第2話 カイン殿下視点
私の名前はカイン・キャンデリア。このキャンデリア王国の第1王子であり王位継承順位第1位である。
そんな私は産まれた時から前世の記憶というものがあった。
拙い言葉で前世の記憶を口にすると乳母がいつも困ったように微笑むのを見て、言ってはいけないのだと幼心に悟った。前世の記憶は一旦記憶の奥深くに沈めることにした。
しかしこのまま埋もれさせておくのはもったいない。それに王子とはいえ自由になるお金は少ない。将来のためにも自由になる小金は欲しいところだ。
そこで私が10歳になりある程度意見を聞いてもらえるようになってから少しずつ知識をだしていくことにした。
まず、転生したら食べ物の改革!と言うことで、おなじみのマヨネーズの考案、シュークリームなどのこの世界にはない菓子の考案などで城の料理人の心を掴み何人かをスカウトし王都で出店させることにした。前世と変わらない食材が多くて助かった。
出店の資金は父である国王陛下に事業計画書を提出した上で出資してもらった。
そうして開店したのが前世でいうファストフード店だ。メニューはハンバーガー、ポテトを中心に揃いの制服にマニュアルを作成し社員教育を徹底した。お手軽に食べられるのがウケたのでそれを元手に次はこの世界にはなかったバイキング方式の飲食店を開店しこの時点で国王陛下への出資金は返した。
前世の知識を生かして作るものであまり難しいものは原理がわからないのでこの辺りがハズレなくできる限界だろう。料理自体はそんなに得意だったわけではなく、菓子は妹にせがまれてネットを駆使して作った程度だ。
翌年の11歳の誕生日のことだった。
国王陛下に誕生日祝いは何がほしいかと聞かれたので、
「もうこれで最後の誕生日プレゼントで構わないので北部にある鉱山が欲しい」と答えた。
「掘り尽くしたと言われる鉱山を強請るとは変わっているな」
と、笑いながらも国王陛下は北部の鉱山をくれた。
もともと、誕生日プレゼントではなく個人の資産で購入を考えていたので早くに手に入れることが出来るなんて運がいい。
半年後には宝石が取れ始めたので国王陛下は目を丸くしていた。
「お前は先見の明に長けているな」
と褒めてくれ、ある程度の宝石を国庫に収めればそのまま管理を私に任せてくれることとなった。
12歳の時に公爵令嬢との婚約が決まった。
通常より早い婚約ではあるが、母である王妃が親友である公爵夫人のためにと押しに押したらしい。
お互い後継者教育、淑女教育の途中でまだ社交界デビューしていない令嬢に会うことはできないが、絵姿を母が見せてくれた。
成長したら美女になること間違いなしの金色の髪の少女が優しく微笑んでいる様子が描かれていた。
絵姿を見て私が思わず満面の笑みを浮かべると、隣で見ていた母もご満悦のようだった。
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ここは前世の記憶にある「恋はピンクマーガレットと共に」という乙女ゲームの世界のようなのだ。
そうではないかとは思っていたが、金色の髪の公爵令嬢との婚約もゲームの内容と同じで、やはりそうだったかという気持ちが強い。
実は「恋はピンクマーガレットと共に」は、前世でかなりやり込んだ乙女ゲームだった。なぜ男である自分が乙女ゲーム?と思うだろうが、それは妹のためだっだ。妹が夢中になっていたゲームの全ルートコンプ後の隠しルート突入する手前のセーブデータをうっかり消去してしまったのだ。
「セーブデータを戻すまで口を利かないから!」と歳の離れた妹に怒鳴られ、逆らえるはずもなくせっせと全ルート攻略し、やっと妹が「ありがと。意地悪してごめんね」と、口を聞いてくれたことは懐かしい。
あの金色の髪の少女こと、ローズマリー嬢は「恋ピンク」では悪役令嬢として登場していた。
全ルート攻略をやりこんでいくうちに、毎度毎度どのルートにも登場するローズマリー嬢がだんだん可愛く見えてきたのだ。
婚約者のいる攻略対象にいいよる女より、自分のためじゃなくいつも誰かのために動いている女の方がいいに決まってる。まあ、それが正しい方向かと言えばそうじゃない場合もあったけど。と、言う訳で前世で
ローズマリー・サファイア推しとしてはこの世界での婚約は大変望ましい。
ただ、ローズマリーが「王妃」の座に固執して私自身を見てくれないのは困る。固執する一因として、彼女の父であるキース・サファイア公爵の重い愛情と過度な期待だ。それもこれも彼女の母マリエッタ様の不治の病であるドールゴ病発症、そして学園入学前に亡くなられていることが原因なのだ。
「恋ピンク」ではローズマリーが学園に入学する頃にドールゴ病の特効薬が開発された。〈あと少し早ければ〉と彼女の父であるキース・サファイア公爵が涙していたスチルが思い出される。
たしか「恋ピンク」では薬学研究所が特効薬の開発に成功したはず。
探りを入れてみると資金難で研究が進まないらしい。いくつか進めている研究の中でもローズマリーのお母上が患っているドールゴ病の研究を最優先にするという約束のもと、例の個人資産から出資することにした。
あの北の鉱山は「恋ピンク」では宝石が多く出ることからジュエリー山と呼ばれていたのだ。ジュエリー山での利益がだいぶ大きかった。鉱山もらえていて本当によかった。王子じゃなかったら手に入れるまでだいぶ時間が掛かっていたはずだ。
まだ利益はかなりあったので孤児院への寄付もすることにした。そして年長の子どもを中心に薬学研究所で使う薬草採取の仕事を与えた。研究を早く進めるのに丁度いい。もちろん、対価は与え孤児院を出た時の自立資金にしてもらうつもりだ。これはWin-Winの関係になるいいアイディアだったと思う。
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出資から2年弱でドールゴ病の特効薬が無事完成した。彼女のお母上も特効薬を手にし無事に完治した。ここまでの期間で完成するかは賭けのようなものだったが、間に合って良かった。
これでもう大丈夫だろう。私がよそ見しなければ彼女も余計なことはしないだろう。ただあの女が私以外のルートに行った場合も考えなくてはならない。
そもそもあの女自体が学園にいなければいいのだが。学園に来て動くようであれば消すことも視野に入れておこう。
薬学研究所への出資は大成功だったので資金は十分にある。孤児院から自立した者は私を慕ってくれているものも多く、王家の〈影〉から指導を受けた後に私の個人の〈影〉として仕事に就き動いてくれるものもいる。
さて、もうすぐローズマリーの14歳の誕生日だ。会うのが楽しみで楽しみで仕方がない。
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今日はこの世界で初めてローズマリーに会った。今までも孤児院の帰りにこっそり見に行ったりしていたから姿形は知っていた。もちろん〈影〉からの報告も受けており、ローズマリーの人となりは知っていた。
しかし、顔合わせでローズマリーは私の顔を見るなり倒れてしまったのだ。運が悪いことにエントランスの大理石に頭を打ち付けてしまったため、顔合わせは中止となりローズマリーを心配しつつ王宮に戻ることとなった。
落ち着かない気持ちで自室をウロウロしながら〈影〉からの報告を今か今かと待っていた。
〈影〉からの報告ではローズマリーに大事はないそうで胸をなで下ろした。
お見舞いと称して明日にでも花束を持って公爵家を訪問しよう。




