第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第8話、第四の悪夢・吹雪の宿 その6
第8話その6
ドレイクとフリルフレアが部屋に戻ってから1時間ほどが経過していた。とりあえず借りた二階の一部屋に向かったドレイクとフリルフレア。二人はその後特に何をするでも無く雑談をしながら過ごしていたが、突如ノイセルから呼び出されて一階の食堂に行ったのだった。そして食堂には数人の男女が集められていた。
「さて、みなさん揃いましたね?」
「そろったって何がだ?」
ノイセルの言葉の意味が分からず頭の上に?マークを浮かべるドレイク。ノイセルは相変わらず美女3人を侍らせながら「チッチッチ」とか言いながら指を振っている。
「もちろんこの宿に滞在している人すべてが揃ったと言う事でございますよ」
「え?これだけしかいないんですか?」
思わず意外そうに呟くフリルフレア。この場に居るのはノイセルと美女3人ん、それに男が3人とドレイクとフリルフレアの合計9人だけだった。それなりに小綺麗にしてる宿なのでもっと泊まっているかと思ったが、そうでもないようだ。
「俺達を集めて一体何をしようってんだ?」
男3人の内の1人、黒髪の中年の男が少し苛立たしげにそう言っている。どうやら彼もここで何をするのかまだ聞かされていない様子だった。しかしノイセルは特に気にした様子もなく男を手で制するとオホンと咳払いをした。
「皆さん静粛にお願い申し上げます。…まず自己紹介させていただきたいと存じます。わたくし、探偵のノイセルと申すものでございます」
「な、何ですって!あの名探偵ノイセル⁉」
「ほ、本物なのか⁉」
眼鏡をかけた銀髪の青年と、黒髪黒髭のドワーフの男が驚いた様子でノイセルを見ている。先程の黒髪の男も驚いた様子を見せていた。
「ノイセルさんって有名人なのかな?」
「そうなんじゃねえの?この悪夢の中では……」
小声のフリルフレアに、同じく小声で返すドレイク。ノイセルの後ろでは美女3人が何故かノイセルを湛えるように拍手している。
「ありゃ?そういや全員って言ってたが、マスターのアーキットが居ないんじゃないか?」
ふと気が付いた様にドワーフの男が周りを見回す。黒髪の男とメガネの青年も「そう言えば……」と言いながら厨房の方に視線を向けていた。
「その事で皆様にお伝えせねばならないことがございます」
ノイセルの言葉があまりに緊張感に満ちていたため、男3人は黙ってノイセルの方を見ていた。ドレイクとフリルフレアもノイセルの言葉を待つ。
「先ほど……この宿の御主人であるアーキットさんが……亡くなられました」
「「「な、何だってーーー!」」」
思わず男達3人の声がハモる。
「しかも、殺された可能性が高いと思われております」
「こ、殺されたじゃと⁉」
驚きの声を上げるドワーフの男。ノイセルは頷くと少し大げさに両手を広げた。
「つきましては皆さん、わたくしの推理のためにいくつか質問させていただきたいのでございますが……」
「わ、私は別に構いませんが……」
眼鏡の青年がそう言うと、黒髪の男とドワーフの男もウンウン頷いている。
「あなた達も、構いませんか?」
「ええ、どうぞ」
ノイセルがドレイクとフリルフレアにも同意を求めて来たのでフリルフレアが返事をした。ドレイクはどうでも良さげに頭の後ろで手を組んでいる。
「それでは皆様、まず自己紹介からお願いいたします。……おっと、まずは自分から名乗るのが礼儀でございますね。改めまして、探偵をしておりますノイセルと申す者にございます」
そう言って少し大げさにお辞儀をするノイセル。美女3人がキャーキャー言っている。
「さあ、あなた達も自己紹介なさってくださいませ」
「「「はい!ノイセル様♡」」」
3人の美女の声がハモる。そして次に茶髪ショートカットの美女が一歩前に出る。よく見れば少し釣り眼で、気が強そうだ。
「まずはボクだね!ボクの名前はヤゴナ、ノイセル様の助手だよ。歳は18歳!」
次に金髪ロングのカールヘアで、お嬢様っぽい美女が一歩前に出る。手には羽根扇子を持っており、それで口元を隠していた。
「わたくしフーコと申しますわ。ノイセル様のもとで助手をさせていただいておりますの。歳は20歳でございますわ」
最後に白髪オカッパのロリっ娘美女が少しおどおどしながら一歩前に出た。
「え、えっとぅ……ベーコの名前はベーコって言いますぅ。ノイセル様の助手をしてるんですぅ。歳は16歳なのですぅ」
そう言ってペコリと頭を下げるベーコ。そして次の瞬間ヤゴナがノイセルの右腕に抱き付き、フーコがノイセルの左手を取り自らの胸に抱きしめる。そしてベーコが背後からノイセルに抱き付いた。
「「「私達!ノイセル様の助手にしてノイセル様親衛隊!その名もノイセルガールズ!」」」
3人の声がキレイにハモる。もしかして普段から名乗りの練習とかしてるんだろうか?その事が気にならなくもないドレイクだったが、今はそんなことを気にしている時では無いので気にしないでおいた。
「さあ、皆さまも自己紹介をお願いいたします」
美女3人に抱き付かれたままのノイセルに促され、黒髪の男が渋々手を上げる。
「それじゃ俺から……。俺はシンシーク、45歳、大工だ」
次に銀髪で眼鏡をかけた青年が手を上げる。
「次は私が…。私はラハバキア、歳は27歳、学者をやってます」
ラハバキアがそう言って頭を下げる。そしてその後に黒髪黒髭のドワーフが一歩前に出た。
「次はワシかの?ワシはグメロ、銀細工職人じゃ。歳は97歳じゃよ」
そう言ってパチリとウィンクするグメロ。残念ながら全く決まっていない。
「それでは最後にあなた方も……」
ノイセルがドレイクとフリルフレアにも自己紹介を促してきた。仕方なしにため息をつくドレイク。そうしている間にもフリルフレアが「はーい!はーい!」と手を上げている。
「私、フリルフレアって言います。15歳で冒険者やってます」
「冒険者⁉」
「まだ子供じゃないのか⁉」
フリルフレアがペコリと頭を下げる中、シンシークとラハバキアが驚きの声を上げる。どうやらフリルフレアの子供っぽく見える外見のせいで冒険者であることを疑われているようだった。
そして最後に、皆の視線がドレイクに集まる。どうやら自己紹介しなければいけない空気になっている。ドレイクはため息をつくとしぶしぶ口を開いた。
「俺はドレイク、冒険者でこいつの相棒だ」
ドレイクはそう言いながらフリルフレアの頭の上に手を置いた。フリルフレアは「子ども扱いするな」と言いたげに、「ミイィィィィィィ!」と唸りながら、ドレイクの手を叩いている。
「なるほど……。皆さん、アーキットさんを殺した犯人が分かりましたよ」
「「「な、何だってーーー⁉」」」
突然のノイセルの言葉に対し、シンシーク、ラハバキア、グメロの驚きの声がキレイにハモる。しかしノイセルはそんなことは気にせずに、ドレイクとフリルフレアに向けて人差し指を突き出した。
「そう、残念ですが犯人が分かりました。犯人は……ドレイクさんとフリルフレアさん、あなた方二人です!」




