第8章 赤蜥蜴と赤羽根、巨人の里へ 第4話、巨人の里ローバスヘイム その5
第4話その5
ドレイクに話をさせるとジャックライトを怒らせるだけだったので、フリルフレアとアレイスローが交代し、話をまとめた。
結論としては、ゴンザレスとメイプルの用件も聞くが、別行動はさせず、まずドレイク達の用件を終わらせてからドレイク達の立ち合いの元でゴンザレスたちの用件を聞くことになった。これは一応ジャックライト一人とゴンザレスたち二人を彼らだけにしないという意味合いもあった。ローゼリットが暗殺者ではないと断言したとはいえ、何かしらの危険な因子が無いとも限らない。だからドレイク達にゴンザレスたちを見張らせる……これがドレイク達に出された条件だった。そしてもちろんドレイク達はOKし、まず巨人の刀匠の元へ向かっているところだった。
「そんで?その巨人の刀匠ってんは一体どんな奴なんだ?」
「なに、そんなに身構えんでも気のいい男じゃよ」
ドレイクの疑問にケロッとした顔で応えるガレッド。だが、意外にもジャックライトの方が渋い顔をしていた。
「偏屈者同士気が合うんじゃないか?生憎と俺にはアイツはただの頭の固い頑固オヤジにしか見えん」
「おいおいジャックライトさんや、そんなこと言ってるとランドルフが怒るんでないか?」
「別にアイツが怒ろうと俺の知ったことではない」
「まったく………相変わらず仲悪いのぅ……」
そんなジャックライトとガレッドの会話を聞いてドレイク達が目を丸くしている。
「おいおいジャックザリッパー、お前もしかしてその刀匠と仲悪いのか?」
「ジャックライトだ!何だジャックザリッパーって!」
相変わらず名前を盛大に間違えているドレイクを睨んでから深々とため息を吐くジャックライト。
「………そうだよ、俺とランドルフは仲が悪い」
「え……き、巨人同士でも仲が悪いとかあるんですか⁉」
驚いて思わず大きな声を発してから、慌てて口を押えるフリルフレア。しかしそんなフリルフレアの言葉にジャックライトは皮肉げな笑みを浮かべていた。
「お前たち人間共だって仲の良い奴、悪い奴、気の合う奴、合わない奴、生理的に受け付けない奴とか色々いるだろ?巨人なんて言ってもその辺りはお前らと何も代わらねえんだよ。それとも何か?俺達巨人を本能だけで動く獣や魔物の類だとでも思っていたのか?」
ジャックライトの意地悪なその物言いにフリルフレアは………。
「すいません!実はそう思っていました!」
「思ってたのかよ!」
何かしら言い訳がましいことを言うかと思えば、そんなことは無く素直に謝ってきたフリルフレアに思わずツッコミを入れるジャックライト。さすがに素直に謝られるとは思っていなかったらしく、思わずガクッと力が抜けていた。
「それでジャックライトさん……そのランドルフさんという方が刀匠と呼ばれている方なのですか?」
「そうだ。ランドルフ・クライブ……この里1番の鍛冶師にして………」
そう言うと足を止めるジャックライト。そこには1件の大きな建物があった。建物の形状などから何となく鍛冶師の工房なのが分かる。そしてその建物を見上げてジャックライトがボソッと呟いた。
「……この里一番の偏屈なアホだ……」
「誰が偏屈なアホだコノヤロウ!」
ジャックライトが呟いた瞬間建物の旅らが勢い良く開かれ、中からちょっとガタイの良い中年男性が姿を現した。
「おうランドルフ。お前に用があるって客人を案内して来てやったぞ。感謝して茶の一杯でも出せ」
「おうおう……相変わらず里長ってのは暇なんだなぁ!頼んでもいねえのにヒョコヒョコツラ出しやがって!」
「いやいや、好き勝手に剣を打ってるだけのおっさんより忙しいぜ?」
「誰がオッサンだ!てか、俺がオッサンならテメエだってオッサンだろうが!同い年のくせに妙に外見だけ若々しくなりやがって!」
「んだとコラァ!やんのかテメエ!」
「上等だコラ!今から脳天かち割ってやっからちょっと待ってろや!」
そんなこと言い合いながら言い争いを続けるジャックライトとランドルフ。これではまるでドレイクとベルフルフの口喧嘩のようだ。正直ドレイク達はかなりジト目で二人のことを見ていたが、話が進まなそうなので割って入ることにした。
「おいジャックロード、話が進まねえから早く俺達のことを紹介してほしいんだが……」
「ジャックロードじゃねえ!ジャックライトだ!何回言わせんだこのアホ蜥蜴!」
仲の悪いランドルフと口喧嘩のさなかにドレイクに口を挟まれ、かなりご機嫌斜めなジャックライト。それを見て再びフリルフレアが割って入った。
「す、すいませんジャックライトさん!ドレイクはちょっと黙ってて!」
「何だよ、俺は話が進まねえからと思って……」
「いいから!ドレイクが口を挟むと話がこじれるの!」
そう言ってドレイクを下がらせるフリルフレア。後ろに下がったドレイクの方はかなり不満気だ。
「すみませんジャックライトさん。それで………その方がさっき言っていた里一番の鍛冶師の……」
「そうだ、コイツがランドルフ・クライブ。まあ、ムカつくことだが……里一番の鍛冶師であることに違いはない」
「そうなんですね」
目の前の男がランドルフ・クライブであり、里一番の鍛冶師であることを確認したフリルフレアは改めてランドルフの前に進み出た。
「初めましてランドルフさん。私はフリルフレア・アーキシャと申します。実は私達のパーティーの戦士が持つ魔剣を修理していただきたくて訪ねてきました」
そう言って頭を下げるフリルフレア。その後ろでアレイスローも頭を下げている。
そんな二人を見たランドルフは不躾な感じに二人のことをジロジロ見ていたが、ため息とともに帰れとでも言いたげにシッシッ!と手を振った。
正直取り付く島もない感じに不満げなフリルフレア。だが、そこにガレッドが慌てて割り込んできた。
「まあまあ、待ってくれランドルフ!こやつらはワシが連れて来たんじゃ!話だけでも聞いてやってくれんか⁉」
「ガレッド……?……お前、何でこんな所に居るんだ?」
突然声をかけたガレッドに驚きを隠せないランドルフ。ガレッドは苦笑いと共に事情を説明することにした。




