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第7章 赤蜥蜴と赤羽根と大戦技大会 第2話、お祭り騒ぎの街中で その8

     第2話その8


 ドレイクがゴレッドと酒を飲み、フリルフレアがレシピもまともに知らないくせにスミーシャに美味しいカレーの作り方を伝授し、さらに試食した白鳩亭のマスターが一口食べただけで親指をグッ!と立ててその美味しさに感動していたころ、アレイスローとローゼリットはバレスタイルの商店街を歩いていた。若干珍しい組み合わせな気もするが、二人ともそれぞれ魔導士ギルドと盗賊ギルドに挨拶に行った帰り道で偶然会っただけである。そしてせっかくだからと、大戦技大会に向けての準備が進められて半分お祭りの様になっている表通りの商店街を見て回っていたのである。

「しかし、ここまで盛大に盛り上がっているということは………街の皆さんは相当楽しみにしているのでしょうね」

「ああ、さっき盗賊ギルドで聞いてきたんだが………この時期は毎年こんな感じらしいぞ?」

「まあ、そうでしょうね」

 思わず苦笑いするアレイスロー。これだけ人が集まっているという事はそれだけ期待されているという事だ。しかも聞くところによると、毎年バレンタイン王国国内のみならず、国外からもかなりの腕自慢が参加しているらしい。期待も高まるというものだ。

「そう言えばローゼリットさん、実は私……先ほどゴレッドさんに会いまして」

「ゴレッド?……ゴレッドってあのゴレッドか?」

「そうです。ラングリアを拠点にしてるアルバネメセクト神の神官戦士のソロ冒険者、ゴレッド・ガンデルさんです」

「先ほどって………この街で会ったのか?」

「ええ、私が魔導士ギルドへ向かう途中でバッタリと」

 アレイスローのその言葉に、思わず街の中でアレイスローとゴレッドがバッタリ遭遇する光景を想像したローゼリット。正直種族的に仲が良い訳では無いエルフとドワーフの街中での遭遇という事でトラブルにならなかったかと若干心配になる。だが、ローゼリットのそんな心配をよそにアレイスローはケロッとしたまま話を進めている。

「魔導士ギルドに向かっている途中で妙に見覚えのある石頭っぽそうな灰色の髪と、同じ色の特徴的な三つ編みにした髭が見えたもので思わず声をかけたんですよ」

「妙に見覚えのあるって…………アレイスロー、お前とゴレッドってそんなに親しかったか?」

「え?どうしてです?」

「だってお前らって巨大大喰い(ジャイアントイーター)の一件の時に顔あわせただけだろ?それにお前はエルフであいつはドワーフだろ?」

 怪訝そうにそんなことを言ってくるローゼリット。しかし、そんなローゼリットの言葉を聞いてもアレイスローは「やれやれ」とでも言いたげに肩をすくめるばかりだ。

「ローゼリットさん、確かにエルフとドワーフは種族的に仲が悪いことが多いですが、それはあくまで種族間の話ですよ。正直なところ、冒険者をしているようなエルフはそんなことをいちいち気にしません。もちろん私個人がドワーフを…ましてやゴレッドさんを嫌っている訳ではありませんよ」

「そうなのか?」

「そうですよ。それに私、実はゴレッドさんとは結構意気投合してるんですよ?何なら二人で酒場をはしごしたこともあります」

「………たまに一人で飲みに出かけているなとは思っていたが……ゴレッドと飲み歩いていたのか」

「まあ、ゴレッドさんだけじゃなくてドレイクさんとだったり、3人で飲みに行くこともありますけどね」

「なるほど」

 一応納得したローゼリットだったが、ドレイクとアレイスロー、ゴレッドの3人で飲み歩いているというその絵面を想像し、思わず顔をしかめていた。何と言うか……種族がバラバラだから何とも言えないが、あまりにむさ苦しいと言うか、オッサン冒険者が3人そろって飲み歩いているというのは結構見苦しいように思える。

「それで、ゴレッドの奴も仕事の都合でこの街に来ていたのか?」

「いえ、それがですね………ゴレッドさんは大戦技大会に出場するためにこの街に来たんだそうです」

「は?」

 予想外の解答に思わずローゼリットの眼が点になる。思わず自分の耳を疑ったほどだ。

「大会に出場って………あのゴレッドがか?」

「そうですね。あのゴレッドさんが、です」

「確かにアイツは冒険者ランクも10でかなり腕も立つが………そんな力をひけらかすようなタイプだったか?」

 思わず疑問が口をつくローゼリット。まだ知り合って数ヶ月なのでそんなに詳しい訳では無いが、ゴレッドがこういう自分の力を誇示するような大会に出るというイメージがわかない。どちらかといえば自分の実力などは周囲に隠しておくタイプだと思っていたのだ。

「それは………まあ、確かにそうなんですが…」

 ローゼリットの指摘に思わず頷いてしまうアレイスロー。ゴレッドが大戦技大会に出場するのは今年が初めてではなく、本人も楽しみにしているらしいことを伝えようとした、その時だった。

「ようオメエら、こんな所で会うとは奇遇じゃねえか」

 そんな言葉とともに、黒い毛むくじゃらの腕がアレイスローとローゼリットの肩を抱え込んでいた。


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