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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第17話、第十二の悪夢・恋慕 その7

     第17話その7


「それに今ので何となく氣を放出するコツが掴めた。今度はこっちから行くぜ!」

 ドレイクはそう言いながら大剣を大きく、それも刀身が背中側に来るほど大きく振りかぶった。身体をかなりねじって振りかぶっているが、その顔はしっかりとブルーフォレストの方を見ている。だが、当のブルーフォレストの方は必殺と思っていた自身の連続攻撃がほとんど防がれたことに苛立ちを隠し切れないでいた。

「貴様……!今何をした⁉どうやって俺の攻撃を…⁉」

 ブルーフォレストのその声からは苛立ちと同時に動揺も見て取れる。おそらくはドレイクを倒せる絶対の自信があったのだろう。だが、実際のところ当のドレイクは大したダメージも受けていない。その事実がブルーフォレストに動揺を与えているようだった。

「何、どうって程の事でもねえよ」

 そう言ってニヤリと笑みを浮かべるドレイク。言葉に反してその表情はかなり得意げだ。

(オーラ)っつってな……生命のエネルギーみたいなもんなんだが……これを防御に適した壁みたいなイメージで練り上げて……それを上手く体内から前に放出したんだよ。そんでその氣の壁がお前の攻撃を防いだってわけだ。………まあ、なんだ……成功するかは一か八かだったんだが………悪夢の中って強い精神の力である程度操作可能なんだろ?だから壁を作るイメージと同時にこの悪夢そのものをねじ伏せるイメージでやってみたんだ。案外上手くいったぞ」

「……なん…だと…?」

 得意げなドレイクに対してブルーフォレストはさらなる動揺を覚えていた。

(バカな⁉……悪夢を自在に操ることが出来るのはナイトメアだけのはずだ!だからこそ俺はナイトメアになったというのに………!)

 ブルーフォレストはドレイクの言葉が信じられない様子で、ドレイクの言葉を必死に否定するように頭を振っていた。

「いや……そんなはずはない!悪夢を自在に操るなど……ただのリザードマンの貴様に出来るはずがない!」

 ドレイクの言葉を否定するようにそう叫んだブルーフォレスト。ドレイクと相対するように大剣を掲げ、その切先に炎を集中させた。

「ならば!今度こそ貴様を葬ってやる!この俺の最大の必殺技で!」

「おもしれえ、相手になるぜ」

 たがいに炎を纏う魔剣を振りかぶる2人。ドレイクとブルーフォレストの視線はぶつかり合い火花を散らしている。そして………。

「くらえぃ!バイソンバーニングスマッシュ!」

 ブルーフォレストが掲げた大剣を振り下ろす。そしてその切先に集中していた炎のすべてが巨大な炎の斬撃となりドレイクに襲い掛かった。その炎の斬撃は今までブルーフォレストが放っていたものと比べて5倍以上の大きさがある。当然その威力は推して知るべしといった所だった。だが、撃ち出された極大火炎斬撃がドレイクに当たろうとしたその直前だった。

「…名付けて…炎波の太刀……チィエェストオオオォォォォォ!」

 その瞬間背中側まで振りかぶっていたドレイクの大剣が超光速で振り下ろされた。そして………その刀身から巨大な炎の斬撃が撃ち出されたのだった。撃ち出された炎の斬撃の大きさはブルーフォレストのバイソンバーニングスマッシュの大きさをさらに上回っており、さらに炎の激しさも上回っているように見えた。そしてドレイクの炎波の太刀はブルーフォレストのバイソンバーニングスマッシュを打ち砕き、その威力が衰えぬままブルーフォレストの胴体に直撃した。

「ぐ…………ブハァッ!」

 炎の斬撃がブルーフォレストの全身金属鎧(フルプレートメイル)を袈裟懸けにバッサリと斬り裂いており、その下の身体にもかなりの深手を与えていた。実際防御魔法がかかっているであろう全身金属鎧が無ければブルーフォレストの身体は斜めに両断されていただろう。そして致命傷にならなかったとはいえかなりの深手であることには変わりなく、ブルーフォレストはフルフェイスの兜の奥から血を吐き出した。そして大剣を地面に突き刺すと、そのままよろめいて大剣によりかかるように膝をついた。また、地面に突き刺したブルーフォレストの魔剣ファイザルゲベルグは魔力を失ったのか、すでに炎は消え去り刀身の文字も消え去っていた。

「……き…貴様………今のは……」

「さっき言ったろ?氣を放出するコツが掴めたって。さっきの防御と同じ要領で今度は刀身から氣と炎を斬撃にして飛ばすイメージでやってみたんだよ。もちろん悪夢をねじ伏せるイメージも同時にな」

「……そんな…ことで………俺の必殺技を……」

 傷口を押えながら忌々しそうに、唸るような声を上げるブルーフォレスト。しかし当のドレイクは少しブルーフォレストを挑発するように得意げなドヤ顔をしている。

「まあ、あんなに上手くいくとも思っていなかったがな。とりあえずお前の必殺技よりも俺の必殺剣の方が強かったみたいだな」

「お……おのれぇぇぇ……」

 唸るように声を上げながらブルーフォレストは大剣を杖代わりにして何とか立ち上がっている。そして再び大剣を構えると、その刀身に再び文字が浮かび上がった。

「こうなったら………俺と魔剣の全魔力を炎に変えて……この辺り全て焼き払ってやる!」

「そんなことしたらお前自身もただじゃすまないぞ?」

「黙れぇ!すべて焼き尽くしてやる……全てだ!」

 癇癪を起したように叫ぶブルーフォレスト。だが、この場にフリルフレアや檻の中の娘がいる以上この場を火の海にされるわけにはいかなかった。

「なら………お前がこの場を火の海に変える前に…俺がお前を叩き斬る!」

 そう言って再び大剣を構えるドレイク。その構えは先ほど同様刀身が背中に来るほど大きく振りかぶっている。それは……炎波の太刀の構えだった。ブルーフォレストが魔剣の力を全開放する前に間合いの外から斬り捨てるつもりだった。そして………。

「ヌオオオオオオオオオ!」

「させるかああぁぁぁ!」

 ブルーフォレストが叫びと共に魔剣に全ての魔力を注ぎ込み、ドレイクがそれに対抗するように大剣の刀身の氣と炎を撃ち出すイメージをする。

 そして次の瞬間……………白い影が二人の間に割って入った。

「こんなこと……こんなこともうやめてよ!……兄さん!」


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