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第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第4話、イライラローゼリット その9

     第4話その9


「はっはっはっは!シャンピニオンの奴め、今頃焦って眼を白黒させているころだろう!」

「は!まったくもってその通りかと!さすがはアンペイ様でございます!」

 予選で敗退した4人の女冒険者たちが大戦技大会の運営に預けておいた荷物を受け取り、せっかくなので少し本戦を見て行こうという事で観客席に向かっている最中に突如そんな声が聞こえてきた。聞こえてきたのは貴族向けの個室になっている控室だ。どうやらドアが少し開いているらしく、中から男二人の話し声が聞こえてきたのだ。

「何かしら、この声?」

 疑問に思った女剣士がソッと扉の隙間から中を覗き込む。つられて残りの3人………女鎗使い、女斧使い、女格闘家の3人も音をたてないように扉の隙間から中を覗き込んでだ。

 ………そう、彼女たちは予選Ⅽ組でローゼリットに叩きのめされた女性冒険者4人組だった。ただ、4人組といっても別に彼女たちは4人でパーティーを組んでいる訳では無く、あくまで予選で一緒になったことで一時的に共闘関係になっただけにすぎない。

「ち、ちょっと……ここってお貴族様の専用控室じゃないの?覗き込んだ入りして大丈夫なの⁉」

 女鎗使いが不安そうにあたりをキョロキョロと見回しているが、特に彼女達をとがめる者はいない。

「大丈夫だって!それより……あのオッサンたちなに話してんだ?」

 女斧使いが気にせずに中を再度覗き込む。彼女たちが覗き込んだ控室の中に居たのは、やたら身なりの良い太った男と派手な全身鎧を身に纏った大柄な男………アンペイとスコルドだった。

「シャンピニオンもあのリザードマンめもまさかこの私がアンペイ様の権力(おちから)で予選を免除になるなど思ってもみなかったでしょう!」

「そうだろうそうだろう!」

「これでこの私も本戦を万全のコンディションで挑むことが出来ます!」

「その上、既に手は回してあるからな!お前とあの蜥蜴男が一回戦で直接当たる様に手配してある」

「ははっ!ありがとうございます!これで直接あのリザードマンを成敗し、部下たちの仇を取ることが出来ます!」

「そうだろうそうだろう!あ~はっはっはっはっは!」

 部屋中にアンペイの高笑いが響く中、扉の隙間から中を覗き込んでいる女剣士たち。

「何?どういうこと?」

「何言ってるんだアイツら?」

 何やら意味が分からないと言った風な女鎗使いと女斧使い。女剣士の方は少し考え込んでから口を開く。

「えっと………つまり、あの太っちょの力であの騎士っぽい人が予選免除になったってことじゃない?」

「ウソ⁉そんなのあり⁉……ズルじゃん!」

 女鎗使いがそう言って飛び出していきそうになるのを女剣士と女斧使いが必死に止めている。「ちょっと、落ち着いて!」とか「あいつらの所に行っても別にあたしらが本戦に出られるようになるわけじゃ無いんだぞ!」とか言われ何とか落ち着きを取り戻していたが、どうも納得はしていない様子だった。

「そもそもなんであのデブチンにそんな力があるのよ!」

 不満そうに声を荒げる女鎗使い。だが、もちろん部屋の中に聞こえないように小声で話すことは忘れない。そしてそんな中、それまで黙っていた女格闘家がおもむろに口を開いた。

「あの太っちょなんですが………恐らく八大公爵家のバッセルモン家の嫡男のアンペイですね。公爵家の権力を使って大会の運営に対して無理強いをしたんだと思う」

「「「うわっ………最悪…」」」

 女格闘家の推測に思わず女剣士と女鎗使い、女斧使いの声がハモる。

「私、出身がバッセルモン領なんで……あのアンペイの我儘っぷりとあのバカ息子を甘やかす親バカ領主の顔は良く知ってるんですよ。……まあ、領主様は親バカなところ以外はまともな人なんだけど……」

「そ、そうなんだ……」

 女格闘家の言葉に何となく納得する女剣士。

(つまりはズルをしてでも勝ちたい相手がいるってことね…)

 女剣士はそんな事を考えながらため息をついた。何か面白い事でもあるかと思って盗み聞きしたが、別に何も面白くなさそうだ。逆に、盗み聞きしていたことがバレたら後々厄介なことになりかねない。一応再度聞き耳を立てるとまだ中では二人が何やら話している。

「そう言えばアンペイ様、シャルベナール家の御当主様が普通に予選に出ていましたが……我々…大丈夫でしょうか?」

「何⁉シュナイゼル様が⁉………いや、まあ…多分、大丈夫だろう」

「そ、そうでしょうか……?」

「ほ、ほら…あれだ!お前がシュナイゼル様と当たったら、あの方に勝ちを譲ればいいんだ!」

「そ、そうですね!我らの目的はあくまで私があの蜥蜴男に勝つこと!」

「そうだ!そして僕があのシャンピニオンを手に入れられればいいんだ!」

「左様でございますな!……しかし、アンペイ様におかれましては、やはりあのシャンピニオンにご執心なご様子……」

「フ、フン!言っておくが僕が欲しいのはあのチンチクリン自体では無くてあの娘の持つ美しい翼だけだからな!」

「もちろん心得ております!」

「分かっていれば良い!……ま、まあ…どうしてもというのなら、本体の方も僕の性奴隷として扱ってやらなくもないがな!」

「なるほど!さすがはアンペイ様!」

「そ、そうだろう?………フ、フフフ……あ~はっはっはっはっは!」

「はっはっはっはっは!」

 アンペイとスコルドの高笑いが聞こえてきた時点で女剣士は聞き耳を立てるのをやめることにした。これ以上聞いていても恐らく何も良いことは無いだろう。それに女剣士たちはもう彼らの会話に飽きていたので、そのままコッソリとその場を後にした。

 女剣士たちは廊下をしばらく歩いていた。

 正直、何も面白い事がない。あのローゼリットとか言う凶暴な女ハーフエルフに4人がかりでも叩きのめされたのだ。4人が4人とも何か憂さ晴らしをしたと考えていた。

 その時………。

「あ…良いカモはっけーん」

 女斧使いが前方を歩いている一人の女を指差した。身なりからして冒険者であることは分かる。いや、それどころか………。

「アイツさ、確かギリギリ予選突破したやつじゃない?」

「………そう言えばそうね…」

 女斧使いの言葉に応えながら思わずニヤリと笑みを浮かべる女剣士。それに女剣士はその女のことはこの大戦技大会以前から知っていた。拠点にしている街が同じで自分が所属しているパーティーよりも評価の低いパーティーに所属している女戦士だ。冒険者ランクも恐らく自分より低いだろう。正直憂さ晴らしにはちょうど良いかもしれない。前を歩いている女のどこか貴族を思わせる金髪ストレートを見ながら笑みを浮かべる女剣士。それを見て女鎗使いと女斧使いも笑みを浮かべている。そして女格闘家も表情こそ変えていないが止めない所を見ると、同じように憂さ晴らしをしようと考えている様子だった。


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