第4章 赤蜥蜴と赤羽根と翼人の里 第1話、ドレイクとフリルフレアの鎧探し その1
第1話、ドレイクとフリルフレアの鎧探し
第1話その1
ドレイク達は気を取り直して食事を再開していた。ベーコンとチーズのオムレツも運ばれてきており、フリルフレアの機嫌はしっかりと直っている。
「でもドレイク、本当に鎧はどうするつもりなの?」
機嫌の直ったフリルフレアがベーコンとチーズのオムレツを食べながらドレイクに訊ねる。いくら頑丈な鱗を持っているとはいえ、パーティーで一番の戦力であるドレイクが、防具を身に着けていないというのは確かに問題があるように思える。
「別に必要無いんじゃないの?」
「確かに…お前、意外と避けるしな」
スミーシャとローゼリットがドレイクに視線を向ける。確かに、戦闘においても防御よりも回避がメインスタイルで戦っている彼女達はそれほど頑丈な防具を身に着けている訳では無い。それから考えれば、ドレイクが無理に鎧を着る必要は無いのではないかと言いたいらしい。
「いえ、戦士であるドレイクさんにはやはりちゃんと鎧を身に着けてもらった方が良いと思いますよ。こういう言い方はなんですが、やはりいざと言うときに盾になってもらえますから」
「俺は盾代わりかよ」
「言い方が悪かったなら謝りますよ、けどそれもパーティーにおける戦士の役目でしょう?」
「まあ……確かにそうだが…」
アレイスローの言葉に、何となく納得するドレイク。言い方が悪かろうが何だろうが、アレイスローの言っている事は別に間違いではない。世の中には大盾を持ってそういった防御をメインとする戦士たちも存在するくらいだ。
「では、当座の装備として革鎧か鎖鎧でも装備しておきますか?」
「う~ん……とりあえず、防具屋に行ってから決める。良さそうなのがあったら買うし、無かったらもう少し金を溜める。どうせ今の残金じゃ金属鎧は買えないからな」
アレイスローにそう答えながらドレイクはエール酒に口を付けた。どちらにしろ現在の所持金では大した鎧は買えそうもない。
「確かに金を貯めておくというのも一つの手だな。それで、良いものが見つかった時に買えばいいんだしな」
「でも、そんなに簡単に良い鎧って見つかるのかな?」
スミーシャがローゼリットに訊き返す。確かに良い上質な鎧となると、普通の防具屋ではなかなか見つからないことも多い。ましてや全身鎧ともなると、小さな防具屋では取り扱っていないことすらある。ラングリアの防具屋は大きい店舗なので全身金属鎧も取り扱っているが、良い防具を探すなら全身鎧よりも、部分鎧を組み合わせた方が良いかも知れない。
そんなことを考えていたドレイクだったが、ふと一つの問題に気が付いた。その問題が自然と口をついて出る。
「俺の鎧の話も良いが、フリルフレア、お前の防具はどうなんだ?」
「へ?私?」
突然ドレイクに話を振られ目をパチクリさせるフリルフレア。
「私は防具なんて……」
「そうは言うけど、お前の持ってる服なんて防御能力0だろ?」
ドレイクの言葉に「うっ」と呻いて言葉に詰まるフリルフレア。確かにフリルフレアの着ている服はどれも普通の服であり、防具としての効果は期待できない物ばかりだった。
「わ、私精霊使いだから別に防具なんか必要ないもん」
「え?でもフリルちゃん、精霊使いでも革鎧くらいなら装備してる人たくさんいるよ?」
「う……」
スミーシャに言われ、次の言葉に詰まるフリルフレア。
「で、でもさ…私バードマンだからいざと言うとき飛べないと不便だし……」
「別に…革鎧…なら…着ていても…飛べる…フェルも…着てる…」
「う……」
フェルフェルにも言われ、再び言葉に詰まるフリルフレア。
「私も、軽革鎧くらいは着た方が良いと思いますよ?」
「軽革鎧ならそれほど重くないし、動きまわるのに支障はないぞ?」
アレイスローとローゼリットにも言われ、ついに黙り込んでしまうフリルフレア。そんな彼女を見てドレイクがため息をついた。
「てか、何でそんなに防具を着けたくないんだ?」
少し呆れた様に言うドレイク。そんなドレイクにチラリと視線を向けたフリルフレアは少しモジモジと恥ずかしそうにしていた。
「えっと……防具を着けたくない理由はいくつかあるんだけど……一番の理由は…」
「一番の理由は?」
ドレイクが先を促す。思わず全員が固唾を飲んで見守る中、フリルフレアは躊躇いがちに口を開こうとしては口をつぐんでしまい、結局口をパクパクさせただけだったが、意を決したように口を開いた。
「その………可愛くないから……」
「は?」
ドレイクが思わず間抜けな声を出す。フリルフレアが何を言っているのか分からないと言った表情でポカンとしている。それに対し、スミーシャ、ローゼリット、フェルフェルの3人は「ああ、なるほど」と言った表情で納得していた。アレイスローは納得したのかしてないのか、肩をすくめただけだった。
「いや、防具に可愛い可愛くないを求めてもしょうがないだろ?」
「も、もちろんそれだけじゃないよ!どうしても重いし、動きづらいし、可愛くないし……」
「いや、可愛くないはさっき聞いたんだが……」
正直な話どこからツッコミを入れたらいいか分からないドレイクだったが、フリルフレアが本気で言っているらしいことは何となくわかる。
「それなら、可愛い鎧を探せばいいだろ」
「そんな都合の良い物がそうそうある訳ないじゃない」
「まあ、確かにそうそうそんなものがあるとも思えんが…」
そう言って考え込むドレイク。確かにヒラヒラのフリルやリボンの付いた鎧などという物は聞いたことがない。
「いえ、そうでもありませんよ。魔法の鎧の中には大昔に装飾品の代わりとして使われていた鎧などもあるそうですから、デザイン重視の物もあるはずです」
「え?そうなんですか?」
アレイスローの言葉に、意外そうな声を出すフリルフレア。彼女の中には鎧=武骨で可愛くない物といったイメージがあったみたいだ。
「そう言うのもあるんだったら、お前も防具屋を見て回ったらどうだ?」
「そ、そうだね……そうしよっかな…」
ドレイクの言葉に答えながら、フリルフレアは頭の中でどんな「可愛い鎧」があるのかと想像を巡らせていた。




