第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第5話、本戦開始!第一試合ドレイク対スコルド その6
第5話その6
「チッ!」
思わず舌打ちしたドレイク。ドレイクの周囲を含め、ステージの上はほとんど濃い霧に覆い隠されており観客席からでは霧の中がどうなっているのか分からない程だった。
(どうする?あんまり動き回ってステージから落ちたら元も子もないからな……)
慎重に、周囲と足元を確認しながら少しずつ前に進むドレイク。ドレイクは鼻が良いので霧の中でも金属の匂いを頼りにしてスコルドの位置をある程度は探ることが出来る。だが、足元の状態までは分からないので慎重にならざるを得ない状況だった。
そしてドレイクが匂いを頼りにスコルドの位置を発見する。
「いたな、そんなら……」
ドレイクは再び拳を握りしめる。こうなったら一気に接近して零距離の打撃戦に持ち込み、もしくは投げ飛ばして場外を狙うつもりだった。そしてドレイクがスコルドに向かって突撃しようとした…………その時だった。
「馬鹿め!貴様の動きなどお見通しだ!……くらえ!プレートファイアー!」
ゴオオオオオオオオォォォォォォォ!
次の瞬間、スコルドの声が響きわたり、凄まじい炎がドレイクに向かって襲い掛かってきた。その炎はあまりの熱気でステージ上を覆っていた霧を消し飛ばしてしまうほどの威力がある。
「ぐああああぁぁぁぁ!」
プレートファイアーとか言う炎の直撃を受け、思わず叫び声を上げながらも何とか耐えるドレイク。それでもその炎は容赦なくドレイクの皮膚を焼いていく。相変わらず鱗だけは頑丈であり、その炎でも表面が焦げたくらいだが、鱗の隙間から入ってくる炎がドレイクの身を焼いていった。
「ぐ……ヤ、ヤロウ……」
炎が消えなんとか耐え抜いたドレイクだったが、それでも思わず膝をついてしまう。そしてそれを見たスコルドは魔ギンジャーZの中で得意げな表情になっていた。
「フハハハハハハハハ!どうだ蜥蜴男!我が無敵の魔ギンジャーZの前に手も足も出まい!どうする?今大人しく降参するならば命までは取らんぞ?」
「……アホか、殺したらその時点で失格だろうが……」
「ん?そうだったな。ならば死なない程度に半殺しにしてやろう!」
「………おいコラ…降参したら見逃すんじゃなかったのかよ…」
「気が変わった!やはり貴様は半殺しにしておく!」
「ふざけやがって………やれるもんならやってみろこのヤロウ!」
あまりにも上から目線なスコルドの言葉に苛立ちを募らせたドレイク。叫びながら立ち上がりスコルドを睨みつけた。
「馬鹿め、また一方的に嬲ってやる!」
スコルドがそう言うと、魔ギンジャーZがそのままズシン!ズシン!と足音を立てて近づいてくる。そしてそんな魔ギンジャーZを注意深く観察するドレイク。
(さっきの炎はプレートなんとか…とか言ってたから、恐らくあの胸の所に付いてる板から撃ったと考えてよさそうだな…。さっきの霧で視界を封じられた状態であれを撃たれると厄介だな……)
意外にも冷静に状況を判断しているドレイク。そして魔ギンジャーZのひしゃげた腹部へと視線を落とす。
(『氣』を込めた拳なら何とかダメージを与えることは出来るみたいだな…)
ひしゃげた腹部はもう数発同じように『氣』を込めた拳を叩き込めば破壊できそうに見える。だが、やりすぎて中のスコルドまで殺してしまうのはまずい。あくまでこれは試合なのだ。
(『氣』を拳に集中させるんじゃなく、身体全体に巡らせてダメージを押さえながら同時に防御力を上昇させる………こんなところか?)
ある程度作戦がまとまったドレイク。気合を入れ直すためにガキン!と音を立てて拳と拳をかち合わせる。ちなみにミスリル並に硬い鱗同士がぶつかったためまるで金属同士がぶつかったような音だ。そしてドレイクはまず全身に『氣』を巡らせてある程度の攻撃力と防御力の上昇を図る。だが、当然スコルドはそんなことはお構いなしに攻撃してきた。
「ククク!何をぼさっと突っ立っている⁉くらえ、高火力ビーム!」
次の瞬間再び魔ギンジャーZの眼部から光線が撃ち出される。
「くっ!」
とっさに腕を交差して防御するドレイク。確かにダメージはあったが、先ほど『氣』を全身に巡らせておいたおかげで見かけほどのダメージはくらっていなかった。
「ほう、よく耐えたな。だが……」
「ゴチャゴチャうるせえ!」
相変わらず余裕の態度を崩そうとしないスコルドに苛立ちながらドレイクは一気に駆け出していった。
「良い的だぞ!くらえ、マジックパーーンチ!」
「んなもん何度もくらうか!」
スコルドの撃ち出した鉄拳をアッサリ避けるドレイク。直線的な上にそれほど飛んでくる速度が速い訳では無いので意外と避けやすいのだ。
「よっしゃ!このまま……」
走りながら拳を握りしめるドレイク。まずはひしゃげた腹部を狙い、次に厄介な頭部と胸の板を破壊する必要がある。そう考えていた時………。
「ならば……くらえ、スチールカッター!」
ドカァン!
突撃するドレイクに対して魔力鉄拳として飛ばしていない左手を前に突き出した魔ギンジャーZ。そして次の瞬間魔ギンジャーZの左腕から斧の様な刃が伸びる。そしてその斧の様な刃を付けたまま左腕が魔力鉄拳のように飛んできたのだ。
ザシュッ!
「ぐっ……」
ある意味での不意討ちに思わず呻くドレイク。ちなみにスチールカッターとやらはドレイクの左腕を少し斬り裂いていた。そしてそのまま魔ギンジャーZの左腕の場所まで飛んで帰ってきている。
「て、てめぇ……刃物は反則じゃねえのかよ!」
「刃のついた武器は使用禁止というだけだ。これは鎧……すなわち防具だから問題ないのだよ」
「…………ああ、そうかよ…」
いい加減スコルドの屁理屈に対する苛立ちも限界だった。と言うか、アンペイとスコルドのやり口が根本的に気に食わなかった、だから………。
「…………もう良いや……手加減は終わりだ」
次の瞬間ドレイクの全身から、可視化するほどの赤い『氣』が放出していた。




