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第7章、赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第9話、衝撃 その1

     第9話、衝撃


     第9話その1


 コロシアム全体に衝撃が走ったドレイクとフォルトの同時失格。まあ、ステージを含めてドレイクとフォルトの攻撃の余波による損害は相当なものになりそうなので運営としてはこれ以上の破壊行為は勘弁してほしかったのだろう。

 そういう訳で、準々決勝第一試合ドレイク・ルフト対フォルト・アスバインの結果は両者失格となり、その結果準々決勝第二試合の勝者はそのまま準決勝を不戦勝として決勝まで駒を進められることとなった。

 そのことに観客達からは不満の声が多数上がっていた。曰く………。

『もう一回やり直させろ!』

『それなら二回戦で負けた選手を改めて戦わせて準決勝に進ませればいい!』

『いや、赤蜥蜴の方が先に落ちていたから聖騎士団長の勝ちだ!』

『聖騎士団長の方はそれほど破壊行為はしていない!最終的にステージを破壊したのは赤蜥蜴だから失格は赤蜥蜴だけだ!』

『どうでも良いからさっさと進めろ!』等々………。

 しかしそれらの観客………一部観客以外の声もあったが……とにかく、それらの声に対して運営からは『ステージの復旧に時間がかかるのでしばらくお待ちください』とのコメントがあるだけだった。

 そして、復旧と称して行われたのは破壊されたステージの瓦礫の撤去作業であり、多数の運営スタッフによりとりあえずがれきの撤去のみが行われ、これにより今までの試合からルールが一部変更、コロシアムの闘技場スペース全てが使用可能となり、それに伴い場外による負けが無くなった。そのため勝敗を決する方法は相手を気絶させるか、降参を宣言させるかのどちらかのみになった。

 それらの作業を一時間ほどで終わらせた運営は一部の観客からブーイングを受けながらも、多数の観客からは『対応が素早かった』『復旧が意外と早く終わった』『臨機応変にルール変更は良い対応だと思う』などの高評価を受けていた。事実、観戦に来ていたバレンタイン王国国王からは運営スタッフの迅速な対応に勝算の言葉が送られていた。

 そしてそんな中、残りの試合は行われた。

 Aブロック第二試合アイザック・フォードブラウン対ローゼリット・ハイマン。

「アイザックとか言ったな。お前は自分に補助魔法をかけてからが真骨頂何だろう?だったら待っていてやるから先に補助魔法をかけてしまえ」

 大鎌使いのヒューマンの魔法戦士アイザックとローゼリットの対決はローゼリットのそんな言葉から始まった。

 ローゼリットの提案に怪訝そうな表情を浮かべるアイザック。だがローゼリットは構わず「どうした?早く魔法をかけろ?」と手を出すことなく催促するばかり。疑いの視線をローゼリットに送るアイザックだったが、それでもローゼリットが全く攻撃を仕掛けてくる気配を見せなかったので彼女の言う通り自分に対して補助魔法をかける。エナジーアームの魔法で大鎌に魔力を付与し、フィジカルブーストで身体能力、特に敏捷性を重点的に上昇させ、ミサイルプロテクションで弓矢などの飛び道具を防ぐ風の防壁を創り出した。

 そしていざ試合が開始されると、スピードでかく乱するローゼリットについてくるアイザック、自身の敏捷性を上昇させているので重量のある大鎌を持ちながらでもローゼリットのスピードについて来れるのだ。さらにローゼリットが短剣を投擲してもミサイルプロテクションによって阻まれてしまう。そして逆にアイザックが攻勢に出ると、逃げ回るローゼリットに連続で大鎌による攻撃を浴びせていく。数発攻撃を受けてしまったローゼリットだったが、それでも避け続けていく。そしてさらに攻撃を繰り出していくアイザックだったが、段々とローゼリットに攻撃が当たらなくなっていった。

 そして、気が付けば大鎌を振り回しながらローゼリットを追いかけ回していたアイザックはいつの間にか息を切らしており、肩で息をしながら大鎌を杖代わりにして何とか立っている。実はローゼリットは途中から逃げ回ったり攻撃を避けたりするスピードを少しずつ上昇させていったのだ。最初に攻撃を命中させていたアイザックはローゼリットに対しての攻撃は命中するものだという思い込みがあったのだ………いや、ローゼリットによってそう思い込まされていたのだ。そして少しずつスピードを上げてアイザックの体力を奪ったローゼリット。補助魔法を維持するために当然魔力も消費し続けている。そしてアイザックがばてて立ち止まったころには魔力の方も大半を消費してしまっていた。そのためアイザックは苦肉の策としてミサイルプロテクションのみを残して他の補助魔法を解除。そしてミサイルプロテクションの風邪の防壁の中で体力の回復を待とうとした。しかしそんな中ローゼリットは上空に高々とジャンプしてアイザックに向かって無数のシューティングニードル代わりの鉄の棒を放つ。飛び道具は効かないと高を括っていたアイザックだったが、シューティングニードル代わりの鉄の棒に鋼線が括りつけてあったことで飛び道具ではないという認識になってしまったのか、そのまま無数の鉄の棒がアイザックの身体を直撃し、そのまま気絶させたのだった。

 この瞬間、第二試合の勝者はローゼリットに決定し、同時にローゼリットの決勝進出も決定した。

 続いてはBブロック第一試合ラグナ・カルス対シュナイゼル・シャルベナール

 一見するとヒューマン同士の長剣使い同士の対決となったこの試合。

「よし!良いぞベルズィー殿!シュナイゼルなどやってしまえ!」

 ベルズィーが成り代ったラグナを応援するチックラズン。

「子爵の爵位を持つ悪魔貴族のベルズィー殿がさらに何人か人間を食べて力を増しているんだ。シャルベナール公爵ごときが相手になるものか!」

 八大公爵家で最も強い現当主などと言っても所詮はただのヒューマンだと高を括っていたチックラズン。だが、予想に反して試合はシュナイゼルが優勢な展開となった。

「な、何者だあの公爵⁉」

 派手さは無いが実直な剣技に驚きを隠せないチックラズン。シュナイゼルの攻撃は繰り返すごとに鋭さを増していくようにも見える。対してラグナは長剣で着実に防御しており、攻撃を受けてこそいないが、逆に攻撃を当てることも出来ていないようだった。

そして、シュナイゼルの剣がラグナの剣を弾き飛ばしたとき………。

「ああ!危ない!」

 ベルズィーが成り代っているラグナが負けることを予測し頭を抱えるチックラズン。だが、次の瞬間ラグナの拳がシュナイゼルの右肩を直撃、その瞬間骨が砕ける嫌な音と共にシュナイゼルの悲鳴が響き渡った。ラグナの拳によりシュナイゼルの右肩の骨が砕けたのだ。

「やった!さすがベルズィー殿!どうやら相当腕力も増加しているようだな!これならばもしかしたらあの牙狼剣を倒すことも……!」

 嬉々としているチックラズンをよそに闘技場ではシュナイゼル戦闘不能によりラグナの勝利が宣言されていた。

 そしてBブロック第二試合イーガラスト・ラインブロード対ベルフルフ・サンドレイ。

 運営スタッフの回復係から回復魔法をかけてもらって早々に傷を癒したフォルトが睨みを利かせ……もとい見守る中始まったBブロック準々決勝第二試合。当然の様に攻撃を繰り返すベルフルフだったが、イーガラストも長剣と盾でベルフルフの攻撃を的確に捌いていく。

「良いかイーガラスト!負けたらただじゃ置かないからな!」

「無茶言わないでくださいよ団長~!」

 相変わらずイーガラストの試合にセコンドと称して口出しするフォルト。

「死ぬ気でやれば勝てるぞ!」

「自分は失格になったくせに………」

「何か言ったかイーガラスト!」

 フォルトの怒声……ではなく激励を受けて攻撃に転ずるイーガラストだったが、その程度のことでベルフルフとの技量の差が埋まる訳もなく、その後数発の攻撃を受けたころにはイーガラストの剣は弾き飛ばされて破壊されていた。そして………。

「おう、俺様相手によく持った方じゃねえか」

 そんなベルフルフの言葉の直後、脳天にベルフルフの剣の一撃を受けたイーガラストはそのままアッサリと撃沈。それによりベルフルフの勝利が確定した。


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