第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第9話、第五の悪夢・死遊戯 その6
第9話その6
「罠回避ゲームはね~、この通路に仕掛けられた罠を避けながら先にある扉までたどり着けるかどうかって言うゲームだよ」
「罠が仕掛けられた通路?」
モリッソーの説明を受け、ブリエッタが恐る恐ると言った感じに通路の方を見ている。ローゼリットも改めて通路に視線を向けてみると、言われてみれば確かに何ヶ所も罠が仕掛けられている形跡があった。と言うか、正直罠の仕掛けられ方が結構雑だ、解析眼を使うまでもなくローゼリットの盗賊としての知識だけで見つけられる物ばかりだった。
(この程度の罠ならばどうということは無いな)
ローゼリットは頭の中で少し考える。この通路の罠を避けながら進むというだけならば容易い事だ。ローゼリットが先頭を進み、罠を解除しながら進めばいいのだからだ。これならば今回は犠牲者を出さなくて済みそうだ。
(………いや、待てよ…)
一度は容易いと考えたローゼリット、だがここで考え直す。考えてもみればあのモリッソーが………正確に言えばモリッソーを操っているこのゲームの主がそんな方法を許可するだろうか?ローゼリットが罠の解除などしようものならば、「そんなの反則~!認めないよ~!」とか言って癇癪を起しかねない。そうなればこの場にいる全員に何かしらの危害を加える可能性もある。それにはもちろんローゼリットやモリッソー自身も含まれている。ローゼリット自身はこのゲームの主から何かしらの攻撃があったとしても切り抜ける自信があった。だが、それはあくまで自分一人だけの話だ。バッチやモリッソー自身、他の者達を守りながらではさすがに自信が無い。
どうしたものかと考え込むローゼリット。だが、そんな彼女を無視してモリッソーは上機嫌にピョンピョン跳ねながら通路の先を指差していた。
「このゲームはね、罠だらけのこの通路をみんなで一気にダッシュしてもらうんだよね~。あ、当然罠の解除とかは反則ね」
モリッソーに先に釘を刺されてしまった。考えが見透かされた様で少しムッとするローゼリットだが、ここまではあくまで想定内。次の手を考えることにする。
「ゲームがスタートするとね、後ろの壁がね……」
「後ろの壁じゃと?」
モリッソーの説明を不思議に思ったのかラモンドが後ろを振り向く。確かに後ろにはさっき入ってきた扉があり壁など無い。
「モリッソーさん、壁なんてありませんよ?扉の事ですか?」
ノイエが不思議そうに扉を指差す。それを見たモリッソーは「いっけな~い」とか言いながら頭をポリポリ掻いている。そして「みんな危ないから一歩下がって~」と声をかけた。
「「「?」」」
皆が頭の上に?マークを浮かべ、モリッソーの指示通り扉から一歩下がる。
そして次の瞬間………。
ズダアァン!
激しい音を立てて扉の前に壁が下りてきた。これはあらかじめ天井に通路の幅ピッタリの壁がセットされていたのだろう。そして入ってきた扉を塞ぐように壁が下りるような仕掛けが施されていたのだ。
「…チッ」
小さく舌打ちするローゼリット。これでは最終手段として考えていた『前の部屋に戻る』という作戦が使えない。しかもこの通路の幅ピッタリの壁にローゼリットは非常に嫌な予感を覚えていた。
「そうそうこの壁ね。この壁がね……」
モリッソーが言葉を続けたが、彼が言い終わるよりも早く彼が言おうとしている事は分かった。何故ならば………壁が動いたからだ。
ズ…ズズズ…。
少しずつ壁が前に……つまり奥の扉に向かって進んでいく。大したスピードではないが確実に前に………罠のある方にローゼリット達を追いやる様に進んでいく。
しかも……進むスピードが少しずつ速くなっていく。
「……え?」
「こ、これは……」
バッチとマーレンの呆然としたつぶやきが聞こえる。これはつまり……。
「さあさあ、走って走って!早くしないと壁に押し潰されちゃうよ~?」
モリッソーが皆を煽るようにピョンピョン跳ねながら手を叩いている。
「さあさあ!スタートだよ~!」
そう言うとモリッソーはふと何か思い出したようにポンと手を叩いた。
「あ、そうだ。このままじゃモリッソーも潰されちゃうか罠でやられちゃうから、先に次の部屋で待ってるね~。まったね~」
そう言うとモリッソーは指をパチンと鳴らした。すると次の瞬間モリッソーの姿がその場から消え去ってしまった。
「何と⁉」
「消えた⁉あの人転移が出来るんですか⁉!」
「てかあの野郎!自分だけ逃げやがった!」
ガデルとノイエとシルバスタが思わず声を張り上げていた。しかし既にモリッソーはこの場に居ないので悪態をつく事も出来ない。そして壁がどんどん迫ってくる。
「チッ!」
ローゼリットは鋭く舌打ちすると壁に背を向けて、扉に向かって走り出した。この状況、正直一刻を争う。迫る壁に押される形で罠のある地帯に足を踏み込めばそのまま罠の餌食になるのは目に見えている。それにその罠を運良く抜けられたとしても扉を開けてこの部屋から出なければ壁と扉に潰されてしまう。罠地たちを抜けた先にある扉に鍵が掛かっていない保証などどこにも無いのだ。
「あ!おい!自分だけ逃げる気か!」
後ろの方からシルバスタの怒鳴り声が聞こえる。どうやらローゼリットが一人で逃げだしたと勘違いしたようだ。しかし、今はその事に対して釈明している場合ではない。
ローゼリットはとにかく罠があるであろう場所を見ながら視覚に全神経を集中させた。
「解析眼!」
その瞬間ローゼリットの金色の瞳に光が宿る。そしてローゼリットは通路全体に視線を走らせた。
その瞬間ローゼリットの頭の中に通路に設置された罠の仕掛けや配置が全て入ってくる。
(壁に空いている穴は全て矢が飛び出す仕掛け!20m先には落とし穴!穴の下には針の山!その直後に鋼線による切断トラップ!それに…扉の直前にギロチンの罠!)
よくもまあこんな50~60m位しかないこの短距離の通路にこれだけ罠を仕掛けたものだ。
(だが、罠のほとんどは矢が飛び出す罠だ!それさえ潰せば!)
次の瞬間ローゼリットは両手に短剣を引き抜く。そしてそれを逆手に持つと、後方を一瞥して叫んだ。
「お前達!私の通った通りに付いて来い!ただしあまり近づくなよ!」
ローゼリットの言葉に皆がどよめく。
「一人で逃げようとしてるくせに何を言ってやがる!」
「待ちなよ!あの人冒険者って言ってたよ⁉何か作戦があるんじゃ⁉」
「そうですね。それにどちらにしろこの状況はわたくし達だけではどうしようもありません」
ローゼリットに対し怒鳴り返すシルバスタ。しかしブリエッタとマーレンがそんな彼をたしなめていた。
「それに壁が迫って来てますよ!」
「そうですな。これは当方達も彼女に続いた方が良さそうですな!」
後ろに迫る壁を指差すノイエ。そしてガデルは叫びながらローゼリットの後を追って走り出した。皆も顔を見合わせていたが、置いて行かれるのはまずいと思ったのか後に続いて走り出した。
そして先頭を走るローゼリット。罠地帯に足を踏み入れた瞬間、壁に空いた穴から矢が飛び出してくる。
ヒュン!ヒュンヒュン!
キイン!カァン!カキィン!
ローゼリットはあえて屋の罠を発動させる道を通って走っていた。解析眼で矢の罠は一発しか矢がセットされていないことは分かっている。なのでわざと自分に対して罠を発動させ、矢を短剣で叩き落とし後ろの安全を確保していたのだ。ただし、短剣を振り回すので危ないから先程あまり近づくなと言っておいたのだ。
さらに駆け抜けながら短剣で矢を叩き落としていくローゼリット。そして次の瞬間左手の短剣を前方の床に対して投げつける。
ガツ!ガコオン!
短剣が床に突き刺さった瞬間音を立ててその床の一部が穴をあける。先程解析眼で確認した落とし穴だ。通路の幅ピッタリに作られた落とし穴の上に床そっくりの薄い板が敷かれていたのだ。上に乗っていたらそのまま落とし穴に真っ逆さまだっただろう。
「うおおぉぉぉ!」
その瞬間ローゼリットは叫び声をあげながらジャンプする。落とし穴自体は大した大きさではない。せいぜい通路の幅と同じ2m四方の正方形だ。飛び越えること自体は造作もなかった。だが、ローゼリットは着地よりも早く右手に持った短剣を着地地点に振り下ろした。
グッ……。
だが、振り下ろした短剣に何か抵抗を感じる。一見するとローゼリットが空中で短剣を止めているだけに見える。だがそれは違った。ローゼリットが感じた抵抗は、極細の鋼線によるものだったのだ。落とし穴を飛び越えた着地地点になる場所に鋼線が仕掛けてあったのだ。それも、一般的な身長の人間の首に当たる位置に……。
そう、たとえ落とし穴を飛び越えたとしても、飛び越えた直後の鋼線によりあわよくば首を斬り落とそうとしており、それがうまくいかなくても鋼線により押し戻されて体勢を崩し落とし穴に落とそうというのだ。だからローゼリットはその着地地点の鋼線を斬り捨てようと短剣を振り下ろしていたのだ。
しかし鋼線は意外にも硬く一撃では切れない。そしてその瞬間ローゼリットは落とし穴の縁に着地する。そして鋼線の弾力により少し押し戻された。
「…クッ!」
落とし穴の縁に引っ掛けたローゼリットの脚が……滑った。
ローゼリットの身体が落とし穴の中へと消えていく。
「ローゼリットお姉さん!」
「お、おい!あんた!」
バッチとラモンドの叫びが響く。そして皆が落とし穴の縁まで走ってきた。
「ウ、ウソだろ…ローゼリットお姉さん…」
バッチが思わず膝をつく。ここでローゼリットが脱落すればおまけのバッチも脱落だ。下手をすればこの穴に飛び込めと言われるかもしれない。そう考えたのかバッチの身体が震えている。
「おいおい、あの姉ちゃん偉そうに先頭切ってたわりに落ちちまったのか?」
少し小馬鹿にした様にシルバスタが落とし穴を覗き込む。
「………え?」
落とし穴を覗き込んだまま言葉を失うシルバスタ。
「おい……偉そうで悪かったな…」
落とし穴の中でローゼリットが壁に張り付いたままそう言ってシルバスタを睨み付けた。
「えええ⁉お、お前…どうやって⁉」
驚愕の声を上げるシルバスタ。そしてその声に皆が落とし穴の中を覗き込む。
「まあまあ!ご無事だったのですね!」
「あ、あんた……すごいんだね!」
「ふむ……一体どうやって壁に張り付いているのですかな?」
マーレンにブリエッタ、ガデルが感嘆の声を上げている。そしてその声に応えることなくローゼリットは落とし穴の壁を器用に蹴って跳び上がった。そして落とし穴の縁に手をかけると一気に体を持ち上げる。
実はローゼリットは落とし穴に落ちた瞬間ミスリルの鋼線を取り出し、一瞬で投げていたのだ。そしてその鋼線を巧みに操り落とし穴の着地地点に貼ってある鋼線に絡ませたのだ。鋼線はかなりの強度があるようなのでローゼリットの体重をかけたとしても切れることは無かった。そして右手に持ったミスリルの鋼線にぶら下がり落下を免れたのだ。あとはぶら下がったまま内側の壁を蹴って上がってきたのである。
ローゼリットは這い上がると、ミスリルの鋼線を回収し、張られている鋼線に再び短剣を振り下ろした。
グッ!…ブツッ!
今度こそ切れる感触が手に伝わってくる。鋼線が切れたことを確認すると後ろに視線を向けた。
「急いで落とし穴を飛び越えろ!壁が迫ってるぞ!」
ローゼリットの叫び通り、皆の後ろ10m程に壁が迫って来ている。
「急ぎましょう!」
「そうだね!それじゃあたしから行くよ!」
ノイエが皆を急かす中、まずブリエッタが落とし穴を飛び越えた。ギリギリだったが、ローゼリットが着地地点で手を貸し何とか飛び越えられた。
しかし既に壁がかなり迫って来ている。
「ど、どうすんじゃい⁉ワシ、こんな落とし穴飛び越えられんぞ⁉」
ラモンドが悲鳴のような声を上げる。確かにこの落とし穴はドワーフが飛び越えるのは難しいかもしれない。
「チッ!しょうがねえな!」
次の瞬間シルバスタが腰の長剣を引き抜くと壁に向かって走り出した。
「何をする気だ⁉」
「足止めだよ!」
ローゼリットの叫びにそう答えたシルバスタは迫る壁の直前で長剣を逆手に持ち振り上げた。
「おおりゃあああああ!」
ドスン!
そして勢いよく長剣を振り下ろし床に突き刺してしまった。そしてそこに迫る壁が引っ掛かる。長剣がつっかえ棒の役割を果たし一時的に壁の進行を止めたのだった。
「あくまで一時しのぎだ!急ぐぞ!」
そう叫んだシルバスタは落とし穴の縁に戻ってくると、そのままマーレンを抱え上げた。いわゆるお姫様抱っこである。
「きゃあ⁉シ、シルバスタさん!一体何を……」
「メイド服の長いスカートじゃ、こんな穴飛び越えられないだろう?」
そう言うとシルバスタはマーレンを抱えたまま軽々と落とし穴を飛び越えてしまった。見かけはゴツイがさすが傭兵というだけあって一般人よりも身軽なようだ。
「よし!急げ!」
ローゼリットの掛け声に応え、すぐにノイエとガデルが落とし穴を飛び越える。さすがに身軽なケット・シーだけあってノイエはアッサリと落とし穴を飛び越えた。ガデルもリザードマンだけあって大柄だったが、持ち前の脚力で難なく落とし穴を飛び越えていた。
「ちょ、ちょっと待っとくれ!ワシにはこの穴は無理じゃよ!」
「ロ、ローゼリットお姉さん!オイラ怖いよ!」
しかし残った二人、ラモンドとバッチが泣きごとを言い始める。ラモンドはドワーフなので体が重く、この穴を飛び越える自信がないようだ。バッチの方はたんに腰が引けているだけに見える。
「仕方がないな…」
思わずため息をつくローゼリット。正直この場に置いて行くことも考えたが、床に刺した長剣がいつまで壁の足止めをしていられるか分からない以上、やはり置いて行くわけにもいかない。ローゼリットは仕方なく落とし穴を再び飛び越えてバッチとラモンドの居る側に飛び移った。
「ラモンド、少し助走をつけて跳べ。いくらドワーフのお前でも約2m位なら跳べるだろう」
「い、いやワシ……自信無いんじゃが…」
「もちろんサポートはするさ。シルバスタ!ガデル!これからラモンドが跳ぶからそちらで受け止めてやってくれ!」
ローゼリットが対岸の二人に声をかけるとシルバスタは「OK」と答え、ガデルは無言で頷いていた。
「じゃ、じゃが…一体どうやって…」
「良いからさっさと跳べ!」
それでも愚図るラモンドに後ろから蹴りを入れるローゼリット。蹴られたラモンドは「うわぁ!……っととと!」とか言いながら躓きそうになりながらも助走をつけて走り出す。そしてそのまま落とし穴の縁で対岸に向かってジャンプした。
「ぬ、ぬおおおおおおお!」
気合のつもりなのか叫び声をあげながら落とし穴の縁を蹴ってジャンプしたラモンド。しかしその気合とは裏腹にあまり飛距離が出ていない。
「うわあ!じいさんあんま跳べてねえ!」
「ラモンド殿!こちらですぞ!」
慌ててラモンドに向けて手を伸ばすシルバスタとガデル。そして二人がラモンドの腕を掴んだがその瞬間落とし穴の方に引っ張られる。
「うおお!じ、じいさん重いぞ!」
「ラモンド殿!堪えて下され!」
「そ、そんなこと言われても、どうしろと言うんじゃ!」
3人の悲鳴のような声が響く。思わず落ちそうになる3人。
「シルバスタさん!堪えてください!」
しかし次の瞬間そんな叫びと共にマーレンがシルバスタの腰にしがみつく。そしてそれを見たブリエッタとノイエも「あ、あたし達も」「そうですね!」と急いでガデルにしがみついて引っ張った。
「うおおお!落ちるぞい!」
「堪えろっつってんだろうがジジイ!」
「もう少しの辛抱ですぞラモンド殿!」
5人がかりで重いラモンドの身体を引っ張り続ける。そして皆で「「「うおおおおおおおお!」」」と掛け声を合わせ、ついにラモンドの身体を引っ張り上げることに成功したのだった。
「ひいい……助かったわい…」
「少しダイエットしろよじいさん…」
「わしゃドワーフから見りゃ標準体型じゃわい…」
シルバスタの憎まれ口に何とか答えるラモンド。正直腰が抜けそうになってはいたがそれでも何とか立ち上がった。
「何とか飛び越えたぞローゼリットの姉ちゃん!あとはその坊主だけじゃ!」
「バッチの事は私に任せておけ」
ラモンドにそう答えるとローゼリットはバッチの頭をポンポン叩いた。
「ええっと……ローゼリットお姉さん、オイラ自信無い…」
「気にするな。お前くらいなら私が背負って渡ってやる」
「え…?」
ローゼリットの言葉にポカンとするバッチ。だがローゼリットは気にせずその場にしゃがんでみせる。バッチに対して背中に乗れと言っているのだ。
「いや、でも……」
「どうした?早く乗れ」
「いや、その……恥ずかしい…」
「恥ずかしがってる場合か。早くしろ」
「……はい」
口ではローゼリットに勝てないと悟ったのか、しぶしぶローゼリットに背負われるバッチ。そのまま彼女にしがみついていたが、ふと何か思いついたのか前に回した掌を少し下に移動させていた。そしてそのまま柔らかい二つの膨らみを鷲掴みにする。もっとも革鎧の上からではあったが……。
「あ、ローゼリットお姉さん、すごくいい形してるね。ちょっと硬いけど…」
「革鎧越しだから硬いのは当然だ。あとエロガキ、今すぐその手を離さないと落とし穴に叩き落とすぞ」
バッチとしては恥ずかしい想いをさせられたことに対する仕返しのつもりだったのだろう。もちろん暗殺者として色仕掛けの訓練も受けていたローゼリットはその程度の事で悲鳴を上げることは無い。だが、額の上に怒りマークが浮かぶほどには不快らしく、聞いた者の背筋を凍らせるほど冷たい声でバッチに語り掛けていた。
当然背筋がゾクッとしたのか、慌てて手を離すバッチ。それを確認したローゼリットはそのままあっさりと落とし穴を飛び越えて対岸に渡っていた。
慌ててローゼリットの背中から降りるバッチ、そしてそのまま扉に向かって走り出そうとする。
「そ、それじゃさっさと次の部屋に急ごうぜローゼリットお姉さん!」
「待て!まだ最後の罠を解除していない」
バッチの首根っこを掴んで急いで引き戻すローゼリット。そして懐からシューティングニードルを取り出すと、そのまま扉の直前の天井部分に向けて投げつけた。
ガツ!…ガゴオオオオオン!
次の瞬間、扉の目の前に巨大なギロチンのような刃が落ちてきた。その刃は相当な重量があるのか地面にめり込む様にして突き刺さっている。こんなものが当たっていたら真っ二つにされていただろう。その様子に声を失う一同。
「最後の最後にこんな罠が仕掛けられていたなんて……」
「このゲームを作った奴って相当性格が悪いんじゃないの?」
ノイエとブリエッタが思わず愚痴っている。しかし皆同じ意見なのか特に反論する者はいなかった。
そしてそのままローゼリット達はその巨大なギロチンの歯を避けて扉を開き次の部屋へと進むのだった。




