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第3章 赤蜥蜴と赤羽根と魔王の器 第7話、赤き竜の咆哮 その7

     第7話その7


 そこから先に起きたことは、もはや戦闘と呼べるものでは無かった。一方的な殺戮…………いや、その表現すらふさわしくないかもしれない。

 吐き捨てるように言い放った深紅の竜は、拳を振り上げ、その鋭い爪を振り下ろした。

ザバシュッ!

 深紅の竜の爪が巨大大喰い蟲の身体に食い込む。竜化したバレンシアでさえまともに傷をつけられなかった巨大大喰い蟲の皮膚を、深紅の竜はあっさりと斬り裂いていく。

 深紅の竜はさらに拳を振り上げ、その鋭い鉤爪を振り下ろす。巨大大喰い蟲の皮膚が裂けて肉が飛び散る。

「ケシャアアアアアア!」

 苦しそうに鳴き声を上げる巨大大喰い蟲。だが、それに構わず深紅の竜はその鋭い爪を振り下ろし続けた。深紅の竜が鋭い鉤爪を振り下ろすたびに、巨大大喰い蟲の皮膚は裂け、肉は飛び散り、体液を撒き散らす。

 肉片を飛び散らかせ、すでにボロボロの巨大大喰い蟲。さらに深紅の竜は口を大きく開くとそのまま巨大大喰い蟲に喰らい付いた。

ズブシュッ!

 深紅の竜の長く鋭い牙が巨大大喰い蟲に突き立てられる。そしてそのまま巨大大喰い蟲の肉を引き千切ると、そのまま肉を咀嚼し飲み込んだ。

 そして再び深紅の竜は巨大大喰い蟲に喰らい付く。巨大大喰い蟲が苦しそうに鳴き声を上げていたが、深紅の竜はそんなことに構うことなく喰らい付いた肉を喰い千切り、その肉片をガツガツと咀嚼し胃の中に納めて行った。

 その様子は殺戮ですらない、深紅の竜が餌に喰らい付いているだけに見えた。

「……………は!そうだ、ドレイク!」

 あまりにも圧倒的な暴力を目にし、思わず深紅の竜から目が離せなかったフリルフレアだったが、そんな暴れる深紅の竜の足元にドレイクが埋もれているかもしれないことを思い出す。深紅の竜から視線を外し、地面に広がる瓦礫や倒木の山に視線を移す。だが、この瓦礫のどこにドレイクが埋もれているのか、全く分からない。

「どうしよう……ドレイク…」

 不安から思わず瞳に涙が滲むフリルフレア。そんなフリルフレアの両手をフェルフェルが握り返してきた。

「フリル…今は…まだ…無理だよ…」

 そう言うと深紅の竜に視線を移した。深紅の竜はいまだ巨大大喰い蟲の肉を喰らい続けている。流石に200m近い巨体を喰らっているだけあって、深紅の竜が巨大大喰い蟲を喰らい尽すのにはまだまだ時間がかかりそうだった。だが、巨大大喰い蟲自体はもう既にほとんど動いていない。その強靭な生命力を誇っていたはずの巨大大喰い蟲だが、深紅の竜の前では既にその命は風前の灯火であった。

「今は…まだ…降りられない…みんなと…合流…しよう?」

 フェルフェルの言葉に、激しく首を横に振るフリルフレア。

「でも……ドレイク、あんな所に居たら本当に潰されちゃう…」

 瞳に涙を溜めながら眼下の瓦礫と倒木の山を指差すフリルフレア。予想外の深紅の竜の登場で巨大大喰い蟲の脅威は去りそうだったが、今度はそれよりもはるかに強力そうな深紅の竜と言う脅威が生まれてしまった。いかに深紅の竜が巨大大喰い蟲を喰い殺そうとしているとはいえ、その後自分たちを襲わないとは限らない。敵の敵が味方である事例など滅多にあることでは無いのだ。

「私、あの瓦礫の山を探してきます!」

 叫びながら地面に急降下しようとするフリルフレアをフェルフェルが腕を掴んで引き留める。

「待ってフリル…せめて…あの竜が…居なくなってから…」

「それじゃ間に合いませんよ!」

 泣きながら叫び、フェルフェルの手を振りほどくフリルフレア。そしてそのまま地面に向けて急降下しようとした時だった。

「全く……所詮は蟲の肉だな。死ぬほど空腹でなければこんなまずい肉、喰いはしないんだがな……」

 深紅の竜が吐き捨てるように言い放つ。そして、もう喰い飽きたとばかりに巨大大喰い蟲の身体を足蹴にすると、口を大きく開いた。その口の中には炎が渦巻き集まっていく。

「………え?」

 深紅の竜がその口に巨大な炎をため込んでいるのを呆然と見つめるフリルフレア。そして次の瞬間フェルフェルがフリルフレアの手首を掴むと深紅の竜から離れる様に全速力で飛び出した。

「逃げるよ…フリル!…ブレスが…来る!」

 口調こそいつもと変わらないが焦った様子のフェルフェル。とにかく少しでも深紅の竜から離れるべく、フリルフレアを引っ張りながら全速力で飛んで行く。

「フェルフェルさん!ドレイクが!」

「ゴメン…フリル…あきらめて…」

 叫ぶフリルフレアに、辛そうにそう告げるフェルフェル。あの深紅の竜のブレスがどれほどの威力かは分からなかったが、あれほどの竜のブレスが生半可な威力であるはずが無かった。そして、いかにドレイクでもそんな竜のブレスの巻き添えを喰らって無事で済むとは思えない。それよりも今は自分たちの身の安全を確保するべく、一刻も早くこの場から離れるべきだった。

「うそ……ヤダ…ドレイクがぁ!」

 フェルフェルに引っ張られながらも必死に手を伸ばすフリルフレア。だが、フリルフレアの叫びも空しく深紅の竜の炎のブレスが巨大大喰い蟲の身体に向けて放たれた。

グヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 まるで地獄の業火の様な灼熱のブレスが喰い散らかされた巨大大喰い蟲の身体を一瞬で消し炭に変えていく。そして炎は巨大大喰い蟲の身体ごと地面に広がる瓦礫や倒木も焼き払っていく。

「きゃあああああああああ!」

「わあああああああああ!」

 そしてブレスの余波が空中にいたフリルフレアとフェルフェルも吹き飛ばす。悲鳴を上げて吹き飛ばされていくフリルフレアとフェルフェル。

 吹き飛ばされる最中フリルフレアが見たのは巨大大喰い蟲の残骸を消し炭に変え、瓦礫や倒木などを地面ごと焼き尽くし、さながら地獄絵図の中心に立ち咆哮を上げる深紅の竜の姿だった。


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