第8話 武術
mob生徒達の「はい。」と「ありがとうございました!」しか言ってない感が…
ーー次の日ーー
昨日は気付いたら寝ていた。
えっと、今日は確か武術をやるんだった。ある程度は自信があるけれど…実際はどうだろう。やってみないとなんとも言えないな。
アリスと共に教室へ向かう。
「雫さん、おはようございます。」
「あ、マイン。おはよう。」
軽く挨拶をして自席へ行く。
「今日は昨日言った通り武術をするわ。午前は教科書を読んで学ぶこと。午後に実技をするわ。サボらずしっかりと読み込むように。」
先生が指示を出すとみんな教科書を開いて勉強を始める。中にはメモを取っている優等生もいた。
俺は軽く教科書を読んでみたのだが…これ空手とか柔道とか合気道とかを元にして作られているみたいだ。剣術もそんな感じだ。
そこでふと思ったんだが俺達以外にも異世界から来た人がいるんじゃないか…?
そういう人達の意見を元に作っている、ということも考えられる。
トイレなどのシステムもそうだ。電力などの概念が無い分は魔法で補っているみたいだが中世の西洋の世界観にはこのシステムのトイレは珍しい。
そう考えるときっと異世界はいる。いやいると信じたい。そうすればきっと帰還も可能かもしれないし。
ただ今更帰還したい!とは思わないな…。帰るよりもこっちの世界の方が楽しそうだし、正直性に合っている。むしろ帰りたくない!があるくらいだ。
こっちで充実したライフが送れるならそれでいい。弱肉強食なら邪魔なものは排除すればいい。
元の世界ではこんな考えは無かったんだけどな…。魔族になった影響からだろうか。残虐な発想もできてしまう。
まあ今はそんなことはいい。武術についての学習をしよう。
元の世界と殆ど変わらないのは体術だ。
少し違うところは魔力のこもった攻撃の躱し方。魔法に対しては食らう部位に魔力を込めて対抗する。拳に魔力を込めての物理攻撃は魔力をなくすことによって魔力を受け止めることで躱すらしい。
そして大幅に違うのは剣術だ。
基本的には魔力を使うらしい。ここらへんは少し複雑なので省こう。使うようになったらまた学ぼうと思う。
俺達が学習してる頃、先生方の間で炎魔法〈火炎〉で火を容易くつけた魔族の話がされている事など、俺には知る余地も無かった。
ーーその頃職員室ーー
「炎魔法〈火炎〉で火をつけるのに1時間もかからなかった生徒がいると言うのは本当なのかい?」
「本当のようです。トト先生。」
学問の神、トトはこの学校の校長を務めている。
勿論本体ではない。本体はまた別の場所にいる。これは分体だ。
「それは…相当な辞書レベルもしくは魔法適正の持ち主だ…。要注意人物だな。そしてその生徒の名前は?」
「雫、というそうです。」
「雫、か。その者の扱いは注意するように。」
「はい。」
ーー午前が終わりーー
「午前の授業はこれで終わりよ。午後は実技をやるわ。でもその前に適正武器についての話をするにで教室に集まるように。」
「「「はい。」」」
「それじゃあ、解散!」
「「「ありがとうございました!」」」
「雫さーん!」
「雫様ー!」
「ん?どうしたんだ?」
「「あの、ここなんですけど…。」」
分からない所を聞きに来たらしい。
それから二人に分かるまで教えてあげた。
というかこの二人は用事があれば(なくても)いつでも来るな…。
ーー午後ーー
「じゃあまずは適正武器についてね。適正武器は辞書にステータス、と言うと見れるステータス画面にある項目の一つよ。その人が使うことに他より秀でている武器が表示されるわ。その武器を使えば他の武器より二倍も三倍も強くなれるのでオススメよ。」
そういえば適正武器が無いんだよね俺。後で先生に相談しよう。
「武術の訓練は適正武器でやるわ。自分の適正武器の武器を取っていって。」
先生がそう言うとみんな前に行って武器を取る。俺は……先生の元へと向かう。
「先生、適正武器がなしと表示されています。」
「え、え?そのケースは初めてね。私はちょっと分からないわ…。」
「どうすればいいですか?」
「とりあえず校長室へ向かって校長先生に聞いてもらえるかしら。」
「はい。」
校長室か…。緊張するんだよなぁ。校長先生優しいと良いなぁ。
そんなことを考えながら俺は校長室へ向かった。
コンコン
「どうぞ。」
優しい、若い男の人の声だ。
「失礼します。雫と申します。」
「っ!?あ、失礼。僕が校長のトト、学問の神トトだ。」
トト一瞬驚いた様子をしながらも自分が学問の神であると語った。
剣術については後ほど閑話を作ると思います。