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異世界戦隊道中記  作者: ムネミツ
第一章 戦隊、異世界へ!
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第一話 戦隊、異世界へ!

 六畳一間の和室で、少年と褐色美人が会話をしていた。

 「あなたのお力をお貸しください、我が勇者」

 「わかった、学校も大事だけど助けを求められたら断れねえ」

 「ありがとうございます、やはりあなたは昔から変わらない♪」

 「ところでお姉さんは、何で俺の事知ってるんだ?」

 「はい、私は貴方が子供の頃に育ててくれたヒマワリです♪」

 晴間輪人(はるま・りんと)、十六歳の少年。

 赤いジャージの下は鍛えらえた体、顔は精悍で愛らしい。

 髪は短い黒髪がヒーロー物の熱血主人公みたく逆立っている。

 社会的な立場は高校生で戦隊の元レッド。

 「え、まさか小学生のころ田舎で育ててたあのでかいヒマワリ?」

 褐色美人なお姉さんに輪人は聞き返す。


 「はい、私の名はジーラ貴方の為に異世界の太陽神に生まれ変わりました♪」

 ジーラと名乗った、黒髪褐色でエジプト人風の胸の大きいお姉さんが微笑んだ。

 彼女の笑顔に、輪人は何故か安堵し彼女を信じる気になった。

 「わかった、じゃあ知り合いや家族にメッセージ投げてから行かせてくれ」

 輪人はスマホを取り出して、かつての戦隊メンバー全員と実家の家族に異世界の

女神様から助けを求めれたのでしばらく異世界へ行ってくるとメッセージを送った。

 「宜しいのですか? こちらの世界と今生の別れになるかもしれませんよ?」

 ジーラが気まずそうに尋ねてくる。

 「ああ、スポンサーの都合でレッドじゃなくなった俺でも求めてくれる人がいるなら

そこに全力をぶっこむよ♪ 後任のレッドも格好良い兄ちゃんだし皆も大丈夫さ♪」

 少し悲しみが込った笑顔で答える輪人。

 そこへ彼のスマホが鳴りひびく、見てみると全て元メンバーからの待てと言う返事だ。

 そして外からズシンズシンと物凄い轟音が鳴り響く。


 「あら、何やら外が騒がしいですわね?」

 「本当だ、何か事件かな?」

 輪人が窓を開けると、ビュッと糸が巻き付き彼を縛り部屋から引きずり出した。

 「フィッシュ、輪人様を確保ですわ♪」

 五色の巨大なスーパーロボットの掌の上で釣り竿を操り輪人を捕えたのは

黄色い戦隊スーツの戦士。

 「ナイスです、イエロー先輩♪」

 「輪人君、大丈夫かい?」

 「貴方を異世界になんて連れて行かせません、馬鹿リント!」

 黄色の戦士の他にピンクと青と黒の戦隊スーツを纏った戦士達が現れた。

 「輪人君、君のユウキブレスは取り戻したよ♪」

 黒の戦士が拘束された輪人の手首に赤い端末の付いたブレスレットを付ける。

 「ちょっと皆どういう事だよ? 後任の勇一の兄ちゃんはどうしたんだ!」

 別れの挨拶をしたら、何故かかつての仲間達がフル装備で駆け付けてきた。

 後任のレッドは熱井勇一(あつい・ゆういち)と言う、外見も性格も好青年で

仲間達は反対していたが輪人は彼が自分の後任として相応しいと納得していた。


 「……認めるわけないじゃないですか! 先輩以外、私達のレッドはいません!」

 学校でも後輩のピンクの戦士、ユウシャピンクが叫ぶ。

 「スポンサーを気取って来た不届き者は、私が財力で殴り倒しましたわ♪」

 釣りが得意なお嬢様のユウシャイエローが高笑いをする。

 「勇一さんは、新しい仮面ベルタ―に選ばれたってユウキ

 「え、仮面ベルタ―にか? まあ、あの兄ちゃんなら納得だな」

 仮面ベルタ―も、自分達ヒーロー戦隊と共に平和を守るヒーロー仲間だ。


 「もう何も問題はない、勇輝戦隊(ゆうきせんたい)ユウシャイン復活だ♪」

 クールで優しいお姉さんのユウシャブラックもマスクの下で微笑む。

 輪人は仲間達に囲まれて困惑していた。

 「いや、そんな事言われても助けに行くって約束しちゃったし」

 ジーラと約束したと言う輪人。


 「駄目です先輩、そんな怪しい約束は無効です!」

 ピンクが叫ぶ。

 「そうだよ、悪の怪人の罠かもだよ!」

 ブルーも怒る。

 「貴方の優しさに付け込もうとする罠ですわ!」

 イエローもジーラを疑う。

 「そうだぞ♪ そこの自称女神、君は早々に立ち去り給え!」

 ブラックがジーラに警告する。

 「そ、そんな! 私は彼を騙してなどいません!」

 ジーラが空に浮かび上がり、戦隊達に訴える。

 

 「何の落ち度もない輪人が、スポンサーの都合で抜けるなんておかしいよ!」

 ブルーが叫ぶ。

 「失意の輪人君の前に、都合よく君が現れたのも怪しい」

 ブラックも警戒している。

 「別次元から二種類の怪しいエネルギー反応が出てもいます、怪しいです!」

 ピンクがガルルと唸る。

 「私達と輪人の絆を壊そうとする、悪の切り崩し作戦と見なしますわ!」

 イエローがビシッとジーラを指さす。


 「そんな、誤解です! 私と輪人様には縁があります、輪人様への想いは負けません」

 疑われてはジーラも黙ってはいられない。

 

 だが、ここで空が紫色の雲に覆われる。

 「大変です、上空に異次元からの干渉が!」

 ピンクが叫ぶと同時に紫の雲に黒い穴が開く。

 「皆、敵襲に警戒だ!」

 ブラックが日本刀型の武器を取り出す。

 「イエロー、早く輪人をダイユーシャの中へ!」

 ブルーも青色の二丁拳銃を構えた。

 「了解ですわ! ピンクも急いでハッチを!」

 「はい、先輩! ダイユーシャの中へ!」

 縛られた輪人を引っ立ててピンクとイエローがロボの中へ入ろうとする。


 そうはさせぬ、その勇者はこちらがいただく!

 空の穴から巨大な白い女性の手が伸びて輪人を掴み引き上げた。

 「な、何ですの!」

 「せ、先輩っ!」

 巨大な手に弾かれたピンクとイエローが叫ぶ。

 「二人共、無事か!」

 「輪人がさらわれたよ!」

 「あの手と声はもしや、ムーナ! 皆様、真の敵はあちらです!」

 ジーラが叫ぶ。

 

 「異次元犯罪発生、これよりレッド救出作戦を開始する!」

 「「応っ!」」

 ブラックの号令に戦隊皆が応じる。

 「ジーラさん、あなたも来ていただけます?」

 「あの手の事、知ってるんでしょ!」

 「そちらの世界の事のようなので、協力を要請する」

 「はい、ご協力させていただきます」

 「先輩の席に乗って下さい、ダイユーシャの超次元パンチを使います!」

 戦隊とジーラが赤青黄黒桃の五色の合体ロボ、ダイユーシャに乗り込む。

 「座標設定はお任せ下さい、あの方の元へ直接行けます!」

 ジーラがレーダーに手をかざすと、レーダーが金色に光り輝き操作される。

 「良し、私達のレッドを取り戻そう! 超次元パンチッ!」

 ダイユーシャが空を飛び、黒い穴が消えた所に向けて金色に光り輝く拳を叩きつける。

 パリンと空間が割れ、ダイユーシャは次元の裂け目へと飛び込んだ。


 勇輝戦隊ユウシャインのレッド救出作戦が始まった。

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