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第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第6話、ローゼリットとハムズの因縁 その2

     第6話その2


 実のところ、ローゼリットとハムズの因縁は単に同じ暗殺者ギルドの出身というだけでは無かった。と言うのも、ハムズの弟のハスが実はローゼリットに気があったのだ。もちろん気があったと言ってもハスは当時すでに30歳を超えていたのに対し、ローゼリットはまだ10代だった。かなり歳は離れていたが、それでもハスは当時たびたびローゼリットへのアプローチをしていた。そしてハムズはそんなハスの頼みでローゼリットにちょっかいをかけることが多かったのだ。

 そもそもその当時から性癖の歪んでいたハスは、兄であるハムズにローゼリットを襲ってもらい、そこを助ける芝居をすることで自分に好意を向けさせようとしたり、あるいはハムズにローゼリットを足止めしてもらっているうちに彼女の部屋へ忍び込んで下着などの私物を盗むなどの行為を行っていたのだ。ちなみに終いにはハムズにローゼリットを押さえつけてもらい、そのまま自分が襲おうとしたりもした。もっともこれに関しては当時の暗殺者ギルドマスターであり、ローゼリットの育ての親兼師匠のトラウセンによって事なきを得たのだが………。

 そしてこの当時すでにハスよりも実力のあったローゼリットはいい加減うんざりしたのでハムズの居ない隙を狙ってハスを軽くボコっておいた。簡単に叩きのめされたハスはローゼリットにもう手を出さない事を誓わされた挙句、実力不足を指摘されて暗殺者としての必要性が無いと判断されて連絡係へと降格されたのだ。もっとも、ハスが暗殺者から連絡係に降格させられたのは自身の任務の成功率の低さにも原因があったのだが……。

 とにかく、これによりハスからローゼリットにちょっかいをかけることは無くなったのだが、ハスをボコったことによりローゼリットは逆にハムズに気に入られてしまった。どうやらハムズは元から弟のふがいなさに苛立っていたらしい。これにより、ハムズはハスの事をほぼ見限り、その後は自分の都合でローゼリットへちょっかいを出し始めたのだった。

 暗殺者ギルドに所属していた当時、ハムズの実力は暗殺者ギルドの一件ではドレイクにボコられていたがギルド内ではかなりの実力者であり『アイアンボディ』と呼ばれたバリィ・ランキッドと互角だった。ハムズは棍棒を使うのに対してバリィは素手である違いはあったが、実力自体は伯仲していた。なので格上のハムズからたびたびちょっかいと言う名の訓練を付けてもらう事によりローゼリットは実力を伸ばすきっかけを得ていた事にもなるのだった。

 つまり、ローゼリットにとってはハムズはライバルであり師の様なものでもある……そんな妙な存在だったのだ。そしてその関係はハムズが当時の暗殺者ギルドのサブギルドマスターである『拷問卿』カッパー・レドナンスと対立してギルドを見限り、そのまま暗殺者ギルドを去る時まで続いたのだった。ただ、ハムズは暗殺者ギルドからの追っ手をかわすために誰にも告げずに突如忽然と姿を消したので、ローゼリットとしては見捨てられたような感覚があり、そのことからハムズに対していい感情を抱いていなかったのだ。

 そんなハムズを目の前にしてローゼリットは両手に構えた短剣を一瞬でハムズに向かって投げつけていた。

 短剣を構えていた状態からの不意を打った投擲に、さすがのハムズも反応しきれないはずだった。そのまま短剣の軌道を追う様に走りながら同時に次の短剣を両手に構える。そして次の瞬間短剣がハムズに到達し………。

「ハッ!あめえぜローゼリット!」

ガツッ!

 自分の頭部めがけて飛んできた2本の短剣をアッサリ左腕で弾くハムズ。

「不意を打つとはなかなかいい戦法だが……生憎とコイツは試合だ。今の攻撃、刃のついた本物の短剣じゃなきゃ意味が無いぜ!」

 叫びながらハムズは棍棒を携え一気に突進してくる。まともに打ち合えばローゼリットが打ち負けるのは眼に見えている。ローゼリットもハムズとの間合いを詰めながらも激突する直前でサイドに避ける。

「どうしたローゼリット!この俺とぶつかるのがそんなに怖いか⁉」

「当り前だ。お前やバリィみたいな筋肉バカと正面からぶつかり合うなど………そう言うアホな行動はうちのパーティーの前衛に任せている」

 その前衛と言うのは当然ドレイクのことなのだが、ハムズは当然ドレイクの事など知らない。………いや、一回戦の第一試合を見ていたのでドレイクのことは一応知ってはいたが、そのドレイクがローゼリットの言う前衛だとは思ってもいないようだった。


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