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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第15話、第十一の悪夢・喰 その10

     第15話その10


 金髪イケメンのメッツがペルシの兄だとわかった後、ドレイク達は改めてサイザー達に現状の説明をし、知らない者同士は自己紹介をしあった。

 ペルシの兄メッツ・コールは冒険者ではなく、なんとアルミロンド集団昏睡事件の調査のためにエルベンスト王国王都から派遣された王国第3騎士団第1分隊を率いる分隊長だった。また重度のシスコンであり、ペルシが人前でメッツに絡まれるのを嫌がっているのも何となく見て取れた。なんでも、2人は騎士の家系の生まれであり、メッツの上にもう一人年の離れた兄がいるそうだ。ちなみにメッツも25歳であり、18歳のペルシとはそこそこ年が離れている。また、ペルシ曰く「兄は結構腕が立つ」そうだった。

 その他の2人もメッツの仲間だった。つり目の男はオラン・ロシーナといい、メッツの部下で同じくエルベンスト王国第3騎士団第1分隊の副分隊長だった。

 また、ポッチャリした女魔導士もエルベンスト王国魔導士団の所属で名をシンシア・エイルといい、魔導士団長を補佐する10人の団長補佐官の一人だった。同時に今回派遣された魔導士隊の指揮官でもある。

 互いに自己紹介も終え、民間人たちの被害状況も改めて確認したドレイク達。ここにいる民間人たちは残り30人程だが、これ以上被害者を出すわけにはいかなかった。また、早くこの場から移動して少しでも安全な場所を探した方が良かったのだが、先ほどの戦闘での被害者の数が多く、まだ涙を流している者達も多かったのですぐに移動することは難しそうだった。

「しかし、この先どうするかだよな」

 サイザーが腕を組んで考え込んでいた。現状すぐに動けない以上この場で待機しているしかない。だが、敵はいつまた襲い掛かってくるか分かったものではなかった。

「サイザー、お前たちはこのまま私達と一緒に行動してくれるんだな?」

「もちろんだぜ!……って、ええと…」

 ファンナの言葉に勢い良く返事をしたサイザーだったが、ふと気が付いたように少し気まずそうにメッツ達の方を見た。

「わ、わりぃ…ついさっきまでの勢いで返事をしちまったが……メッツ達もそれで良いか?」

 サイザーの言葉に顔を見合わせる3人。

「俺は隊長の意見に従うぜ」

 オランはそう言うと肩をすくめた。

「私もメッツ隊長の方針に従います」

 シンシアもそう言ってメッツの方へ視線を向けていた。

 オランとシンシア、2人の賛同を受けたメッツは少し考え込むと、サイザーに向けて口を開いた。

「それなら私たちは当分サイザーさんの指示に従います。この状況ですから、下手に意見がばらけるよりはその方が良いでしょう」

「そ、そうか……すまないなメッツ……オランとシンシアも」

「良いんですよ。その代わり的確な指示をお願いします」

 そう言ってサイザーに微笑むメッツ。オランとシンシアも頷いていた。

「そうか……それなら単純にサイザー達の戦力が追加されるんだな」

 そのまま「ふむ……」と少し考え込むファンナだったが、その時ドレイクが手を上げた。

「おいギルマス、髭サブマスターたちが加わるんだったら俺達は出ていくぞ」

 そのドレイクの言葉にサイザーが目を丸くする。

「おいおい!どういうことだよドレイク!俺達と一緒じゃいやだって言うのか⁉」

「いやいや、別にそういう訳じゃねえよ。ただ、元からそう言う話だったんだ」

「はあ?」

 ドレイクの言っていることの意味が分からないサイザー達。頭の上に?マークを浮かべている。

「そうだなドレイク、実は私もそのことを考えていた」

「どういうことだよファンナ?」

「ドレイクとフリルフレアには一時的に護衛としてついてもらっていただけなんだ」

「一時的に?」

「ああ。民間人たちを守れるだけの戦力が入ったらドレイク達は別行動する予定だったんだ」

「はあ?」

 意味が分からないと言いたげなサイザー。「どういうことだ?」と言いたげにメッツ達と顔を見合わせている。だが、その時フリルフレアが口を開いた。

「先ほども説明したとおり、この悪夢から出るにはナイトメアを倒すしかないんです。だから私とドレイクはナイトメアを探しに行こうと思います」

 フリルフレアの言葉に驚くサイザー達。

「ナイトメアを探すって……2人で戦うつもりなのか⁉」

 サイザーの驚きの言葉にドレイクとフリルフレアは頷いた。

「で、でも……それなら私達と一緒に行動してそのナイトメアを探せばよいのではないですか?」

「隊長の言う通りだぜ!敵がどんな奴かも分からないのにたった2人でなんて無茶だぜ!」

 メッツとオランが反対意見を主張する。だが、ドレイクはその言葉に首を横に振った。

「いや、悪夢野郎がどんな奴かは分からないが、何となくどんな感じの奴かは想像できる」

「どういうことだ?ドレイク?」

 ドレイクの言おうとしていることが分からずサイザーが口を挟む。

「この悪夢では魔物の襲撃があった。そんでその魔物どもはどいつも人を襲って喰い散らかす人喰いの魔物だった」

「あ、ああ……」

「だから恐らく悪夢野郎もそう言う感じの……人を喰うタイプの魔物なんじゃないかと思ってる」

「それならなおのこと俺達と一緒に行動して戦力をまとめていた方が……」

「いや、悪夢野郎が魔物を引き連れている可能性がある以上、民間人が居るところで戦闘になるのは避けたい。これ以上犠牲者を出さないためにもな」

「そ、それは………確かにそうだな…」

 ドレイクの言おうとしていることを察したのか、大人しく引き下がるサイザー。

「ですからサイザーさんたちはファンナさんたちと一緒に行動して魔物の襲撃から民間の方たちを守ってください」

「またいつ襲われるか分からないからな」

「……わ、分かった…」

 フリルフレアとドレイクの言葉に渋々頷くサイザー。悪夢の中での死が現実での死である以上、これ以上民間人の犠牲者を出すわけにはいかないと理解したのだ。

「正直、本来なら俺もそちらについていきたいんだが……」

「サイザーさんは司令塔として皆さんを指揮してもらいませんと…」

「いや、司令塔なら俺よりもあいつだな。俺はどちらかと言うと斬り込み隊長だ」

 フリルフレアの言葉に、ファンナを指差しながら苦笑いするサイザー。ドレイクとフリルフレアはファンナとサイザーを見て何となく納得した。確かにギルドマスターで頭の切れるファンナが司令塔として動き、サブギルドマスターで腕の立つ元戦士のサイザーが前線に出た方が良いだろう。

「そうですね。後サイザーさんはもうファンナさんから離れちゃだめだと思います」

「おう!当たり前だ!これ以上魔物どもにはファンナに指一本触れさせん!」

 鼻息も荒くそう息巻いているサイザー。そんな夫の頭をファンナが軽く小突いた。

「そう言ってくれるのは嬉しいが、私よりも民間人たちの方を優先しろ。私は自衛の手段くらい持っている」

「そうは言うけどさっきは危なかったじゃねえか。やっぱ俺が付いていないと……」

「しつこいぞサブギルドマスター。民間人の優先はギルドマスターとしての命令だ」

「………分かったよ」

 ギルドマスター命令だと言われ渋々引き下がるサイザー。そんな2人を見て苦笑いをしていたドレイクとフリルフレアだったが、改めて皆を見回していた。

「ギルマス、髭サブマスター、金髪騎士もどきとチビッ子、漂白剤、あと金髪イケメンとつり目男とポッチャリンか……。これだけいれば大丈夫だろ」

「ええっと……ファンナさんにサイザーさん、ペルシさんとスプラさんとルーシーさん、それにメッツさん、オランさん、シンシアさんのことね」

 ドレイクの勝手につけたあだ名に念のため確認を入れるフリルフレア。相変わらずドレイクのつけるあだ名は本人の了承を得ていないので正直分かりづらい。

 そしてドレイクとフリルフレアは改めて皆に向き合うと、別れを告げるべく手を上げた。

「それじゃ俺達はそろそろ行くぜ」

「必ずナイトメアを倒してきます。それまで民間の人たちをよろしくお願いします」

「分かった、気を付けていってくれ」

「ナイトメアどもを探す当てはあるのか?」

 ファンナとサイザーが応えるように声をかけてくる。

「正直しらみつぶしに探していくしかないな」

「ちょっと時間がかかってしまうかもしれませんが、きっと私とドレイクの2人で行動すれば向こうから襲ってくると思うんです。今までもそんな感じだったのできっとうまくいきますよ」

 フリルフレアは少し苦笑いしながらそう言うと、ドレイクと一緒に皆に背を向けた。

「それじゃ、達者でな」

「皆さんも気を付けてくださいね」

 ドレイクとフリルフレアはそう言って手を振ると、この悪夢を創り出したナイトメアを探すべくその場を後にするのだった。


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