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 ともかく、お釈迦様しゃかさまはインドの方ですから

日本には居りません。ではどなたが代表かと云うと

――かの有名な聖徳太子しょうとくたいし様です!


冠位十二階かんいじゅうにかい』や『十七条の憲法』 を

定めて国のいしずえを築いた最高の指導者です。

超人伝説ちょうじんでんせつも有りますよねぇ……

一度に10人の話を聞いたとか予知能力があったなど。

 実際にたずねてはいけませんよ、

どうやら禁句きんくらしく箝口令かんこうれいが敷かれています。


 日本に仏教を広めた方でもあり、

三経義疏さんぎょうぎしょ』と云う注釈書ちゅうしゃくしょを編集しました。

 これは中国の学僧がくそうの注釈を元に

独自の解釈かいしゃくを加えたもので、

仏教における原点的げんてんてきな意義を持っています。


 本当に偉い方なのですが、

個人的には共に書物から消された者として

深いシンパシーをヒシヒシ感じるのですよ。


 そう、聖徳太子は実在しない説です!

彼は『古事記こじき』に載っておらず、

日本書紀にほんしょき』にいては架空かくうの人物では? 

と疑われる始末……あゝ実に悲しいことです。


「私も存在を消された事がありまして――」


 あの聖徳太子様と愚痴ぐちを言い合うなんて凄いですよ。


「ふむ、お互い書物に振り回されますな。

蘇我入鹿そがのいるか中大兄皇子なかのおおえのおうじらが仏教と儒教じゅきょうを学び、

神道しんとうを後世に残してくれた事が嬉しいので

誰に何を言われようと構いませんがね」


 うわああ! 人柄ひとがらと器が違い過ぎます!!

うう、私はなんて心の小さい神なんでしょう。


 はあ~気を取り直して説明を続けますね。

聖徳太子様の部下として真言宗しんごんしゅうの開祖、

空海くうかいさまと天台宗てんだいしゅうの開祖、最澄さいちょうさまがおります。


 私個人の感想と致しましては……

水戸黄門みとこうもんの助さんと角さんだな、です。

ちょっと、石を投げないでください!

冗談抜きで彼らはカッコイイのですよ。


 この二つの流派りゅうは、元は同じなのですが

真言宗の特徴とくちょうは『きわみ』で密教(みっきょう)のみをあがめた流派です。

密教みっきょうとは秘密仏教であり、

特殊とくしゅな文字は教徒にしか理解出来ません。


 その長、空海(くうかい)さまは後に弘法大師こうぼうだいしと呼ばれた

才知溢さいちあふれるお坊さんなのですよ~

ね、天才肌の(すけ)さんっぽいでしょう?


 天台宗の最澄(さいちょう)さまはぜんや念仏、戒律かいりつなどの

基盤思想きばんしそうを取り入れた《総合仏教》を(つく)り、

『全ての人が悟りを開き、成仏できる』 

をモットーにした親しみやすい宗派です。

いや~まさに(かく)さん、優しくて心が広い!


 そして最初に仏教を伝えた聖徳太子様は

理知的で優しい水戸黄門で決まりでしょう!

コホン、あくまでイメージですよ

こう、仏教を身近に感じたら良いなぁ……とね。


 各宗派の方々、どうか広い心で笑い飛ばしてください。

お二人とも人心じんしんの為に仏教を学ばれた方、

今は仲良く魂たちに講義(こうぎ)となえております。


「あの頃は若かった……最澄殿

理趣釈教りしゅしゃくきょう″の件、申し訳なく思います」


《理趣釈教》とは空海さまが持っていた本ですよ。


「いや、本当に知りたいなら手紙ではなく

(みずか)ら足を運ぶべきでした。此方こちらこそ未熟みじゅくでお恥ずかしい」


 彼らは、本の貸し借りからギクシャクしたのですよね。

お二人をへだてたエピソードも

此処ここでは微笑(ほほえ)ましい思い出となっております。


血気盛けっきさかんな若者にはよくあるスレ違いです。

向き合って話し合えば簡単に解決するものですよ」


 流石は聖徳太子様、ふところの深さを感じます。


「さすが10人の言葉を聞けるお方だ。

お二人の悩みもズバッと解決しましたね!」


「――今、その伝説は必要ですかな?」


 聖徳太子様のワントーン低い声が響きます。

し、し、しまったぁ! 伝説話は禁句でした!!


「あ、あの、済みません。聖徳太子様」


「一度は許しますがね、ですが次は……」


 それは二度目はないという

いわゆる最終宣告さいしゅうせんこくではないですか!?

あばばば、懐の深さは何処どこへ行ったのです?


「聖徳太子様はすでに何度も伝説話を言われて

ブチ切れやすくなっております。

どうかこれ以上、神経を逆撫さかなでしないように」


 カタカタ震える私に空海さまがささやきました。


揶揄からかわれているととらえてる(ふし)があります。

我々は最強伝説(さいきょうでんせつ)だといたのですが、

どうにも納得してないらしく……済みません」


 そして何も悪くない最澄さまが謝る始末です。


「いいえ、悪いのは私なんです!

皆さま、申し訳ありませんでしたぁ!!」


 満足気な表情の聖徳太子様と同情的な目で見るお二人……

些細ささいなことが亀裂きれつの原因になると

この身をもって体現たいげんしている所で御座います。

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