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第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第2話、バードマンの集落を求めて その6

     第2話その6


 翌朝、フリルフレアの作った朝食を食べたドレイクとアレイスローはやることも無くボーっと泉の方を見ていた。何となくいたたまれないのか二人そろって膝を抱えて座っている。そんな二人の視線の先には泉で水浴びをするフリルフレア達の姿があった。

 先ほど朝食を取り終えたドレイク達。そんな中、遠慮がちに小さく手を上げたフリルフレアが恥ずかしそうに小声でみんなに告げた。

「あの……ごめんなさい。もしまだ時間があったら、水浴びして来たいんだけど……」

 そう告げるフリルフレアをローゼリットとスミーシャがまじまじと見つめていた。

「あ…ごめんなさい、まだ仕事の最中だしダメですよね。今は我慢し……」

「ナイスフリルちゃん!」

 フリルフレアが言い終わる前にスミーシャがそう叫びながらフリルフレアの両手をガシッ!と握りしめる。そしていきなり手を掴まれたことに驚き目を白黒させているフリルフレアの両手をブンブンと振り回す。

「そう、ナイスよ!グッジョブよグッジョブ!フリルちゃんナイスアイディア!」

「確かに、泉があるなら今のうちに汚れを落としておいた方が良いな。次、いつ風呂に入れるか分かったもんじゃないからな」

 そう言ってフリルフレアの肩に手を乗せるローゼリット。正直な話、フリルフレア的にはダメもとでの提案だったのだが、意外にも女性陣からの反応は好印象だった。やはり、可能な限り身だしなみを綺麗にしておきたいと思うのは女性の性なのだろう。ならば、ドレイク達もそのことに理解を示してくれるのではないかと思い、フリルフレアはドレイクに視線を向ける。しかし、当然と言うか何と言うかドレイクはさも面倒くさそうな顔をしていた。ちなみにその隣のアレイスローは一応の理解は示しているらしく、何も言ってこなかった。

「ドレイク……水浴び…ダメ?」

「好きにしろ」

 ドレイクは面倒くさそうな顔をしてはいたが、「勝手にしてくれ」と言わんばかりに肩をすくめていた。

「それじゃ、さっそくみんなで水浴びしよっか!」

 スミーシャがタオルを持って嬉々としてフリルフレアの手を引っ張る。スミーシャの「みんなで」の発言に若干身の危険を感じないでもないフリルフレアだったが、ローゼリットとフェルフェルも一緒だし、あまり時間もかけていられないと考え直す。そして自分もタオルを掴むとスミーシャと一緒に泉に向かって走っていった。ローゼリットもその後に続く。ちなみにフェルフェルはとっくの昔に泉に駆け寄っており、すでに服を脱ぎ始めていた。

 そして泉で水浴びを始めたフリルフレア達。泉はそれほど大きくなく、周辺や泉の中には危険は無さそうであり、水質も人体に無害な物だと言う事を前日の内にローゼリットとスミーシャが確認済みだった。なので皆思い思いに水浴びを楽しんでいる。

 フリルフレアは自慢の深紅の翼を広げて水面に浮かんでおり、スミーシャは泉の中を泳ぎ回っている、ローゼリットは体の汚れを擦って落としており、フェルフェルは何故か仁王立ちでドヤ顔だった。

「…フッ…フェルの…魅惑の…ボディで…男…共を…悩殺…」

 何やら意味の分からないことをほざきながら惜しげもなく自分の裸体を晒しているフェルフェル。逆光のせいか肝心なところがまぶしくて見えないのが残念だったが、実際の所本人が言うほど魅惑のボディと言う風にも見えない。

 確かに線は細めで、腰も細くくびれがある。胸もそこそこあるしお尻はキュッとしまっている。正直フリルフレアと比べれば十分魅惑のボディなのだろう。だが、ここにはその他に魅惑の巨乳を持つスミーシャと、ため息が出るほどバランスが良くスタイルの整ったローゼリットがいる。この二人の前ではフェルフェルの身体など月とスッポンである。綺麗な青い翼を広げながらポーズをとっているところ悪いが、正直な話滑稽なピエロに見えてしまう。

 だが、フェルフェルが自分の滑稽さに気が付く前に絹を裂くような悲鳴が辺りに響き渡った。

「ぎゃああああああ!ちょっと!何で赤蜥蜴とアレイスローがこっち覗いてんのよ!」

 ………訂正しよう。絹を裂くようなというよりも、マンドラゴラを引き抜いた時のような悲鳴と言うべきかもしれない。とにかく、そんな全く可愛くない悲鳴を上げながらスミーシャがドレイクとアレイスローを指差していた。

「あ……い、いえ…私は見てませんよ!」

 そんなことを言いながら慌てて顔を逸らすアレイスロー。そんなアレイスローに対してフェルフェルが「…ならば…これで…アレイを…悩殺…」とか言いながらアレイスローの方に自分の裸を見せつけようとしているが、アレイスローは既にそっぽを向いていた。ちなみにドレイクの方が未だに4人の事をガン見している。

「赤蜥蜴、私達を覗くとは……覚悟はできているんだろうな」

 泉から上がり、タオルで体を隠しながら短剣を引き抜いたローゼリットは鋭い目つきでドレイクを睨んでいる。そして、フリルフレアは顔を真っ赤にしながら肩どころか顔の半分くらいまで水の中に浸かり、スミーシャは下半身を泉の中に漬けたまま左腕で胸を隠し右手でドレイクを指差しながら睨み付け、フェルフェルは自分の事を誰も見ていない事実に気が付き「…フェル…ショック…ガーン…」とか言いながら泉に倒れ込みそのまま浮んでいた。

 そんな女性陣を見ながらドレイクはヤレヤレと言いたげに肩をすくめるとため息を吐いた。そして少し小馬鹿にしたような視線を送っている。

「おいおいお前ら、誰がお前らを覗いているって?バカなことを言うんじゃないぜ」

「ミイィィ……。バカじゃないもん。それにドレイクこっち見てるじゃない」

「ああ、だから覗いてなんかいないぞ?堂々と見ているんだ」

「なお悪いわバカタレ!」

 思わず叫びと共に投げつけられたローゼリットの短剣がドレイクの眉間を直撃して弾かれる。ドレイクだからこそ鱗で弾き飛ばせたのであり、常人だったならば眉間に短剣を突き立てられていたところである。そんな危険行為だったのだが、ドレイクはケロッとした顔でおでこをさすっていた。

「痛てぇなあ金目ハーフ。何すんだよ」

「何すんだよはこっちの台詞だ馬鹿蜥蜴」

 睨み付けてくるローゼリットはすごい剣幕だった。その後ろではスミーシャも泉から上がりタオルを体に巻いている。もっともバードマンの2人はいまだ泉の中だった。

「ミィィィィ………。ドレイクのエッチ……」

 恥ずかしさからか顔半分まで浸かって泉から上がれないフリルフレアの呟きは泡となって泉の水の中に消えていった。

「とにかく!さっさと何処かへ行けエロ蜥蜴!」

「いやいや、ちょっと待て金目ハーフ。お前らもしこの状態で襲われたらどうするんだ?だから俺がもしもの時の為にここで見張って……」

「さっさと何処かへ行けエロ蜥蜴!」

 さらに目の端が吊り上がるローゼリットを見て、ドレイクは「へいへい、すんません………」と言いながら諦めて後ろを向いたのだった。


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