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第3章 赤蜥蜴と赤羽根と魔王の器 第4話、その神殿は何が為 その4

     第4話その4


 手分けして神殿内部を調べ始めた一行。フリルフレアはバレンシアと一緒に中央の入り口から中に入り、中を進んでいった。

 神殿は入り口が3つ。内部は合流しているということは無く、どうやら3つの入り口はそれぞれ別の場所に繋がっている様子だった。

「中、広いですね」

「そうじゃな」

 フリルフレアとバレンシアの入った中央の入り口からは真直ぐに通路が続いていた。所々天井が崩れ落ちており、外の光が差し込んでいる。薄暗いが明かりが必要なほどでは無かった。

 しばし無言のまま進むフリルフレアとバレンシア。先に沈黙に耐えられなくなったのはフリルフレアだった。

「あ、あの…バレンシアさん」

「ん、何じゃ?」

「その………ランビーさんの事……」

「何じゃ、その事か……」

 遠慮がちに言ったフリルフレアだったが、バレンシアは特に気にした様子もなく答えていた。

「大事な仲間だったんですよね……その…もしかして大切な人だったんですか?」

「大切なって……妾とランビーが恋慕の関係にあったと言いたいのか?」

「……はい」

 遠慮がちに頷き、頬を少し赤く染めるフリルフレア。しかしそんな大切な人を失ったバレンシアの心情を思うと胸が痛くなる。しかしバレンシアは僅かに鼻で笑うと、冗談では無いと言いたげに大げさにため息をついた。

「ないない。妾とランビーにそんな感情など無いわ。確かに大切な奴ではあったが、言うなれば弟の様なものじゃ」

「………弟…ですか…」

「そうじゃ。そもそも妾はリザードマンじゃぞ?ホビットのランビーと浮いた話になどなるはずが無いわ。それに、妾はどちらかと言うとドレイク殿みたいな方が好みじゃ」

 少し冗談めかして言うバレンシア。しかしフリルフレアは首を横に振った。

「バレンシアさん……無理しないでくださいね…。弟だって大切な人です……弟を失う苦しみや悲しみだったら……私にも少し分かりますから……」

 そう言って微笑むフリルフレア。だがその笑みには少し陰りがある。フリルフレア自身も『マン・キメラ事件』で孤児院で一緒に暮らしていた弟とも言うべきピータスを失っている。だからバレンシアの気持ちが分かるというのも本当だった。

「フリルフレア……もしや、弟を失っておるのか?」

「はい……まあ弟って言っても、孤児院にいた子なんで血は繋がっていないんですけどね」

「そうか……すまぬな、思い出させて……」

「いえ、良いんです。それに今はランビーさんを失ったバレンシアさんの方がつらいと思います」

 フリルフレアの言葉に、目元を押さえるバレンシア。やはりランビーを失った事による心の傷は浅くはない様子だった。

「ランビーはな、初めて出会った時に妾の財布を掏ろうとしたのじゃ。だが妾がそれに気付き取り押さえたのが事の始まりじゃ」

 そう言って少しおかしそうに笑うバレンシア。かつてのことを思い出しているのだろう。

「全くかわいげの無い小僧でのう……取り押さえた妾の事を睨み付けながら口汚く罵っておったわ」

「そ、そうなんですか?」

「ああ、じゃが妾が『一生こんなことを続けるのか⁉おぬしの人生はこんなもので良いのか⁉』と説教したらえらく感動したらしくてのう。その日からじゃよ、ランビーが妾の事を『姐さん』と呼んで後ろをついて回るようになったのは」

 そう言って肩をすくめるバレンシア。

「その後すぐに自分も冒険者になると言い出して勝手に登録し、あげく妾の仕事について来るようになったという訳じゃ」

「そうだったんですね」

「まったく、困った奴じゃったよ。足手まといになるからついて来るなと言っておるのに、無理矢理ついて来おったんじゃからな」

 そう言うとバレンシアは脚を止めた。フリルフレアもつられて足を止める。見れば、枝分かれするように道が2つに分かれていた。このまま直進する道は地下へとつながっているようであり、分かれた方の道は先に上り階段が見える。

「さあ、ランビーの話はここまでじゃ。妾にはやらねばならぬ使命があるからな」

 そのままバレンシアは上り階段の方へと進んでいく。フリルフレアもその後に続こうとしたが、バレンシアによって止められた。

「フリルフレアよ、手早く済ませるためにここで別れるぞ。妾は階段から上を目指す。フリルフレアはこのまま進んで地下の様子を見て来るのじゃ」

「あ、はい。分かりました。…すみませんバレンシアさん、仕事中なのにお喋りばかりしてしまって………」

「別に構わぬ。妾も使命のための想いを再確認できた」

 そう言って微笑むバレンシア。

「し、使命……ですか?」

(バレンシアさんの使命って何かな?………やっぱりランビーさんとの最後の仕事になったこの依頼を成功させる事かな?)

 どことなくバレンシアの考えが分からないフリルフレアだったが、彼女の意見に反対する理由も無かった。

「それじゃ私はこっちを見てきますね」

「ああ、たのむ」

 そのまま道を真直ぐ進むフリルフレアと、枝分かれした道から上り階段へと向かうバレンシア。

 地下へ向かって歩いて行くフリルフレアの背中を見ながらバレンシアはボソッと呟いた。

「すまぬなフリルフレア。妾の使命は……ランビーの仇を討つことじゃ」


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