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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第13話、第九の悪夢・戦場 その1

     第13話、第九の悪夢・戦場


     第13話その1


「うげっ!」

「むはっ!」

「むぎゅう!」

 ドサドサドサッと三人の身体が地面に落ちた。

「イタタタタ……あれ?ここは…?」

 身体を起こしてキョロキョロと辺りを見回すフリルフレア。何か荒廃した大地が広がっている。ただそれだけだった。見渡す限りずっと荒廃した大地が広がっているのだ。

「えっと……ここって……次の悪夢?」

 若干ボーッとしながらそんなことを呟くフリルフレア。自分はドレイクと共に次の悪夢へ飛ばされてきたはずなのだ。それならばここはその次の悪夢なのだろうと推測できる。

(でも、どんな悪夢なんだろ……あんまり怖かったり辛かったりしないといいけどな…)

 そんなことを考えるフリルフレアだったが、そもそも『悪夢』という時点で良い夢であるはずがないのだ。どうせ今回もろくでもない夢であることは決まっていた。

「………?あれ?」

 その時ふと気が付くフリルフレア。何かを忘れているような……そんな気がしたのだ。そしてその時、下から呻くような声が聞こえた。

「ちょ、ちょっとフリルフレアちゃん……早くどいてくれない?……重いんだけど…」

「ミイイィィィ!重い⁉私体重軽いですよ⁉」

「いや、そういう問題じゃなくて……」

 その言葉を聞いてハッとするフリルフレア。そう、声は自分の真下から聞こえてきたのだ。

「え、えっと……」

 恐る恐る下を見ると、自分のお尻がシェリエルを下敷きにしていた。そしてさらにその下にも何か赤いのがいる。

「ご、ごめんなさいシェリエルさん!」

 慌てて降りるフリルフレア。降りるときになんか下の赤いヤツの頭を踏んだ気がしたがとりあえず気にしない。

「まったく……勘弁してよフリルフレアちゃん。いくら軽いって言っても、あたいだってそんなに頑丈じゃないんだから……」

 そう言って起き上がるとその場で肩や首を回してほぐすシェリエル。肩や首がポキポキ鳴っているがとりあえず気にしない。

「いや~……でも一体ここどこよ?」

 そのまま周りを見回しながらそんなことを言うシェリエル。そしてその瞬間…。

「だあーーー!お前も邪魔だボケえ!」

「んぎゃあ!」

 フリルフレアの下敷きになっていたシェリエルのさらに下敷きになっていたなんか赤いヤツ……ドレイクは怒りの叫びと共にシェリエルを放り投げた。

ドサッ!

「うぎゅ!………あいたたた……」

 放り投げられた挙句お尻から地面に落ちたシェリエル。痛そうにお尻をさすっていた。

「ちょ、ちょっと!急に何するんだいドレイクの旦那!」

「何するんだじゃねえ!いつまでも俺の上に乗ってるからだろうが!」

 思わずにらみ合うドレイクとシェリエル。しかしそんな二人を諫めようとフリルフレアが割って入った。

「まあまあ、ドレイクもシェリエルさんも落ち着いて…。今はケンカしてる場合じゃないでしょ?」

 そう言ってパタパタと手を振るフリルフレア。だが、ドレイクとシェリエルはそんなフリルフレアの事も睨みつけてきた。

「そういうお前が一番上に乗っかってたんじゃねえか」

「そうだよね。フリルフレアちゃん重かったな~、腰痛いな~…」

「え、ええ……」

 二人がかりで睨まれ思わずたじろぐフリルフレア。だが、このまま黙っているとさらに何か言われそうなので、一応言い訳をしておく。

「で、でも…私も気が付いたらここにいた訳で……別にわざと二人の上に乗っかってた訳じゃ………」

「でもお前、降りるときに俺の頭踏んだよな」

「あ、えっと………」

 フリルフレアの首筋を冷や汗が流れ落ちる。確かにシェリエルから降りた時に何か踏んだ気がしたが、それがまさかドレイクの頭だったとは………。

「ち、違うのドレイク。別にわざと踏んだわけじゃなくって……その…たまたま偶然踏んじゃっただけなの…」

「たまたま?偶然?」

「そ、そうなの。たまたま、偶然…」

 ジト目のまま迫ってくるドレイクの迫力に押され冷や汗を垂らしながら後退るフリルフレア。だが、数歩も歩かないうちに足がもつれて尻もちをついてしまう。

「いたた……」

「痛がっても誤魔化されないぞ」

「べ、別にそんなつもりじゃ…」

 痛みのせいか涙目になっているフリルフレア。そんなフリルフレアに迫りながらドレイクはニヤリと口元を歪ませていた。

「これはもうあれだな…俺に対して謝罪をすべきだよな」

「しゃ、謝罪って……?」

「そうだな…飯奢ってくれるとかでもいいが……悪夢の中じゃ腹減らないしな……あ、さっきみたいに下着見せてくれるとかでもいいぞ♪」

「……………は?」

 ドレイクの言葉に、フリルフレアがポカンとした表情になる。だが、その表情もすぐに消え去り、後に残ったのは無表情になったフリルフレアの顔だけだ。

「え?何?…………下着?…それにさっきって…?」

 無表情なまま淡々と喋るフリルフレア。その様子に危険を察知したのかシェリエルが一人その場から後退っていく。しかしドレイクの方は特に気にした様子もなく…と言うより気が付いた様子もなく馬鹿みたいに口を開いた。

「おう♪さっきお前が俺の頭踏んだ時にな、丁度俺の顔が上向いてたからよ、スカートの中がバッチリ見えたぜ!」

「ふ~ん……………」

 フリルフレアはそれだけ言うとそのまま黙ってしまう。さらに後退りながらシェリエルが「うわ…ドレイクの旦那、サイテー…」とぼやいていたが、二人の耳には入っていなかった。

「でもよう、俺前から思ってたんだけどさ、お前一応成人してんだろ?そんな子供みたいなパンツ穿いてないでもうちょっと色気のあるパンツ穿けよ………」

 そこまで言ってドレイクはふと気が付いた。目の前で尻もちついて座り込んでいたはずのフリルフレア。彼女はいつの間にか立ち上がっており、顔はうつむいている。そしてそのままゆっくりと顔を上げてきた。

 先ほどまで無表情だったその顔は……………憤怒の形相に変わっていた。

「ドーレーイークー………私の……何を見たの?」

「え?………いやあの……お前の………子供っぽいパンツ」

「死ね!」

ガスッ!

 叫びながらフリルフレアは鞘を付けたままの短剣を取り出すとそのままドレイクの顔面に向けて思いっきり振り下ろした。鈍い音を立ててドレイクの鼻っ面に当たる。

「うお!危ねえな!何すんだよ!」

「何すんだよはこっちのセリフでしょ!どさくさに紛れてなに人のパンツ見てるのよ!このドスケベ!変態!エロ蜥蜴!」

「何い⁉あんなもん、お前が俺の頭の上なんか通るから悪いんだろ!不可抗力だ不可抗力!」

「だったら目をつぶってなさいよ!どうせ私が上を通ろうとしたから思いっきりガン見してたんでしょ!」

「視界の端に入っただけだボケ!ガン見してほしかったらもうちょっと色気のある下着にしろアホ!」

「ボケにアホですって⁉ボケでアホなのはドレイクの方じゃない!そのうえスケベ!」

「あのなぁ!男はみんなスケベなんだよ!覚えとけ!」

「そんなことないわよ!アレイスローさんなんて紳士的じゃない!ドレイクと違って!」

「アホか!弐号だってしょせん男だっつーの!あいつなんてこの間こっそりカワセミの着替え覗いてたんだぞ⁉」

「そんなのドレイクの勘違いに決まってるじゃない!アレイスローさんはドレイクとは違うのよ!アレイスローさんだけじゃないわ!リュートさんやライデンさんもきっとそうよ!」

「そんなわけあるか!あいつらだってしょせん男だ!」

 ギャーギャーと不毛な言い争いをつづけるドレイクとフリルフレア。そんな二人に気圧される形で黙っていたシェリエルだったが、自分たちのパーティーのリーダーの名前が出てきたのでさすがに口を挟むことにした。

「あ、あのさ二人とも……言い争ってるところ悪いんだけど、ライデンだったら年相応にスケベだよ?」

「ええ⁉そ、そんな……あの紳士的なライデンさんが⁉」

「え?ラ、ライデン紳士的に見える……?」

 フリルフレアの言葉に眼が点になるシェリエル。少なくともシェリエルの眼から見ればライデンは別に紳士的ではないし、男として年相応の性欲もある。何なら自分が夜の相手をしてあげたこともあった。ちなみに夜の相手とはライデンの趣味のカードゲームの相手という意味ではない。

「ほれみろ」

「そ、そんな……」

 思わず地面に膝をついて落ち込むフリルフレア。どうやら男という生き物の実態を知ってショックを受けているらしい。そんなフリルフレアをドレイクが得意げに見ていた。

「ところでさ二人とも……あたい、ちょっと気になったことがあるんだけど…」

「ん?どうした?」

「何ですか?」

 突然のシェリエルの改まった口調に、ドレイクとフリルフレアは彼女に注意を向ける。ちなみにフリルフレアは一瞬でショックから立ち直ったらしい。意外とショックを受けてなかったのかもしれない。とにかくドレイクとフリルフレアがシェリエルに注目する中、彼女は口を開いた。

「あたいさ……何でここにいるんだろ?」


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