第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第4話、バードマン集落襲撃放火事件 その7
第4話その7
チックジャムを返り討ちにしたドレイク達(正確に言えば返り討ちにしたのはベルフルフ)は急いで集落に戻っていた。フリルフレアの魔法で一命をとりとめたものの、未だ予断を許さないイーブスの治療を続けなければならなかったし、巻き添えで亡くなったラースの遺体を埋葬しなければならなかった。そして集落に到着したドレイクとフリルフレアはイーブスを診療所に運ぶ手伝いをした。本来ならばフリルフレアの回復魔法はかなり絶大な回復力を示すのだが、今回は魔法の効きが悪いのかイーブスの怪我の治りがあまり良くなかった。イーブスを診療所に運んだ後、フリルフレアは散々「おかしいなぁ……、いつもはもっと治りがいいのに…?」と頭をひねっていたが、治りが悪いものは仕方がなかった。
そしてラースの埋葬に立ち会ってくるというベルフルフと別れると、イーブスの事を集落の医者に任せ他のメンバーと合流した。
情報を整理するために借りた空き家に集まったドレイク達。日も暮れて来たので夕食を摂りながら話し合おうと言う事になり、皆でフリルフレアの作った夕食にありついていた。
「……って訳で、俺とフリルフレアの方はそのイーグルって奴の回復待ちになっちまった。ワリィが収穫はゼロだ」
そう言って肩をすくめるドレイクに、「ドレイク、イーグルじゃ鷲だから。イーブスさんだからね?」と言ってフリルフレアが同じように肩をすくめていた。
「私とスミーシャの方は大した情報は仕入れられなかったんだが…」
「一個だけ、有益な情報を仕入れたんだよね」
ローゼリットの言葉を引き継ぐようにそう言ったスミーシャは人差し指を立てるとウィンクして見せた。
「有益な情報ですか?」
「そうそう、有益な情報。まあ本来ならただじゃ教えられないんだけど、フリルちゃんがどうしてもって言いながらあたしにチューしてくれるなら……」
「どうやら件の怪鳥は突然現れたらしい」
「ああ!ローゼ言っちゃダメ!」
スミーシャの馬鹿な提案を遮るように話し出したローゼリット。スミーシャが「何で話しちゃうのー!」とか言いながらローゼリットの肩を掴んでガクガクと揺さぶっているが、ローゼリットは特に気にした様子もなく言葉を続けた。
「突然現れたというのも正確とは言えないらしい。本当に……気が付いたらすでに集落の中に居たらしいんだ」
「気が付いたら、ですか?」
アレイスローの言葉に頷くローゼリット。その表情は少し険しい。
「つまり誰も怪鳥が飛来した瞬間を見ていない。まるで初めからそこにいたかのように突然現れたらしいんだ」
「何だそりゃ?魔法でも使ったのか?」
「そこまでは分からん」
ドレイクの言葉に首を横に振るローゼリット。そしてフリルフレアにチューしてもらうのを諦めたスミーシャが腕を組みながら唸っていた。
「でもさ、それが魔法かどうかは分からないけど、少なくともフェニックスかどうかって話だったら疑わしいと思わない?」
「と言いますと?」
フリルフレアの合いの手にスミーシャは首をひねる。
「だってさ、フェニックスって結構有名な神獣じゃない?あ、鳥だから神鳥かな?まあいいいや、とにかくフェニックスがそんないきなり現れたなんて話、聞いたことある?」
「ん…言われて…見れば…確かに…」
「そんな話は聞いたことがありませんね」
スミーシャの言葉に顔を見合わせるフェルフェルとアレイスロー。
「でしょ?だからさ、あたし的にはこの怪鳥ってフェニックスとは違うと思うんだよね」
「これに関しては私もスミーシャと同意見だ」
そう言ってドレイクの方に視線を向けるスミーシャとローゼリット。ドレイクの意見を訊こうとしているのだろう。
「なるほどな……。確かに言われて見りゃフェニックスとも違う気がするが……」
頭をひねるドレイク。だが、まだ結論を出すには早い気もする。
「弐号とカワセミはなんか掴んだのか?」
ドレイクの視線がアレイスローとフェルフェルに向く。そしてフリルフレアとローゼリット、スミーシャの視線も二人に注がれる中、アレイスローが口を開いた。
「残念ながら私とフェルの方は怪鳥の情報はつかめませんでした」
「そうなんですか…」
少し残念そうなフリルフレア。怪鳥がフェニックスであるにしろないにしろ、情報があるに越したことはない。
「しかし、妙な話は聞きました」
「妙な話、ですか?」
フリルフレアの疑問に頷くアレイスロー。
「何でも、怪鳥の出現と同時に別の場所で光を見たというのです。それもかなり大きな光を」
「光?何の光なんだ?」
疑問を返すローゼリット。だがアレイスローは首を横に振った。
「残念ながら光の正体までは分かりません」
「でも…その光の…あった場所で…人が…死んでたって…」
「人が死んでた?」
フェルフェルの言葉に訝し気な表情をするドレイク。しかしフェルフェルは頷くと言葉を続ける。
「何でも…光は…全部で…4回…光ったらしい…けど…その…全部の…場所で…人が…干乾びて…死んでた…らしいよ…」
「干乾びて死んでいた?」
「…うん…」
ローゼリットの言葉に頷くフェルフェル。フェニックスとは直接関係は無いだろうが、怪鳥の出現と同時に起きた謎の光、そしてそこにあった干乾びた死体、怪鳥と無関係とも思えなかった。
(やはり、怪鳥はフェニックスではないのか?)
ドレイクがそんなことを考えながら、この先このまま調査を続けるか、見限って他の場所へ移動するか考えている時だった。
バアン!と激しい音を立てて小屋の扉が開かれた。そこには肩で息をしながら険しい表情をしているホーモンがいた。
「た、大変じゃ!怪鳥が!怪鳥が現れおった!」




