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おまけ フリルフレアとドレイクの一手間クッキング 野菜の肉巻きカツ編

     おまけ フリルフレアとドレイクの一手間クッキング 野菜の肉巻きカツ編




「皆さんこんにちは。『赤蜥蜴と赤羽根』の美少女ヒロイン、フリルフレア・アーキシャです」

「ども、イケメン主役のドレイク・ルフトっす」

 深々とお辞儀するフリルフレアに対し、簡単に手をサッと上げるだけで挨拶を終えるドレイク。そんなドレイクのお腹にフリルフレアは裏拳を叩き込む。

「もうちょっとちゃんと挨拶してよドレイク!後、誰がイケメンよ!」

 ドレイクの固い鱗で覆われた腹部を叩いたせいで手が痛かったのか、手の甲にフーフーと息を吹きかけるフリルフレア。

「それを言ったらお前だって自分の事『美少女ヒロイン』とか大ぼら吹いてるじゃないか」

「ちょ、大ぼらまで言う⁉こう見えても私、昔ご近所では『孤児院の天使ちゃん』て呼ばれてたのよ⁉」

「そりゃただ単に羽根が生えてるからだろう」

「ムキー!何ですってぇ!」

 プンスカ怒って拳を振り上げるフリルフレアを「まあ待て」と言って制するドレイク。

「話が進まないだろう。今日は何を作るんだ?」

「ハ!そうだった!アホなドレイクに付き合っている場合じゃないわ!」

「いや、アホはお前だろ……」

 ドレイクの呟きはシカトするフリルフレア。ドレイクがジト目で睨んでいた。

「おまけコーナー、『フリルフレアとドレイクの一手間クッキング』へようこそ!今日のテーマはこちらです!」

 じゃじゃん!とか言いながら何処からともなくクリップボードの様な物を取り出すと、そこに取り付けられた紙をめくる。

 その下の紙には「野菜の肉巻きカツ」と書かれていた。

「という訳で、今回は『野菜の肉巻きカツ』です!」

「何だそりゃ?普通のトンカツと違うのか?」

 頭の上に?マークを浮かべるドレイク。そんなドレイクに対しフリルフレアはちょっと得意げに「フフン」と鼻を鳴らす。

「このコーナーは『一手間クッキング』ですからね!この料理は普通のトンカツとは違うママ先生のオリジナル家庭料理。野菜嫌いな子供が野菜を美味しく食べられるように考えられているの」

「本当かよ?」

 疑わしげな視線を送るドレイク。しかしフリルフレアは「ムフー」とさらに得意げな表情をする。

「任せなさい!ここはママ先生直伝の私の料理の腕を信用してよね」

「はあ……まあ、お前がそう言うなら…」

 若干どうでもよさそうに言うドレイクに、フリルフレアは頬を膨らませる。

「ちょっとドレイク!今日何かやる気無くない⁉」

「いやあ、だってアシスタントしてもできた料理食えないんだろ?」

「あ、やる気のない理由はそれ…」

 納得するフリルフレア。どうやらこのリザードマンは目の前にニンジンをぶら下げておかないと走らないらしい。

「もう、しょうがないなぁ。それじゃ今日は多めに作ってドレイクにも試食させてあげるから」

「よし!早く始めるぞフリルフレア!」

(なんて分かりやすい…)

 あまりに極端な態度の変化に呆れるフリルフレア。この腹ペコ食いしん坊万歳を釣るには食べ物が一番なのだと改めて実感する。

「それでは始めましょう!まずは移動~♬」

 手に持っていたクリップボードを放り投げて移動するフリルフレア。ドレイクもその後ろに続く。

 二人は調理場へ移動、まな板や包丁が置いてあり、コンロや鍋などが並んでいた。

「それで、材料は?」

「今日の材料は豚バラ肉の薄切り、ニンジン、インゲンマメ、アスパラガス、パン、卵、小麦粉、あとは調味料です」

 フリルフレアが示した材料がズラリと並んでいた。

「それで?俺は何をすればいいんだ?」

「まずドレイクにはパン粉を作ってもらおうかな」

「パン粉?」

 頭に?マークを浮かべながらパンを取るドレイク。そしてしげしげと見つめるとそのまま口の中に放り込んだ。

「あ!また食べた!」

「ん、また?まだパンしか食べてないぞ?」

「ドレイク前回も何も考えずにパンを食べちゃったじゃない!」

「ああ、そう言えば……」

 前回のハンバーグ編でも同じようにパンを食べてしまったことを思い出す。

「いやあ、なんか腹減ってたから……」

「この万年腹ペコ食いしん坊!しょうがないから予備のパンを出すけど……」

 そう言って懐からパンを取り出すフリルフレア。

「お前……今何処からパン出した?」

 ドレイクがジト目で睨むがフリルフレアは完全に無視した。

「さあドレイク、このおろし金でパンを下ろして」

「ああ…………出来るのかこれ?」

 ドレイクがおろし金にパンを当てて前後に動かすが、全くパン粉にならない。

「おい、これ無理だぞ?」

「そんな時のワンポイント!普通のパンはふかふかして摩り下ろせないので、こうします!」

 言うが早いか、パンに手をかざし精神を精霊界に接触させるフリルフレア。

「氷の精霊スノーホワイトよ、あなたの凍える指先で命無き物に触れて…『フリーズ』」

 パキパキと音を立ててパンが凍り付く。形そのままに、凍って固くなったパンを見てドレイクが驚きの声を上げる。

「パンって凍るのか⁉てか、形はそのまんまなのに固い!」

 パンを台にカンカンとあてるドレイク。固いもの同士がぶつかり合う音に満足そうなフリルフレア。

「完璧だね。これで摩り下ろせるでしょ?」

「ああ……しかし驚きだな…」

「フフン!そうでしょそうでしょ、褒めて褒めて!」

「こんなくだらない事にわざわざ魔法を使う奴がいるなんて……その無駄な労力にビックリだ」

「驚いたのそっち⁉」

 ガーン!とショックを受けるフルルフレアだったが、気を取り直して調理を進めることにする。

「とにかくドレイクはそれ下ろしといて」

「分かった」

 ゴリゴリとパンを摩り下ろしパン粉を作っていくドレイク。凍ったパンは5個ほどあったが、とりあえず3個ほどパン粉にしていた。

「次に野菜の下処理をしてしまいます。ここが一手間ワンポイント」

 そう言うとフリルフレアは野菜類を洗い、手早くニンジンの皮をむくと、短冊切りにしていく。そしてアスパラとインゲンもニンジンの長さに合わせて切る。

「この後野菜は下茹でします。野菜にあらかじめ火を通しておくことで、カツとして揚げた時にまわりのお肉に火が通り過ぎないようにするのです」

 そう言うと手早く鍋に水を張りお湯を沸かす。そしてその中に塩を一つまみ入れてから野菜類を投入して茹でていく。

「ちなみに、野菜の色をハッキリと出したい時は茹で上がりに氷水に漬けると良いです」

 そう言って茹で上がった野菜を氷水に漬けるフリルフレア。その後ろではパン粉を作っていたドレイクが面倒くさくなったのか、残った2個のパンを口の中に放り込んでいた。そしてゴリゴリと音を立てながら咀嚼して飲み込んでしまう。

「……………何か今ゴリゴリって音がしなかった?」

「気のせいだろ」

 シレッと言うドレイクに疑わしげな視線を送るフリルフレアだったが、今はそれどころでは無いと気を取り直す。

「ここまで出来たら野菜の水分を拭きとって……」

 紙で野菜の水分を拭きとるフリルフレア。そして台の上に豚肉の薄切りを取り出す。

「ここで豚肉の登場です。本当は薄切りにするところからやりたかったんだけど、またドレイクがとんでもない事を仕出かし兼ねないので、ちょっとお高いですけどスライスされた物を買ってきました」

「何だ、斬るのは得意なのに」

「魔物をね!ドレイクが得意なのは魔物を斬ることだからね!」

「いや、動き回る魔物より、動かない肉斬る方が簡単だろう?」

「『お肉叩いてミンチにして』って言ったら、チョップでお肉を叩いてミンチにしようとした人がどの口で言うの?」

「いや、だってその方が…」

「言い訳は聞きません!とにかくドレイクは私の言う通りにしてればいいの!」

「………りょーかい」

 不満げなドレイクだったが、フリルフレアはそれを気にせず先に進める。

「ドレイクはお鍋に油張っておいて」

「ああ」

「さて、それでは今度は野菜をお肉で巻いて行きます」

 フリルフレアは手元のバラ肉を二三枚広げるとその上にニンジン、インゲン、アスパラを1本ずつ乗せる。そしてそれをクルクルと巻いて行く。

「お肉で巻く時にあんまり肉同士が重ならないようにしてください」

 そのまま手早く野菜を肉で巻いて行くフリルフレア。瞬く間に野菜と肉がまき終わる。

「そしてここで下味をつけます。巻いたお肉に向かって軽く塩胡椒です」

 塩胡椒で下味をつけるフリルフレア。そしてすべてに肉巻きに下味をつけると、今度はバットに小麦粉を入れて広げる。

「ここでバットに小麦粉を入れます。あんまり沢山は必要ないので、必要最低限で良いと思います」

「なあ、フリルフレア」

「何?」

 振り向くフリルフレア。その瞳に予想外の光景が飛び込んできた。

「油貼るって……これじゃ『貼る』って言うより『塗る』じゃないか?」

「な、何してるのドレイク⁉」

「え?いや、だから鍋に油貼ってるんだけど?」

 そう言ってドレイクは鍋に油を塗りたくる……いや、貼り付けている。ドレイクの手と鍋は油まみれでベトベトだった。

「油貼るって……バカなの⁉どこの世界に油塗りたくって油貼ったとか言う人がいるの⁉」

 悲鳴を上げながら頭を抱えるフリルフレア。その後ろではドレイクがニコニコしながら自分のことを指差していた。どうやら「ここに居る」と言いたいらしい。

「信じらんない⁉バカなの⁉『油貼る』じゃなくて『油張る』よ!油をお鍋に入れておいてッていう意味!」

「何だ、それならそうと速く言ってくれよ」

「普通分るでしょうがー!」

 叫ぶフリルフレア。だが、ひとしきり「ムキー!」と猿の様に叫んだことで少しスッキリしたのか冷静さを取り戻した。

「もう良いわ。油は私が張っておくから、ドレイクはそこの卵を二個、割って溶いておいて」

「オーケー」

 フリルフレアがコンロに鍋を置きそこに油を注いでいる中、油まみれの手を洗ったドレイクは卵を二個手に取りジッと見つめた。

 そしておもむろに口の中に………。

「ストーーープ!何で何でもかんでも口に入れようとするのドレイク!子供なの⁉赤ちゃんなの⁉」

「落ち着けフリルフレア。卵は食べ物だし問題ないだろ」

「だからって殻のまま食べないよね!あとその卵調理に使うやつだって言ったよね⁉」

「ああ、そうだった」

 口に入れるのを諦めて卵を置くドレイク。

「いくらドレイクがリザードマンで蜥蜴に似てるからって卵を丸呑みにしなくても…」

「待てコラ、フリルフレア。卵を丸呑みにするのは蛇だろうが。後な、俺たちリザードマンは蜥蜴に似てるんじゃない竜に似てるんだ!」

「あんまり変わらないじゃない」

「大違いだ!」

 叫びながら拳をグッと握りしめるドレイク。

「そもそも俺たちは一般的にリザードマンなんて呼ばれているが、本来は竜の眷属で……」

「長くなりそうなので無視して先に進めましょう」

 ドレイクをガン無視して先に進めるフリルフレア。卵を割ってボールに入れると手早く溶いて溶き卵にする。

「今度は衣をつけていきます。小麦粉、卵、パン粉の順につけていきます」

 言った通り小麦粉、卵、パン粉の順につけていくフリルフレア。後ろではドレイクが「そもそも人のことを赤蜥蜴だ馬鹿蜥蜴だとバカにするやつが多いが、それを言ったらお前らだって馬鹿猿だったりアホ猫だったりするじゃないかと……」とか言っていたが、気にせず続けていく。

「最後のパン粉はしっかりと付けてください。でないと揚げてる途中にパン粉がはがれちゃいます」

「おいフリルフレア!俺の話聞いてるのかよ⁉」

「聞いてない」

 きっぱりと言い放つフリルフレア。後ろでドレイクが手をワナワナ震わせているが気にしないでおく。

「最後に揚げていきます。油を加熱して約120度程にします。比較的低温ですね」

「いや、120度は熱いだろ」

 叫ぶのをやめたのかドレイクが口を挟んでくる。

「揚げ物としては低温の部類なの」

 そう言って衣をつけた野菜の肉巻きを次々と油に投入するフリルフレア。

「入れるときに油が跳ねないように気を付けてください。そしてこのまま5分ほど揚げていきます」

「ほう……揚げ物の香ばしい匂い……」

 よだれを垂らして手を伸ばすドレイクの手の甲ををペシリと叩くフリルフレア。

「まだ出来ていないでしょ!最後に一手間」

 そう言うとフリルフレアは火力を少し上げる。

「最後に強火にして数秒揚げます。そしたらすぐに引き上げて油をきります」

 ヒョイヒョイと巻きカツを紙を敷いたバットに乗せて油をきる

「最後に数秒強火にすることでまわりがカリッと仕上がります。中はこんな感じ」

 巻きカツを一本包丁で切って見せるフリルフレア。中のニンジン、インゲン、アスパラに肉汁がしたたり、見た目もきれいで食欲をそそる。

「これにて完成です。ウスターソースをつけて食べるとおいしいです。後、冷めても美味しいのでお弁当にも向いていますし、中に紫蘇の葉やチーズなんかを入れるといったアレンジも可能です」

「ほうー、そうなのかー」

 ドレイクが欠食児童の様な顔で巻きカツを見ている。どうやら我慢できないらしい。

「はあ……しょうがないなあ。これは試食用だから食べていいよ」

「オッシャー!いっただきまーす!」

 どこから取り出したのかフォークで巻きカツを3個位まとめて突き刺し口に運ぶドレイク。どうにも我慢と言うものができないらしい。ただ、美味しそうに食べているのでフリルフレア的には悪い気はしなかった。

「と、こんな風にできました。野菜嫌いのお子さんがいる家庭では試してみてはいかがでしょうか?」

 そう言って締めに入ろうとするフリルフレア。その後ろではドレイクがさっさとカツを喰い終わり、周りに何かないか探している。そして何か見つけたのか、コソコソと移動する。

「さて、フリルフレアとドレイクの一手間クッキング、野菜の肉巻きカツ編はどうだったでしょうか?皆さんのお役に立てたならば幸いです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 セリフが続かず、思わず後ろを振り向くフリルフレア。

「ちょっとドレイク!もう締めに入ってるんだよ!」

「んあ?」

 ドレイクがフリルフレアの方を向く。その口にはまだ揚げていない生の状態の肉巻きカツが咥えられていた。

「ちょ、ちょっとドレイク!何してるの⁉」

「いや、足りなかったから何か食い物ないかと思って…」

「ドレイクは試食したじゃない!残りは孤児院のみんなのために用意してたのに!」

「何だ、そうだったのか?」

 そう言いつつ、残った生のままの肉巻きカツを口に放り込むドレイク。

「て言うか!そもそもそれ、まだ生じゃない!お腹壊すよ⁉」

「え⁉………そうなのか?」

「普通豚肉生で食べないでしょうが!」

 再度頭を抱えるフリルフレア。

「いや、でも俺今まで豚肉生で食っても腹壊したことないぜ?」

「今までにも食べたことあるの⁉」

 もうどこからツッコんで良いか分からないフリルフレア。あまりの状況に涙目になってくる。

「ミィィィ………もういいや…。ドレイクがお腹壊しても私知らない…」

「お、おう…」

 ちょっと悪いことをしたような気になったドレイクだが、今さら気が付いても遅かった。

「ドレイク、もう締めに入るよ……」

「あ、ああ…分かった」

 もはや元気のなくなったフリルフレアに居心地の悪さを感じるドレイク。

「とにかく皆さん、豚肉は必ずちゃんと火を通してから食べてくださいね」

「腹壊すらしいぞ!」

「ドレイクはどうせ壊さないんでしょ?」

「いや、まあ、そうなんだが……」

 恨みがましい視線を送るフリルフレアから視線を逸らすドレイク。

「それでは『赤蜥蜴と赤羽根第3話』及び次回の『フリルフレアとドレイクの一手間クッキング』でお会いしましょう」

「それじゃまたなー!」

 深々とお辞儀するフリルフレアと、右手に人差し指と中指を立ててビシッと挨拶をするドレイク。

 二人のおまけコーナーはまだまだ続く。







「何で豚肉を生で食べて平気な顔してるの?」

「いや、何でって言われてもなぁ……」

 フリルフレアがドレイクをジロリと睨む。

「ドレイクは馬鹿だからお腹壊さないのかな?」

「何『バカは風邪ひかない』みたいに言ってんだ。ただ単に頑丈なだけだろ」

「頑丈って言っても限度があるよね」

 すっかりむくれているフリルフレアだがドレイクはケラケラ笑っていた。

「まあ、何だ。あんまり気にすることでもないだろ」

「これじゃ、野草の類を食べられるかどうかドレイクに毒見させても意味がないじゃない」

「おい、お前今なんて……」




                                     完


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