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第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第11話、コロシアムの激闘 その5

     第11話その5


(攻撃が全く通用しないと誤認させて彼らの心を折り、絶望に打ちひしがれているところを広域攻撃魔法で一掃する手はずでしたが………まさかこちらの手の内がバレるとは……)

 ラークシュナークは見事な洞察力で自分の絶対防御の秘密を見抜いたアレイスローに警戒心を抱いた。

(なるほど……考えても見れば、カオスラグナ様に対して頭を下げる様、リザードマン以外の者達に伝えたのもこの男だった。……カオスラグナ様が『なかなか聡い』と評しただけはある………という事ですか…)

 鋭い目つきでアレイスローを睨みつけるラークシュナーク。

「……うぇ~い……敵の…秘密……見抜いた……さすが………アレイ…」

「いえいえ、フェルが彼の防御の仕方に違和感を覚えて教えてくれたおかげですよ。まさにフェルのお手柄です」

「……フェ……フェルの…お手柄……?」

「そうですそうです」

「……そ、そう……フェルの……お手柄……ふへ…フヘヘへへへへへへ…」

 キモい笑い声をあげるフェルフェルにちょっと生暖かい視線を送るアレイスロー。さしあたって「笑い方はキモいけど可愛いですねぇ」とか考えているのかもしれない。ちなみに同じパーティーであるフリルフレア、ローゼリット、スミーシャ、アレイスローはフェルフェルのキモい笑い方に慣れているが、パーティーメンバーではないゴレッドや敵であるラークシュナークは若干引いていた。

「ねえローゼ、アレイの推測通りならコイツ、無視していいんじゃないの?」

「それもそうだな」

 スミーシャとローゼリットはそのままドレイクかベルフルフの加勢に行こうとする。だが、そんな事をラークシュナークは許さなかった。

「行かせるとお思いですか?それは甘いというものです」

 ラークシュナークは空中を浮いたまま、その場を離れようとするローゼリットとスミーシャの前方へ移動する。それに対してローゼリットは両手に短剣を構えた。

「ラークシュナークだったな、やめておけ。私とスミーシャの連携ならばお前が空中にいようと接近戦に持ち込むことは可能だ。お前に勝ち目はない」

 そう言い放ったローゼリット。その後ろではスミーシャが「そうだそうだ!」とか言っている。だが、そんな二人を見てもラークシュナークの余裕の態度に変わりはなかった。

「残念ですが………先ほどの推測は80点です。何故なら……」

 そう言うとラークシュナークは腕に付けた腕輪を一つ見せつけてきた。

「この腕輪は浮遊の腕輪。………つまりレビテーションの魔法は私が直接発動させている訳ではない、魔法の腕輪の力なんです。つまり………」

 そう言うとラークシュナークは杖の先に魔力を集中させた。

「全く攻撃が出来ない訳では無いという事です!アルファ・イド・ヴェルド・ライゼリア…『ライトニングジャベリン!』」

ドゴゴゴォォォォォォォン!

 ラークシュナークの杖の先から撃ち出された電撃がローゼリットとスミーシャを襲う。

「うわぁっ!」

「ちぃっ!」

 慌ててその場から飛び退くスミーシャとローゼリット。そしてその一瞬後に今まで二人の居た場所を電撃が撃ち抜いていた。

「あ、あっぶな!……ちょっと!危ないじゃんか!」

「あなたたちを殺そうとしてるんですから危ないのは当たり前でしょう?まったく、これだからケット・シーは頭が悪くて困ります」

「ムキー!ちょっとなによ今の言葉!あんた世界中のケット・シーにケンカ売ってんの⁉」

 ラークシュナークの言葉があまりに腹に据えかねたのか食って掛かるスミーシャ。しかしそんなスミーシャをラークシュナークは鼻で笑っていた。

「だったらどうだと言うんです?ケット・シーなど所詮愚かな劣等種にすぎません。何ならケンカを売るどころか我ら黒鱗の部族で絶滅させて差し上げても構いませんよ」

「な……ぬあんですってぇ!」

 あまりと言えばあまりなラークシュナークの物言いに憤慨するスミーシャ。だが、そんなスミーシャをローゼリットが諫める。

「落ち着けスミーシャ。敵の挑発に乗ってどうする」

「おやおや、劣等素の次は混ざり物の出来損ないですか。どうやらこのパーティーにはろくな者がいないみたいですね」

「ちょっ………お前!いい加減に…!」

 自分の種族どころか相棒のローゼリット個人をも馬鹿にされ、本気でキレそうになっているスミーシャ。だがそれもローゼリットに押えられていた。

「私が混ざり物の出来損ないなのは百も承知だ。だが、それがどうした?……私は私だ、ただのローゼリット・ハイマンでありそれ以上でもそれ以下でもない」

 そう言うとローゼリットは短剣を構え一気に跳躍する。

「だが、私の相棒を劣等種と言った事は訂正してもらう!」

 そのままさらに瓦礫を足場にし、ラークシュナークに迫るローゼリット。だがラークシュナークは余裕の表情を消さない。

「甘いですよ……アルファ・イド・ヴェルド・ライゼリア…『ライトニングジャベリン!』」

「甘いのはお前だ!」

「何⁉」

 思わず驚愕の声をあげるラークシュナーク。ラークシュナークが撃ったライトニングジャベリンはローゼリットを撃ち抜く直前で軌道を変えていた。ローゼリットは電撃が届く直前に懐からシューティングニードルを取り出しそれを自分と離れた位置に向かって投げつけていたのだ。その結果、シューティングニードルが避雷針の役割を果たし電撃の軌道を逸らしたのだ。そして………。

「はああああぁぁぁぁぁぁ!」

 ローゼリットの短剣がラークシュナークを斬り裂く。ローゼリットが振り回した短剣は最初の数秒ほどはラークシュナークの直前で止まり防がれていたが、その後は時の鎧の腕輪の力が一時的に止まり、その結果ローゼリットの斬撃が通用したことになる。

「くっ………」

 ラークシュナークが痛みに声をあげる。だが、それでも余裕の表情は消えなかった。

「なるほど……このままあなたたちを倒すのはなかなか難しそうですね」

「まあ、そういうこっちゃのう。それに……まだワシもアレイスローもまともに手は出しとらんぞ?そんなんでワシらに勝てるんかい?」

「そうですね。まあ………もともとこっちが本来の作戦ですので!」

 そう言った瞬間ラークシュナークは杖を一振り魔力を集中させる。そしてそれを見たフリルフレアが顔を青くする。

「な、何か嫌な魔力を感じます!気を付けてください!」

「イヤな魔力じゃと⁉」

 フリルフレアの忠告に目を丸くするゴレッド。ゴレッド的にはアレイスローよりも早く魔力の不穏さを感じ取り警戒するよう叫んだフリルフレアの手際に驚いたのもあったが、それ以上に魔力の質を見抜けるフリルフレアの才覚にも驚かされていた。パーティーメンバーではないためフリルフレアの成長の早さを知らなかったための驚きである。

 そして、そんなフリルフレアの警告に皆が対応するよりも早く、ラークシュナークは魔法を発動させる。

「いでよ!……ヴァル・リィズ・ラー・ミラル・クリエト・ゾンビル『クリエイト・フレッシュゾンビーズ!』」

 次の瞬間ラークシュナークの杖から光が迸る。そしてそれらの光は……………先ほどカオスラグナによって見せしめの様に殺された約20人程の冒険者たちの死体に吸い込まれていった。

「こ、これは………まさか⁉」

 アレイスローが呪文の内容と状況を見て焦りを見せる。フリルフレアの警告通り嫌な魔力が辺りに充満していく。そして………。

「ぐ……ぐるるる……」

「が…がが……ぽ………」

「ぎ…ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!」

「ごげ……がが……」

 口々に奇怪な声を上げ妙な音を立てて、上下に両断された死体が立ち上がる。いつの間にか上下に分かれていた死体がくっついており、どうやってだかは分からないが傷がキレイになくなっている。そしてさらに死体たちは立ち上がり各々武器を構えていた。

「し(フ)、新鮮な生きた(フレッシュゾンビ)……!」

 アレイスローが苦い顔でそう呟く。今、カオスラグナに殺された者達の死体が生前とさほど変わらぬ姿でフリルフレア達の前に立ち塞がっていた。


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