おまけ フリルフレアとドレイクの一手間クッキング ハンバーグ編
おまけ フリルフレアとドレイクの一手間クッキング ハンバーグ編
「皆さんこんにちは、フリルフレア・アーキシャです。このおまけコーナーでは私とドレイクが一手間掛けた美味しい料理の作り方を皆さんにお教えします」
「アシスタントのドレイク・ルフトだ。よろしく頼む」
そろってお辞儀をするフリルフレアとドレイク。二人の前には大きな台があり、その上にまな板や包丁が置いてあった。また横の方には鍋やフライパンが置いてあり、火を着けるかまどやコンロもあった
「今日は野菜嫌いな子供でも美味しく食べられて、同時に野菜も食べられる野菜入りハンバーグの作り方を説明いたします」
そう言うとフリルフレアは台の下から大きな肉の塊を出す。
「今日はちょっと贅沢に牛肉100%で行きたいと思います。じゃあ、まずこのお肉をひき肉にしていきたいと思います。じゃあアシスタントのドレイク、このお肉を叩いてひき肉にしちゃってください」
「叩けばいいんだな?」
「そうです」
「任せろ」
ドレイクは肉を掴むとまな板の上に置いた。そしてそのまま手を振り上げ………。
「チィエストオオォォォ‼」
バキィン!グチャ!
ドレイクの手刀が肉の塊に叩き込まれる。あまりの衝撃にまな板は半分に叩き割られ、衝撃でちぎれた肉の塊は3分の1程が台の上で潰れており、残りの3分の2は衝撃で吹き飛びドレイクの後方に落ちていた。
「ふう………パーペキ(パーフェクトと完璧を合わせた造語)だな……」
「はい……確かにパーです…完璧に……」
「そうだろう、そうだろう」
ウンウンと頷くドレイク。フリルフレアは俯いているためその表情を見ることはできない。
「でもフリルフレア、その言い方だと俺が完璧に頭パーみたいに聞こえるぞ?」
「そう言ってるんですよ!アホか⁉アホなんですか⁉アホなんですね‼」
「いや…そんなに怒らなくても……、叩けって言ったのお前だろ?」
「だからって、肉を叩けって言われて本当に素手で叩く人がどこの世界にいるんですか!」
ドレイクにジト目を送るフリルフレアだったが、ドレイクはニコニコしながら自分のことを指さしていた。どうやらこの世界にいると言いたいらしい。
それを見てフリルフレアは「はぁ…」と、深々とため息をついた。
「良いですかドレイク。肉を叩いてひき肉にするって言うのはこうするんです。見ていてください」
そう言うとフリルフレアは割れたまな板を放り捨て、肉を別のまな板の上に乗せた。ちなみに後ろに落ちた肉は洗ってからまな板の上に置いた。
「まず、お肉をスライスします」
「ふむふむ」
フリルフレアは肉の塊を5㎜程の薄さにスライスした。とりあえず3枚ほどスライスする。
「次に、スライスしたお肉を棒状に切り、その後さらに細切れにしていきます」
「ほうほう」
スライスした3枚の肉を細長く棒状に切り、それをさらに細切れにしていく。すぐに5㎜角の肉の細切れができる。
「そして、ここからが『叩く』です!まな板の上に広げたお肉を包丁で叩き切っていきます。ミンチにしていくわけです」
「なるほど」
バシバシ肉を包丁で叩くフリルフレア。感心しているドレイクにジト目を送る。
「何感心してるんですかドレイク。残りのお肉はあなたがやるんですよ」
「え?俺がやんの?」
「ミィィィ……何のためのアシスタントですか」
ぼやくと、フリルフレアは叩いてミンチにした肉をボールに移す。
「粗みじんでかまいませんので、こんな感じでひき肉にしてください。……ドレイク、残りのお肉全部ひき肉にしてください」
「ええ、面倒くさい……」
「何のためのアシスタントですか。キリキリやってください」
「ちぇー」
つまらなそうに言うとドレイクは肉をスライスし始めた。
「ではドレイクがひき肉を作っている間に私は別のことを…」
フリルフレアは別のまな板の前に移動。その上には玉ねぎが置いてある。
「はい、では次に玉ねぎをみじん切りにします。これも粗みじんでOKです。
手早く玉ねぎの皮をむくと、スパパパンとみじん切りにしていくフリルフレア。素早く丁寧な包丁さばきだった。
「次にこのみじん切りにした玉ねぎを弱火で炒めていきます。まずはフライパンを熱して……」
フリルフレアがフライパンを火にかける。少しあったまったところでバターをひとかけ投入し、バターを溶かす。そしてそこにみじん切りにした玉ねぎを投入した。
「玉ねぎは弱火でじっくりと痛めていきます。強火にしちゃうと焦げちゃうので……。弱火でジックリとあめ色になるまで炒めるのがコツです」
玉ねぎをじっくりと炒めていくフリルフレア。その後ろではイライラしたドレイクが「ウオオオオオ!やってらんねー!」と叫びながらすさまじい勢いで肉に拳を叩き込み始めていた。
ドガガガガ!と激しい音を立てて肉に叩き込まれていくドレイクの拳。その拳はみるみる肉を潰し、うち砕き、繊維を断ち切り、ミンチに仕上げていった。
「やっぱこの方が楽じゃねえか」
「アホかぁ!」
スパーン!と快音を響かせフリルフレアが持っていたフライパンでドレイクの頭を盛大に引っ叩く。当然中の玉ねぎは辺り一面に飛び散った。
「ああ!玉ねぎが!」
「アホだなぁ」
「アホはドレイクでしょう!どこの世界に肉を叩いてミンチにする人が居るんですか!」
声を荒げるフリルフレアに、ニコニコしながら自分を指さすドレイク。やはりこの世界にいると言いたいらしい。
「皆さんに説明しているのに、皆さんができない方法を実演してどうするんですか⁉」
頭を抱えるフリルフレアに、ドレイクは「これくらいできるだろ?」と、本気とも冗談ともつかないことを言っていた。
「もういいです……。お肉がもったいないのでこのお肉を使います」
「はぁ…」とため息を槌いながらミンチの入ったボールを受け取るフリルフレア。
「おいフリルフレア。玉ねぎはどうするんだ?」
「はい、玉ねぎはですね……」
台の下をごそごそとあさるフリルフレア。別のフライパンを取り出す。ちなみにドレイクを引っ叩いたフライパンは衝撃で根元から曲がってしまいもう使い物にならない。
「あめ色になるまで炒め、冷ましたものがこちらになります」
フライパンの中には炒めた玉ねぎが入っていた。どうやら事前に用意していたらしい。
「最初からそれ使えばいいじゃんか……」
「何か言いましたかドレイク?」
「……別に…」
何となくフリルフレアから不穏な空気を感じ黙るドレイク。そうしている間にフリルフレアは台の下から食パンを取り出す。
「では次に、ハンバーグのつなぎに使うパン粉を用意したいと思います。ドレイク」
「なんだ?」
フリルフレアが差し出してきた食パンをドレイクは受け取った。そしてそのままヒョイ、パクッと食べてしまう。
「もぐもぐ…ゴクン。うん、普通の食パンだな」
「アホですか!」
スパーン!と音を立てて、ドレイクの頭をフライパンで引っ叩く。今回は学習して玉ねぎが入っているものとは別のフライパンを使った。
「痛えなあ、何すんだよフリルフレア」
「『何すんだよ』はこっちのセリフですよ!つなぎに使うって言ってるのに何で食べちゃうんですか⁉」
「つなぎ?蒲焼にするのか?……あれ?でもハンバーグって言ってたよな」
「それはつなぎじゃなくてウナギです‼ああもう!とにかくドレイクは食パンの耳の部分だけを細かくちぎってボールに入れておいてください」
「ああ、分かった」
食パンの耳をちぎり出すドレイク。ちなみに残った耳以外の身の部分はドレイクの腹の中に放り込まれたのは言うまでもない。
「では次にお肉に混ぜ込む野菜です。今日は子供が苦手とするピーマンとニンジンを用意しました。ピーマンはみじん切りにしていきます」
フリルフレアはピーマンとニンジンを台の下から取り出すと、まずピーマンをまな板の上に置いた。そして、手早くヘタと芯、種を取り外すと細かくみじん切りにしていく。
「おいフリルフレア、終わったぞ」
ドレイクがパンの耳を持ってくる。結構乱雑にちぎられていた。
「雑ですね……、まあいいです。ドレイクは次はニンジンをすりおろしてください」
「すりおろす?」
「はい、このおろし金でショリショリおろしてください。皆さん、にんじんはみじん切りにするよりおろしてしまった方が、混ぜ込んだ時に分かりづらいです」
洗ったニンジンをドレイクに手渡すフリルフレア。ドレイクはニンジンをマジマジと見回したが、そのままおろし金にあててすりおろしていく。
「その間にパン粉の処理をしましょう。パン粉は少量の牛乳につけておくといいです」
フリルフレアがパン粉を牛乳に浸している中、ドレイクはニンジンをすりおろしていたが、半分くらい摩り下ろしたところで面倒くさくなり、残りのニンジンを胃の中に放り込んだ。
「ドレイク、にんじん終わりました?」
「バリバリ……ゴクン。ん、終わった」
「何食べてたんですか…?………なんかニンジン少なくありません?」
「気のせいだろ」
疑わしげな視線を送るフリルフレア、ドレイクは冷や汗を垂らしながら視線をそらした。「はあ……、先に進みましょう。ボールにひき肉、炒めた玉ねぎ、牛乳に浸したパン粉、みじん切りのピーマン、摩り下ろしたニンジン、あと卵を1個入れます」
「ふむふむ」
フリルフレアの指示通り大きなボールに材料を放り込んでいくドレイク。
「さらにここで下味をつけます。塩、コショウ、葡萄酒を少々、ナツメグも入れます」
フリルフレアがパッパッと調味料を入れていく。
「全部入れたらよく混ぜてください。ドレイク、しっかり混ぜてください」
「おうよ」
力仕事は任せろと言わんばかりにニヤリと笑うと、ドレイクはボールを左手で抑えた。そして肉の中に勢い良く右手を突っ込む。
べチャッ。
勢いでボールの中の肉が4分の1ほど周りに飛び散る。
「うおおおおおお!」
勢いよくボールの中身を掻きませるドレイク。勢い良く、混ぜる。その勢いのままに、混ぜる、混ぜる、混ぜる。混ぜる。そして気が付けば………。
「ん⁉大変だフリルフレア。ボールの中身がどっかに消えちまった」
「『消えちまった』じゃないでしょおお‼」
スパカーンと盛大な音を立ててフリルフレアはドレイクの頭をフライパンで引っ叩いた。
「あんな勢いで混ぜたら全部飛び散るにきまってるでしょう⁉」
「え?そうなの?」
「そうだよ!ドレイクのバカ!」
いい加減半ベソかいているフリルフレアだったが、それでも台の下をゴソゴソとあさって、大きめのボールを取り出す。
「仕方がないので…、ここに全部混ぜたものがあります」
どこぞの3分で作る料理番組のごとく、ある程度まで準備済みの食材を取り出す。
「次に、ハンバーグの形を作っていきます」
そう言うとフリルフレアは材料を丸めて、楕円形の形にした。そして真ん中を少しへこませる。
「こうやって真ん中を少しへこませてください。でないと真ん中が膨らんで火の通り方が均一じゃなくなっちゃいます」
「なあフリルフレア。俺は何すればいいんだ?」
「これ以上ドレイクにやらせると酷い惨状になりそうなんで何もしないでください」
「はーい」
若干涙目で睨んでくるフリルフレアにおとなしく退散するドレイク。いそいそと引き下がっていった。
「形が整ったら次は焼いて行きます。まずフライパンに油を敷きます」
フリルフレアはフライパンを取り出すと、火にかけて熱し油を敷いた。
「お肉を入れて、表面に焼き目を付けます。この時は強火にしてください」
肉を入れ、ジュージュー焼いて行くフリルフレア。ハンバーグの焼けるいい匂いがあたりに充満する。後ろでドレイクが生唾を飲み込んでいた。
「うまそうだなぁ……」
「はい、間違いなくおいしいですよ。だってこれドレイクが乱雑に仕込んだ方じゃなくて私が昨日時間をかけて用意しておいた方ですから」
「…………」
若干皮肉の混じったフリルフレアの言葉に黙り込むドレイク。おとなしく出来上がりを待つことにした。
「強火で両面に焼き目が付いたら、ごく弱火に変えます。そして蓋をして5分ほど蒸し焼きにします」
「蒸すのか焼くのかどっちなんだ?」
「……………」
いい加減突っ込むのもつかれたのか、ドレイクの言葉を無視するフリルフレア。
「焼きあがったと思ったら、念のため竹串で真ん中の辺りを刺してみてください。透明な肉汁が出てきてれば完成です」
そのままフリルフレアはお皿にハンバーグをのせる。
「フライパンには肉汁が残っています。この肉汁を使ってソースを作ります」
そう言ってフリルフレアは再びそのフライパンをごく弱火にかけた。
「この肉汁の中にバターを少し入れ、さらにケチャップ、ウスターソース、お醤油を入れます」
手早くバター、ケチャップ、ウスターソース、醤油を入れて混ぜていくフリルフレア。すぐにソースが完成した。
「出来上がったソースをハンバーグに適量かければ完成です。そのソース以外にも、シンプルにケチャップだけでもいいですし、大根おろしにお醤油やポン酢を入れてサッパリいただいてもおいしいです。後、もう一手間掛けてデミグラスソースを作ってそれをかけてもおいしいですよ」
「モグモグ……ゴクン。確かにうまいな」
フリルフレアの横でドレイクがハンバーグにソースをかけて頬張っていた。
「え⁉ち、ちょっと!なんでドレイクが食べてるんですか⁉孤児院の子供たちのために作ったんですよ!」
「え?でも俺、今日はアシスタントじゃ?」
「ミィィィ!アシスタントであって試食係じゃないですよ!キュー○―3分クッキングだってアシスタントは試食しませんよ!」
「そんなこと言ってももう食べちまったしなぁ……」
そう言いながらまた一つハンバーグを口に放り込むドレイク。それを見てフリルフレアはドレイクに食って掛かる。
「そう言いながらまた食べたじゃないですか!」
「いやぁ、アシスタントしたら腹減ったし………モグモグ」
「ドレイクがお腹すかせてるのはいつもじゃないですかぁ!」
頭を抱えるフリルフレア。焼いた分のハンバーグは全てドレイクの胃の中に納まってしまった。
満足したドレイクはそのまま台の前にやってきた。
「さておまけコーナードレイクとフリルフレアの一手間クッキングはどうだった?」
「ミイィィ!ドレイク、何一人で〆に入ろうとしているんですか!あと、『ドレイクとフリルフレアの』じゃありません!『フリルフレアとドレイクの』です!」
「いや、それどっちでも良いだろ……」
「良くありません!本編と違ってこのコーナーの主役は私です‼」
「あっそ……、まあ、本編は俺が主役だからな」
「言っておきますけど、私だって本編では『もう一人の主人公』兼『ヒロイン』なんですからね!」
フリルフレアはドレイクと並ぶと、二人で一礼する。
「という訳で、フリルフレアとドレイクの一手間クッキング、楽しんでいただけたなら幸いです」
「次回は何にするんだ?」
「まだ決まってません。でも、一手間掛けた美味しい料理の作り方を皆さんと一緒に見ていきたいと思っています」
「なるほど、次回が楽しみだな」
「はい、それでは皆さん、次回の『赤蜥蜴と赤羽根 第2話』及び『おまけコーナー フリルフレアとドレイクの一手間クッキング』でお会いしましょう」
「シーユーアゲインってやつだな」
フリルフレアとドレイクは再び二人そろって一礼した。
「あ、フリルフレア。やっぱハンバーグだけじゃ足りなかったんだけど何か食べるもんない?」
「ミイイィィィ!知りません!ドレイクのバカぁ!」
終わり