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第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第5話、本戦開始!第一試合ドレイク対スコルド その10

     第5話その10


「ちょっと待ちなさい!」

 ドレイクが勝ったと思って気を抜いたその時、上空から突如そんな声が聞こえてきた。

「何だ?」

 思わず上を見上げるドレイク。その瞬間……。

「くらいなさい!必殺!ハーピィキック!」

ドガスッ!

 妙な叫び声と共に上を見上げたドレイクの顔面に何者かの蹴りが炸裂した。

「………うげっ!」

『…………え?』

『…………あ、あれは?』

 ドレイクの叫びと実況、解説の間抜けな声が響き渡る。そして蹴りによってたまらず後ろに倒れ込んだドレイクとスコルドの間に、ドレイクの顔面にキレイに蹴りを叩き込んだその者は華麗に舞い降りた。

「………………は?」

 突然のことに意味がわららないドレイク。目の前には一人の女………頭や身体はヒューマンと同じようだが、両腕が鳥の翼になっており、両脚の先も鳥のそれになっていることから恐らく魔物のハーピィだろうと推測できる……が立っていた。

「ハーピィ?………何だコイツ?」

 顔を見た限りでは10代後半くらいに見えるが魔物の年齢など正直よく分からない。とりあえず突然現れた不審な魔物を成敗すべく立ち上がって拳を構えるドレイク。正直なところ先ほどは不意を打たれたが、本来ならばハーピィなど相手ではない。それこそ瞬殺できる相手だ。

 試合の決着がついたところで突然現れるとはなんとも間の悪い魔物だと思いながらドレイクはそのハーピィを倒すべく足を踏み出し…………。

「シャ、シャンピニオン様!」

 魔ギンジャーZから何とか這い出したスコルドが突然そう叫びながらドレイクとそのハーピィの間に割って入った。

「え………え?…シャンピニオン?」

 観客席ではフリルフレアがその名前を聞いて頭の上に?マークを浮かべている。

(あれ?シャンピニオンって…あのアンペイとかって人が私に付けようとしてた名前じゃなかったの?それに……『様』って?)

 意味が分からず頭の上にいくつも?マークを浮かべているフリルフレア。だがフリルフレアはそこであることに気が付いた。

(あれ?そう言えばあのハーピィ………翼が赤い…)

 そう、フリルフレアの翼ほど鮮やかな赤では無かったが、それでもそのハーピィの翼も赤かったのだ。

(………私の翼もあのハーピィの翼も赤いけど……『シャンピニオン』て名前と何か関係あるのかな?)

 考えたところで答えは全く分からない。そしてそんなフリルフレアの近くに座っているアレイスローの呟きがボソッと聞こえた。

「珍しいですね…ハイハーピィですか…」

「え?」

 アレイスローの呟きを聞き、不思議そうに顔を見上げるフリルフレア。

「ハイハーピィって何ですか?あのハーピィ、普通のハーピィと違うんですか?」

「ええ、ハイハーピィはハーピィの上位種に当たるんですが、通常のハーピィと違って人間種と同等の知性を持っているんです。まあ、そのせいで人間種や魔物を警戒して人里近くにはほとんど姿を見せないんですよ。まあ、普通のハーピィと違ってむやみに襲ってくることは無いですし、数は少ないですが集落を出て他種族の国で生活している方たちもいるんですよ。恐らくあのハイハーピィもそうでしょう」

「な、なるほど…そうなんですか……」

 アレイスローのちょっと早口な説明に何となく圧倒されながらも何とか納得したフリルフレア。再びステージの上に視線を向けると、スコルドが必死になってハイハーピィを諫めている。

「お下がりくださいシャンピニオン様!」

「どうして⁉スコルドさんに怪我をさせたあの魔物を退治しないと!」

「わ、私は怪我などしておりません!それに私などよりシャンピニオン様の身に何かあっては!」

「大丈夫よ!そのために2年間も武者修行に出てたんだから!」

「そ、そういう事ではございません!シャンピニオン様にお怪我などされたら私の首が飛んでしまいます!」

「大丈夫よ!いくら何でもその程度のことで親衛隊隊長のスコルドさんをクビにしたりしないでしょ!それに対魔獣用決戦魔導鎧ギガンティックソルジャーメイルまで破壊されちゃったんだからそのツケをこの魔物に払わせないと!」

「あ、いえ……というか、シャンピニオン様、この男はそもそも魔物ではなくリザードマンでして……」

「え?リザードマンって魔物じゃないの?」

「一応人間種のうちの一つと認定されております」

「ガーン!私たちハイハーピィだって人間種に認定されていないのに……」

 何やら騒いでいるスコルドとシャンピニオンと呼ばれたハイハーピィ。ドレイクはコントじみたその光景に戦意を削がれたので呆れながらもとりあえず二人の話が終わるのを待つことにした。

『い、一体どういうことなのでしょう⁉あのハーピィは一体?』

『あのハーピィ、どうやらハイハーピィの様ですね』

『ハイハーピィ?……ああ、なるほど。上位種という事ですね!』

 実況と解説が何やら言っているが、ドレイクはあまり聞いていなかった。

 その時、ステージのすぐ横に数人の男女が現れた。どうやらステージの状況を見て急いで観客席から降りてきたらしい者達だったが、その内の一人はアンペイであり、その親衛隊らしき騎士達もいた。更にアンペイによく似た恰幅の良い中年男性が居たので、アンペイの父親で現バッセルモン家の当主、キルバイ・ベイ・バッセルモンだと思われた。

「あ!お父様、お母様!」

 アンペイによく似た人物……キルバイだと思われる人物と、そのキルバイの隣にいる人物に向かってそう叫ぶシャンピニオン。ハイハーピィのシャンピニオンが何故ヒューマンであるキルバイに向かってお父様などと呼んだのかは分からなかったが、とりあえずドレイクには気になることがあった。

(…………これ、結局試合はどうなるんだ?)

 スコルドとの試合の結果がどうなるのか……一抹の不安を覚えるドレイクだった。


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