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第5章 赤蜥蜴と赤羽根と13の悪夢 第7話、第三の悪夢・孫娘と祖母 その5

     第7話その5


「うん……んんん…」

 呻き声を上げるフリルフレア。

 フリルフレアは今、太い木の枝から吊るされていた。両手首を頭の上で交差する様に縄で縛られ、その縄の端が木の枝に結ばれている。脚は完全に地面から浮いており、そのせいで両手首に全体重がかかっていた。いかにフリルフレアの身体が華奢で小柄であったとしても、手首だけに全体重がかかればさすがに激痛が走る。しかしそれも先程までの事で、今はもう手首が縄で締め付けられ血液が回らなくなり感覚がマヒしていた。

 さらにブルーフォレストはフリルフレアに猿轡を噛ませていた。布を無理矢理口の中に押し込み、吐き出せないようにさらに布を噛ませ、その端を頭の後ろできつく結んだのである。これによりフリルフレアはまともに喋ることが出来なくなっていた。だが……実を言えばブルーフォレストがフリルフレアに猿轡を噛ませたのは声を上げさせないことが目的ではなかった。何故ならば、ここは森の中でほとんど人など来ないところだったし、フリルフレア自身も翼を斬られた痛みで弱っており、大声を出して助けを呼ぶ気力など残っていないからだ。

 ならばなぜブルーフォレストはフリルフレアの口を塞いだのか?

「くくく……良い格好だなフリルフレア」

 フルフェイスの兜のせいで表情は分からないが恐らく笑ったであろうブルーフォレストは項垂れているフリルフレアの顎を掴むと無理矢理自分の方を向かせた。

「む……んん……」

 痛みのせいで弱っているせいかまともに呻く事も出来ないフリルフレア。瞳にも精気が無くグッタリしている。そんなフリルフレアにブルーフォレストは顔を近づけた。

「お前にはこれから恐怖と絶望をたっぷりと味わってから死んでもらう。おっと、自殺しようなどと考えるなよ?……まあ、その口では舌を噛む事も出来ないだろうがな」

 そう言って「くっくっく」と笑い声をあげるブルーフォレスト。そう……これがフリルフレアに猿轡をした理由だった。フリルフレアが舌を噛んで自殺しないように舌を噛めなくしたのである。

「さて………それじゃ、処刑を始めるか。……………拷問処刑を」

 ブルーフォレストのその言葉にフリルフレアはさらに青くなる。先程から自分を殺すと宣言しているブルーフォレスト。たっぷりと恐怖と絶望を味わわせてから殺すと言っていたが、その方法については先程まで何も言っていなかった。だが彼はたった今フリルフレアに対する拷問処刑を宣言した。フリルフレアを苦しめるだけ苦しめてからなぶり殺しにすると言ったのだ。その残酷な言葉に………思わず痛みを忘れそうなほどの恐怖を感じる。

「うん!んん!うむむぅ!(ヤダ!いや!やめてぇ!)」

 あまりの恐怖に涙が溢れ出す。だがフリルフレアのそんな様子にもブルーフォレストは動じることなく腰の長剣を抜き放つ。かなりの切れ味を誇りそうなその長剣が怪しく光る。

「さて、この羽根半分切れてるし邪魔だろう?」

ザシュッ!

「んんーーー!うむむむぅーーーー!」

 ブルーフォレストはまるで世間話をするような口調で半ばまで切れたフリルフレアの右の翼を掴むと、そのままためらうことなく残りを斬り落とした。そして切り取られた翼の半分から先を無造作にその辺りに放り投げる。あまりの激痛にフリルフレアは猿轡越しに凄まじい悲鳴を上げていた。

「フン、無駄に美しい翼だが………我が主の命令は絶対だからな」

 斬り落とされたフリルフレアの紅い翼を見て鼻で笑うブルーフォレスト。そしてフリルフレアの方に視線を向けるとそのまま反対側の左の翼を掴む。

「羽根の長さが違ったらバランスが悪いだろう?」

ザシュ!グジュグズ……。ブシュッ!

 ブルーフォレストは無造作に剣を振るいフリルフレアの左の翼を斬り落とそうとした。しかし無造作な一振りだったため翼を切断するには至らず、半分位までを斬った結果となる。そしてさらにブルーフォレストは翼を斬り落とすために剣を鋸のように前後に動かして少し斬り進めると、最後は再び剣を振り上げて翼を斬り落とした。

「んんーーー!ん!ん!ん!……んんんーーーーー!」

 口を塞がれた状態ながら痛みのあまり凄まじい悲鳴を上げようとするフリルフレア。あまりの痛みに瞳からは涙が溢れ続け、涙と鼻水で顔がグチャグチャになっている。

「どうした?翼の長さを均等にしてもらえてうれしかったのか?」

 冗談のようにそう言いながらフリルフレアの髪を掴むブルーフォレスト。そのままフリルフレアの顔面に拳を叩き込む。全身金属鎧のため、当然手も金属の鎧で覆われているブルーフォレストの拳はフリルフレアの顔面など一撃で潰してしまいそうだ。

「ぐ…うぐ………」

 フリルフレアの顔面に激痛が走る。鼻骨が折れたであろう鼻からは鼻水ではなく鼻血が溢れ出し、殴られた衝撃で口の中に血の味が広がる。どうやら口の中を切っただけでなく何本か歯も折れたみたいだ。だが猿轡のせいでそれらを吐き出すことさえままならない。

「さて……次は…」

 ブルーフォレストは長剣を肩に担ぎながらじっくりとフリルフレアを観察する。次にどんな拷問をしようか考えているようだ。そしてブルーフォレストの視線はフリルフレアの脚で止まる。

「そうだな、次はその脚を………」

 ブルーフォレストはそう言いながらフリルフレアの右足を掴む。そしてその指に長剣をあてがった。

「どうせもう歩くこともないんだから、指なんていらないよな?」

ズブリ。

「ふんんーーー!ふーー!んーーー!」

 フリルフレアから再度凄まじい悲鳴が上がるが、それもやはり猿轡のせいで呻き声にしかならない。ブルーフォレストがフリルフレアの右足の親指を斬り落とそうと無造作に長剣を突き立てたのだが、すぐに骨に当たり上手く斬り落とせなかったのだ。そして骨を斬り落とそうとブルーフォレストが長剣を前後に動かしたせいでフリルフレアが余計に激痛を味わうことになったのである。

「………面倒くさいな」

 ボソッとそう言ったブルーフォレスト。右足の親指を斬り落とそうと躍起になっていたが、うまくいかず親指は既にグチャグチャになっていた。そしてついに面倒臭くなったブルーフォレストは脚から手を離すと、そのまま長剣を一閃させた。

ズバァン!……ボトッ!

 長剣が何かを斬り裂く音の直後に、何かが地面に落ちる音が響く。

「んんんーーーー!むうーー!んんんーーーーー!」

 更なる激痛にフリルフレアが悲鳴を上げる。そしてフリルフレアは自分の右足を見ていた。そこには………無残に足首から先を斬り落とされた右脚があった。

 ………そう、先ほどの何かが落ちる音は、フリルフレアの右足首が斬り落とされた音だったのだ。そしてそこからはとめどなく血が溢れ出ている。

「ふむ……やはりバランスが悪いな」

 そう言ったブルーフォレストはさらに長剣を振るう。そして右脚と同様左脚も足首から先を斬り落とした。

 左脚も斬り落とされたことでさらに血液が溢れ出る。あまりの出血にフリルフレアの意識が朦朧とし始めていた。

「む、意識を失いかけているな。これはいかん」

 ブルーフォレストがそう言った直後、フリルフレアの脚が掴まれる。そして次の瞬間……。

ジュウウウウウウ!

「んぐーーーー!ん!んぐ!んんんーーーーー!」

 辺りに肉の焦げる様な臭いが広がる。それは……………ブルーフォレストがフリルフレアの足首の断面を焼いた匂いだった。ブルーフォレストの持っていた剣は魔剣だったのだろうか?彼の持つ長剣は今や真っ赤に赤熱し超高温を発している。そしてその刀身の腹を足首の断面に当てて傷口を焼き、無理矢理止血しているのだ。さらにブルーフォレストはそのまま反対の足首の断面も焼いて止血すると、さらに背中の翼の斬り口も焼いて止血する。そして………その真赤に赤熱した長剣でさらに腕や脚を斬り付けた。

ジュウウウウ!

 フリルフレアの腕や脚、わき腹など何度も斬られるが、赤熱した刀身が斬ると同時に傷口を焼いているのでほとんど出血がない。だがそれは……フリルフレアにとってはまさに拷問でしかない。出血により意識を失う事も出来ず、ただひたすら痛みに耐えることしか出来ないのだ。

 そしてそのままブルーフォレストの拷問は続き、小一時間ほども経っただろうか?その間もずっとフリルフレアは腕や脚、腹などを斬られ、あるいは肉をそぎ落とされ、手の指も斬り落とされ、右目も潰された。

 もはや呻き声を上げる気力すら残っていないフリルフレア。赤熱した長剣で止血しながら斬られたと言っても、既に身体中が血まみれで真っ赤だった。そしてそんなフリルフレアを見てブルーフォレストが長剣を掲げる。

「さて……恐怖と絶望は感じたか?そろそろ十分だと思うが…」

 そう言うとブルーフォレストは長剣の切っ先をフリルフレアの胸の前にあてがった。そしてその心臓めがけてゆっくりと長剣を突き刺す。

ズブリ……ズブズブ……。

 刃がフリルフレアを貫き切先が背中から突き出ている。もはやものを言う事すら叶わないフリルフレア。ブルーフォレストの長剣によりその命の灯が消えるのにさしたる時間はかからなかった。


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