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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第17話、第十二の悪夢・恋慕 その3

     第17話その3


「貴様ら!そこで何をしている!」

 怒りに満ちた怒号が辺りに響き渡る。その声に含まれたあまりの怒気に思わずビクッとするフリルフレア。そしてドレイクが前方の空間を睨みつける中、そいつは姿を現した。

 空間に波紋が走り、その中からゆっくりと……だが確かな威圧感をもって姿を現したそいつは見覚えのある全身金属鎧(フルプレートメイル)を身に纏っていた。相変わらずフルフェイスの兜をかぶっているのでその顔は分からなかったが、その威圧感は以前対峙した時と全く同じである。そして今回は背中に大剣を背負っていた。

 そう………その空間から現れたのは悪夢の聖騎士ブルーフォレストだった。

「貴様ら!一体そこで何をしている!……いや!そもそも何故貴様らがここにいる!」

「何故って言われてもなぁ」

「う、うん……」

 まるで逆鱗に触れたかのように怒気を発するブルーフォレストに対し、ドレイクは特に気にした様子もなく肩をすくめている。フリルフレアは頷きながらもブルーフォレストの様子に少しビビっていた。

「クソッ!ワナッキオの奴!ここには誰も近づけるなと言っておいたのに!一体何を考えているんだ⁉」

「え?ワナッキオ⁉」

 突然ワナッキオの名前が上がり戸惑うフリルフレア。

「何でここでワナッキオの名前が出てくるんですか⁉」

「黙れ!あのアホが、よりによって誰も近づけるなと言っておいたこの場所に貴様らを連れてきたからだ!」

「ワナッキオが……連れてきた?」

「そうだ!そもそも悪夢消滅後の貴様らの次の悪夢の行き先は最初からあいつが操っていたはずだ!だというのにこの場所に貴様らを連れ込むとは……!」

 口惜しげに吐き捨てるブルーフォレスト。彼の言葉が本当ならば、ドレイクがトウキートを倒した後から今までずっと次の行き先をナイトメア側に決められていたことになる。

(どういうことだ?それにしちゃ都合よく俺達の仲間の所へ送られてた気がするが………)

 ブルーフォレストの言葉に疑問を覚えるドレイク。確かに今まで行った悪夢にはすべてドレイクの仲間たちが居た。40体以上もいる上位のナイトメアが全て悪夢を造っていたならば当然仲間の居ない悪夢もあったはずだ。だというのに今までそんな悪夢に入ったことは無い。ワナッキオがドレイク達の行き先を操っているというのならばそれはいったい何を意味するのか………?それにブルーフォレストがこの悪夢に誰も近づけるなと言っていたのも気になった。

「ま、待ってください!ワナッキオが私たちの行き先を操作してたって……?」

 フリルフレアは突然入ってきた思わぬ情報に少し混乱しかけている。

「それじゃ、私とドレイクが次の悪夢に行った時に同じ悪夢に行けたのは……?」

「ワナッキオがそう仕向けていただけだ!」

「何でそんなことを……?」

「俺が知るか!」

 癇癪を起しながらそう叫ぶとブルーフォレストは地団太を踏むように脚を地面に踏み下ろした。苛立ちのせいか凄まじい力で踏み下ろされた脚がドゴン!と音を立てて地面を踏み砕く。

 苛立ちのせいか冷静さを失い訊いたことにペラペラと答えるブルーフォレストを鼻で笑いながらドレイクはフリルフレアを庇う様に前に出ながら背中の大剣を引き抜いた。

「良いのかよ?そんなにペラペラ情報を喋っちまって」

「構わんさ!どうせ貴様らはここで死ぬ運命だ!聞かれた所で問題は無い!」

「お前、前の悪夢でも同じようなこと言ってなかったか?」

「黙れ!今度という今度は殺す!殺してやるぞドレイク・ルフト!」

 叫ぶブルーフォレスト。その怒りはフルフェイスの兜の奥から歯ぎしりの音が聞こえてくるほどだった。

「絶対に殺してやる!俺の素顔を見たうえに、ここの存在を知ったのだ!絶対に生かしては返さん!」

 そう叫ぶとブルーフォレストは背中の大剣を抜き放った。くしくもドレイクとブルーフォレスト、大柄なパワーファイター同士、そして今回は武器も大剣対大剣、両手剣対決になった。赤い幅広の刀身を持つ片刃の魔剣であるドレイクに対し、ブルーフォレストの大剣は銀色で幅広の刀身を持つ両刃の剣。ただ刀身や鍔には装飾が施されており、柄頭には赤い宝石が付いている。そして刀身がわずかに光を放っていることから魔剣であることは明白だった。

 完全に頭に血がのぼっているらしいブルーフォレストを前に、ドレイクは少し余裕の表情を見せている。

「んなに頭に血がのぼってて大丈夫なのかよ?そもそもあの時お前の顔なんかほとんど見えなかったぞ?」

「何……?」

 ドレイクの言葉にブルーフォレストが発していた怒気が一瞬収まる。だがすぐに再び禍々しいい怒りがにじみ出ていった。

「なるほどな!誰にも俺の正体を話していないと思ったが、そういうことか!」

「………………?」

 叫ぶブルーフォレストの言葉に疑問を覚えるドレイク。

(どういうことだ?顔を見ればコイツの正体が分かるってことか?)

 そこまで考えてドレイクはとあることを思い出した。

(そう言えば、一度だけコイツの本当の声らしきものを聞いた時に……聞き覚えがある声だったような気が……)

 確かに聞き覚えのある声ではあったが、それが誰のものかは分からない。だが……。

(兜の中を見れば誰だか分かる。そして声に聞き覚えがある。つまり………こいつは俺が知っている人物なのか?)

 そこまで考えても残念ながら声が誰のものだったのかは思い出せない。だが、それならそれでよかった。

「ようはこいつを倒して兜を取ればいいだけだ」

 ボソッと呟くドレイク。知っている人物ならば顔を見れば分かる、それだけだった。

 考えるのをそこでやめ大剣を構えるドレイク。今は目の前の悪夢の聖騎士を倒すことに集中すべきだ。だが、それに対してブルーフォレストはまだ怒りを収めてはいなかった。

「だが、正直なところ俺の正体を知ったかどうかなどどうでも良い!それよりも貴様らがここにいることの方が問題だ!」

 再び怒りに満ちた叫びをあげるブルーフォレスト。

「あなたが怒っている理由は……あの娘ですか?」

 ドレイクの後ろから顔だけを覗かせてフリルフレアが問いかける。だがブルーフォレストは大剣を一振りして構え、怒りの叫びを発した。

「そうだ!ここには誰も入らせないはずだった!アイツと俺だけの世界!他に何もいらない俺達の楽園だったんだ!」

「でもあなた!あの娘を無理矢理ここに連れ込んだんですよね⁉ああやって縛り付けて……口まで塞いで!あんなのただの誘拐じゃないですか!」

「黙れええぇぇぇ!俺とアイツの心は繋がっているんだ!その絆は誰にも邪魔はさせない!お前たちなどがこの場にいること自体が万死に値するんだあぁぁ!」

ドゴオオオンン!

 怒りのあまり大剣を振り上げ、地面に振り下ろすブルーフォレスト。その一撃は地面を砕くほどだった。

 そして再び大剣を構えたブルーフォレストはそのまま地面を砕くほどの力強さで地面を蹴り、ドレイクに向かって突撃していった。

「これ以上貴様らに語る舌は持たん!死ねええぇぇぇぇぇ!」

 すさまじい勢いで突撃してくるブルーフォレスト。それを見据えたドレイクは一度だけフリルフレアに視線を移した。

「フリルフレア、あの聖騎士野郎は俺が何とかする」

「分かった。あの子は私が助けるよ」

「頼んだぞ!」

 次の瞬間ドレイクもブルーフォレストを迎え撃つべく凄まじい力で地面を蹴った。

「チェアリャアアアァァァァァ!」

「ヌオオオアアアアァァァァァァァ!」

ガキイイイィィィィィィィィン!

 金属と金属がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。ドレイクとブルーフォレストの大剣がぶつかり合ったのだ。

 そして………この音を皮切りにドレイクとブルーフォレストの激戦は幕を開けたのだった。


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