やっぱり俺の責任だ!何もかも!」
「墜落原因は調査中です。とりあえず、お引き取り下さい。情報が入れば連絡します」
悲しげに首を振るCEOとmechanic。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、SATOのラボではブラックボックスの解析が進む。
「入力バスをつないだわ。レロン捜査官、その赤いコードをボックスの配線に接続したら起動可能ょ」
「OK、ルイナ。フライトデータレコーダーは、墜落直前の飛行を再現出来るわ。高度、気圧、フラップの動き、何でも再現出来ちゃう。今どきのパイロットって、実は離陸後は全て飛行管理コンピュータ任せで飛んでるの…じゃスイッチオン」
「システム再起動」
ブラックボックス自体は、大人が抱える程度の大きさだが、その裏面からは色とりどりのコードが滝のように吐き出され機器に接続されている。その全体がシステムとして再起動!
「アッチのモニターを見て。今、飛行艇は水平飛行中。惰性基準装置のおかげで極めて正確に飛行してるわ。現在高度1万フィート…ああっ!」
今どきの飛行機は、グラスコクピットと逝って計器類は全て画面に投影される。
ブラックボックスのデータに拠り、墜落直前までの計器類の動きが再現出来る。
「高度1万フィート?確か飛行艇の巡航高度は6000フィートだったハズ…」
「あ。そうでした。でも、高度計は1万フィートだわ4000フィートも誤差がアル」
「高度計の故障では?」
やがてモニターの再現画面は急降下!システムフォルトの赤サインが明滅スルw
「墜落したわ…高度計のバックアップは3重だから、故障はアリ得ナイ」
「惰性基準装置の故障カモ。コクピットから秋葉原の夜景が見えたハズだけど…」
「月もない闇夜だったわ。同様の墜落は数年前にもあったけど、対策を施したので故障は考えられナイわ」
「誰かが細工をしたとか?」
口を挟むのはスピア。腕利きハッカーで統計分析に天才的なヒラメキがアル…とルイナは思ってる。趣味でスク水着用←
普段は上からジャージを羽織ってるけどw
「ソコら辺は、FMCを見ないと何とも言えないわ」
「あら?ブラックボックスじゃわかんないの?」
「うーんコレはデータの記録装置だと考えて。一方、FMCは航空機の頭脳ょ。無傷で見つかれば、何をどう考えたかがワカル。でも、未だ見つかってナイの」
車椅子にメイド服の超天才、趣味でスク水着用のハッカー。
NTSBの青い公式ウィンドブレーカーの航空事故捜査官w
全員コスプレ系だょいかにもアキバ?
「ブラックボックスのデータと墜落場所の地図を基に、残骸の散乱パターンを正確に推測出来るわ。ねぇソコから逆算でFMCを探してみない?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後の墜落現場。
まだ薄く爆煙が漂うような気もスルが、現場には、未だ黄色や赤、色とりどりの外套やヘルメットの作業員が多数いる。
「緻密な数式と不屈の精神があれば、必ずFMCの現在地を特定出来るわ。幾何学って素晴らしいモノょ!」
「あぁルイナ!私も同じコトを考えてたトコロ…レロン、ソッチ押さえて。長さは?」
「13m77cm」
リバーサイドに転がったエンジンナセルと川面までの距離を計測スルのはスピアとレロン。
現場で実測、採取されたデータから、残骸の散乱パターンをラボで算定スルのはルイナだ。
「で。ねぇ"潜り酒場"に入った泥棒の話、スピアは知ってる?」
「あぁ。ミユリ姉様もタイヘンょね」
「そうなのょ!テリィたんからお預かりした大事な御屋敷に泥棒に入られるナンて、トンだ大失態!メイド長としての資質が問われるわ!責任問題ょ!」
「え。…そ、そーかな。テリィたんは、あんまり気にしてナイみたいだけど」
「ソレに、あの2人!アフターの最中に空き巣にヤラれたのょ!なんたる失態!メイド長の責任問題…」
「"潜り酒場"が昭和通りにあった頃、やっぱり泥棒に入られてたわ。姉様がテリィたんと出逢う前…」
「あの2人、どんだけ古いの?ねぇねぇ(ココから小声でw)ミユリ姉様のメイド服ってソロソロ痛くね?」
「あのね、ルイナ。ソレって"ミユリ姉様のメイド服"の部分を"スピアのスク水"に置き換えて、も1度言ってくれる?」
「ソンはつもりじゃ…」
「泥棒に入られてモノを盗まれるのって、精神的なショックが大きいの。ルイナが思う以上にね…レロン?」
やっと出番だわ…大声で数値を読み上げるレロン。
「19m27cm!」
「大きいわ」
「…精神的ショックの話?」
「軌道は合ってるのに距離の計算が合わナイの」
またまた出番だわ…現場経験から意見を述べるレロン。
「ヌカルミ分の誤差は?」
「ソレなら長かったり短かったりするハズだけど、実際には計算の方が一律で15%ほど短くなってるの」
「見せて」
スピアのスマホに画像が転送されて来る。
「うーんルイナ。実際の残骸散乱エリアは、もっと広いわ」
「OK。広がってる分の誤差を計算に入れて、既に推測済みの軌道を修正すれば…こんな感じ?スピアのいる場所の20m先にFMCが見つかるハズょ?」
「え。コッチ?あら。"嫌森神社"の境内だわ…あったわ!ホラ、この通りよっ!」
FMCをチャンピオンベルトのように高く掲げるスピア。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「付近の廃ビルにタイヤ痕があった。形状から車種が判明したけど、ピックアップトラックね。因みに、付近に該当車両は無かったわ」
"追跡のプロ"エシャ捜査官がモグモグ食べてるのはチョコバーの"ブラックパンダー"だ。
"ブラックパンダー"とコーヒーが彼女の主食らしい。かくも追跡とは、過酷な仕事なのだ。
「犯人の車だと思う?」
「YES。オイルがココに集中してた。恐らくココで飛行艇の墜落を待ってたと思う」
「飛行艇が墜落スルと知ってて?しかし、何でワザワザ現場にいたんだろ?」
ソコへ、スピアとレロンがFMCをチャンピオンベルト状態にして持ち込んで来る。この姿勢のママ走って来たのか?
「みんな、ゲットしたわ!」
「何?スク水プロレスのチャンピオンにでもなった?」
「墜落した飛行艇のFMCを見つけたの!当初の計算と違ってたけど、現場でデータ修正して見つけた!」
捜査本部からドッと歓声が湧く!大拍手!
「でかしたわ!先ずはめでたし!」
「いいえ、ラギィ。実は大問題発生ょ。スピア?」
「マジやるの?ゴメンナサイ!」
スピアがエシャ捜査官が食べているチョコバーを取り上げ、床に叩きつける!
チョコバーが粉々に砕け本部は瞬時に沈黙。驚くエシャ、愉快そうなラギィ←
「わ、私の"ブラパン"がっ!どーゆーコト?説明してよっ?!」
さすがに取り乱すエシャにモニターから諭すルイナ。
捜査本部とは、アプリでオンラインで結ばれているw
「聞いて。そのチョコバーの破片が残骸の散乱エリアょ。一見不規則に見えるけど違うの。衝突の角度、飛行艇の速度や質量、墜落現場の地形によって、残骸が散らばる範囲や形は大きく変わる」
エシャはフト真剣な顔になりルイナの説明に聞き入る。
素早く新しい"ブラックパンダー"とコーヒー片手だw
「もし"ブラパン"が今月新発売の"ブラパンプレミアムシリーズ"の"優雅なヘーゼルナッツ"だったら、床の破片はもっと大きく散らかるハズ。ナッツの分だけ質量が増えて、運動量が大きくなるカラょ。で、現場だけど、私達の計算より広範囲に残骸が飛散してたワケ」
「…もしかして、飛行艇の重さが申告と違うとか?」
「YES。残骸の散乱範囲から逆算スルと約450kg重かったと思うの」
「え。とゆーコトは、飛行艇はフライト前の申告にはない"何か"を積んでいた?」
「恐らくYES。そして、ソレを盗もうと犯人は狙ってた」
ラギィ警部が唇を噛む。
「そして、現場に居合わせた空港警察を射殺して盗んで逃げた…真夜中に飛行艇を墜落させて6人も殺して…いったい"何"を盗んだと言うの?」
第3章 "何か"を追え!
その後、捜査本部で議論は侃侃諤諤w
「ラギィ警部。飛行艇体の主要部は、全て回収済みか、或いは神田リバーの川底にアルのをNTSBが確認済みょ」
「了解、レロン捜査官。スルと、見当たらナイのはルイナの言う450kgの"何か"だけね」
「YES。そして、今までルイナの計算に常に正確だった」
"追跡のプロ"エシャ捜査官が1歩前へ。
「現場に残ってたタイヤ痕は2つあった。多分来た時と去った時の2つ。そして、去った時の方がワダチは深い」
「あらー。その"何か"を積み込んで去ったワケ?ねぇねぇ。やっぱり犯人は墜落現場を予測してたのね」
「ルイナ!犯人が墜落地点を知ってるのに、私達は知らないってフェアじゃナイわ!」
「はいはい、ただいま。飛行艇の高度がFMCより4000フィート低いとすれば…残骸の散乱パターンから逆算した墜落地点は…大体コンな感じ?」
捜査本部のモニターに映る地図に、輝点が現れる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズのエアリが、神田リバーのリバーサイドにあるスタートアップを訪問。新たな情報を得てCEOに事情聴取。
「ヘルムCEO!飛行艇のフライト前に申告しなかった450kgの"何か"とは何ですか?」
「…ターボファンエンジンだ」
「ソレは?」
「対艦巡航ミサイル"ネプトゥーン2"に搭載予定のエンジンの試作品。発注者は…」
「黒海でミサイル巡洋艦を撃沈した、あの…」
「答えられない。ただ、ウチのエンジニアに飛行艇の残骸を調べさせる用意はアル」
「no thank you。NTSBが調べたけど、何も見つからなかった」
「と言うと?」
「現場から"誰か"が盗んだみたい」
「何だと!」
「心当たりは?」
「ライバル会社の全てだな。巡航ミサイル関係は、採用されれば数十億の契約になるから競争が激しい。だから、フライトプランには記載せず、秘密裡にテスト場に運ぶ予定だった。全て開発状況を秘匿スルためだ」
「墜落した飛行艇の担当整備士は?」
「この前一緒だったウルナだが、今はいない。今回の件が、かなりショックだったようで、さっき家に返した」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、情報は捜査本部にフィードバックされる。
「警部、盗まれた新型エンジンは試作品で、特に差し迫った危険は無さそうょ」
「ありがと!で、ハッカーのスピアの話だと。FMCのプログラムは2日前に変更されてた。FMCに触るのも専門知識が必要だし、そもそもFMCって飛行機のシッポに入ってるんだって!」
「うーん整備士もグルってコト?」
「エアリがウルナ整備士の家を訪ねましたが、不在でした。ココ数日、家には帰ってない模様」
若い刑事の報告にラギィ警部は頭をヒネる。
「次期対艦ミサイルのエンジン開発は極秘事項だ。飛行艇に積んだのも厳秘だったハズ」
「ソレが漏れたとなると…警部、社内に共犯者がいたコトになりますね」
「ねぇ見て。ノーズコーンの中ってスゴい狭いわ。指紋を残さずにFMCに触れるナンて絶対ムリ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「テリィ様。昨夜は…泥棒さんの通報をお願いして、すみませんでした」
「飛行艇の墜落事故があったからね」
「ええ。残骸の散乱パターンから色々とルイナの気づきがあって」
メイド姿のミユリさんはアキバ最強だ。何でも許しちゃうw
実はスマホ電話のかけ方を知らないなどの台詞は飲み込む←
「…しかし、腹が立つのは"泥棒さん"さ。招きもしないのに御帰宅スルとは!」
「不幸中の幸いです。盗られたモノなら替えが効く」
「替え?良い思い出が詰まったかけがえのないモノばかり。悪い思い出だって僕達の財産さ」
コレは単なる愚痴だったが、モニターから思わぬ反応が…
「そうね!絶対に許せないわ!」
「え。ルイナ?オンライン飲みしてるの?飛行艇事故のデータ解析は?」
「コーヒーブレイク。私は、50件以上も犯罪を解決してきたの。だから、御屋敷の強盗ナンて簡単ょ!盗難事件が発生する"ポアソン過程"をPC盗難事件の統計値と照合スル。ソレで少しは犯人を絞れるわ!」
またまた難しいコトを…
「まぁとにかく思い出に価値がアルってコトさ」
「ルイナ、ルイナ!指紋が滲んでて解析出来ないの!」
「指紋の滲み方は?」
突然モニターの向こうでラギィ警部の声がして"オンライン飲み"の最中だったルイナは横を向き別のモニターを凝視w
「大丈夫。デコンボリューションアルゴリズムが使えるわ」
「やっぱり?で、何ソレ?美味しいの?」
「指紋が鮮明にナル。こう考えてみて。安いカメラで陸上選手を撮る。シャッタースピードが適切じゃないから、選手の輪郭がぼやけて美人かどうか良くワカラナイ。で、ソレをこのアルゴリズムで解析すれば、ボヤけていた輪郭も細部までハッキリ見えるようにナルの。ハッブル宇宙望遠鏡も、この技術を使ってる。大宇宙の姿を"見える化"スル、このアルゴリズムを指紋に応用スレば…」
「スゴい。補正レンズみたいなモン?」
「概ねYES…アキバノミクス社IT部のマクデ・イリイ。このスタートアップは軍需産業なので、従業員に指紋の登録義務があったのでワカッタわ」
「フムフム。IT部ならFMCの知識もありますね」
「しょっぴいて!」
モニターの向こうで勝手に捜査が進展してるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「マクデ・イリイ!万世橋警察署だ!」
神田リバー沿いの安アパートの1室。
薄いドアを蹴破り突入スル警官隊w
「逃げた!赤いパーカーにジーンズ!」
「裏へ回った!追え!」
「挟み撃ちだ!」
ところが、タッチの差で逃げた赤いパーカーは、神田明神通りに出て一目散に走り出す。
予め停めてあるセダンに飛び込みエンジンをかけたらウィンドウ越しに拳銃を構える影w
「発車させたら撃つ」
エシャ追跡捜査官だ。警官隊も追いつき、犯人は観念w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に連行され取調べを受けるマクデ・イリイ。
「俺は、何もしてナイ!」
「あのな。墜落した飛行艇のノーズコーンは、アンタの指紋だらけだった。そして、アンタがFMCに細工した後に飛行艇が墜落してンだょ!」
「俺は俺の定常業務をしただけだ!NTSBが半年毎に更新するソフトをインストールするのが俺の仕事だ。小さな会社だから何でもヤル。整備士のウルナに頼まれてやってルンだ!」
言葉に詰まる尋問官の横でエシャ捜査官が身を乗り出す。
「ソレじゃ、なぜ警官隊から逃げたの?」
ココで言葉に詰まるのはエンジニアの方だ。頭を抱えるw
「FMCの機能不全が墜落の原因だとヘルムCEOから聞いて俺は俺がミスをしたんじゃないかと心配になった。同僚が死んだのは俺のせいかもと!」
「みんな、騙されないで!最近NTSBは更新ソフトを発行してナイから!」
「ありがとう、レロン航空捜査官。ねぇアンタは一体何をインストールしたのょ?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マジックミラー越しに取調室の様子が見える隣室。
「ラギィ警部、ウルナ整備士は、秋葉原中を探しましたが、何処にもいません。電話も応答ナシ」
「消されたかな」
「ウルナは、過去に半島でチャーター機の会社をやってましたが、当時モロスと言う麻薬密輸人から融資を受けていました」
「あら。半島のシンジケートなの?」
「YES。ところが、本人も麻薬をやって、コカイン反応が出て免許停止の上に国外追放、秋葉原に流れつき整備士になったようです」
ラギィ警部の判断は早い。
「真っ黒!令状取って家探しっ!」
第4章 さよなら、メカニック
「こんにちは」
メイドバーに翠髪メイドの御帰宅だ。
ココはアキバ系メイドの駆け込み寺←
「ミユリ姉様」
「おかえりなさいませ、お嬢…あら、オシナちゃん。この度は…」
「姉様。ウチの御主人様の件で何か進展がナイか…姉様なら何か御存知かと思って」
ミユリさんは、アキバが秋葉原の頃からのメイドなので、メイド界の大お姉さんみたいな存在だ。本人は嫌がるけどねw
「万世橋のお友達の話だと、手がかりはわずか。今は、詳しいコトは話せないみたいょ。ごめんね」
「謝らないで。御屋敷からお出掛けしたかっただけなの。御主人様を失って、他に行くトコロが思いつかなくて」
「オシナちゃん、近く大事な家宅捜索令状が発出されるわ。何かわかったら直ぐ教えてあげる。だから、気を強く持って」
微笑む翠の髪のメイド。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、SATO司令部のラボでは車椅子の超天才ルイナがストリート系ハッカーのスピアとブラックボックスを解析中。
SATO司令官代理のマデラが顔を出す。
「ルイナ。まだ飛行艇墜落の件?」
「司令官代理、何か?」
「月の裏側に"リアルの裂け目"が開いて、目下SATOは異次元からの侵略者と月面で交戦中…ナンだけど、ルイナは手が離せナイわね」
どう考えても人類の存亡に関わる危機みたいだが、目の前のコトに没頭スル超天才は全く意に介さズ、興奮気味に語るw
「マデラ、FMCが高度を誤認スルようにリプログラミングされてた!コレは犯罪ょ」
「YES。今、リプログラミングされたコードを1行ずつ解析してルンだけど、ちょっち時間を食ってるw」
「あら、スピア。ルイナのお手伝いしてるの?エラいわね」
まるで夏休み中の家の手伝いをホメる隣のオバサンだw
「ソレが…実は意外にアルゴリズムが複雑過ぐる…ねぇSATOの"シドレ"を使わせてくれない?」
"シドレ"は、アキバ上空3万6000km上空の衛星軌道に浮かぶ量子コンピューター衛星。
この"シドレ"が"リアルの裂け目"を探知スルと、直ちにSATO全ステーションに急報。
「"シドレ"は、SATO月面基地のバックアップから外せないわ…そのリプログラムを騙すコトにしたら?」
「え。どーゆー意味?」
「プログラムのクロックを一旦リセットして、飛行艇が未だ墜落前だと思わせるワケ」
サスガは複数の博士号を持つマデラだ。スピアも納得←
「OK!…今、墜落したわ…うーん今のトコロ、別行動のアクセスはナシ」
「あら。ハズしたかしら?ん…プログラムは待機中みたいね」
「待機中?飛行艇が墜落したら、ソコで全てthe endナンじゃナイの?」
マデラ司令官代理は、慎重に言葉を探す。
「コレは…トラップだわ!誰かが内容を読むまで、待機してジッと機会を伺う。誰かがデータを引き出すのを待ってたのよっ!」
次の瞬間、ラボの全モニターがフラッシュし全消去!
「な、何が起こったの?」
「ワカラナイ…」
「ヤラレた!システムがゲシュタルト崩壊した!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エシャ捜査官達が整備士の家探しから帰還スル。
全員がサンタクロースみたいに袋を背負ってるw
「ウルナは?」
「逃げられた。モヌケのカラょwクローゼットは空っぽ、歯ブラシもなくなってる」
「逃げられたか…何か手がかりは?」
全員が一斉に背負った袋を広げる。
「アルわ、山盛りょ!付近のゴミ捨て場でウルナぽいゴミをゼーンブ拾ってきた」
「え。その袋の中、全部ウルナのゴミ?」
「YES。慌てて逃げたみたいだから、必ず何か残してるハズょ。ラギィ、警察署の講堂を借りるわね!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
警察署内の銃剣道場が一面ゴミ捨て場だw
異臭漂う中、老若男女の署員総出で捜索←
大"ゴミ漁り"大会だ!
「警部!ウルナの奴、事故の4日前に積み立て年金を解約してますね。途中解約は10%引きなのに…」
「ん?防水ジャケットを購入してます…千葉房総の住宅情報も漁ってるな。海釣りしながら優雅な隠遁生活を夢見てウェブサイトからのプリントアウト多数です…」
「ビンゴ!ラギィ、前日に神田山本町のトランクルームを借りてるわ、コイツ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田山本町のトランクルーム。
「管理会社によると、ウルナは2日前に借りてます…あ、ココですね。おい!マスターキー!」
鍵かと思ったら巨大ペンチw
アッサリと錠前を断ち切る!
シャッターを開けると…
「コ、コレが…ターボファンエンジンかょ?」
ソンなに大きくはナイ。
両手を広げた長さに冷却装置から燃焼室に連なるシステムが収まる。
ラッパ型に開いたロケット噴射口でも、両手で作った輪のサイズだ。
「捜査本部!神田山本町のトランクルームでターボファンエンジンを発見!」
「とっくに秋葉原から持ち出したと思ったら、未だこんなトコロにあるナンて。意外に動きがトロいわ」
「エシャ捜査官、来てください!」
制服警官がフロアを指差す。
頭にビニールを被った死体←
「整備士のウルナです」
「額に1発。またもや処刑スタイルです」
「逃げ損ねたみたいね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
殺人現場となった山本町のトランクルームに、たちまちパトカーと救急車が殺到、遺体はストレッチャーで搬出される。
「処刑スタイルで額を撃たれています。同じ9mm口径の実体弾と思われます」
「現場は、暗証番号がわかれば、誰でも出入りは自由だそうです。犯行時に近い出入り時刻は16時48分。その前後の出入りはナシ」
「目撃者もナシか…」
つぶやくエシャ捜査官の横をエンジンが搬出されて逝く。
「ウルナがFMCに細工して墜落を仕掛けたのね」
「そして、共犯者と現場でエンジンを奪った」
「その共犯者はウルナを殺し、遺体をココに隠した。恐らく口封じのために」
「でも、なぜ試作エンジンをココに放置したのかしら?倉庫は3年分を前払いしてるのに」
「いかに最新技術でも3年後には陳腐化は免れない」
「ソレに6人も殺す理由も謎」
エシャ捜査官は、頭をヒネる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
エンジン発見を受け、捜査本部はヘルムCEOを召喚スル。
「せっかく盗んだターボファンエンジンを秘匿して、犯人に何の得がアルのでしょう?」
「皆目わからない」
「死体ばかり増えて困ってます」
「何だと?」
「御社のウルナさんが殺されました。額に1発で。CEOは、彼が誰の下で働いてたのか知ってルンじゃナイですか?ターボファンエンジンの開発を凍結スルと、御社が何か得をスルようなコトは?」
「アンタ、何を言ってるかわかってるのか?」
ココで取調室がノックされ、若い刑事が警部に耳打ちスル。
「ヘルムCEO、少々お待ちを」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室を出たラギィ警部は、会議アプリに話しかける。
「ルイナ、どうしたの?」
「あ、警部。ターボファンエンジンと飛行艇の墜落は無関係ょ。ねぇレロン捜査官!貴女、もうメインフレームにFMCを接続した?」
「えぇ。NTSBでも履歴を見たくて…マズかった?」
「激マズ。もうプログラムが侵入してしまったわ」
「何のプログラム?」
「何者かが首都圏の防空システムに侵入するために、この事件を仕組んだ疑いがアル」
「首都圏?防空?影響って、どんな影響?」
「ソレを調べるからNTSBのメインフレームにアクセスさせて」
「もちろんダメ。ネットワークでJADGEと繋がってるのょ…あ!そーゆーコト?」
「そーゆーコト!」
「ちょっと電話させて…」
レロン捜査官は1本電話をかけ…叫ぶ。
「ルイナ!首相官邸が貴女に調査を任せろって!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「システムは不正プログラムに汚染されたけど、首都圏のミサイル防衛網は未だ健在だわ」
「航空管制も大丈夫?旅客機同士の空中衝突とか起きないの?」
「ソレも起きない。因みに手荷物も届く」
「じゃあ何のためのシステムを汚染したの?」
「野鳥保護区を思い浮かべて。鳴き声は鳥ごとに違う。愛鳥家なら、鳴き声だけで鳥を識別できるわ。この場合、愛鳥家を航空局のレーダーとするわね。固有の信号を受信して識別するコトでミサイル防衛を機能させてる。1つ1つの信号コードが、発射実験されたミサイルの型式や飛行経路を伝えるワケ」
「全て自動化されてるのね」
「YES。コンピューター達が勝手に戦争スルの。このシグナルは、現在の日本上空を飛ぶ全ての飛行体。多くは、旅客機で、それぞれ便名を持っている。汚染された防空システムで、この輝点の信号を受けて見るわね。スピア、ターゲットのスコークコードを入れて」
「輝点が…消えたわw」
「なぜ?」
「このプログラムには、ロフテッド軌道のミサイル実験を隠すアルゴリズムが組まれてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナの例え話←
「エッシャーの絵で説明スルわ。階段がメビウスの輪のように描かれていて、階段を登ったハズの修道士は、いつの間にか元に戻ってしまう。この自己回帰性は、数学や音楽、生物学の世界でも見られる。プログラムも、アチコチのコンピューターをめぐり歩きながら、実は元の作者に戻る手がかりを残してる。だから、その自己回帰プログラムのコードを追跡してみた」
「で?たどり着いた先は?」
「アキバノミクス社のコンピューターだった。オーナーは、IT部の…巨乳プログラマーのアデア」
「巨乳が黒幕?首謀者なの?」
「ソレはワカラナイ。ただ、少なくとも彼女が不正プログラムの作者であるコトは間違いナイ」
「で、プログラムはもう起動したの?」
ルイナは1呼吸置く。
「いいえ。ネットワークに潜み、起動コードを待っている」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後。捜査本部の取調室。
「貴女が不正プログラムを描いたのね?」
「ゴメンナサイ!だって、ウルナに頼まれて!」
「そのウルナはこうなったわ」
エシャ捜査官が額に1発食ったウルナの写真を見せるw
「…弁護士を呼んで」
「必要ナイ。貴女、もう帰って良いわ。釈放ょ。ただし、秋葉原で"誰か"に見つかれば、次の瞬間にはコメカミに弾がメリ込んでる。この写真みたいにね」
「ソレも恐らく写真と同じ9mm弾だわ」
ラギィとエシャのアキバ最悪のツートップw
「自白します!だって、死者が出るとは思わなかった!」
「飛行艇が墜落するように細工しておいて、誰も死なないと思った?貴女、バカァ?」
「貴女の共犯者は銃で人を殺し、貴女はキーボードで人を殺したの!」
「空港警察が案内トコロをパトロールするナンて想定外だった!ソレに…あ、重いわ」
机に載せてた巨乳をヨイショと持ち上げるアデア。
全く悪びれた風もなくてエシャの怒りが爆発スル←
「ドッチか選ぶのよっ!銃で頭をブチ抜かれるか、罪をゼーンブ被って死刑にナルか!泣いてもダメ!今、決めて!」
「名前を吐け!このデカパイ女!」
「うぇーんウルナのお友達なのゴメンナサーイ」
「だから、名前は?」
「知りません!私は、JADGEに侵入するプログラムを描いただけなの!」
「お金は?」
「プログラムのバックドアを開く起動コードと引き換えに暗号資産でもらう予定でした。でも、もうしません。何でもシテあげる…じゃなかった、何でも協力します」
「シてもらおうじゃナイの!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の廊下を歩きながらラギィとエシャは情報交換。
「アデアが自分のコントローラーとして、モロスの写真を指差したわ」
「モロスは、麻薬密輸業者を装う半島のスパイね。と言うコトは、恐らく元"喜び組"」
「半島の独裁者は、ロフテッド軌道のミサイル実験をレーダーから消し去り、新ミサイル戦略を秘匿するつもりだわ」
「ソレが半島の狙いなの?」
2人が更衣室に入ると…真っ赤な下着の爆乳アデアw
「ねぇ防弾チョッキは?」
「不要。モロスは顔を撃つから」
「先ず起動コードを渡して、モロスに何かしゃべらせろ」
爆乳の深い深ーい谷間にマイクを挟む係官…手が抜けナイw
「ダメょ!やっぱりウマく出来る自信がナイわ!」
「現時点でモロスには状況証拠しかない。一方、アンタは蔵前橋重刑務所送りの第1候補。貴女はヤルしかないの」
「谷間に隠しマイクもセット完了。せっかく親からもらったデカパイ、ムダにしちゃダメょ!真っ赤な勝負下着はダテじゃナイ!」
他人事なので、実に適当な最悪ツートップw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
深夜の飛行艇庫に1人たたずむ(下は勝負下着のw)アデア。
「ねぇやっぱりSATOのエージェントに頼んだ方が…」
爆乳の谷間の隠しマイクに向かってボヤくw
「未だ言ってるわ。大丈夫かしら」
「もう遅いし」
「警部!黒のピックアップトラック、来ました!」
和泉橋を渡り北詰を右折。佐久間河岸で停車。
黒い人影が…2人?降車スルが、やや?禿頭?
「アデア、問題はナイ?」
「もちろんナイわ…でも、そのハゲ頭は?」
「似合う?流行ってるの"モランボン楽団"で」
「ミュージシャンだったの?」
1人はハゲ頭にしたアデア。
もう1人は…用心棒らしいw
「アデア、起動コードを」
「お金を先に頂戴!」
「起動を確認してからょボケ」
アデアがトラックのボンネットでPCを開く。
「フラッシュメモリを…」
アデアがポシェットを探った途端、用心棒が光速ムーブで彼女の頭をボンネットに叩きつける!ヤタラ派手な音が響くw
「あらあら、アデア。ポシェットに手を突っ込まないで。私はアンタを信じてるけど、ソニカは違うの」
「ウ、ウルナにしたコトを私にもスルの?」
物陰に隠れてるラギィとエシャが同時に頭を抱えるw
「ウルナ?ウルナに私が何をしたか、知ってるの?」
「し、し、し、知りません!公開処刑とか!」
「マズい!気づかれた!」
ハゲ頭モロスが、巨乳アデアのブラウスを剥ぎ取る!
真っ赤な勝負ブラが露わになり、その深い谷間には…
「盗聴器?てめぇこのヤロウ!」
「待って!コレはプレイ!盗聴プレイょ!萌えるでしょ?」
「突入!万世橋警察署!万世橋警察署!手を上げろ!早く!」
物陰に待機していたラギィ警部にエシャ捜査官、そして制服警官隊が一斉に飛び出し、拳銃を構える!
ところが、次の瞬間つむじ風が吹いたと思うや、全員が薙ぎ倒されて、地面に転がって苦悶にあえぐw
再び光速ムーブwこの用心棒は…スーパーヒロイン?
「ソニカは、偉大なる半島の黎明にして輝く暁の明星、革命偉業同志が極秘にお作りになられた人造ヒロインなのょ!」
「ち、ちっくしょう!」
「さぁソニカ、秋葉原のヲタクな警察を片付け…ぶべぇ!」
次の瞬間、ヤタラ図太い電光がピックアップトラックを貫通してハゲ頭女子2名を直撃!
2名の肢体は、激しいスパークを放って瞬時に黒焦げw地面に転がってピクつき痙攣←
「ムーンライトセレナーダー?」
必殺技"雷キネシス"のポーズをキメる彼女に手を添えてるのは…翠髪のスーパーヒロイン?オシナ?君もヒロインか?
「スゴい威力!オシナ、ありがと」
「ムーンライトセレナーダー、御一緒に"雷キネシス"を撃てて光栄でした!」
「…コ、コレもプレイなの?」
黒焦げになったモロスがボヤくw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最終便が離水した後、和田橋の真ん中で神田リバーの黒い川面を見下ろすメイドが2人。ミユリさんと翠髪のオシナだ。
「ミユリ姉様。来てくださって、ありがとうございます」
「この橋、私も好きょ。神田リバーは、アキバの全てを流し去る忘却の河。ココに来ると、自分がアキバにいるコトさえ忘れてしまうわ」
「姉様、でも、私は忘れない。もし忘れたら、ソレは…私が秋葉原に負けた時だから」
オシナは、神田リバーにフィル・ウィンの遺灰を撒く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
超天才の声が弾ける!
「テリィたん!私、テリィたんのために、犯罪連想モデルの方程式を作ってみた!テリィたんの被害経験を下敷きにしてね!今、テリィたんは私の方程式の構成要素になった!」
アプリから流れる声に全員が"だから、何?"と思ふw
「で、結論は?」
「方程式を解いたら、御屋敷に押し入った犯人は間違いなく秋葉原にいると出たの」
「…ソレだけか?ルイナ」
「え。ま、まぁ待ってょ!もっとデータを集めてリストにしてラギィに渡す予定なのん!」
ソコへ段ボール箱を抱えた、当のラギィが御帰宅。
御屋敷の流儀に従いメイド服だけど…似合わないw
「はーい、ミユリにテリィたん!お待たせ!」
「やや?コレは盗まれたPC?DVDレコーダーも?ミユリさん、ラギィが泥棒を捕まえてくれたょ!」
「まぁラギィ!ありがと!どうやったの?」
「PC内蔵のGPSを追跡したの」
瞬間、御屋敷&SATOのラボがシンとなるw
「そ、そっか。GPSがあったょね…なぁルイナ?」
「テリィたん、今そーゆーコトを聞く?好きな乙女ゲーもガマンしてアルゴリズムまで描いたのに…OK!この機会に私、素敵な廃人になってやる!」
「よし!じゃ今宵は朝までゲームだ!」
ドッと歓声が沸く。思い思いのゲームが始まる。
「でも、テリィたん。私、チェスは嫌ょ。私が勝つと直ぐスネるから」
「僕もポーカーはやらないぞ。僕は、メイド達のATMじゃナイからな」
「テリィ様、では、何を?」
「ミユリさんは、ジェンガもスクランブルも嫌いナンだょね?」
「少しゲームとしてはヌルいかと」←
「やれやれ。この御屋敷、やっぱり少し変わってるわ」
アプリの向こうで溜め息のルイナを尻目に小腹が空く僕←
「お腹空いた!ミユリさーん!」
「ミユリ姉様、テリィたんがお腹空いたって」
「大丈夫。アキバはホットドッグ1本で、いつでもディナーの街だから」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"防衛システム"をテーマに、車椅子の超天才、消されたTO、その推しメイド、軍事スタートアップCEO、メカニック、IT部員、巨乳OL、事件を追う追跡捜査官、航空局捜査官、追われる元"喜び組"の武器商人などが登場しました。
さらに、TOを殺された推しメイドの復讐劇、御屋敷に入った泥棒などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナより製鉄所の戦況が大きく報道される秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。