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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第11話、第七の悪夢・灼熱の島 その1

     第11話、第七の悪夢・灼熱の島


     第11話その1


「うっわ、何だよここ……。メチャクチャあちぃ………」

 その空間に降り立った瞬間ドレイクはげんなりしながらそう呟いた。ナイトメアの力を使ったユーベラーによって前の悪夢を脱出したドレイクとフリルフレアは次の悪夢へ到着していた。そして降り立った瞬間すさまじい熱気を感じ思わず愚痴をこぼしたのだ。

「な、何ここ……あ、暑い…」

 思わずフリルフレアからも愚痴がこぼれる。

 二人が降り立ったのはどこか海岸のような場所だった。少し赤みを帯びた砂浜が広がっており、後ろにある海?からは強い熱気を感じる。

「……なんでこんなに暑……」

 振り返りながらそう言ったフリルフレアだったが、言い終わる前に言葉を失っていた。それは振り返った先の光景に言葉を失ったからだった。

「ん?どうした………」

 フリルフレアの呆然とした様子にドレイクも後ろを振り返る。そして同様に言葉を失った。

 目の前にあるのは海だと思っていた。………いや、途中までは海だった。だが、いったいどういう原理かは知らないが、海が途中から別のものに変わっていたのだ。砂浜に打ち付けるのは確かに水だ。だが、その奥30m程も先に漂っているのは水ではなかった。それは……………溶岩だった。マグマと言ってもいい。海の先………砂浜の先に水がありその先にマグマが揺らめいているのだ。これでは暑いのも当然である。

「な……なんだよこれ……」

「わかんない……」

 ある意味想像を超えた光景であった。正直、その光景を頭が理解するのに少し時間がかかる。そして理解した上で結局は悪夢の中なので何でもありなんだろうという結論に達していた。

「溶岩の海ってことかな……」

「まあ……そうなんだろうな……」

 目の前の光景をなんと表現していいか分からないフリルフレアだったが、一応の「溶岩の海」という表現にドレイクも納得する。そしてドレイクは砂浜に打ち寄せる水に手を浸けてみた。もしかしたら熱湯かもしれないと思っていたが、予想に反して水自体は冷たかった。

 どうやら砂浜に打ち寄せる水と、その先にある溶岩は何らかの力でもって区切られているようだった。

「この海の先には行けないってことか?」

「ドレイクはね。私は飛べるから行けるけど……ちょっと見てこようか?」

「良いのか?」

「うん。じゃあ、ちょっと待ってて」

 言うが早いか、フリルフレアは翼を羽ばたかせて空へ飛びあがった。10m位の高度で海の上を飛んでいく。そしてそのまま溶岩の上まで差し掛かった時だった。

「んきゃああああああ!」

 突如すさまじい悲鳴と共にフリルフレアがUターンしてくる。そしてそのまま必死こいて翼を羽ばたかせ、何とかドレイクの目の前の砂浜に顔面から着地した。

「んぶぅ!」

 砂浜に顔面がめり込む程の勢いで着地したフリルフレア。ある意味墜落したとも言える状況にさすがにドレイクも恐る恐る声をかける。

「お、おい…フリルフレア……大丈夫か?」

「あっつーーーーーい!いたーーーい!」

 ドレイクの言葉には答えず、突然叫ぶフリルフレア。顔面が砂まみれになっているが、どうやら本人はそれどころではないらしい。そのままバタバタともがきながら砂浜を走っていき、手前の海の水に飛び込んだ。

バッシャーン!

 水しぶきを上げて体全体で倒れ込むように水に入ったフリルフレア。そんな彼女の様子に驚いたドレイクはフリルフレアに駆け寄っていく。

「おい!どうしたんだよフリルフレア!」

「……………ブクブクブク」

 ドレイクの問いには答えず水に入ったフリルフレアが吐いた空気の気泡だけが上がってくる。そしてそのまましばらく水に浮いたまま波に揺られるフリルフレア。しかしいつまでたっても顔を上げないので心配になったドレイクは水に入ってフリルフレアを抱え上げた。

「おい、しっかりしろ!大丈夫か?」

「ふえ……ドレイク…。あ……熱かった…」

 ぐったりしながらそう呟くフリルフレア。意味が分からず、ドレイクはとりあえずフリルフレアをお姫様抱っこしたまま砂浜へと上がっていった。

「どうしたんだよ?」

「うん……あそこね…」

 フリルフレアはそう言うと溶岩の海の上のあたりを指差した。ちょうどフリルフレアが飛んで行って悲鳴を上げた辺りだ。

「メチャクチャ暑かったの。……いや、暑いじゃなくて熱いだよね。あそこに行った瞬間熱気で全身火傷しちゃった……」

 ゲッソリしながらそう言うフリルフレア。よく見ればフリルフレアの顔は火傷で真っ赤に腫れ上がっていてかなり痛々しい。他にも手の平や背中など肌を晒しているところは真っ赤になっている。そして翼に関しても熱気で羽毛がやられたのかボロボロになっていた。

「それで海に飛び込んだのかよ」

「うん……」

「お前………どうでもいいけど、火傷に塩水ってスゲー痛そうなんだけど…」

「え…?」

 ドレイクの言葉に思わずポカンとするフリルフレア。酷い火傷に塩水などすり込んだら痛いのは当然だ。だが………。

「あれ?待ってドレイク。………この海水……しょっぱくない」

「あん?」

 自分の身体についた水を舐めながらそう言ったフリルフレアの言葉に疑問を感じたドレイクはそのまま波打ち際に行き海水を軽くすくうとそのまま口に運んだ。

「………ほんとだ。しょっぱくねえや」

 何か理由があるのか、はたまたこの悪夢を作ったナイトメアがそこまで再現するのを面倒くさがったのかどうかは知らないが、この海水は塩水ではなかった。ただの水だ。

「なんで普通の水なんだろ?」

「分からん」

 フリルフレアの疑問にも当然答えようがない。とりあえずは気にしないことにしておく。

「そんなことよりフリルフレア、お前一応回復魔法かけとけよ」

「あ……うん。そうする」

 全身火傷で正直見た目よりも重傷だ。フリルフレアは精神を集中させた。

「『ヒーリングフレイム』」

 フリルフレアの翼から輝く炎が溢れ出す。そしてその炎がフリルフレア自身を包み込むと優しく燃え上がった。

「ふう…」

 そして炎が消え去るとフリルフレアはため息をついた。もうすっかり火傷は治っており、ボロボロだった翼もいつも通りの美しさに戻っている。そして特殊な炎で傷を癒す魔法だったためか、服もある程度乾いていた。

「うん、バッチリ!」

「便利な魔法だな…」

 フリルフレアの魔法を見て、「精霊魔法って便利だな」と思うドレイク。ドレイクも水に入ったため服が濡れていたが、さすがにそれだけのために魔法を使えとは言えない。

(ま、この暑さだからそのうち乾くだろ)

 そんなことを考えながらドレイクはこれからどうすべきか考え始めるのだった。


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